岡山県が全国でも有数の用水路王国だと知っていましたか?
用水路は川につながり、やがてその水は海に流れ込んでいく。
ごみも、この経路をたどって海に流れ込んでいることが瀬戸内海での海ごみ問題発生の要因となっています。
海ボウズプロジェクトは「用水路でごみを回収することが海ごみの減量に有効」と考え、岡山県倉敷市で用水路やその周辺のごみ拾い活動を市民に呼びかけ、定期的にごみの回収活動を実施しています。
令和5年8月19日(土)の活動に同行しました。
記載されている内容は、2023年10月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
海ボウズプロジェクトとは
海の妖怪「海坊主」の名前が付いたプロジェクト、どんな活動でしょうか。
海ボウズプロジェクトの概要
「海の底には陸にあるものは何でもあるよ」
海ごみ調査に協力してくれた漁師さんの一言が、活動のきっかけでした。
海ボウズプロジェクトの主催団体である公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団)では、これまでさまざまなごみの調査・研究をおこなってきました。
その結果から、海ごみ問題を解決するためには、ごみの流入源となる用水路周辺でのごみの減量が必要と、このプロジェクトを立ち上げました。
海ボウズプロジェクトは、自分たちの手の届く身近な用水路周辺でのごみ拾い活動を市民に呼びかけ、定期的に実施。
その取り組みを見える化することで社会にその成果を発信し、瀬戸内海に流入するごみの減量化を目指すプロジェクトなのです。
令和5年5月から毎月1回、倉敷市内の用水路周辺を歩きながら網などでごみをすくったり、時には川の中にも入ったりしてごみを回収しています。
市民活動に企業も協力
TOTO株式会社(以下:TOTO)では平成17年(2005年)度事業として「TOTO水環境基金」を設立、地域に住む人々を巻き込んで、水にかかわる環境活動に取り組む団体を助成しています。
海ボウズプロジェクトは、令和5年度の助成団体の一つに選ばれました。
TOTOの社員のかたは第1回から毎回参加、この日も一緒にごみの回収に汗を流しました。
倉敷市水島の八間川で活動
令和5年8月19日(土)に実施された4回目のプロジェクトについてお伝えします。
第4回のフィールド
第4回は倉敷市水島の八間川流域「大根洗い場(倉敷市水島東川町)」を起点に、上・下合わせて約500mの流域を清掃しました。
八間川は川という名前はついていますが、農業排水路と工業排水路の役割を持った「特別都市下水路」だそうです。
両岸には住宅地が広がっていて、生活排水も多く流れ込んでいたことが推測されますが、環境整備が進み現在のような底の砂地が見える川になっています。
どんな人が参加している?
参加者は岡山県立倉敷古城池高等学校の生徒を中心に、プロジェクトのロゴデザイナー、TOTOの社員のかたがた、スタッフ合わせて14人です。
参加した高校生は、探究活動という授業のなかで環境について学んでいるそうで、前回の参加者が新たな仲間を連れて参加しました。
こういう若い力は頼もしい!
いざ川の中へ
ごみの回収をした場所は、大人の足のくるぶしから足首ぐらいの深さでした。
緩やかな流れで、水も透き通っています。
一見、大したごみはさほどなさそうに見えたのでしたが…。
活動結果
道路から見るとさほど汚れているようには見えなかった八間川ですが、約1時間、川の中を掃除した成果はどうだったのでしょうか?
拾い集めたごみの量は…
曇天でしたが動くごとに汗がしたたり落ちるなか、約1時間の回収活動で集まったごみを分別して計量しました。
「ペットボトル」「家電製品」「袋・シート」「缶類」「ビン・陶器」「硬質プラスチック」「ゴム製品」「自然物」「金属類」「発泡スチロール」「布類」「紙・ダンボール」「その他」の13項目に分別し、それぞれの回収量を記録していきます。
前回、八間川を清掃したのは約2か月前。
そのときは37.65kgものごみが回収されたそうです。
今回は約10kg減の26.45kgありました。
プロジェクトの代表、塩飽敏史(しわく としふみ)さんは前回の回収の成果が出ているとしたうえで、
「そもそもの発生源を絶たなければやはりごみは出る。しかし、前回よりは減っていることから清掃活動をすればごみは減るということです」
と、継続することの大切さを参加者に語りかけていました。
成果があったことにほっと一息、継続は力なりですね。
なぜこんなものまで!驚きの回収品
一般的には回収されたごみを分別すると袋やシート類が一番多く、プラスチック系のごみがだいたい8割を占めるそうです。
この日もご覧のように大きなブルーシートが川底から見つかりました。
ブルーシートがなぜこんなところから?
さらには携帯電話やビデオテープ、カセットテープ、モーターの部品のようなもの、腕時計など、「なぜ川の中にあるの?」と疑問を抱くようなものが回収されました。
これまでにもビデオデッキ、大量のカセットテープ、ドライヤー、ポット、パソコンなど、本来あまりポイ捨てや使い捨てするようなものではないものまで回収されたそうです。
また、回収品のなかでとくに厄介なのが空き缶やペットボトルにたばこの吸い殻を入れて捨ててあるもの。
リサイクルもできなくなってしまうそうです。
喫煙者の皆さん、タバコのポイ捨てなんてもってのほかですよね。
飲料水の缶やペットボトルに入れて捨ててあると、缶やペットボトルも再利用できないそうですのでやめてくださいね、お願いします。
参加した人たちからは、以下のような声を聞けました。
- 「思った以上にごみがあって驚いた」
- 「地域の人にごみをきちんと処分してもらうように頼むことも必要だし、自然にかえりやすい新しいプラスチックができたらいい」
- 「川から海に流れて瀬戸内海が汚れることを改めて知れた」
おわりに
海坊主といえば、海に住み船を襲う妖怪などの伝承があります。
倉敷市の海ボウズは「瀬戸内海の守り人」として、海の環境を守るために用水路やその周辺でごみ拾い活動を定期的におこない、瀬戸内海に流入するごみの減量化を目指す心優しい妖怪(プロジェクト)でした。
プロジェクト代表の塩飽敏史さん(公益財団法人水島地域環境再生財団理事/研究員)は、以下のように話してくれました。
「海に流れ込んだごみの回収は難しいんです。
だから、その手前で食い止めることが必要です。
海ボウズプロジェクトが目指しているのは、1回の回収量は少なくても、取り組む人を増やして日常的な活動として広げ、大きな回収量につなげていくこと。
そのためには、地域の人が気軽に水路やその周辺を歩きながら目に入ったごみを網ですくって回収できるような、そういう仕組みを作っていくことが課題です。
アルコール飲料の缶やタバコの吸い殻は大人が捨てたものが多いんですが、それを今回参加してくれた高校生や地域活動として子どもたちが拾ってくれている。
大人がそういうごみをむやみに捨てないような世の中に切り替えていかないといけないと思います」
道端にたばこの吸い殻やペットボトル、空き缶などを見つけたとき、そのまま素通りしていませんか?
目の前に落ちているもの、それはごみではありませんか?
用水路から川へ、そして長い時間をかけて気付かないうちに海へと流れ込み、いつか私たちの住む瀬戸内の豊かな海がなくならないように。
まずはごみを捨てる前に今一度確認をしてみましょう。
そのごみ、そこに捨てていいですか、その捨て方で大丈夫ですか?
開催は月1回(第3土曜日)
海ボウズプロジェクトは、月1回基本は第3土曜日に開催されています。
当日参加も大歓迎、場所・集合場所は「みずしま財団のホームページ」を確認してください
第4回海ボウズプロジェクトのデータ
名前 | 第4回海ボウズプロジェクト |
---|---|
期日 | 令和5年8月19日 午前9時 |
場所 | 岡山県倉敷市水島東川町4丁目 八間川(大根洗い場付近) |
参加費用(税込) | 無料 |
ホームページ | 公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団) |