畳縁(たたみべり)を知っていますか?
畳縁とは、畳の両端の縁(ふち)についている布。
倉敷市に、畳縁の生産量日本一の会社があります。
それが、明治25年に創業した髙田織物(たかたおりもの)株式会社。
日本の伝統的な建材である畳を支える存在でありながら、常に挑戦を続け、世間からの注目度が高まっている会社なのです。
道なき道を切り開いていく、髙田織物を取材しました。
記載されている内容は、2022年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
髙田織物株式会社のデータ
団体名 | 髙田織物株式会社 |
---|---|
業種 | 畳縁製造業 |
代表者名 | 高田尚志 |
設立年 | 1950年 |
住所 | 岡山県倉敷市児島唐琴2-2-53 |
電話番号 | 086-477-7162 |
営業時間 | 会社の営業時間:午前8時~午後5時 FLAT児島本店の営業時間:午前10時~午後3時 |
休業日 | 不定休 FLAT児島本店の営業日は、会社の営業日に準じる。お盆や年末年始など休業あり。 |
ホームページ | 髙田織物株式会社 |
畳縁とは?
畳縁とは、畳の両端についている織物です。
機能的に、畳縁には主に3つの役割があります。
1つ目は、畳の部材をひとつにすること。
畳は、稲藁(いなわら)などで作られる畳の芯である「畳床(たたみどこ)」に、い草を編んだ「畳表(たたみおもて)」をかぶせ、長辺に「畳縁」を縫い付けて作られます。
2つ目は、傷みを防止し保護すること。
畳は使っているうちに、畳表の角の部分からほころび傷んできます。
ささくれを防いでくれるのが、畳縁です。
畳縁のある畳は、縁無しの畳より、長持ちするのです。
3つ目は、畳と畳の隙間をしめること。
お部屋に畳を敷き詰めるときに隙間を微調整してキュッとしめ、隙間に埃が溜まりにくくなります。
機能的な役割だけではありません。部屋の装飾としての大きな役割も果たしています。
畳縁が変わると、部屋の雰囲気が大きく変わるのです。
畳縁の歴史
畳縁はいつからあるのでしょう?
奈良時代から現代まで
現存する最古の畳は、奈良の正倉院に保管されたもの。
奈良時代に、聖武天皇がベッドのように使用していたと考えられています。
この畳にも、縁が使われているのです。
しばらくの間、畳の縁には、広幅の生地を裁断してあてがっていました。
今のように細幅の織物を使うようになったのは、明治時代の終わりごろ。
畳が一般的になってきたことから、畳専用の布として細幅の畳縁が作られるようになりました。
昔は綿糸で作られていましたが、現在は、ポリエチレン糸などの化繊や艶つけ加工を施した綿糸などを組み合わせ織られています。
岡山と畳縁
岡山で畳縁が作られるようになったのは、大正10年頃。
関東大震災(大正12年)から復興していく過程において、「岡山の畳縁は品質が良い」と評判が広がっていったそうです。
昭和の戦後復興でも需要が高く、岡山の畳縁は全国で使われました。
2022年現在、畳縁の8割を岡山県で生産しています。
そしてその約半数である全国シェア4割が、髙田織物製なのです。
なお、畳表の原料となるい草も、明治時代から昭和初期にかけて岡山が生産量日本一でした。
筆者は「い草栽培が盛んだから畳縁も盛んになったのだろう」と考えていましたが、実は関係ないそう。
干拓地である倉敷では土壌に塩分が多く稲を育てるのが難しかったため、江戸時代から綿花とい草が栽培されていました。
綿花の紡績が発展し、繊維産業のひとつとして畳縁の生産につながっています。
結果として、たまたま畳に関するい草も畳縁も岡山が産地になったようです。
髙田織物の歴史
髙田織物(たかたおりもの)は、明治25年に織物会社として創業しました。
はじめは、呉服や茶道具に使う真田紐(さなだひも)や帯地などを作っていたそうです。
明治から大正になるころ、人々の装いが変わり、これまで製造していた商品の需要が減ってきます。
昭和初期、地域の人の助言も受け、織物の設備や原材料を活かせる事業として始めたのが、畳縁製造でした。
昭和30年代後半に、髙田織物は業界で初めて、柄の入った畳縁を開発します。
髙田織物は畳縁の認知拡大・価値拡大に努め、2014年に直営店「FLAT」を開店しました。
現在は約1,000種類の畳縁を製造・販売しています。
多様な取り組みや畳縁への思いを、後半のインタビューでたっぷり紹介しますね。
直営店 FLAT
2022年現在、髙田織物は以下の2店舗を運営しています。
店名 | 住所 |
---|---|
FLAT 児島本店 | 岡山県倉敷市児島唐琴2-2-53 |
FLAT 倉敷美観地区店 | 岡山県倉敷市中央1-4-16(日本郷土玩具館内) |
たくさんの畳縁を見る機会は貴重ではないでしょうか。
FLATには、カラフルで多様な畳縁が並んでいます!
筆者は初めてFLATを訪れたとき、ビビットな色やモダンな柄のものなどの畳縁を目にして、「こんな畳縁があるなんて!」と驚きました。
ポーチ・カード入れ・ご祝儀袋・ヘアアクセサリーなど、畳縁を使った小物もたくさん。
ハンドメイド素材としても、購入できます。
自分好みの小物を作るのも楽しそうですね。
古くから日本に根づいた、サステナブルな畳
近年は、琉球畳などの畳縁を使わない畳が増えてきました。
縁のない畳は見た目がすっきりしますが、畳が痛みやすく、高価で、畳床が薄く踏みごたえが硬いものが多いそうです。
また、寿命も短いのだとか。
髙田織物株式会社・代表取締役の髙田さんは、「日本では元々、自然の中にあるものを取り入れて、四季の中で呼吸をするような家を作ってきた」と言います。
1,000年以上前から使われてきた昔ながらの畳は、い草を織って畳表を作り、藁(わら)を圧縮して畳床にしていました。
畳縁を使って畳表と畳床を縫い合わせて作った畳は、糸を切るだけで簡単に畳表をはがせます。
そのため、畳表が傷んできたらはがして裏返し、裏側もしっかり使い、使い終わったらい草を土に返してきました。
畳の芯である畳床は、補修をすれば何十年も使えるそう。
畳表と畳縁だけ新しいものに替える「表替え(おもてがえ)」もできるので、さらに資源を有効活用できるのです。
しかし、畳縁を使わない畳の中には、畳表と畳床を糊でつけているものも多くあります。
はがせないため、畳表の表面が傷んだらすべて捨てるしかありません。
部材を縫い合わせて使う縁のある畳は、資源を有効に使える、環境にやさしい建材といえるでしょう。
限りある資源、まだ使えるのに捨てざるを得ないのはもったいない、と筆者は思います。
明治25年の創業から現代に至るまで、どのような思いで畳縁を作っているのでしょうか。
髙田織物株式会社の代表取締役、髙田尚志(たかた なおし)さんに話を聞きました。
髙田織物株式会社のデータ
団体名 | 髙田織物株式会社 |
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業種 | 畳縁製造業 |
代表者名 | 高田尚志 |
設立年 | 1950年 |
住所 | 岡山県倉敷市児島唐琴2-2-53 |
電話番号 | 086-477-7162 |
営業時間 | 会社の営業時間:午前8時~午後5時 FLAT児島本店の営業時間:午前10時~午後3時 |
休業日 | 不定休 FLAT児島本店の営業日は、会社の営業日に準じる。お盆や年末年始など休業あり。 |
ホームページ | 髙田織物株式会社 |