「晴れの国」と呼ばれる岡山県は、年間の日照時間が長く、酒米の栽培にとても適した地域です。
昔から日本酒造りが盛んにおこなわれてきたエリアですが、そのなかでも備中地域は創業100年、300年を超える酒蔵があり、長年地酒が愛されてきた場所でもあります。
そんな歴史ある備中地酒を堪能できるイベント、「井原鉄道で行く!備中地酒観光列車」が2024年2月24日(土)に開催されました。
筆者もチラシに書かれた「走る酒蔵」というワードに惹かれ、参加してきました。
日本酒好きにはたまらない、イベントのようすをご紹介します。
記載されている内容は、2024年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
備中地酒観光列車とは
備中地酒観光列車は、2024年2月24日(土)に開催されたイベントです。
岡山県総社市から広島県福山市を結ぶローカル線、井原鉄道の夢やすらぎ号に地元の酒造が乗車し、車内で造り手の想いを聞きながら備中の地酒を飲み比べできます。
夢やすらぎ号は井原鉄道のイベント車両で、2005年に運行開始しました。設計・デザインは、「九州新幹線」「ななつ星in九州」などを手がけた岡山県出身の水戸岡鋭治(みとおか えいじ)氏です。
今回のイベントでは「走る酒蔵」として走ります。
乗車区間は神辺駅から清音駅までとなっており、夢やすらぎ号を降りたあとも、倉敷美観地区にある冨來屋本舗(とらいやほんぽ)で名物のきびそばと地酒を堪能し、冨來屋本舗の系列店である地酒屋でお土産も買えるなど、備中の地酒を一日中楽しめる内容となっています。
このイベントは高梁川流域圏・備後圏域観光連携事業として、倉敷市・福山市・下電観光バスが共同で企画しました。
地酒をキーワードに、実際に備中地域を訪れて、味わって、地域の魅力を五感で楽しむイベントです。
イベントに参加してきました
イベント当日、JR福山駅は見事な快晴でした。
事前に集合場所が書かれた地図が自宅に送られてきたので、それを確認しながらバスに向かいます。
地図もわかりやすく、迷うことなくたどり着けました。
車内はほぼ満席。おひとりで参加しているひともいました。
まずはJR福山駅から井原鉄道の神辺駅までバスで向かいます。
その間に、添乗員さんから今回のスケジュールと注意事項について説明がありました。
注意事項でとくに印象に残ったのが、「倉敷市内は用水路が多いので飲んだあとは気をつけて歩いてください」というアナウンスです。
筆者は倉敷市内に住んでいるので用水路には慣れていましたが、今回は福山市内の参加者のかたが多かったようで、そのアナウンスを聞いて驚いていました。思わぬところで地域性を感じた瞬間でした。
発車して約30分、井原鉄道の神辺駅に到着し、駅のホームで夢やすらぎ号を待ちます。
夢やすらぎ号「走る酒蔵」に乗車
お待ちかねの夢やすらぎ号が、いよいよホームに入ってきました。
記念撮影するひとも多く、ホームが賑やかな雰囲気に包まれます。
レトロでかわいい車体に見惚れていると、開いている扉から地酒を用意する酒造さんの姿がチラリと見えました。机に並べられた酒瓶を見て、ますます期待が膨らみます。
列車の中は、木のぬくもりが感じられる落ち着いた内装で、入り口の近くにはトイレもありました。飲食イベントなのでトイレの設備があると安心しますね。
指定された座席に向かうと、各席に今回乗車する酒造のパンフレットや購入リスト、そして水のペットボトルとおつまみが入ったビニール袋が置いてありました。
地酒の説明書も入っていて、感想を記録するのに便利そうです。
気に入ったお酒は購入リストに記入すれば、このあと立ち寄る地酒屋さんで受け取れます。
配送も4本以上で無料になるので、持ち運びも気にせず買い物ができていいですね。
白菊酒造・熊屋酒造の挨拶
今回乗車した酒造は、高梁市の白菊酒造と倉敷市の熊屋酒造です。
最初に、それぞれの蔵の代表からご挨拶がありました。
白菊酒造は1886年(明治19年)に創業し、130年以上の歴史を持つ老舗の酒蔵です。
熊屋酒造も2024年で創業308年を迎える酒造で、倉敷市内で最古の蔵と呼ばれています。
筆者は日本酒が好きで、倉敷市内をよく飲み歩いていますが、地酒を取り扱う居酒屋に行くとほぼ必ずと言っていいほど、白菊酒造と熊屋酒造のお酒を見かけます。今回造り手のかたと直接お会いできて、とてもうれしかったです。
地酒観光列車の乗車時間は、約1時間30分。各酒造から4種類、計8種類の地酒を味わえます。
早速カップに日本酒が注がれ、テーブルに運ばれてきました。
筆者は酒造のみなさんに一番近い席に座っていましたが、「僕たちもひとくち飲みたいねえ」と和やかにセッティングしている姿を見て微笑ましくなりました。
8種類の地酒を飲み比べ
全テーブルに日本酒が置かれ、いよいよ列車が発車します。
まずは熊屋酒造と白菊酒造から、乾杯にぴったりな日本酒が2種類ずつ出されました。
白菊酒造のかたから「みなさん、今すぐにでも飲みたいという雰囲気がひしひしと伝わってきますが、もう少々お付き合いください」と、笑いを誘うひとことも交えながら日本酒の紹介が始まります。
最初は以下のような地酒が並びました。個性豊かな備中の地酒が勢ぞろいです。
- 岡山県特産の酒米「雄町米」で作った純米大吟醸
- 乾杯らしい微発泡の日本酒
- 2024年1月に絞ったばかりの新酒
- 地元で採れた山田錦を使用した日本酒
車内のあちこちから「どれから飲もうかな」という会話が聞こえてきました。どの順番で飲むかを話し合うのも、日本酒好きが集まったイベントだと実感できます。
全員で乾杯をしたあと、各酒造のかたが席を回り、さらに深い日本酒トークをしてくれました。
筆者が「備中の地酒の特徴はありますか?」と質問したところ、備中の地酒は芳醇旨口(ほうじゅんうまくち)と呼ばれる、お酒の旨みをしっかりと感じられるものが多いと教えてもらいました。
ほかにも、備中の地酒で使われるお米の種類や違い、日本酒の作り方、酒瓶の違いなど、誰かに話したくなるような地酒の知識をたくさん聞けました。さすが日本酒のプロフェッショナルです。
飲み終わったころに、新たな4種類の地酒が運ばれてきました。あらためて地酒の説明アナウンスが入ります。
最初は「8種類も飲めるかな?」と思いましたが、使う酒米や仕込み水によって味が変わるので、まったく飲み飽きません。
気に入った地酒は、おかわりもできました。
酒造のかたが回って車内もどんどん盛り上がり、あちこちから地酒の感想が聞こえてきます。
筆者も、向かいの席に座っていた女性と「おいしいですね」「どのお酒が好きですか?」と会話が弾みました。地酒をきっかけに話が盛り上がるのは、このイベントならではの楽しさですね。
賑やかな車内を見回すと、おつまみを持参している参加者も多く、かまぼこを食べているひとや、小さなエビフライをつまんでいるグループもいました。
テーブル席は相席がほとんどですが、どこも地酒をテーマに話が盛り上がっています。
気持ちよくほろ酔いになったころ、列車は終点の清音駅に到着しました。
夢やすらぎ号、そして酒造のみなさんとお別れし、今度はバスで倉敷美観地区へ向かいます。
倉敷美観地区散策と冨来屋の夕食
倉敷美観地区へ向かう移動中に、添乗員さんから美観地区エリアのまち歩きマップが配られました。
夕食前に倉敷美観地区で自由時間があるため、添乗員さんが観光スポットの紹介やおすすめのお土産などを案内してくれました。
今回のイベントは倉敷市外の参加者が多かったので、こういう情報がもらえるのは良いですね。
倉敷美観地区に到着したら、まずは夕食会場である冨来屋の場所をみんなで確認し、自由時間スタートです。
自由時間は40分ほどだったので、筆者は倉敷アイビースクエアでごぼうのポタージュをテイクアウトして休憩しました。
途中、ほかの参加者とすれ違いましたが、お土産屋さんを回って倉敷名物を購入しているかたもいて、倉敷美観地区の買い物を楽しんでいるようでした。筆者は倉敷市民なので、自分が住んでいる地域のお土産を買ってもらえて、うれしさを感じます。
あっという間に自由時間が終わり、冨来屋に戻ると、2階のお座敷に案内されました。
地酒が3本置かれたテーブルには、倉敷の郷土料理のまつりずしや冨来屋名物のきびそば、岡山のブランド牛の千屋牛ステーキなど、地のものにこだわった料理が並びます。
冨来屋で飲める地酒は、観光列車とはまた違う酒蔵でした。
早速相席になったひととお酒を注ぎ合い、乾杯しました。
観光列車ですっかり和気あいあいとした雰囲気になっているので、お酒もすすみます。
料理の品数も多かったので、ペアリングも十分に楽しめました。
まつりずしはお弁当箱に入っていて、食べきれないひとはお持ち帰りもできました。
筆者は日本酒でお腹が膨れていたので、この配慮はとてもありがたかったです。
テーブルによってはお酒が余ってしまいましたが、その場合は余った分をほかのテーブルに回してOKでした。
お腹もお酒も大満足になったころ、少人数に分かれて地酒屋へ出発しました。
地酒屋でおみやげを購入
地酒屋は、個性豊かな岡山県産の地酒を取りそろえているお店です。
ここではお土産の買い物と、観光列車で購入リストに記入した日本酒を受け取れます。
店内は地酒だけでなく、種類豊富なおつまみも販売されていました。
冷蔵庫にずらりと並んだ地酒を眺めていると、観光列車に同乗した熊屋酒造と白菊酒造の瓶を見つけました。
想いやこだわりを直接聞いた酒蔵のお酒は、ほかの銘柄も飲んでみたくなりますね。
どの地酒を購入するか、ひとりでじっくりと吟味しているひともいれば、参加者同士でおすすめを教え合っているひとたちもいて、各々ゆったりとお買い物タイムを楽しみます。
筆者も気になった地酒を一本購入しましたが、今回のイベントで地酒のいろいろな特徴を知れたので、自分好みの日本酒が選びやすかったです。
買い物を終えたら添乗員さんの案内でバスに戻ります。
お土産の重さに幸せを感じながら、最初の集合場所だったJR福山駅へと発車しました。
おわりに
備中地酒観光列車は、ただおいしく飲むだけではなく、備中地酒の良さを学べる素敵なイベントでした。
筆者は日常で井原鉄道に乗ることもありますが、観光列車だとプチ旅行感もあり、日帰りとは思えないほどの充実感を味わえて大満足です。
「走る酒蔵」の名のとおり、半日で11種類の地酒を楽しめる、とてもお得な内容だったと思います。「第2回も開催してほしい」とリクエストする声もたくさん聞こえてきました。
住んでいる地域の地酒に触れたくて今回のイベントに参加しましたが、造り手のかたの想いや豆知識などを聞きながら飲むお酒は、普段よりもさらに深みが感じられます。
地酒を通じて地域の魅力を学ぶイベントが、今後も増えていくといいなと思います。
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井原鉄道で行く!備中地酒観光列車のデータ
名前 | 井原鉄道で行く!備中地酒観光列車 |
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期日 | 2024年2月24日(土)午後1時~ |
場所 | 井原鉄道・倉敷美観地区エリア |
参加費用(税込) | 10,000円 |