石油精製、鉄鋼、自動車などの製造所が建ち並ぶ水島コンビナートは、日本の工業化と高度経済成長に貢献してきました。
水島コンビナートの発展とともに人々が集まり、水島の街中も賑わいを見せていましたが、近年では高齢化と人口減少が進み、老朽化した建物やシャッター商店街などの寂しい光景が見られます。
臨鉄ガーデンは、かつての賑わいを失いつつある水島を再生させるために発足したマルシェイベント。
水島や岡山県内で活躍する飲食店や事業者が、水島の新たな魅力を生み出そうと水島臨海鉄道の高架下でマルシェイベントを開催してきました。
臨鉄ガーデンの実行委員長を務める土屋 遼介(つちや りょうすけ)さんは、複数の事業を手掛けながら水島の再生にも取り組んでいます。
「なぜ高架下なのか?」、「なぜ街づくりに取り組むのか?」など臨鉄ガーデンへの疑問を土屋さんに聞いてきました。
インタビューを通じて臨鉄ガーデンの魅力を紹介します。
記載されている内容は、2022年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
臨鉄ガーデンのデータ
名前 | 臨鉄ガーデン |
---|---|
期日 | 2022年5月27日(金) 午後4時~午後8時まで 2022年7月22日(金) 午後4時~午後9時まで 2022年9月16日(金) 午後4時~午後9時まで 2022年11月4日(金)午後4時~午後8時まで |
場所 | 岡山県倉敷市水島東栄町12 |
参加費用(税込) | |
ホームページ | 臨鉄ガーデン |
臨鉄ガーデンとは?

臨鉄ガーデンの概要
臨鉄ガーデンは、水島臨海鉄道の栄駅周辺の高架下で開催されているマルシェイベントです。
2017年9月に最初の臨鉄ガーデンが行なわれ、2022年3月までに18回開催されてきました。
日没前から夜にかけての夕方に行なわれるナイトマルシェイベント。
会場となる水島臨海鉄道の栄駅周辺の高架下と水島栄町第一公園には、水島や岡山県内で活躍する飲食店や事業者のブースが並びます。
2022年からは、栄駅周辺の道路を歩行者天国にすることが決まり、高架下の会場と公園の会場の往来がしやすくなりました。
開催時間や会場の詳しい情報については、臨鉄ガーデン2022のウェブサイトを確認しましょう。
臨鉄ガーデンのコンセプト

高齢化と人口の減少により活気を失いつつある水島地域の再生を目指し、街に人が集まるきっかけと作ろうと水島で活動する人たちが臨鉄ガーデンを始めました。
さまざまな取り組みを試行錯誤しながら水島の可能性を探究する社会実験的な役割も果たしています。
「水島でもこんなおしゃれなことができるんだ」という水島の新たな魅力を発信するためのマルシェイベントです。
臨鉄ガーデン実行委員会代表 土屋遼介さん

臨鉄ガーデン実行委員会代表の土屋遼介さんは臨鉄ガーデンを取り仕切るだけでなく、ウェブデザイン、クラフトコーラの販売事業を手掛けています。
倉敷市内にある大学を卒業した後に、フリーランスのウェブデザイナーとして仕事をしながら、水島の地域再生にも取り組んできました。
2021年からは、新たな事業として「コーラが苦手な男が逆転の発想で作ったコーラ」というコンセプトのもと、クラフトコーラの製造、販売に着手。
複数の仕事を通じて岡山市、倉敷市のまちづくりに貢献しています。
土屋遼介さんへインタビュー

臨鉄ガーデンの始まり
なぜ高架下なのか?
土屋(敬称略)
水島の街は、人口が減少し少子高齢化も進んでいて、地域の存続が危ういといわれています。
賑わいを失った街をどうにかしたいという想いから、最初に発案したのは公園の活用でした。
地図で見ると理解しやすいのですが、水島には公園が至る所にあり、独特な区画になっています。
街の人たちが集うような場所として公園を活用することで、街が賑わうだろうとマルシェイベントを思い立ちました。
しかし、公園を利用したいという旨を行政に伝えたところ、前例のないイベントに使うのは難しいと断られてしまいます。
どうにかマルシェイベントを開催できないかと模索しているときに、力を貸してくれたのが水島臨海鉄道さんです。
まちの空いている空間を活用しようと高架下の利用できないかを相談。
2017年9月に栄駅周辺の高架橋下で、最初の臨鉄ガーデンが開催しました。

他にどんな取り組みがあったのでしょうか?
土屋
水島の活性化のために取り組んだ他の取り組みは、空き家の活用。
水島にある空き家を見に行って、物件の活用方法を想像しながら議論しました。
他にも「水島のサルベージ会議」を立ち上げ、全国的に活躍するまちづくりの有識者を招待して、水島を盛り上げる方法を話し合いました。
ただ、倉敷市の他の地域と肩を並べられるような水島らしいコンテンツがなかなか見つかりません。
魅力的なコンテンツがないなら、自分たちで作る必要があるということになり、マルシェイベントに落ち着きました。

臨鉄ガーデンを始めた当時のようすを教えてください。
土屋
最初の臨鉄ガーデンの出店者は3店舗で、来場者は50人。
それでも、まずは続けていこうと出店者を集めるために動き続けました。
それまでに出会ってきた人たちに片っ端から声をかけ、「今は小規模なマルシェだけど、必ず大きく育てる」という意気込みを伝え続けます。
回数を重ねるに連れて、出店者も来場者も増加。
3回目の来場者は約100人、4回目は約500人となり、順調に人数が増えていったことから臨鉄ガーデンで水島を盛り上げていけると確信しました。
なぜ、夜なのか?
土屋
臨鉄ガーデンを始める前に水島の街を歩いたとき、居酒屋やバーなど、夜に営業しているお店をたくさん見かけました。
おそらく、コンビナートの発展とともに成長した街という背景があるからでしょう。
街を活気づけるためには、人が街を歩くようにすることが大切だと聞いていたので、臨鉄ガーデンのコンセプトを0次会に使えるマルシェに決めました。
臨鉄ガーデンをきっかけに水島に足を運んでもらい、その後、夜の水島の街に繰り出すようなイベントを目指しました。
しかし、思いのほか人気が出すぎてしまい、臨鉄ガーデンで満足をして帰ってしまうようになってしまいました。
うれしい誤算ですが、まだまだ戦略が必要でしたね。
2022年の臨鉄ガーデン
なぜ歩行者天国を実施したのでしょうか?
土屋
もともとは小規模なマルシェとして発足しましたが、回数を重ねるにつれて高架下の会場に人があふれるようになりました。
栄駅近くの公園も会場として利用するようになってからは、道路を横断する人が増えてきたんです。
自動車の通行量もそれなりにある道路だったため、来場者の安全を考えて歩行者天国にしたいと考えていました。
数年間マルシェイベントを続けてきたことで行政からの信頼も得られ、2022年から歩行者天国を実現したのです。

2022年の臨鉄ガーデンの目標は?
土屋
目の前の課題は、3つあると思っています。
1つ目の課題は、歩行者天国の活用方法です。
2022年3月の臨鉄ガーデンでは、歩行者天国にイスとテーブルを並べて、料理や音楽を楽しめる空間を作りました。
演出の方法は試行錯誤の段階ですが、回数を重ねていくうちに、心地よい空間がどのようなものかが見えてくると思います。
2022年の1年間を通じて、水島をもっと魅力的に感じられる演出を明確にしていきたいです。

2つ目は、公園の活用方法です。
高架下がメイン会場でしたが、公園の会場にも人が集まるようになってきました。
子どもたちが走り回って運動するワークショップなど、公園を生かしたイベントも実施しています。
一方で、夜のマルシェイベントのため暗がりが多かったり、音楽もなく寂しい雰囲気があったり、公園の演出には運営の手が届かないこともありました。
公園も人が憩う空間として演出することが目標です。

3つ目は、一緒に運営してくれる仲間集めです。
2017年に、臨鉄ガーデンはゼロの状態からスタートして、規模の大きなマルシェイベントになりました。
臨鉄ガーデンの演出にさらに力を入れるためには、想いを持って一緒に盛り上げてくれる仲間が必要だと感じています。
そして、ただ一緒に活動してくれる人には、臨鉄ガーデンで培ってきたノウハウをおしみなく伝えたいです。
水島に思い入れのある人だけでなく、臨鉄ガーデンで得た知識を別の地域に還元したいという人とも一緒に活動できればと思っています。

臨鉄ガーデンの代表の想い
水島に関わったきっかけは?
土屋
倉敷市内の大学に通っていたこともあり、倉敷市を中心にフリーランスのウェブデザイナーとして活動してきました。
倉敷について詳しくなりたいと思っていたところ、縁があって声をかけてもらった水島の地域活性化についての勉強会に参加したんです。
勉強会では水島エリアの高齢化や商店街の衰退などの課題を知りましたが、水島の街に足を運んでみるとおしゃれなバーや美味しい居酒屋など、魅力的なお店があることにも気がつきました。
賑わいを失いつつある街のなかで、実は活躍している人たちがいるという水島の隠れた魅力を発信したいと思ったのがきっかけです。

なぜ続けているのですか?
土屋
まちづくりで活躍している人に憧れは感じていたものの、自分とは程遠く、別の世界の存在だと思っていました。
その人がすごいから注目されるような事業ができるのだと、無意識に自分に対しては諦めを感じていたんです。
しかし、最初に参加した勉強会のとき、地域再生の仕事は本業とは別に取り組んでもいいということを知りました。
他県や海外の事例を聞いてみると、地域再生の事業を本業としている人は少なく、公務員や個人で商店を営んでいる人が街のために活動しています。
本業を犠牲にせずに、まずは少しでいいから始めてみようと考えを切り変えました。
小さく始めて、積み重ねたからこそ、たくさんの人に足を運んでもらえるイベントにまで成長させられたのだと思います。
複数の仕事を通じて感じることは?
土屋
夢は複数あっていいし、仕事を1つに絞る必要はないと思います。
「この学部に入ったから、こうしなくてはいけない」、「この職業だからこうしなくてはいけない」というふうに型にはめる必要はなくて、好きなこと、やりたいことを同時進行でやればいいんです。
ウェブデザイナー、臨鉄ガーデンの代表も、ツチヤコーラの事業も、どれか1つに絞っていたら上手くいかなかったでしょう。
同時進行だからこそ、小さく初めて大きく育てることができたと思っています。
小さな可能性をつぶさないように、型にはまらずに、自由にやりたいことに挑戦することが大切だと実感しました。

まちづくりに挑戦する理由を聞いて
受け身でいると退屈してしまう街でも、積極的に関わろうと行動すると街の素敵なところが見えてくるのかもしれません。
水島に隠れていた魅力を、土屋さんは見つけました。
そして大切に育てたからこそ、魅力が輝きだし、たくさんの人が引き寄せられてきたのでしょう。
高架下から始まったマルシェイベントが、少しずつ大きくなっていく話は、「小さく初めて大きく育てる」という土屋さんの言葉を体現したもののように感じます。
臨鉄ガーデンの歴史を聞いて、街の育て方を教えてもらっているような気持ちになりました。

臨鉄ガーデンのデータ
名前 | 臨鉄ガーデン |
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期日 | 2022年5月27日(金) 午後4時~午後8時まで 2022年7月22日(金) 午後4時~午後9時まで 2022年9月16日(金) 午後4時~午後9時まで 2022年11月4日(金)午後4時~午後8時まで |
場所 | 岡山県倉敷市水島東栄町12 |
参加費用(税込) | |
ホームページ | 臨鉄ガーデン |