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松本鉄工の代表取締役・杉原 佑友太氏へインタビュー
創業50年を超える老舗でありながら、ロボットシステムという最新分野で活躍する株式会社 松本鉄工。
また、人事評価制度やタブレット端末を使った仕事など、新しい取り組みにも積極的です。
株式会社 松本鉄工の代表取締役・杉原 佑友太(すぎはら ゆうた)氏へインタビューし、会社の特徴・強み、求める人材、人事評価制度を刷新した理由、今後の抱負などの話を聞きました。
「ロボットに命を吹き込む」のが松本鉄工の仕事
杉原 (敬称略)
松本鉄工は、現在の社員数は15人。アルバイトや協力企業の社員を含めると約100人の規模となります。
主な事業は、さまざまな分野の製造現場で導入される、産業用ロボットシステムの製造です。
お客様となる企業の製品・製造工程・技術・作業環境などに応じてロボットシステムを設計し、弊社でロボットシステムを製造して、それをお客様の製造現場に設置するところまでしています。
また、設置後のメンテナンスや修繕、さらに導入時より状況が変化したときに、それに合わせたロボットシステムの改良も手掛けているんです。
弊社のような産業用ロボットシステム事業を展開している企業を、「ロボットシステムインテグレータ」「ロボットSIer」などと呼びます。
弊社が所属する一般社団法人 日本ロボット工業会では、ロボットシステムインテグレータは「ロボットに命を吹き込む仕事」と表現しており、そのとおりですね。
地方にあることと、産業用ロボット事業の経験の豊富さが松本鉄工の強み
杉原
ズバリ、「地方に拠点を置いていること」と「産業用ロボットシステムの経験の豊富さ」ですね。
ロボットシステムインテグレータは、大阪などの都市部に多いんです。
しかし、都市部はどうしても一企業の敷地の広さが限られます。
面積が広くないと、大きな設備が設置できなかったり、大型ロボットの製造が難しかったりするんです。
いっぽう弊社は地方都市の郊外に立地しています。
だから敷地面積も広く、作業場となる社屋も大きいです。
設備・機材も充実していますし、大型のロボット製造もできます。
地方企業ならではの強みですね。
杉原
弊社は、最初ロボットのメンテナンス業務から開始したのですが、それを含めると30年以上の歴史があります。
たんに経験が長いだけでなく、さまざまな分野のロボットシステムに携わってきました。
その経験の豊富さがあるので、どんな業界のロボットシステムであっても相談に乗れ、提案ができるのです。
また、相談から提案・設計、さらに製造・組立、現場での設置・据付、導入後のメンテナンス・修繕、改良まで、一貫して弊社でおこなうのも大きな強み。
一社だけですべておこなうので、安心して任せられるという声をいただいています。
世代に関係なく仕事の結果と評価が結びつくように人事評価制度を刷新
杉原
いいえ。以前は、一般的な年功序列にもとづいた人事制度でした。
私が代表となってから、ずっと人事制度を刷新する必要を感じていたんですよ。
そこで、思い切って人事制度の変更に着手。
でも始めはなかなか思うような制度にできず、社員の話を聞きながら3年ほどかけて試行錯誤し、やっと現在の人事評価制度にたどり着きました。
杉原
現代では、年功序列の抱える問題点によって失われるものが大きいと感じているからです。
年功序列だと、どうしても若い世代は不利ですよね。
年功序列で若い世代の場合、評価が高かったとしても、それに見合った結果、つまり給与になりにくいです。
それだと若い世代のやる気が削がれてしまいますよね。
若い世代は、将来を担う存在ですので、会社の将来にも影響してきます。
若い世代が不利にならず、なおかつどの世代でも公平に評価され、それが給与に反映される人事評価制度を目標に、制度改革をしていきました。
制度改革のもうひとつの理由は、わかりやすくするため。
以前の人事評価制度は、誰がどのように評価するのかが不透明。
また、どのくらいの評価でいくらくらいの給与額になるのかもわかりにくかったんです。
誰が見てもわかりやすい制度にするのも大切だと思います。
現在の人事評価制度は、社員も納得しているようです。
もちろん、今後も必要があれば制度の改良はドンドンしていきますよ。
たとえば、今は残業削減を評価項目に入れています。
杉原
残業といえば「残業代」を稼ぐという印象もあるかもしれません。
だから世間では、残業がなくなったら手当が減って困るという話もあります。
弊社では逆です。
残業の削減を評価項目としているので、残業を削減できたら評価が上がり、結果としてプラスになります。
ただし、弊社は職種によっては出張があったり、どうしても残業や休日出勤が発生することがあります。
出張のようにどうしても発生するものは残業とは別項目とし、それは評価対象にしていません。
弊社は残業が少ない人、少なくなるようにがんばる人を評価します。
技術営業職は高度な知識が求められる、これからの時代に必要な仕事
杉原
新卒採用をおこなっているほか、現在はキャリア採用として技術営業職も募集しています。
弊社は30代の社員が少ないので、年齢のバランスを取るためです。
杉原
技術営業職は、お客様の要望を聞き、現場の工場長と打ち合わせしながらお客様に合ったロボットシステム設備を考え、提案・見積もりをするのが仕事です。
ロボットシステムに関する技術面の知識が必要で、ほかにも構想力・提案力・交渉力などが必要な業務。
求められる技能は高いですが、そのぶん結果も大きいですよ。
がんばれば、技術営業職が社内で一番高給になれるほどです。
技術営業職は弊社だけでなく、ロボットシステムインテグレータ業界全体で必要とされている重要な職種なんですよ。
なお、技術営業職は技術面の知識が必要なため、現場経験者が多いです。
技術営業職として入社後、最初は現場で一定期間作業して、弊社での現場経験を積んでもらっています。
ちなみに、現場からの出世コースとして、技術営業職のほかに工場長となる社員もいますよ。
今後は人とロボットの「協働」になってくる
杉原
一般のかたは、そういうイメージを持っていることが多いかもしれませんね。
しかし、日本は少子高齢社会です。
人手不足の問題が出てきていますが、今後より深刻になってくる可能性が高いですよね。
製造業は日本の経済を支える重要な産業です。
製造現場の少子高齢・人手不足の問題を解決するうえで、ロボットシステムは重要な役割を果たします。
ポイントは、人とロボットの「協働」です。
杉原
今までは、ある工程のほぼすべてをロボットに任せて、全自動化するという考えが多かったのです。
「仕事をロボットやAIに奪われる」というイメージは、そこから来ているのかもしれません。
しかし、今は変わってきています。
ロボットシステムの安全装置が進歩し、ロボットのそばに人がいても安全なようになってきました。
ロボットの横で人が作業できるようになったから「協働」がやりやすくなってきているんです。
もともとロボットは「同じ動作を正確に長時間繰り返す」ことが得意。
いっぽう、人はその場の状況に応じた臨機応変な作業ができます。
逆に、ロボットは状況を見ながら、それに合わせた作業をするのは難しい。
また、人も体力や意識がありますので、長時間にわたって繰り返し正確な作業はできません。
そこで人とロボットが、それぞれ得意な分野を分担し、それぞれの得意分野に集中するのです。
人とロボットの協働とは、言い換えれば人とロボットの役割分担ですね。
松本鉄工はローカルな町工場だが、グローバルな製品を生み出している
杉原
会社の規模は、極端に大きくするつもりはありません。
多くても30人くらいでいいと考えています。
その代わり、社員がしっかり儲けられる会社にしたいです。
そのために、がんばりや結果が給与としてしっかりと反映されるように、人事評価制度を試行錯誤して変えてきました。
働いている社員が、この会社で働いていることに納得できるようにするのが目標です。
あと、社員の話で印象に残っている言葉があります。
「松本鉄工はローカルな小さな町工場だが、仕事や製品はグローバル」という言葉です。
大きい会社でなく、日本の一地方の企業でも世界という舞台でも活躍できるんだということを、これから入社する社員に実感してもらいたいですね。
おわりに
日本の経済は、人手不足が最大の課題だといわれています。
それを解決するひとつの方法が、ロボットシステムの導入です。
日本の経済のこれからを担う重要な分野で、倉敷にある老舗工場が活躍しているとは知りませんでした。
また、働く人のがんばりがしっかりと給与に反映されるよう杉原社長が改革をおこなったように、老舗企業でありながら時代に合わせて体制を柔軟に変化させている点にも注目です。
倉敷にも、松本鉄工という海外でも活躍するおもしろい企業があることを覚えていてほしいと思います。
株式会社 松本鉄工のデータ
団体名 | 株式会社 松本鉄工 |
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業種 | 製造業(各種ロボットシステム) |
代表者名 | 杉原 佑友太 |
設立年 | 設立:昭和42年(1967年)、創業:昭和40年(1965年) |
住所 | 岡山県倉敷市福田町浦田501-10 |
電話番号 | 086-427-2272 |
営業時間 | 午前8時〜午後5時 |
休業日 | 土、日、祝日 |
ホームページ | 各種産業機械設備の設計・製作・据付・メンテナンス 株式会社 松本鉄工 |