倉敷市児島は、かつて日本有数の塩の生産地として栄えた地域です。江戸時代に「日本の塩田王」と呼ばれた「野﨑武左衛門(のざき ぶざえもん)」が一代で広大な塩田を築き上げました。
しかし、昭和40年代に入ると製塩技術の進化や輸入塩の増加により、国内の塩田は急速に縮小。児島の塩田も例外ではなく、長い歴史を持つ塩づくりは姿を消しました。

児島の塩文化を再び地域の誇りとし、新たな形で未来へつなげる取り組みが、倉敷児島塩結びプロジェクトです。児島の塩を復活させるだけでなく、地域の歴史や文化を再評価し、新たな観光資源として活用することを目的としています。
プロジェクトを推進する児島商工会議所と下津井電鉄株式会社(以下、「下津井電鉄」と記載)の担当者に、その狙いや今後の展望について話を聞きました。
記載されている内容は、2025年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
倉敷児島塩(えん)結びプロジェクトとは
「塩(えん)結び」という名称には、「塩を通じて地域の人々や歴史を紡ぐ」という想いが込められています。単なる塩の復活ではなく、地域の文化や人々の思いをつなぐことが目的です。

このプロジェクトでは、塩を活用した商品開発、さらには観光との連携を進めています。児島が持つ豊かな歴史と自然資源を生かし、新たな地域の魅力を創出しようとする試みです。
「塩田王 野﨑家の塩」を軸に広がる地域活性の取り組み
プロジェクトの中心となるのが、岡山の海水を使った塩づくりです。かつての塩田が姿を消した今、新たな製法で塩を生産し、地域の特産品として活用する取り組みが進められています。

その一環として、ナイカイ塩業株式会社(以下、「ナイカイ塩業」と記載)と下津井電鉄が共同開発し、新しいブランド「塩田王 野﨑家の塩(以下、「野﨑家の塩」と記載)」が誕生しました。この塩は、岡山の海水を使い、ミネラル豊富でまろやかな味わいが特徴です。
野﨑家の塩を使用した商品
野﨑家の塩は、そのまろやかな味わいを生かし、さまざまな商品に使用されています。
お土産
和菓子屋や洋菓子店と協力し、塩羊羹などが開発され、観光客にも人気を集めています。地域ならではの特産品として、児島の魅力を発信する役割も担っています。

老舗和菓子店「今和夢果子 錦盛堂(いまわむかし きんせいどう)」が手がける「塩羊羹(しおようかん)」は、岡山県産の素材にこだわるお店ならではの一品。野﨑家の塩を使用することで、上品な風味が生まれています。

野﨑家の塩を使用した商品はほかにも多数あります。今後も野﨑家の塩を使った新たなお土産の開発が進められており、さらなる展開が期待されます。
グルメ
地元飲食店のメニューにも使用されています。また地元グルメとしても展開中です。
下津井にある「すし割烹松本」が提供している「たこ塩焼き」も野﨑家の塩を使用しており、下津井の海の恵みが味わえます。

児島駅前にある「焼く鳥 とり福来 本店」では、提供されている鶏料理のなかに野﨑家の塩を使用したものもあります。その旨みが素材の味を引き立て、児島の味をより楽しめる一品です。

上記以外の多くの飲食店にも使われており、児島の食文化を代表する味付けには欠かせない塩となりつつあります。

児島の塩を感じる観光施設
プロジェクトは塩を通じて児島地区への観光にも取り組んでいます。
下津井電鉄の「ジーンズバス」は児島地区の観光施設やジーンズショップなどを巡り、児島の魅力を発見できる便利なバスです。

塩田王 野﨑武左衛門が居を構えた「旧野﨑家住宅」も児島を語るには欠かせない観光地です。

塩を通じて児島の魅力を伝える「倉敷児島塩結びプロジェクト」を推進する、下津井電鉄の早田友幸(はやた ともゆき)さんと商工会議所の小松原達矢(こまつばら たつや)さんに話を聞きました。