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笠岡らーめん屋台の店主・牧野 靖宏さんにインタビュー
笠岡らーめん屋台の店主・牧野 靖宏(まきの やすひろ)さんに、店を開いた経緯やラーメンへのこだわり、今後の抱負などの話を聞きました。
きっかけは笠岡商工会議所の屋台企画
牧野
2005年に笠岡商工会議所が「笠岡らーめん屋台プロジェクト」という企画を始めて、店長を募集していました。
それに応募し、当選したのがきっかけです。
JR笠岡駅前に、実際に屋台を設置して、販売するというものでした。
私はラーメン愛好家というわけではなかったのですが、おもしろそうだったので応募してみたんですよ。
屋台プロジェクトは半年間の企画だったのですが、ラーメンをつくり始めてみたらもっと追求したくなりまして、2006年にラーメン店を開業しました。
このときは、屋台じゃなくて固定店舗だったんです。
実は、私はラーメンより先にコーヒーに興味を持って、コーヒーにこだわりがあったんですよ。
そこで、ラーメンが食べられる喫茶店のような形式にしていました。
でも店を実際に運営してみると、だんだん自分は屋台形式のほうが向いていると思ってきて……。
なので思い切ってお店を閉め、ふたたび屋台を始めました。
それ以来、イベント出店をメインにラーメンの屋台をしています。
ちなみに、ラーメンと並行してコーヒーの屋台もしています。
最近はラーメンのほうを出店することが多くなってしまいましたが、平成30年7月豪雨災害のときは、コーヒーの屋台を真備町などの被災地に出店して協力しましたよ。
固定店舗より屋台形式のほうが「ライブ感」があって楽しい
牧野
屋台での販売は「ライブ感」があるんですよね。
店舗よりもお客さんとの距離が近くて、やり取りが楽しいんです。
客商売の根本が味わえるというか、原点のようなものを感じられるのがいいなぁと。
店舗と屋台の両方経験してみて、やっぱり自分は屋台が性に合っていると感じました。
あと、実は私の本業はラーメン屋ではなく、機械系のエンジニアなんです。
固定店舗をやっていたとき、平日は店に出られませんので、スタッフに任せていました。
だから、余計にお客さんと接する機会が減ってしまいますよね。
私の屋台はイベント出店がメインですから、イベントがあるときのみ営業するので、私がお店に立つことができます。
長年にわたって定期的に出店しているイベントでは、ありがたいことにだんだん常連のお客さんも増えてきました。
常連さんには、必ずあいさつしているのですが、いろいろ会話が広がることも多いんです。
こういったやりとりができるのはうれしいですね。
また朝市などのイベントは、出店者みんなで盛り上げようといった雰囲気なのが好きです。
出店者同士でもコミュニケーションを積極的に取っていますが、これもイベント出店の魅力だと感じていて、楽しいですよ。
自分の理想の笠岡ラーメンを追求してきた
牧野
一番の特徴はネギです!
京都から取り寄せた九条ネギを輪切りにして出しています。
ネギの大盛りの希望にも対応していますよ。
私が過去に食べたラーメンで、おいしいと思ったラーメンに共通していたのが「ネギがおいしい」ということ。
だから、ネギがおいしいラーメンが理想のラーメンの姿なんです。
私がおいしいと思うネギが、京都の九条ネギだったので、送料がかかっても使っています。
送料を含めれば、うちのラーメンの材料で一番お金をかけているのはネギといってもいいくらい、ネギにはこだわっています!
ふたつ目の特徴はスープです。
一般的な笠岡ラーメンと同じく、当店のラーメンも鶏ガラダシの醤油味のスープ。
ただ、私の店は鶏ガラダシだけではないんです。
鶏ガラに和風ダシをブレンドしたスープなんですよ。
これは、ほかの笠岡ラーメンにはないポイントだと思います。
ネギと同じく、過去に東京で食べておいしかった京都風ラーメンが和風ダシだったのを参考にしています。
現在の笠岡らーめん屋台の味は、自分の好きな味・理想の味を実現してきたイメージですね。
ほかの部分もいろいろ試行錯誤してきましたよ。
もともとラーメンにこだわりはなかったが……
牧野
実はラーメンが好きになったのは、笠岡商工会議所の屋台プロジェクトに参加してからなんですよ(笑)
もちろんラーメンはときどき食べていましたが、特別な存在ではありませんでした。
だから、ラーメンにこだわりがなかったんですよ。
屋台プロジェクトに応募したのも、何となく楽しそうだったからで、そんなに深く考えてなかったですね。
しかし、実際にラーメンをつくり始めたら、どんどんのめり込んでしまいまして……。
私はラーメンよりも前にコーヒーが好きでした。
そのコーヒーも、エンジニアの仕事としてコーヒーミル(コーヒー豆を粉砕する機械)をつくったのがきっかけ。
コーヒーミルで実際にコーヒー豆をひいて飲んでみたら、どんどんコーヒーにはまったんです。
ラーメンもそれと同じ感じですね。
楽しいと感じたら、とことこん楽しむのが私の性分なんですよ(笑)
師匠がいないことが自分の強み
牧野
かなり試行錯誤してきました。
始めた当初と比べると、かなりラーメンも変わっています。
でも、いろいろ試行錯誤していくのが好きなので、楽しみながらできましたよ。
商工会議所の屋台プロジェクトを始めたとき、ほかのメンバーはラーメン店の人に教えてもらったりしていました。
しかし、私は自分一人でいろいろ研究していったんです。
今にして思えば、このときの経験が大きかったと思っています。
というのも、師匠を持っていると、どうしても師匠のやり方の影響を受けてしまいますよね。
誰の影響を受けていないからこそ、現在の自分の味が生まれたのではないでしょうか。
ただ「笠岡ラーメン」という枠組みの中で、自分の理想の味を追求していくようにしています。
私は笠岡で生まれ育ったので、笠岡に恩返しをしたいと考えています。
だから笠岡の名物ラーメンの味は、守っていきたいんです。
笠岡らーめん屋台のラーメンは、私なりの解釈をした笠岡ラーメンと考えていただければ幸いですね。
まだまだ楽しいことに挑戦したい。次は本業のエンジニアとして新製品を
牧野
笠岡ラーメンづくりを始めて15年がたちます。
自分の理想の味を追求して、改良を続けてきました。
だいぶ自分の理想の形に近づいてきたのではないかと思っています。
もちろん、さらに変わっていく可能性もありますが。
ただ、コーヒー・ラーメンと長く研究を続けてきました。
どちらもある程度理想に近づいたので、今度は本業のエンジニアで何かやってみたいと考えています。
実は今、新製品をつくるべく試行錯誤しているところ。
エンジニアとして新たな製品を世に出したいんです!
よく、平日はエンジニア休日は屋台をやっていて、休まなくていいのかと心配されるんです。
でも、エンジニアも屋台も楽しいことなので苦ではないんです。
屋台をやっているときはエンジニアの気分転換に、エンジニアをしているときは屋台の気分転換になっている感じですね。
自分は、ずっと楽しいことをやっていきたいという性格。
だからラーメンやコーヒーのほかにも、もっと楽しいことを見つけて挑戦してきたいんです。
おわりに
屋台形式にこだわり、自分の理想の味を追求してきた牧野さんの笠岡ラーメン。
「これぞ笠岡ラーメン」と感じながらも「ほかの店とはどこか違うおいしさがある」と感じる一杯です。
笠岡ラーメンの正統派の味を守りながら、自分なりのアレンジを加えた笠岡らーめん屋台を一度食べてみてはいかがでしょうか。
倉敷では、毎月第3日曜日に開催される「倉敷三斎市」に、笠岡らーめん屋台が定期出店しています。
笠岡らーめん屋台のデータ
名前 | 笠岡らーめん屋台 |
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住所 | 倉敷三斎市などのイベントに出店 |
電話番号 | |
支払い方法 |
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