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緊急告知FMラジオ「こくっち」 ~エフエムくらしきが防災のために作った、避難情報などを伝える「自動起動ラジオ」

緊急告知FMラジオ「こくっち」 ~エフエムくらしきが防災のために作った、避難情報などを伝える「自動起動ラジオ」

知っとこ / 2022.02.10

地震や津波などの災害が起きたとき、人を守り被害を抑えるためには、情報伝達がとても大切です。

緊急告知FMラジオ「こくっち」を知っていますか?

「こくっち」は、緊急時に自動で電源が入り、避難指示などの重要な情報を伝えるラジオです。

災害時の情報伝達に有効性が高いといわれ、2022年2月現在、北は北海道から南は長崎まで、全国で約25万台が使われている「こくっち」。
倉敷市のラジオ局「エフエムくらしき」らが開発したものなんですよ。

「こくっち」の特徴などを紹介します。

記載されている内容は、2022年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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「こくっち」とは?

緊急告知FMラジオこくっち

「こくっち」は、FMラジオで放送される緊急情報を伝達するためのラジオです。
充電式バッテリーを内蔵していて、緊急時には自動で電源が入ります

以下の3社で構成される「倉敷コミュニティ・メディア」が開発しました。

  • 倉敷のFMラジオ放送局 FMくらしき
  • ケーブルテレビ局 倉敷ケーブルテレビ
  • ケーブルテレビ局 玉島テレビ放送

災害が起きたとき被害を最小限に抑えるには、迅速で確実に情報を伝えられるシステムが必要です。

災害時の情報伝達手段のひとつが、「こくっち」。

重さ485グラム、大きさは縦11 × 横16 × 奥行5センチメートルで、持ち運びも容易です。

緊急告知FMラジオこくっち

「こくっち」の有用性は国にも認められています。
第11回防災まちづくり大賞」では、総務大臣賞に次ぐ「消防庁長官賞」に選ばれました。

シンプルな仕組みで壊れにくく、厳正な審査の結果「優れた防災ツール」と認められているんです。

「こくっち」の使いかた

緊急告知FMラジオこくっち こくっちの起動イメージ
こくっちの起動イメージ (エフエムくらしきの資料より)

置きかた、ふだんの使いかた

まずはラジオの受信状況を確認し、「コンセントに繋げてラジオ電波がきちんと入る場所」に置きます。
ラジオの受信環境がよくない場合は、ケーブルテレビからのアンテナ線を分岐して接続しましょう。

ふだんはコンセントにつないでおいてください。
「こくっち」の電源を切っていても緊急放送は受信できます。

緊急事態発生時のはたらき

緊急事態が発生し、避難指示などの情報伝達要請が出たとき、コミュニティFM放送局は、特殊な起動信号を送信。

「こくっち」は自動的に電源が入り、緊急であることを示すライトが点灯します。
そして、最大音量で緊急放送を流すのです。

寝ていても気づきやすく、停電していても緊急放送を聞くことができます。

スマートフォンなどを手元に持っていない職場などでも緊急事態に気づけるので、いくつもの介護施設や幼稚園・保育園・オフィスに導入されていますよ。

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「こくっち」の特徴

緊急告知FMラジオこくっち

「こくっち」には、以下のような特徴があります。

  • シンプルで簡単に扱える
  • 他のシステムなどよりコストが安い
  • 室内で緊急情報を受信できるので、聞き取りやすい
  • 電波を使用して伝達するので、災害の影響を受けにくい
  • 充電電池を内蔵しているので、停電時にも使える
  • 緊急時の照明としても使える

少し詳しく紹介しましょう。

室内で緊急情報を受信できるので聞き取りやすい

筆者は平成30年7月豪雨の際、防災行政無線から流れる避難情報を聞いていました。

部屋を閉め切っていて放送に気づくのが遅れたこと、窓を開けても雨の音で内容がほとんど聞き取れなかったことを、よく覚えています。

「こくっち」は室内で放送を聞けるので、音が風雨に邪魔されません
とても聞き取りやすく、内容がよくわかります。

電波を使用して伝達するので災害の影響を受けにくい

津波や豪雨などで、携帯電話の基地局が浸水するなどの被害を受けると、インターネットが使えなくなる場合があります。

東日本大震災では、「震災当初はラジオが唯一の情報入手手段であった」という声もありました。

FM電波を使う「こくっち」は、比較的災害の影響を受けにくいといえます。

充電電池を内蔵しているので停電時にも使える

照明としても使える

停電した場合、情報取得手段はどうなるでしょうか。

まずテレビは見られません。
携帯電話やスマートフォンは用途が広いので、数日間停電した場合はスマホの電池がなくなってしまうこともあるでしょう。

充電電池で動き、用途が限られている「こくっち」は、停電時の情報取得手段として使いやすいといえるでしょう。

「こくっち」を購入するには

緊急告知FMラジオこくっち

「こくっち」は、どこでも購入できるわけではありません

正しく使われ維持管理されないと意味がないため、購入時には販売者による説明がなされます。
また、住所・氏名をシリアルナンバーと合わせて管理しているのです。

エフエムくらしきでは毎月1日に試験放送をしていて、「どのように置いているか・正しく鳴ったか」などを知らせてもらう受信レポートを受け取っています。

エフエムくらしきの放送地域
エフエムくらしきの放送地域  画像提供:エフエムくらしき

価格は8,800円(税込)です。

購入を希望する場合、エフエムくらしき放送エリアのかたは、以下のいずれかに問い合わせてください。

会社名電話番号販売タイプ
エフエムくらしき086-430-0600倉敷市用・総社市用
たけのこ茶屋(まきび公園内)086-698-1514倉敷市用
国民宿舎 サンロード吉備路(売店)0866-90-0550総社市用
児島市民交流センター086-474-8550倉敷市用
玉島市民交流センター086-526-1400倉敷市用

販売店の詳細は、エフエムくらしき公式サイトの「こくっち」商品・販売店紹介ページを見てください。

「こくっち」は、全国40以上の市区町村で配備されています。

エフエムくらしき放送エリア以外のかたは、近くのコミュニティFM局に取り扱いがあるか問い合わせてください。

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エフエムくらしき代表取締役 大久保憲作さんインタビュー

緊急告知FMラジオこくっち

「こくっち」を開発した、エフエムくらしき代表取締役の、大久保憲作(おおくぼ けんさく)さんに話を聞きました。

インタビューは2020年10月の初回取材時に行った内容を掲載しています。

コミュニティ放送とはどのようなものですか?

大久保

放送局は、放送対象地域によって区分されます。
全国放送・広域放送・県域放送・コミュニティ放送と分かれていて、「主に1つの市区町村の一部」を放送エリアとしているのがコミュニティFM放送です。

1992年に、地域の情報化を進めるためコミュニティFM放送が制度化されました。
僕はもともと無線少年で、ラジオが好きでね。

1994年に開局に向けて動き始めて、エフエムくらしきが開局したのは1996年。
53番目のコミュニティFM放送局でした。現在は330局以上あります。

緊急告知FMラジオこくっち FMくらしき倉敷曲局

コミュニティFM放送の平常時の役割は、住民の豊かな暮らしのお手伝い
街づくりですね。

常に場を提供し、街づくりの運動をしている人・地域の人たちが出演しています。

そして、災害時の役割のひとつが、緊急情報伝達
情報伝達のひとつのツールが「こくっち」です。

いざという時、ふだんから聞いているコミュニティ放送局であればあるほど、災害時の伝達ツールとしても、より密着したものになるんです。

総社支局
画像提供:エフエムくらしき

重要な役割ですね。

大久保

そうなんです。

「こくっち」以外にも、早期避難を呼びかけるステッカーを作成するなど、防災活動には力を入れています。

早期避難を呼びかけるステッカー
早期避難を呼びかけるステッカー

でも、コミュニティ放送は使命感を持って運営していますが、小規模な組織なんですね。

明日をも知れぬCMを頼りに、平常時も緊急時も、地域への使命を果たそうとしています。

小さな地域だと、広告を出せる企業が少なく、中継局を維持することも難しい。

でも、いざという時に役に立たなかったら、何にもなりません。
メンテナンスもしなければいけない。大変なんです。

倉敷市の防災ネットワークとFMくらしきの連携 (エフエムくらしきの資料より)

「こくっち」を開発したきっかけを教えてください。

大久保

2004年に、新潟で最大震度7の地震(新潟県中越地震)がありました。
当時わたしは、日本コミュニティ放送協会の副会長をしていたんです。

いくらラジオを持っていても、急に夜中に災害が来た場合、ラジオで一方的に情報を流すだけでは聞いてもらえず役に立ちません。

せっかく地域を良くしたいと理念を抱えて活動しているので、「緊急情報を強制的に住民に知らせるものがないといけないな」と思いました。

なので、「自動起動するラジオをつくろう」と決め、2年ほどかけて開発しました。

当時はスマートフォンのない時代で、被災後に住民が頼りにしたメディアが、ラジオだったんです。

だから我々は、社会的責任として災害時に役立つラジオをやろうと。
全国を見ても、地域単位の緊急告知ラジオはなかったわけです。

産経新聞
阪神大震災の避難所を写した、1995年2月1日産経新聞のコピー

災害時にラジオに励まされたという声は、よく聞きます。

大久保

1995年の阪神・淡路大震災時の避難所を撮った報道写真を見て、やっぱりラジオは大切だなぁと思いましたね。
当時廃れつつあったラジオメディアが、見直されました。

2011年の東日本大震災のときは、臨時で何局も地域放送局(臨時災害エフエム放送局)が誕生したんですよ。
東北は何日も停電していて、テレビが使えなかったから。

災害時のラジオは、手軽で有用性が高いんです。

真備中継局
2020年5月に新設された真備中継局 画像提供:エフエムくらしき

そして、コミュニティFM放送局は、ふだんからその街のことをよく知っています
ライフラインの復旧や物資の配布情報などは、自分がいる街のきめ細やかな情報が必要です。

その地域ならではの防災・災害情報をもっとも適切に伝えられるのが、コミュニティFM放送局だと考えています。

真備中継局で放送する様子
画像提供:エフエムくらしき

大久保さんにとってラジオとは?

大久保

ラジオは古いメディアだけれども、アフターコロナの時代は、地域ラジオとかラジオの声とか、イメージを伝えるものは重要なツールになると思いますね。

地域になくてはならない、ひとつのインフラ的なものになるんじゃないかと。

僕は昔から、「情報は地域を育てる栄養素である」と考えています。

人は毎日、シャワーのごとく情報を浴びます。
地域が花なら、情報は水のようなもの。
その土地に伸びる樹木とか花とか木とか、愛情をもって水をやるから育ちますよね。
良い情報が良い栄養素になるんです。

長年かけて地域を良い方向に持っていく、そのために放送局の見識が問われると思いますね。

情報を集めて加工して再送信するのが、放送局。
どう加工するのかどういう編集方針にするのかが、ものすごく大事です。

FMくらしき
画像提供:エフエムくらしき

市民のかたがたに「あの局があって良かった」と思われるには、相当力を入れないと。

より良い場を提供して、地域への役割を果たしたいです。

おわりに

緊急告知FMラジオこくっち
オフィスに設置されたこくっち

筆者が以前働いていた職場でも、「こくっち」が稼働していました。
毎月1日には、はっきりした大きな音で流れるテスト放送を、心強く感じていたものです。

シンプルな仕組みで安心して使える「こくっち」は、防災の一助となることでしょう。

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吉野なこ

吉野なこ

写真と旅を愛する、倉敷そだちのデザイナー。
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