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フラワーショップPEPE(ペペ)~ 色と空間への感性が光るプロデュースされた花屋

フラワーショップPEPE(ペペ)~ 色と空間への感性が光るプロデュースされた花屋

買っとこ / 2023.05.03

花屋を訪れて、息を呑むほどの感動を覚えたことはあるでしょうか。

フラワーショップPEPEぺぺ)は、店舗そのものが芸術品とも思えるような花屋です。

天井に広がるドライフラワー、色とりどりのブーケ、ユニークな外観の観葉植物など、店内にあるものすべてが調和し、美しい空間が演出されています。

倉敷市新田にあるフラワーショップPEPEを作り上げたのは、店主の福田早苗ふくだ さなえ)さん。

福田さんがこれまでの人生で培ってきた技術と花に対する情熱から、芸術品のような花屋が生まれました。

どのような経験を経て、福田さんは美しい空間を創造するに至ったのでしょうか?

フラワーショップPEPEを紹介するとともに、芸術品のような空間が生まれた背景も紹介します。

記載されている内容は、2023年5月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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フラワーショップPEPEとは?

赤い壁の三角屋根のPEPE

倉敷市新田にある三角屋根が印象的な建物がフラワーショップPEPEです。

駐車場から続いているミモザの鉢植えが並んだ小道に導かれるように歩いていくと、自然があふれる庭にたどりつきます。

心が躍るような演出で迎えてくれる花屋には、他にどんな演出があるのでしょうか。

フラワーショップPEPEの概要

花をくるむ紙の色にもこだわりがあります

フラワーショップPEPEは、倉敷市新田にある生花販売店です。

倉敷美観地区がある倉敷市街から車で15分ほどの郊外にあります。

営業時間は午前10時から午後6時、火曜日が定休日

生花だけでなく、観葉植物、ドライフラワーも取りそろえています。

また店舗に足を運び、花束のイメージを伝えると、花束をアレンジしてくれます。

筆者が取材で訪問したときは、卒業シーズンと重なっていたために花束のアレンジメントを一つひとつていねいに制作していました。

生花や花束の販売の他にも、フラワーアレンジメントの講習会も開催しています

気になる人は、フラワーショップPEPEのWebサイトやSNS(ソーシャルネットワークサービス)のアカウントを覗いてみましょう。

フラワーショップPEPEの特徴

PEPEのロゴとミモザ

フラワーショップPEPEの見どころは、商品だけではありません。

店舗に足を運ぶだけでも楽しめるのが、フラワーショップPEPEの魅力です。

店舗の前には、こぶしや、とさみずき、くろもじ、みつまたなどの大ぶりの枝が生けてあり、入り口までの小道を歩くと、まるで森の中にいるような気持ちになるでしょう。

PEPEの玄関先の庭スペース


そして店舗の中に足を踏みいれると、まず天井を埋め尽くすスモークツリードライフラワーに驚かされます。

上下左右、どちらを向いても視界は花で覆われて、色とりどりのブーケやリースに圧倒されるでしょう。

また、花をより魅力的に見せるために、花瓶やアンティーク雑貨も並んでいます。

さらに店舗に奥まで足を踏みいれると、壁や天井の色が変化していることに気づかされます。

入口付近は、ドライフラワーによる淡い色の演出があり、さらに進むと鮮やかな生花で彩られていました。

そして、もっと奥に進むと、観葉植物の緑がさわやかに迎えてくれます。

花でできた洞窟(どうくつ)を歩いているような気持ちになれる空間が、店内に広がっていました。

花で出来た洞窟のような店内

フラワーショップPEPEの空間プロデュースは店舗のみにとどまらず、カフェや美容室、ブライダルでの装花の依頼も受け付けています。

岡山県内だけでなく、県外の飲食店の装花しており、「あのお店、フラワーショップPEPEさんが担当したんですか?」と、お客さんに気づかれたこともあるそうです。

フラワーショップPEPE 店主 福田早苗さん

大切そうに花を抱える福田さん

フラワーショップPEPEの店主 福田早苗さんは経営者としてだけでなく、空間プロデュース、生け込みのパフォーマンスをおこなう創華師(そうかし)としても活躍しています

1990年に、建築士であった父親が建てた展示場を活用し、倉敷市水島に生花販売店としてフラワーショップPEPEはオープンしました。

開店した当時から母親と一緒に切り盛りしてきましたが、繁盛するにつれて店舗が手狭になり、現在の店舗のある倉敷市新田に移転したそうです。

一つずつ丁寧に花束を制作します

福田さんは、生花店を営むかたわら、料理や陶芸、フラワーアレンジなど、興味があるものに次々と挑戦していきました

そして、テーブルコーディネートの世界にも足を踏み入れます。

そこで尊敬する先生に出会い、テーブルコーディネートの世界で、空間コーディネートや色に関するセンスを磨いていきました。

2015年に東京ドームシティを会場に開催されたテーブルコーディネートの大会「第23回テーブルウエア大賞〜優しい食空間コンテスト〜」では、大賞である経済産業大臣賞を受賞しています。

息を呑むような空間をつくるコーディネートのセンスだけでなく、輝かしい経歴を持つ福田さんですが、実は自然な笑顔が魅力的な飾らない人です

どのようにして人々を魅了する花や空間を生み出せるようになったのかを福田さんに聞いてきました。

福田さんの魅力を、インタビューを通じて紹介します。

フラワーショップPEPEの店主 福田早苗さんにインタビュー

インタビューに応える福田さん

お花屋さんを始めたきっかけは何ですか?

福田(敬称略)

実は、花屋さんを始めたのは、私ではなく母なんです。

私が高校を卒業した18歳のとき、世間はガーデニングブームの真っ只中でした。

世間の流れもあり、もともと花屋に憧れを抱いていた母は、建築家である父が運営する展示場を使って、花屋を始めたんです。

当時の私の夢はお嫁さんになることだったので、花に興味はありませんでしたが、母と一緒に花屋の経営にかかわるようになりました。

実は、花屋を長く続けるつもりはなく、腰かけのつもりで始めたんです。

花束の素材

現在の福田さんからは想像がつかないのですが、どのような変化があったのでしょうか?

福田

母は、生け花の資格を持っているだけでなく、刺繡(ししゅう)にも熟知していて、手芸屋にあるような立派な刺繡糸の棚を持っているような人でした。

花屋を始めた当時は、経営に関しては二人ともまったくの素人でしたが、生け花や刺繍で培った色のセンスにおいては当然母のほうが詳しいし、母には自信がありました。

二人で花屋の経営を続けていくなかで、その母の自信に対して負けず嫌いの私は「悔しい」という感情を抱くようになったのです。

PEPEの天窓のステンドグラス

25歳で現在の店舗に移転したとき、私には社員としての責任もありましたし、経営や花にも興味が湧いてきて、私が理想とする花屋と母が理想とする花屋は異なることがだんだんとわかってきました。

母は、技術を身に着けるためには厳しさも必要という考え方です。

一方で、私はもっとフレンチな感覚の花屋を思い描いていたし、経営においては従業員ともわきあいあいと楽しく仕事をすることを理想としていました。

花に対しても、経営に対しても意見が異なっていたので、当然ぶつかります。

そのなかで、悔しいという思いとともに、花に対しての知識を増やし、感性も高めていきました

色と空間への感性が生まれた理由

インタビューを受ける福田さんとバックヤード

空間や色に対する感性はどのように鍛えられたのでしょうか?

福田

私が25歳のとき、テーブルコーティネーターの原のり子先生が主催する「倉敷テーブル&ライフクリエーション」という講座を受け始めました。

この講座が、私の色彩感覚を高めたきっかけです。

色のバランス、色合い、高級な印象を与える色など、原先生を通じて学んでいきました。

その後、原先生のもとでテーブルコーディネートについて10年ぐらい学び、仕事として空間プロデュースの仕事も先生と一緒に手がけるようになります。

先生と私を含む4人の仲間で「バルス」という名前のチームを立ち上げ、結婚式などのパーティー会場の演出に取り組むようになりました。

PEPEの切り花を保管する冷蔵庫の中

「バルス」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか?

福田

宮崎駿(みやざき はやお)さんの映画「天空の城ラピュタ」に登場する破壊の呪文です。

劇中おいて、この呪文は天空に浮かぶ城を崩壊させる凄まじい力を持っています。

既存の物や考え方を破壊して新しいものを生み出していくチームでありたいという思いから、チーム名を「バルス」にしました。

常識に捉われずに、枠から飛び出していけるような空間プロデュースを提案していこうという想いが込められています。

バルスでの活動を通じてテーブルコーディネートについて感覚や技術を高め、その後はコンテストにも挑戦するようになりました。

テーブルコーディネートと親娘の関係

テーブルコーディネートについて話す福田さん

テーブルコーディネートを通じてもっとも記憶に残っていることは?

福田

2015年、東京ドームシティで開催された「第23回テーブルウエア大賞〜優しい食空間コンテスト〜(コーディネート部門)」で、大賞である経済産業大臣賞を受賞しました。

フラワーアーティストの假屋崎省吾(かりやざき しんご)さん、俳優の黒柳徹子(くろやなぎ てつこ)さん、石坂浩二(いしざか こうじ)さんなど著名人も参加していて、表彰式には皇室も出席するような大きな規模のコンテストです。

表彰されたのは「お☆バンザイ!!」という作品で、お祝いの席を表現した和風のテーブルコーディネート。

それまでに参加してきた大会では自分らしさを追求した作品を手掛けてきましたが、このときの大会では、コンテストで勝ち残ることを最優先して創作に励みました。

自分が生み出した作品が評価されたことはうれしかったのですが、実は喜び以上に実感したことがあったんです。

それは、日常を支えてくれる仲間たちの大切さ。

コンテストで花屋を不在にしたときに店舗を守ってくれたスタッフ、テーブルコーディネートや色彩感覚を教えてくれた師匠、コンテスト用のプロフィール写真を撮影してくれた友人、私にかかわってくれたすべての人たちのおかげで輝かしい賞がもらえたのだと、仲間たちの大切さをしみじみと実感しました。

フラワーショップPEPEを福田さんが任されるようになったのはいつ頃ですか?

福田

2014年から、店主としてフラワーショップPEPEの経営にかかわるようになりました。

母とは、それまで経営に関して考えの相違があり、距離を置いていた時期もあったんです。

花に関しては職人かたぎの厳しい人だったので、一緒に経営していくことに限界を感じることは幾度となくありました。

しかし、テーブルコーディネートの大会での表彰を機に、母の私に対する態度は変化します。

それまで、母に褒められた記憶はありませんでしたが、私のことを誇らしいと周囲の人たちに伝えるようになったんです。

そのとき、私は一番大切なことに気がつきました。

今の私があるのは、切り花のことを厳しく教えてくれた母のおかげだと」

母に対しての感謝の気持ちが胸からあふれ出てきた瞬間でした。

その後、母は岡山でブライダルを中心に、私は倉敷のフラワーショップPEPEで店主として別々の道を歩み出します。

空間をプロデュースされた花屋

ドライフラワーになっても美しいミモザ

フラワーショップPEPEを任されて、福田さんのやりたかった花屋をすることができましたか?

福田

母に認められ、世の中に評価され、もうそれからは切り花に関しても経営に関しても、自分が思うことをどんどんやりました。

母と仕事をしていたころ、私は切り花に関して自分の思うようにしてはいけないという気持ちがありました。

花束の為の切り花

切り花は母の領域だったし、自信が無かったせいかもしれません。

当時は、きっちりとしたドイツの生け方が主流でした。

母が所持していた日本フラワーデザイン協会の認定資格もドイツの生け方の影響を受けていましたが、私は自然が好きなのでもっと軽くて動きのあるものが好きなんです。

神戸のフレンチスタイルの花屋に勉強にいったとき、自由に花をいけてもいいんだという発見がありました。

その後は、遠慮なしに切り花にどんどん手を出すようになったんです。

また、ただ花を単体で売るのではなく、その花を置く空間をプロデュースするということを大切にしました。

テーブルの上にしても、衣食住にしても、空間をコーディネートすることによって花の表情は生きてきます

花を置く空間がどのような場所なのかを理解できていないと、お客さんの望む花を売ることはできないのです。

卒業生に向けた花束を制作する

スタッフとのかかわり合いで大切にしていることはありますか?

福田

もともとスタッフたちと、わきあいあいとかかわっていきたいという想いがあったことに加えて、コンテストでは日常を支えてくれる人たちの大切さを感じました

そのため、スタッフたちに居心地の良い環境になるように意識しています。

たとえば、子どもが熱を出したときや、親の介護の都合で会社を休まなければならなくなったとき、申し訳ないという感情を抱かせてしまう環境にはしたくありません。

働く時間が短くなってもいいので、子育てや介護など、家族との時間は安心して向きあってほしいと考えています。

また、海外留学など勉強のために時間が欲しいという希望がスタッフから出てくるかもしれません。

そのときには、長期的に仕事を離れてもらっていいと考えています。

成長してフラワーショップPEPEに戻ってきてくれたときには、必ず私たちの力になってくれるはずです。

手に職をつけて、自分の強みを見つけてくれたらいいと思っています。

福田さんとスタッフのみなさん
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おわりに

初めてフラワーショップPEPEを訪れたときに感じたことは、店舗そのものが芸術品だということです。

入口には、美しい野山を再現したかのように、早春に芽吹いた枝が野にあるように置かれています。

店舗に足を踏み入れると、花で作られた洞窟に迷い込んだような気持ちになりました。

入口付近は、白や茶色の淡い色のドライフラワーやインテリアなどが落ち着いた雰囲気の空間を作り出しており、さらに進むとブーケや観葉植物などが鮮やかな空間を演出しています。

淡い色の空間、鮮やかな色の空間が生み出す彩度の強弱が、花が持つ美しさをより一層、引き立てているのです。

店舗そのもの、そして店内に飾られた花束、インテリア、すべての存在から福田さんのセンスが感じられるでしょう。

福田さんがこれまでの人生で培ってきたセンスが感じ取れる芸術品が、フラワーショップPEPEなのだと理解しました。

芸術品のような花屋さんへ、ぜひ足を運んでください。

花による空間プロデュースによって生み出された芸術品の魅力に、心を奪われてしまうことは間違いないでしょう。

福田さんがもっとも好きな花、ラナンキュラス
福田さんがもっとも好きな花、ラナンキュラス

フラワーショップPEPEのデータ

名前フラワーショップPEPE
住所岡山県倉敷市新田3206-6
電話番号086-434-4001
駐車場あり
駐車可能数 : 22台
営業時間営業時間 : 午前10時から午後6時
定休日
支払い方法
  • 現金
  • クレジットカード
  • Suicaなど交通系ICカード・iD・QUICPay・PayPay・楽天ペイ・メルペイ
ホームページフラワーショップ|PEPE
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梅緒

梅緒

岡山県岡山市北区在住。3人の男の子のお母さん。趣味はトレッキング。鳥と野の花とにほんみつばちに夢中です。

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大切そうに花を抱える福田さん

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