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日本綿布株式会社 ~ 伝統技術を守り地域とのつながりを大切に井原デニムを育ててきた機屋 

日本綿布株式会社 ~ 伝統技術を守り地域とのつながりを大切に井原デニムを育ててきた機屋 

知っとこ / 2023.09.09

岡山県井原市は「デニムの聖地」と呼ばれています。

デニムの町、井原。

井原のデニムは、国内はもとより海外からも高く評価されています。

井原にある、大正時代から綿織物を作り続けている機屋(はたや)、日本綿布(にほんめんぷ)株式会社(以下:日本綿布)。

機屋とは、機を織る建物や人のことです。

昔ながらの伝統技術を受け継ぎ、一つひとつ丹精込めて糸を染色し、ていねいに織り上げたデニムの風合いや表情にはこだわりがあります。

アパレル産業全体の低価格競争の時代にあっても貫いた非量産型、高付加価値。

井原の高品質デニムを全国へそして世界へ

日本綿布のデニムに対する想い、地域とのかかわりについて紹介します。

記載されている内容は、2023年9月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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日本綿布株式会社の概要

日本綿布社屋

小田川のそば、のどかな田園風景が広がるなかに日本綿布の社屋と工場、併設されているファクトリーショップがあります。

ファクトリーショップは2022年(令和4年)9月にオープンしました。

ファクトリーショップでは、日本綿布のデニムで作ったジーンズやシャツ、小物を取り扱っています。

日本綿布は1917年(大正6年)に、備中小倉織物(びっちゅうこくらおりもの)の製造業者として創業しました。

染色から織布(しょくふ)までの一貫作業による婦人、子ども服の製造を始めます。

1926年(大正15年)には大正天皇の皇太子(昭和天皇)へ、贈り物として日本綿布の反物(たんもの)が使用される栄誉に浴します。

1985年(昭和60年)にデニムの生産が始まり、国内にとどまらず海外へ進出。

2007年(平成19年)、経済産業省より「井原市の綿産業関連遺産」として綿布工場、染色工場・事務所・食堂が近代化産業遺産に認定されました。

日本綿布株式会社の玄関にある近代化産業遺産のプレート
日本綿布の玄関にある近代化産業遺産のプレート

近代化産業遺産とは日本の産業近代化を物語る存在として、数多く継承されてきた建築物、機械、文書、先人たちの努力など、歴史的価値を地域活性化に役立てる目的として、経済産業大臣が認定したものです。

繊維産業が盛んな三備地区(さんびちく)

江戸の初期には木綿の生産はまだ少なく貴重品でした。

帯(おび)や袴(はかま)など、大名の間で贈答品などに使われていました。

木綿で織った生地は温かく肌触りも良く、庶民の衣服としても広まっていきます。

木綿の広がりとともに綿花(コットン)が全国の暖かい地域で生産されるようになりました。

井原市もその一つ

井原市は岡山県南西部にあり、江戸時代には参勤交代の通り道でした。

山陽道の宿場町として、また備中小倉織の産地として栄えました。

綿織物も明治以降は工場制工業へと発展します。

岡山県から広島県にかけて、繊維産業が盛んな地域を「三備地区(さんびちく)」と呼びます。

三備地区
  • 備前(びぜん):岡山県の南東部 児島
  • 備中(びっちゅう):岡山県の西部 井原・倉敷
  • 備後(びんご):広島県の東部 府中・福山

久留米絣(くるめかすり)、伊予絣(いよかすり)と並ぶ、日本三大絣の一つ、備後絣(びんごかすり)を作っていました。

備中小倉織や備後絣の伝統技術からデニムが生まれます。

備後絣の模様にある紺色がデニムの起源です。

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井原から世界へ

日本綿布には海外の取引先が多くあります。

誰もが知っている有名なブランドの名前がでてきます。

ロサンゼルスのRALPH LAUREN(ラルフローレン)、Chrome Hearts(クロムハーツ)、サンフランシスコのLEVI’S(リーバイス)など。

RALPH LAURENのジーンズは1本10万円以上の値段がします。

他にもLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)、Hermes(エルメス)とも取引が。

井原デニムが海外で求められ、使われています。

海外で高い評価を得ている日本綿布のデニム

国内でもEDWIN(エドウイン)などジーンズメーカーと、高品質、高価格帯のデニムの取引があります。

日本綿布株式会社のこだわり

シャトルに入れるボビン
シャトルに入れるボビン

国内や海外で高い評価を得ている日本綿布のデニムには、いくつものこだわりがありました。

シャトル織機とジャガード織機

糸を生地に織りあげる機械を織機しょっき)と呼びます。

緯糸(よこいと)を通すためにシャトルを使うシャトル織機と、シャトルを使わない織機があります。

シャトル
シャトル

日本綿布ではシャトル織機と、ジャガード織機を使っています。

シャトル織機
シャトル織機

旧織機と呼ばれるシャトル織機は、緯糸を乗せたシャトルが経糸(たていと)の間を何度も行き来しながらデニムを織りあげていきます。

布はシングル幅で80cm

一日に織れる量は約50m。

ほかの織機に比べて織るスピードはゆっくりで、職人の技術や手作業も多く必要です。

糸に負担をかけない織り方なので、ふっくらと風合いのある丈夫なデニムができあがります。

ジャガード織機はパンチカードに穴をあける形で記録させるデータを使い、5,000本の糸をコンピュータ制御で1本1本に違う動きをさせながら織りあげていきます。

布はワイド幅で150cm

立体感としっかりした厚みのあるデニムが織りあがります。

セルビッチデニム

セルビッチデニム

シャトル織機で織られたデニムは、セルビッチデニムと呼ばれています。

セルビッチとは布を織る際に施される、デニム端の耳と呼ばれるほつれ止めのこと。

ほつれ止めに赤い線が入っているのが通称RED TAB「赤耳」で、愛好家たちの間で人気があります。

日本綿布では生産当初からセルビッチデニムに注目していました。

耳付きデニムは1870年代にアメリカで生まれ、ほつれ止めをしないデニム生地の生産効率を考えた作業着ジーンズに使用。

日本でも「赤耳」セルビッチジーンズ、リーバイス501は若者の間で人気となりました。

「赤耳」こそが1970年以前に生産されたビンテージデニムの印なのです。

「赤耳」以外にもセルビッチはあります。

セルビッチが見えるようにジーンズの裾を少し折り返して、「手の込んだジーンズを履いているよ」と、さりげなくアピールしているモデルもいますね。

セルビッチデニム

世界中から厳選したコットンを輸入

日本綿布は世界中からコットンを輸入しています。

  • カリフォルニアのサンフォーキンコットン
  • 中国のトルファンコットン
  • アフリカのジンバブエコットン
  • トルコのオーガニックコットン

厳選して輸入したコットンは紡績工場で糸に紡がれ、何台もの大型のコンテナトラックで日本綿布へ運ばれます。

紡績工場から届いた木綿糸
紡績工場から届いた木綿糸
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井原デニムができるまで

井原デニムが出来るまでの工程は、以下のとおりです。

  1. 綛揚げ(かせあげ)
  2. 精錬(せいれん)
  3. 藍染め(あいぞめ)
  4. ロープ染色
  5. 糊付け
  6. 綜絖通し(そうこうとおし)
セルビッチデニム

では、順番に紹介していきます。

綛揚げ(かせあげ)

紡績工場から運ばれた糸を染色するためにほぐした状態に。

糸へんに忍と書いて「カセ」と読みます。

紡績工場から届いた糸をほぐしていきます。

精錬(せいれん)

「カセ」にした糸を釜に入れて精錬する。

精錬とは糸の汚れや不純物を取り除く工程です。

ほぐされて精錬された糸の束はふっくらとして、染料が入りやすくなっています。

精錬された後の糸の束

藍染め(あいぞめ)

藍(あい)や草木で染色。

職人がインディゴ槽(そう)に浸けて染め上げた糸は目の覚めるような藍色です。

徳島県の藍を使っています。

藍染め工程

ロープ染色

経糸(たていと)は別の機械で染色します。

余分な液を落とすだけのロープ染色で、中心は染めません。

ジーンズをはき続けて出る「味」ユーズド感はロープ染色によって生まれます。

糊付け

織機で織る時に摩擦で糸が切れないように、澱粉や合成糊で糸をコーティングします。

綜絖通し(そうこうとおし)

糸を針金に小さな穴のついた綜絖(そうこう)に通していきます。

経糸(たていと)が3,000本あれば、3,000の綜絖に手作業で。

この工程は熟練した職人でも一日かかります。

綜絖通し

ここまでがデニムを織る前段階。

これから、各織機でデニムが織られていきます。

川井眞治(かわい しんじ)社長に井原デニムの魅力や地域とのつながりについてインタビューしました。

インタビューを読む

日本綿布株式会社のデータ

団体名日本綿布株式会社
業種デニム・先染め服地製造販売
代表者名川井眞治
設立年大正6年1月2日
住所岡山県井原市東江原町1076
電話番号0866-63-0111
営業時間
休業日土、日、祝日
ホームページ日本綿布
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梅緒

梅緒

岡山県岡山市北区在住。3人の男の子のお母さん。趣味はトレッキング。鳥と野の花とにほんみつばちに夢中です。

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