カモ井加工紙株式会社が作る、文具・雑貨用マスキングテープの「mt(エムティ)」は、日本全国、そして海外にもファンがいるほどの人気ブランドです。
バラエティに富んだデザインは1,000種類を超え、ファンを飽きさせることがありません。倉敷のお土産としても人気のあるアイテムです。
そして、mtに触れられるイベントは日本各地で開催されており、現在もファンづくりに取り組み続けています。
mtとお客さんをつなぐ仕事をおこなうのが、カモ井加工紙の「コンシューマー部」という部署です。いわゆる営業の部署ですが、その仕事内容は多岐に渡ります。
コンシューマー部で働く入社2年目(※2025年5月現在)の若手社員、時實薫乃(ときざね ゆきの)さんに、mtとカモ井加工紙の魅力について話を聞きました。
記載されている内容は、2025年5月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
カモ井加工紙株式会社について

カモ井加工紙株式会社は、工業用粘着テープや文具・雑貨用の粘着テープ、捕虫製品の製造・販売などをおこなっている倉敷の老舗企業です。
大正中期ごろには、海外から輸入されたハエトリ紙が国内に出回っていましたが、高価だったため一般家庭には普及していませんでした。そこで、外国製品に負けない品質と誰にでも買える安い価格のハエ取り紙をと生み出されたのが「カモ井のハイトリ紙」です。
1923年、鴨井利郎(かもい としろう)氏により、前身となる「カモ井のハイトリ紙製造所」が創業。カモ井のハイトリ紙は、販売後すぐに人気商品となり、アメリカやアジア諸地域にも輸出されていきました。その後も次々と新しい捕虫製品を生み出していきます。

時代が進んで日本の衛生環境が良くなると、ハエ取り紙の需要は減少していきました。そこで、粘着加工技術を活かした新事業としてスタートしたのが、粘着テープの製造です。ハイトリ紙で培ってきた粘着の技術が武器となり、塗装用、建築用、シーリング用など、さまざまな粘着テープを製造し、現場の職人を支える存在となりました。

雑貨用のマスキングテープ「mt」が販売されたのは2008年のこと。
とある女性3人組から、カモ井加工紙に「マスキングテープの工場見学がしたい」と連絡がありました。その3人組の「こんなテープがあったらいいな」というアイデアをキャッチし、実際に形にして生まれたのが現在のmtです。
mtは2008年にグッドデザイン賞を受賞し、今では全国にファンがいるカモ井加工紙の大ヒット商品となりました。

それぞれの時代で、お客さんの声を取り入れて製造してきたカモ井加工紙。歴史から企業の柔軟性と向上心が見えてきます。
大人気商品「mt」の営業を担当する時實薫乃(ときざね ゆきの)さん

mt事業を主とするコンシューマー部に勤めている時實薫乃(ときざね ゆきの)さん。2001年生まれ、兵庫県出身です。
時實さんは島根県の大学に進学し、就職活動時に地元・兵庫県にUターンすることも検討しましたが、最終的に子どもの頃から大好きだったマスキングテープを扱うカモ井加工紙株式会社に入社しました。
「就職を機に移住して、不安はありませんでしたか?」と尋ねると、「大学進学の時から地元を離れていたので、知らない環境に飛び込むのはそこまで心配していませんでした。倉敷は、自然も街もあって、人の多さがちょうど良い地域なので、暮らしやすくて好きです!」と答えてくれました。
コンシューマー部の仕事内容とは
時實さんが所属しているコンシューマー部の仕事は、大きく二つあります。
一つ目は、mtを取り扱う販売店や代理店におこなう営業活動。お店に足を運び、人気商品のヒアリングや、新商品の紹介などをおこなうのがおもな内容です。
mtは、ロフトやハンズなどの全国チェーンの雑貨店を始め、岡山県では大型文具専門店のうさぎやなどで販売されています。時實さんの担当エリアは岡山、広島、鳥取、島根、山口……と中国地方全域。日本全国でmtが愛されていることがわかります。

もうひとつは、自社が主催するイベントの企画運営です。mtのイベントはほぼ毎月、日本各地で開催されています。
倉敷市内だけでも、年に一度開催される一大イベント「mt factory tour」をはじめ、倉敷アイビースクエアやJR倉敷駅とコラボレーションしたイベントなどもあり、ファンを楽しませています。特に「mt factory tour」は、開催年によって来場者が10,000人を超えることもあるほど人気です。

イベント限定デザインのmtを販売したり、mtで大きなちぎり絵を作るワークショップをおこなったりなど、ファンが喜ぶような仕掛けを作るのも、時實さんが所属するコンシューマー部の仕事です。
入社2年目となる時實さんも、イベントの企画をメインで担当することがあり、「早い段階で仕事を任せてくださる機会も増えてきて、やりがいを感じています」と話します。
時實さんがカモ井加工紙に入社するまで
子どもの頃からマスキングテープが大好きだったという時實さん。

小学3年生の時に初めて手に取ったマスキングテープは、くすんだ赤色と青色の2色がセットになったストライプ柄でした。あっという間にお気に入りの文具となり、ペンにぐるぐると貼りつけたり、夏休みの自由研究に使ったりと、なんでもマスキングテープを貼っていたそうです。
マスキングテープの魅力にどんどん引き込まれていき、子どもの頃からさまざまなメーカーのものを集め続けた結果、大学生の時点で家にあったマスキングテープはなんと100個以上にも増えていました。
時實さん曰く、熱狂的なファンのかたからすると、まだ少ないくらいなのだとか。マスキングテープがどれほどファンを魅了しているのかがわかります。

2023年の夏から就職活動が始まり、時實さんは「地元の兵庫に戻って働きたい」という想いから、最初は神戸市の公務員を目指していました。
残念ながら公務員の道は途中で終わってしまいましたが、そこから「せっかく働くなら、自分が楽しいと思える仕事、好きなものに関われる仕事がしたい!」と考えた時實さん。その時に真っ先に思い浮かんだものが、大好きなマスキングテープでした。
企業選びでは、マスキングテープや文房具を取り扱うメーカーや商社を中心に探し、たどり着いたのがカモ井加工紙の現在の仕事です。

時實さんは、面接時に社員が仕事の話を楽しそうに語る姿が印象的だったと話します。「ここなら皆さんと同じように自分も楽しく働けるかも」と感じ、内定のあった3社のなかからカモ井加工紙への就職を決めました。
入社後、なんと子どもの頃に初めて買ったマスキングテープがカモ井加工紙のものだったと知り、衝撃を受けたそうです。
営業だけでなく、mtのデザインを考えることも
仕事が多岐に渡るコンシューマー部。イベント限定で販売されるmtのデザインを考えることもあります。

時實さんのアイデアから生まれたmtもいくつかありました。
筆者が特に気になった切手デザインのmtは、数多くの文具が集う「紙博 in 岡山」で販売されたものでした。岡山の特産品がレトロな質感で印刷されており、「文房具イベントらしさ」と「岡山らしさ」がマッチしているデザインです。

鮮やかな花柄のmtは、デザイナーに「1本でコラージュしているように見えるもの」とリクエストして作られたもの。

さまざまな柄のマスキングテープを組み合わせる貼りかたがあり、楽しみかたをさらに手軽にできるものが、コラージュ風のデザインでした。
時實さんは「自分自身もmtのファンなので、ファン目線で欲しいデザインを考えています」と話します。
時實さんの考えるmtの最大の魅力は、1,000種類を超える柄のバリエーションの豊富さだそうです。また、絶妙な粘着力と耐久性も、mtの魅力のひとつ。長年、ハエトリ紙を製造してきたカモ井加工紙ならではの技術が生み出しています。
時實さんが考えるカモ井加工紙の魅力
時實さんが思う一番の魅力は、新しいものを生み出すことに非常に前向きな会社であること。
mt自体も、元をたどればお客さんの要望から生まれたものでした。新たな取り組みに対して抵抗がなく、むしろ柔軟に新しいものを作っていく雰囲気があると話します。

意見を取り入れる柔軟性は、お客さんだけでなく、社員に対しても発揮されています。入社2年目の時實さんも、打ち合わせなどで自分の意見を提案しやすいそうです。
また、コンシューマー部に限らず、話しやすい社員が多いところもカモ井加工紙の魅力のひとつ。
イベントの仕事では、部署を越えて一緒に仕事をすることがあります。「違う部署のかたでも、困ったことがあればすぐ助けてくださいますし、わからないことがあればていねいに教えてくれます。優しい人が多いなと感じています」と話してくれました。
なお、大阪支店や東京支店の社員とは、オンラインよりもイベントで直接会う機会が多いそうです。
カモ井加工紙に入社して、2025年で入社2年目を迎えた時實さん。大好きなmtに囲まれて働く楽しさについて話を聞きました。
カモ井加工紙株式会社のデータ

団体名 | カモ井加工紙株式会社 |
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業種 | 工業用・捕虫用製品/文具・雑貨用マスキングテープの製造販売 |
代表者名 | 鴨井 尚志 |
設立年 | 1923年 |
住所 | 〒710-0805 岡山県倉敷市片島町236 |
電話番号 | 086-465-5811 |
営業時間 | |
休業日 | |
ホームページ | カモ井加工紙株式会社 |