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マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」~ 現代と明治時代の水害を通じて語り継ぐ被災の記憶

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」~ 現代と明治時代の水害を通じて語り継ぐ被災の記憶

知っとこ / 2023.03.06

平成30年7月豪雨では、西日本一帯に降り続いた大雨による河川の氾濫で、倉敷市真備町は甚大な被害を受けました。

被災から約5年が経過した真備町からは、山のように積み上がった瓦礫は消え去り、自動車が行き交う道路や住宅が建ち並ぶようすに通常の生活が戻りつつあることが伺えます。

平時の姿を取り戻した真備町の光景は喜ばしくあるものの、水害により失われたかけがえのないもの、そして復興に向けて地域社会が支え合った記憶は忘れてはなりません。

災害が身近なものとして繰り返される日本において、被災の記憶を風化させないことは、人の命を守ることにもつながるでしょう。

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」は、平成30年7月豪雨から約5年が経過し、不確かになり始めた災害の記憶を私たちの心に留めておくために企画された市民ミュージカルです。

2023年3月19日、倉敷市真備町にあるマービーふれあいセンターで上演されます。

総合演出は、岡山県を中心に市民ミュージカルや地元劇団の演出家として活動する朝松煌(あさまつ きら)さん。

ヒロインは岡山市在住で、多数の市民ミュージカルや映画に出演経験のある小学6年生、與曽井美希(よそい みき)さんです。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」を紹介するとともに、ヒロイン與曽井美希さんへのインタビューを通じて復興ミュージカルにかける想いも伝えます。

記載されている内容は、2023年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」とは?

水害の記憶を残すために企画されたミュージカルとは、どのようなものなのでしょうか?

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の概要を紹介します。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の概要

写真提供 : マービー復興ミュージカル真備実行委員会
写真提供 : マービー復興ミュージカル真備実行委員会

2023年3月19日、倉敷市真備町にあるマービーふれあいセンターで、世代を超えて被災の記憶を語り継ぐことをテーマにしたミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」が上演されます。

平成30年7月豪雨では、西日本を中心に降り続いた記録的な大雨によって発生した河川の決壊により、倉敷市真備町は甚大な被害を受けました。

被災から約5年が経過し、真備町の街並みからは平穏を取り戻しつつあることが感じ取れますが、災害から地域を守るためには、被災した記憶を絶やさないことも重要です。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」は、災害の記憶が薄れないように、後世に語り継いでいくための物語を上演します。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の会場、マービーふれあいセンター
「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の会場、マービーふれあいセンター

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」のあらすじ

主人公は、現代の倉敷市で住宅メーカーに勤める研二郎(けんじろう)。

ある日、姪のさくらの新居予定地である真備へ赴くと、研二郎は不思議な光に包まれます。

気がつくと、海で漂流していて、そこは明治26年に発生した洪水直後の倉敷の沖合でした

研二郎の意識は、明治時代を生きる治郎吉のなかにあり、明治時代に発生した真備での水害を追体験するのです。

そして、タイムスリップした先で出会った少女、吉田知世(よしだ ともよ)とともに、さまざまな人とかかわり合いながら、当時の災害を乗り越えていきます。

現代の災害、明治時代の災害。

2つの災害を経験する研二郎の物語を通じて、災害の記憶を後世に語り継ぎます。

視聴覚障がい者、高年齢者を対象に、音声ガイダンス鑑賞サポートを無料で実施しています。

チケットの購入方法

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の観覧チケットの料金は大人1,000円小学生以下500円です。

マービーふれあいセンターの窓口アルスくらしきチケットセンターで直接購入できます。

また、下記の電話番号にてチケットの電話予約(当日会場にて取り置き)を受け付けています。

電話予約は、2023年3月16日午後5時までなので、余裕をもって連絡するようにしましょう。

担当者連絡先
マービー復興ミュージカル真備実行委員 大熊090-3639-0993
マービー復興ミュージカル真備実行委員 藤原090-7373-3005

さらに、オンライン配信も実施します。こちらのリンクからチケットが購入できます。

車椅子ユーザーのかたはチケット予約するときに、車椅子での観覧と連絡をお願いします。また、当日はマービーふれあいセンター正面受付を訪ねてください。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の製作者

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の制作を手がけているのは、マービー復興ミュージカル真備実行委員会です。

どのような人たちが被災の記憶を語り継ぐミュージカルを製作しているのかを紹介します。

総合演出 朝松煌さん

写真提供 : 朝松煌さん
写真提供 : 朝松煌さん

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の総合演出を務めるのは、朝松煌さん。

岡山県瀬戸内市出身の朝松さんは、20歳の頃に地元の劇団に参加したことがきっかけで演劇の世界へ踏み出します。

その後、東京や大阪などで演劇の手法を勉強したのちに、岡山県を中心に市民ミュージカルや地元劇団の演出家として活動してきました。

2010年からは倉敷のオペラ団体の演出を担当し、指導者として活動。

2022年7月には、児島地域を盛り上げるために結成された団体「児島ジーンズミュージカル」による「古のShooting Star」の演出を担当しています。

朝松さんによると、マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」では、水害を直接的に表現するのではなく、水害に直面した主人公 研二郎の人間的な成長を描いたそうです。

真備町には被災の記憶が強く残っている人たちもいて、直接的な表現を受け入れ難い人もいます。

現代と明治時代に発生した2つの水害を知る研二郎と周囲の人たちの物語を通して、心に訴えるような演出にしていると話してくれました。

ヒロイン役 與曽井美希さん

與曽井さん2

ヒロイン 吉田知世を演じるのは、小学6年生の與曽井美希さん。

これまで、岡山県を舞台とする地元ミュージカルや映画で活躍してきました。

初めての出演作品は、2019年に公開された岡山県広報動画「ぽつり岡山」。

2021年に公開した映画「石だん」では、岡山県倉敷市の児島八十八ヶ所をお遍路する主人公の女子高校生の幼少期を演じます。

さらに2022年には、「石だん」と同様に児島八十八ヶ所を舞台とした作品「ちゃりへん♪」の主人公の妹役として出演しました。

また、俳優としてだけでなく、学業においても秀でた力を発揮しており、小学1年生で参加した岡山県知事杯児童英語表現発表大会では準優勝

小学5年生で参加した第27回ノートルダム杯英語スピーチコンテストでは優秀賞を果たしています。

3歳で英検5級、5歳で3級、6歳で準2級、小学6年生の12歳時点で英検2級を保持。

他にも、手話に興味を持ち5歳で指文字を覚える、90秒でルービックキューブの6面をそろえるなど、多彩な才能を発揮しているスーパー小学生です。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」の出演者

稽古のようす1

重要な登場人物である研二郎の役を務めるのは、北原雅樹さん。

NHK連続テレビ小説「マッサン」、「あさが来た」などに出演した経験のある俳優です。

またドラマに限らず、映画や舞台、バラエティ番組の司会など幅広く活躍してきました。

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」では、約40人が出演。

俳優を志している人から、演劇を続けているアマチュア、初めて演劇に参加する人もおり、年齢、職業、生活スタイルがまったく異なる人たちが一緒になって作り上げるミュージカルとなっています。

2022年8月から脚本を用いた本格的な練習がスタートし、週2回、出演者が集まり本番に向けて稽古を続けてきました。

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ヒロイン 與曽井美希さんへインタビュー

與曽井さん

ヒロイン 吉田知世を演じるのは小学6年生、與曽井美希さん。

與曽井さんは、どのような経緯で演劇の世界に足を踏み入れたのか、そして、どのような想いで水害の記憶を語り継ぐミュージカルと向き合っているのでしょうか?

與曽井さんのインタビューで、演劇への想いを聞いてきました。

演劇の世界へ

初めて出演した映画は?

與曽井(敬称略)

初めて演劇の世界にかかわったのは、「ぽつり、おかやま」という岡山県を広報するための短編映画です。

絵を描けなくなった絵本作家と笑えなくなった女子高校生が、岡山を舞台に笑顔を取り戻してゆく物語。

私は、回想場面に登場するヒロインの幼少期の役を演じました。

與曽井さん3

映画に出演した経緯は?

與曽井

実は、演劇の世界へのきっかけを作ったのは兄なんです。

新聞に掲載されていた俳優の募集記事を兄が見つけて、申し込みました。

兄が募集記事に目をつけた本当の理由は、俳優の選考会で得られる賞金なのですが、自分では出演したくなかった兄は、私を応募させたんです(笑)

結果として、賞金はもらえなかったのですが、ヒロインの幼少期という重要な役を演じることになりました。

ちょっぴり不純な理由でしたが、兄のおかげで貴重な機会が得られたと感じています。

演劇の世界に踏み出して、不安はありませんでしたか?

與曽井

最初は、監督からの指示に対して、正確に対応できているのか不安がありました。

でも演技を続けていくなかで、試行錯誤をし、徐々に感覚がわかってきたんです。

最終的には、演劇の楽しさも感じるようになり、次の作品への出演へとつながっていきました。

稽古のようす2

演者としての経験

これまでに演じた役で印象に残っている役はありますか?

與曽井

オーストリア人、アメリカ人、カナダ人を演じたことがあります。

第二次世界大戦直前のオーストリアを舞台に、歌で人々を励ましてきた家族の実話を描いたミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」では、家族の末っ子のオーストリア人、グレーテルを演じました。

倉敷の近代化の礎を気づいた大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)の物語を描いた倉敷市民創作ミュージカル「サキガケ ~真友と描いた夢~」では、美観地区を見てまわるアメリカ人観光客の子役。セリフはすべて英語でした。

文豪、夏目漱石(なつめ そうせき)が岡山に滞在したときの出来事を題材にした夏目漱石ミュージカル「金ちゃんがやってきた!」では、岡山市金田(カナダ)に住む子ども役としてカナダ人を演じました。

最後のカナダ人は駄洒落です(笑)

でも、連続して海外の人物の役を務めたのは、不思議な巡り合わせでした。

役を演じるなかで英語で話す場面もあったのですが、英語のスピーチコンテストでの表現力が役立ったと感じています。

與曽井さん3

真備の水害に関わるミュージカルに出演するうえで、意識したことはありますか?

與曽井

悲しい出来事を扱うミュージカルですが、被災されたかたに不快な想いをさせてはなりません

そこで、平成30年7月豪雨のときに真備町で何が起こったのかを知るために、水害についての展示会に足を運びました。

濁流に飲まれた住宅、避難所で生活を余儀なくされた人、復興が進む街など、災害のようすが映し出された写真を見ながら、水害の悲惨さを思い知ります。

その他にも、インターネットを通じて、真備町の被災について調べました。

今回、演じた役である明治時代を生きる吉田知世は、真備を救おうという強い想いを持った少女

被災した町のようすを見たからこそ、知世の気持ちを表現できるようになったと感じています。

展示会へ
写真提供 : 與曽井美希さん

「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」への想い

災害についてのミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」への出演が決まったとき、何を感じましたか?

與曽井

今回のミュージカルの役を任されたとき、真備町の水害について、私のなかでも記憶が薄れていることに気づきました。

仕方のないことかもしれないですが、直接被災した人でない限りは、時の流れとともに記憶はぼやけていくのかもしれません。

だからこそ、今回のミュージカルのように災害を振り返る機会が大切です。

今回のミュージカルをきっかけに、真備町のことを思い出せるような公演にしたいと思いました。

稽古のようす3

ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」を通してどのようなことを伝えたいですか?

與曽井

約5年前、真備町は最大5mも浸水し、壊滅的な被害を受けた町ですが、今の真備町はキレイな状態に戻りつつあります。

ミュージカルとして災害の記録を発信できるのは、約5年という歳月が経過したからです。

そして、明治時代と現在で発生した2つの大きな災害を、現実の出来事として振り返られるのも、今だけでしょう

復興しつつあるキレイな真備町で、災害の記録を振り返ってほしいと感じています。

與曽井さん4

被災を語り継ぐ小学生の話を聞いて

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」で取り上げるのは、現代と明治時代に真備町で発生した2つの災害

100年以上も過去に発生した災害を、現実の出来事として捉えることは難しいでしょう。

そして、災害に直面した人でなければ、約5年という歳月ですら記憶は不確かなものへと変化していきます。

同じ場所で、異なる時代で発生した2つの災害を描くことで、記憶が薄れていく事実を強調しているのかもしれません。

小田川

私たちが住む日本は、地質や気象の特徴により災害が多い国として知られています。

安寧(あんねい)な日々を過ごしつつも、災害の記憶を語り継ぐことは災害大国において重要な役割を果たし、地域で生きる人たちを守ることにつながるでしょう。

そして長い歳月のなかでも、災害の記憶を絶やさないためには、世代を超えて語り継がなくてはなりません。

真備町の災害を描く「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」では、幅広い世代の人たちが一緒になって、ミュージカルを創作することにも意味があるのだと感じます。

小学生のヒロインが被災の記憶を伝えることで、次の時代を作る子どもたちにも語り継がれるでしょう。

2023年3月19日は真備町に足を運び、被災の記憶を語り継ぐ演者たちの声に耳を傾けてください。

マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」のデータ

名前マービー復興ミュージカル「日の記憶/夢ニモ思ワナイ」
期日2023年3月19日 午後1時からと午後5時からの2公演
場所〒710-1301 岡山県倉敷市真備町箭田40-1 マービーふれあいセンター 竹ホール
参加費用(税込)大人1,000円、小学生以下500円
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ぱずう(後藤寛人)

ぱずう(後藤寛人)

87年生まれの埼玉育ち。倉敷に転勤でやってきて6年目。メーカーの研究員として働きつつ、週末はゴミ拾いボランティア団体の代表として活動しています。ひとりも知り合いもいなかった倉敷の街。ゴミ拾いを通じてたくさんの出会いがあり、倉敷の魅力を教えてもらいました。余所者から見える倉敷の景色を伝えていきたいです!

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與曽井さん

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