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公務員の伝え方の技術 〜 公務員、著者、落語家として活躍する牧野浩樹さんの生き方

公務員の伝え方の技術 〜 公務員、著者、落語家として活躍する牧野浩樹さんの生き方

知っとこ / 2022.02.05

意図したことが伝えられずに、もどかしい思いをした経験は誰にでもあるでしょう。

特に他者との交渉を仕事にしている人にとっては、伝え方の良し悪しは業績に直結します。

『コミュ障だった僕を激変させた 公務員の「伝え方」の技術』の著者 牧野浩樹(まきの こうじ)さんは、小学生のころから友達も少なく、コミュニケーションには自信がない自称「コミュ障」でした。

しかし、倉敷市市役所の納税課に配属され、税金の滞納者との交渉に苦戦する日々のなかで伝え方の技術を研究

そして、年間1億7千万円もの税金徴収に成功します。

また牧野さんは市役所職員としてだけでなく、落語家としても活躍し、毎年寄(よせ)席を開いては地域の人たちを楽しませる活動も続けてきました。

公務員、著者、落語家の3つの顔を持つ牧野さんは、どのような想いで仕事に取り組んでいるのかを紹介します。

記載されている内容は、2022年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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牧野浩樹さんの経歴

コミュ障だった僕を激変させた 公務員の「伝え方」の技術

自称「コミュ障」の牧野浩樹さんは、倉敷市市役所に務める職員です。

小学生のころから、人とのコミュニケーションに苦手意識のあった牧野さんですが、2011年に倉敷市に入庁したのちに配属された部署は納税課でした。

税金滞納者へ納税交渉するという、コミュニケーションスキルが必要とされる部署。

人と関わることに苦手意識を持っていましたが、税金を徴収する業務を通じて伝え方の技術を鍛えていきます。

牧野さんの著書『コミュ障だった僕を激変させた 公務員の「伝え方」の技術』では、業務を通じて培ってきたノウハウが詰め込まれているのです。

牧野浩樹さんへインタビュー

牧野さん_アイキャッチ2

牧野さんの「コミュ障」のエピソード

コミュニケーションが苦手だと感じたエピソードを教えてください。

牧野(敬称略)

小学生のころから友達は多いほうではなく、コミュニケーションに自信はありませんでした。

「コミュ障」を痛感したのは、大学への進学を機に東京へ移り住んだとき。

大学で出会う人たちに岡山弁をからかわれることがあったのですが、岡山弁を売りにするような社交性はなかったため、馴染めませんでした。

岡山県出身者だけが集まる県人寮は居心地がよく、大学へ通うのが億劫(おっくう)になったこともあり、2回も留年してしまいます。

就職活動では面接で苦戦しますが、広告業界に興味があったこともありリクルートグループの事業会社に契約社員として入社できました。

キャッチコピーなどの原稿を書けると思っていたら、新規契約を取ってくるという営業の仕事。

吉祥寺にある美容室に飛び込み営業をするのですが、相手にしてくれなかったり、話を聞いてくれなかったりするのは当たり前。

最終的に、契約を1件も取れずに3か月で退社しました。

倉敷市に入庁されてからどのような業務に携わりましたか?

牧野

岡山県に戻り、2011年に倉敷市に入庁し、納税課に配属されました。

公務員は安定していて、ノルマもないので難しくないだろうと考えていましたが、実は滞納者との交渉にもコミュニケーションが重要だということに気づかされます。

入庁3年目のときに、岡山県内の市町村で徴収できないような高額で難しい案件を取り扱う岡山県滞納整理推進機構に出向しました。

そして、新しく赴任した先で、本にも登場する優秀な先輩職員に出会います。

その人から、コミュニケーションというのは実験だから、まずは試してノウハウにしていけばいいと助言をもらったのです。

これまで思い至らなかった考えだったので面白いと感じ、実務を通じて試行錯誤を重ねていくうちに、納税の交渉もうまく進むようになってきました。

牧野さん3

ノウハウを本にまとめようと思ったきっかけはあるのでしょうか?

牧野

納税課に携わったあとに、人事課の研修担当になります。

そこで、入庁年数の浅い職員がコミュニケーションで苦しんでいるのを頻繁(ひんぱん)に見かけるようになりました。

新卒で入社したリクルートの事業会社でつらい思いをしたこともあり、働き始めたばかりの職員がコミュニケーションで苦労する気持ちが痛いほど理解できたのです。

そこで、これまで蓄積してきたノウハウを、わかりやすく後輩たちに伝えるために本にまとめてみようと思い立ちました。

伝えたいことは本にすべて書ききれましたか?

牧野

実は、最初は「コミュ障」ではなく、ものすごい実績を上げた「伝説の税金Gメン」いう名目で本を出版しようとしていました。

自己啓発本って、立派な肩書きや実績のある人が書いている印象があったので、「コミュ障」には全く触れていない企画書を出版社に持っていったのです。

でも、編集者と一緒に私の経験を深掘りしていくと、コミュニケーションが苦手だった人が業務での学びを通じて成長し、実績を残した、という物語が見えてきました。

コミュニケーションに苦手意識を持っているというマイナスの状態から、普通にできるようになるという内容のほうが共感が得られるだろうということになり、「コミュ障」を前面に押し出した内容になったのです。

牧野さん2

落語家としての活動

落語を始めたきっかけを教えてください。

牧野

人を喜ばせたり、笑わせたりすることは、いつかやってみたいと思っていました。

そこで、思い立ったのが落語です。

ただ、知り合いに落語を教えてくれる人はいませんでしたので、インターネットで落語家を探すところから始めます。

すると、広島県呉市で活躍する「ジャンボ衣笠」という落語家を見つけました。

1回の寄席で1,000人ぐらいの観客がくるような落語家で、ジャンボ衣笠さんのカルチャースクールに通いながら落語の勉強を始めます。

今では年に1度寄席を開けるようになり、100人ぐらいの観客が集まるようになりました。

公務員、著者、落語家の複数の顔を持って変化はありました?

牧野

純粋に忙しくなりました。

日中は公務員として働いているので、午前9時から午後6時までの時間は、業務に集中しています。

他のことをやろうとしたら、業務外に時間を作らなければなりません

本の執筆のときは、午前4時に起床して書いていました。

落語の練習については、通勤中の車の中やお風呂でひたすら暗唱。

忙しいと感じますが、やりたいことをやっているので人生が楽しくなったことは間違いありません。

牧野さん1
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複数の活動に取り組む公務員として感じること

複数の活動は、互いに影響していますか?

牧野

たとえば落語では間の取り方を学ぶので、プレゼンテーションにも応用できます。

実際にプレゼンテーションが上達したと感じますし、市役所の業務でも研修のときに講師を任されることが増えました。

また公務員の役割は地域を支えることなので、私の寄席で地域のかたが楽しんでいるとやりがいを感じます。

公務員の仕事も落語家の活動も、地域を支えるという点では一貫性があるのです。

「伝え方の技術」についても公務員の業務を通じて学んだことを活かしたからこそ執筆できましたし、後輩職員の育成にも役立ててきました。

本業である公務員の仕事、執筆、落語はお互いに良い影響を与えています。

公務員の終身雇用も終わると書かれていますが、実際に感じる場面はありますか?

牧野

経済誌やビジネス書籍などに書かれているようなAIが単純な労働を奪うようなことを、ひしひしと感じているわけではありません。

公務員は安定しているように見えますが、実はそんなことはありません。

携わっている業務は専門的で、他の業界へのつぶしは効かないでしょう。

また、事故などを起こしてしまって仕事が続けられなくなったときは、路頭に迷ってしまう可能性はあります

公務員でもスキルを身につけていなければ、危うい立場だと感じました。

しかし、伝え方のスキルをノウハウとして持っていて、本にまとめた経験があれば、講師としてノウハウを多くの人に伝えるような仕事もできます。

なにより、さまざまな活動を行えるようになれば、人とのつながりも増え、人生が豊かになっていくでしょう

牧野さん4

3つの顔を持つ公務員 牧野浩樹さんの話を聞いて

筆者も、日々の生活や仕事のなかで、他者へ意見を伝えなければならない場面は多くありました。

うまく伝えられずにもどかしい気持ちになることもありましたが、著書「コミュ障だった僕を激変させた 公務員の「伝え方」の技術」を読むと、伝え方に問題があったのだと気づかされます。

つまずいた経験は過ぎてしまえば、何事もなかったかのように生活を送れてしまうので、多くの人は問題の解決方法を体系的に整理しないでしょう。

牧野さんのように、コミュニケーションに対するコンプレックスがあったからこそ、つまずいた経験をていねいに振り返り、ノウハウとして蓄積できたのだと感じます。

そして、コミュニケーションに苦労する後輩たちへ伝えたいという気持ちも、過去の苦労した経験が影響していました。

苦手なこと、辛かったことを強みに変えた牧野さんの行動を見習いたいと思います。

うまくいかない原因を追及し、自らの行動を変えていける人が成功するのだと改めて感じました。

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ぱずう(後藤寛人)

ぱずう(後藤寛人)

87年生まれの埼玉育ち。倉敷に転勤でやってきて6年目。メーカーの研究員として働きつつ、週末はゴミ拾いボランティア団体の代表として活動しています。ひとりも知り合いもいなかった倉敷の街。ゴミ拾いを通じてたくさんの出会いがあり、倉敷の魅力を教えてもらいました。余所者から見える倉敷の景色を伝えていきたいです!

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