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横溝正史疎開宅 〜 名探偵金田一耕助が生まれ、国民的作家が住んだ家

横溝正史疎開宅 〜 名探偵金田一耕助が生まれ、国民的作家が住んだ家

観とこ / 2020.04.24

名探偵金田一耕助を生み出した作家・横溝正史(よこみぞ せいし)は、終戦直前から戦後しばらく、吉備郡岡田村岡田(現在の倉敷市真備町岡田) (あざ)で疎開生活を送りました。

横溝正史(以下:横溝)が人生でもっとも楽しい時期だった、と回想するのが真備町での日々なのです。

横溝が岡田村で過ごした家は「横溝正史疎開宅」として、ほぼ当時のままで地域の人によって復元・整備されています。

開館日であれば、自由に訪れて見学可能です。

ファンや地域の人の憩いの場所になっている、横溝正史疎開宅を紹介します。

記載されている内容は、2020年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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横溝正史疎開宅とは

横溝正史疎開宅 全景

横溝正史は太平洋戦争が終わる直前、戦禍を避けるために真備町岡田村字桜の地に疎開してきていました。

その期間は、昭和20年4月から23年7月までの約3年半です。

横溝が住んでいた家を整備して公開しているのが 横溝正史疎開宅 です。

真備町に疎開したのは、横溝の父の出身地が近くにあり、親族が総社にいたからです。

疎開宅へ行くなら、横溝作品の世界観を堪能できるウォーキングコース、巡(めぐる)・金田一耕助の小径 の一環として訪問するのがオススメ。

巡・金田一耕助の小径 〜 名探偵誕生の地と横溝正史の足跡をたどる真備町のウォーキングコース

日本を代表する作家、横溝正史が「70年に近い私の人生においても、もっとも楽しい時期ではなかろうか」と語り、時は涙を浮かべながら回想したのが、真備町での日々なのです。

横溝正史疎開宅の見どころ

横溝正史疎開宅の見どころを紹介します。

横溝が住んでいた当時を再現した間取り

疎開宅の見どころは、なんといっても、横溝が住んでいた当時の雰囲気をそのまま味わえるという点です。

横溝が当時を振り返ったエッセイ『金田一耕助のモノローグ』の文中でも、疎開宅の描写がされています。

門を入ると左側は巨石や灯籠をあしらった坪庭があり、右側にはわれわれ夫婦の丹精による、五、六坪の菜園が出来かけていた。門から正面に当たるところに腰高障子があり、その中はかなり広い土間である。
土間の左側に六畳があり、六畳のさらに左側が四畳半になっていて、そこが私の書斎兼寝室になっていた。

こちらが横溝正史疎開時の平面図です。

横溝正史疎開宅 平面図

平面図を見ると、疎開宅の間取りが横溝が描写した当時をほぼ再現していることがわかります。

橫溝宅 土間

土間も、この通り残っています。

橫溝 書斎

横溝は、奥側の四畳半を書斎兼寝室として使っていました。(雛飾りがあるところ)

ちなみに、疎開当時この家には2階があったのですが、普段暮らすには1階だけで十分なので、2階は横溝の蔵書や雑誌が置かれていたそうです。

疎開宅間取り

六畳間を、横溝が書斎に使っていた四畳半から見るとこういう感じです。

橫溝 遺品

六畳間の一角には、疎開中お世話になった加藤さんに対して、横溝から送られた遺品も展示されています。

加藤さんは元教員で、疎開前から横溝のことを知って、よく家に遊びに来ていた人でした。

横溝が東京に戻る際に、加藤さんが岡山駅まで見送りをするなど、親しく交流した人です。

横溝は加藤さんについて、以下のように語っています。

ああ、加藤一さん。私の疎開生活でいちばん大きな収穫は、このひととの出会いであったろう。このひとなしには「本陣殺人事件」も「獄門島」もうまれず、したがって現在の私のブームもなかったであろう。

加藤さんから聞いた地域の伝説や逸話などがもとになって、横溝が『本陣殺人事件』『獄門島』などを着想して作品を書き上げました。

横溝と同じく日本を代表する推理作家、江戸川乱歩が作家仲間と横溝を訪ねてこの家に来たこともあるのです。

毎年人気の金田一耕助のコスプレイベントでも、疎開宅も会場の一つとなっています。

第11回・コスプレイベント1000人の金田一耕助(令和元年11月23日開催) ~ 名探偵のふるさと真備町を巡るイベント

ファンにはたまらない!こだわりポイント!

玄関には、「横溝正史」と「金田一耕助」という表札が掲げてあるのが面白いです。

疎開宅は、名探偵金田一耕助の生まれた場所でもあるので、表札があるのも納得!

金田一 顔出しパネル

玄関横には、金田一耕助の顔出しパネルがあり、記念撮影に最適です。横溝の柔和な笑顔が印象的ですね。

橫溝宅 土間

玄関から入ってすぐの土間では、地域の観光マップや横溝の年表を見ることができます。

当時とほとんど同じですが、土間の一番奥が台所になっていたようです。

長い年月を経ての移り変わりがありますね。

横溝正史疎開宅 スタンプ写真

横溝正史疎開宅のスタンプや訪問者が記帳するためのノートがあるので、記念にぜひどうぞ。

金田一耕助 スタンプ

筆者も記念にノートにスタンプを押してみました。

金田一 シルエット

土間から靴を脱いで上がると、目の前には金田一耕助のシルエットが出迎えてくれます。

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シーズンにはきれいな花壇も!

疎開宅の庭には、横溝正史像があります。

横溝正史像

この像は、疎開宅で撮影された横溝の写真をもとに制作されたものです。

時期が合えば、横溝作品の雰囲気にもあった黒いチューリップ、黒いひまわりが咲いている光景を楽しむことができます。

金田一畑

筆者が取材で訪れたときには、チューリップこそ咲いていなかったものの、「金田一」の文字をかたどった花壇に花が咲いていました。

金田一をかたどった花壇

横溝正史疎開宅の開館日は、火・水、土日の午前10時から午後4時までです。

横溝正史疎開宅が復元された経緯

横溝正史の疎開宅は、もともと住宅でした。その家に橫溝が疎開中、義理の姉原田光枝さんの世話によって住んでいたわけです。

横溝が東京に戻った後は、別の持ち主のかたが住んでいました。

その後、空き家だった時期を経て、家を壊すという話を真備町が聞き、横溝生誕100年となる2002年のタイミングで町が現在の疎開宅を購入したというわけです。

それまでは、蛍光灯などが使われている普通のお宅でしたが、真備町が購入するにあたり、できるだけ横溝がいた当時に近づける形で復元されました。

横溝の息子さんたちがこの疎開宅を訪れた際には、「自分たちが住んでいたときと同じ」と感想を言われたそうです。

現在は、倉敷市が管理組合に管理を委託し運営されています。

疎開宅 庭

疎開宅には立派な庭がありますが、シルバー人材センターのかたが手入れされています。

「横溝正史疎開宅」は、組合のみなさんの管理のおかげで横溝ファンの聖地として生まれ変わったわけです。

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横溝疎開当時を知るかたの貴重な話!

横溝正史疎開宅 管理組合のかた

疎開宅の管理組合のかたに、お話しを聴くことができました。

横溝が住んでいた家がそのまま残っていて、日本国内はもちろん、遠くは国外からもファンが訪れるとのこと。

以前は角川映画ブームのころのファンが多かったのですが、最近ではそれに加えて、女性のファンが訪れることが増えたそうです。

また、横溝疎開当時を知るかたのお話しも聞けました。

横溝は体が弱く、乗り物が好きではなかったため、当時近所の人に自転車をこいでもらい、荷台に乗って倉敷まで出かけることもあったとか。

管理をされているかたのなかには、疎開当時の横溝が外套(がいとう)を着て、近所をぶらぶらしながら考えごとをしているところを見かけたことを覚えていることも。

『本陣殺人事件』などの元となる話をしたかたは、ご自身がいくつか話しただけで、横溝が話を構築し、物語を書き上げるので驚いていたそうです。

岡田村での日々があったからこそ、横溝は国民的作家へと飛躍できたのではないかと思います。

横溝ファンの聖地となった疎開宅ですが、組合員のみなさんが心配していることがあるそうです。

組合員が高齢化して、若い世代の担い手が加わっていないこと。

横溝ファンにとって聖地となったこの疎開宅を、長く伝えていけるようにしていきたいものですね。

おわりに

横溝が岡田村に疎開していた期間は、わずか3年半ほどです。

しかし時間の長さとは別に、横溝の人柄と作品が地域の人に深く愛されていることを感じられました。

岡田村の地が、横溝にとって「第二のふるさと」ともいうべき場所になっていたということですね。

疎開宅は、作家横溝正史の生涯と名探偵誕生の地を堪能できる、2つの楽しみ方ができるおすすめの場所です。

作品の舞台となった真備町の場所は、「巡(めぐる)・金田一耕助の小径(こみち)」として整備されていて、歩きながら巡れます。

疎開宅と合わせて巡ってみてください。

横溝正史疎開宅のデータ

横溝正史疎開宅 全景
名前横溝正史疎開宅
所在地岡山県倉敷市真備町岡田1546
電話番号086-698-8558
駐車場あり
開館時間午前10時から午後4時
休館日月、木、金
入館料(税込)無料
支払い方法
    予約について
    タバコ
    トイレ
    子育て
    バリアフリー
    ホームページ横溝正史疎開宅/文化振興課/倉敷市
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    つぶあん

    福山市在住の、本と音楽をこよなく愛するブロガー。“凡人でも楽しく発信“をキーワードに活動中。職場のある福山市についての情報発信も行っています。運営サイトは「つぶログ書店

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