倉敷美観地区から北西へ約2.5キロメートル。
岡山県三大河川のひとつ・高梁川(たかはしがわ)の近くにある醤油醸造所「とら醤油」は、倉敷市内でも有数の老舗企業です。
トラの顔のマークは、倉敷だけでなく岡山県内ではおなじみ。
筆者の生家でも、幼い頃からとら醤油をずっと使っています。
またとら醤油は近年、黄ニラやパクチーなどの岡山県産の食材をつかった調味料でも人気です。
長年にわたり岡山県民の食卓を支え、地域とともに発展してきた老舗・とら醤油を紹介します。
記載されている内容は、2019年3月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
とら醤油 株式会社のデータ
団体名 | とら醤油 株式会社 |
---|---|
業種 | 食料品製造業・販売業(醤油・調味料・味噌・飲料水・酒類など) |
代表者名 | 三宅 正記 |
設立年 | 設立:大正7年(1918年)、創業:万延元年(1860年) |
住所 | 岡山県倉敷市酒津2362 |
電話番号 | 086-422-0233 |
営業時間 | 午前8:00~午後4:45 |
休業日 | 土、日、祝日 |
ホームページ | 醤油醸造 醤油づくり こだわり醤油 醤油加工品 とら醤油|岡山県倉敷市 |
とら醤油は創業約150年の醤油醸造所
とら醤油が創業したのは江戸時代末期で、万延元年(1860年)です。
ちょうど江戸城で「桜田門外の変(さくらだもんがいのへん)」がおきたのと同じ年にあたります。
とら醤油は、創業150年以上となる倉敷屈指の老舗なのです。
現在、七代目となる三宅正記(みやけ まさき)氏が代表取締役を務めています。
また、とら醤油は創業当時「三宅醤油店」という名前でした。
名称は、創業した初代・三宅喜十郎(みやけ きじゅうろう)の苗字からつけられています。
創業場所は、現在の倉敷市酒津(さかづ)。
いまの所在地と同じ場所です。
この酒津の地は、高梁川のほとりにあたり、高梁川と支流の小田川の合流点に近いところ。
そのため良質の水が取水できます。
さらに酒津がある備中国南部一帯は、大豆や小麦・塩など醤油の主原料の産地でもありました。
そして、酒津は高梁川を航行する高瀬舟の拠点でもあったので、輸送の面でも有利です。
このように酒津の地は醤油の醸造に向いている場所だったため、三宅醤油店(とら醤油)の創業場所となったのです。
とら醤油は創業以来、食の安全・安心・信頼をテーマとした食品を手掛けています。
「食を通じて家族の団らんを作り出し、社会に貢献する」を理念に、醤油をはじめとした商品づくりをおこなう、地元に密着した企業です。
また、大正時代には醤油を皇室に献上しました。
とら醤油は、ほかにも数々の受賞歴があり、高い評価を得ています。
社名の由来
とら醤油は、創業時「三宅醤油店」という名前でしたが、大正7年(1918年)に「三宅醤油 株式会社」となりました。
そして、昭和25年(1950年)に現社名の「とら醤油 株式会社」に改称しています。
▼倉敷でとら醤油といえば、トラの顔のマークでおなじみです。
でも、なぜ「とら」なのでしょうか。
じつは、四代目で株式会社化した初代社長・三宅次平(みやけ じへい)氏の裏干支(うらえと)が寅(とら)だったのです。
裏干支とは、干支を円形にならべたとき、自分の干支の正反対の位置にある干支のこと。
つまり、自分の干支から6番目にある干支です。
三宅次平氏の干支が申(さる)だったので、裏干支が寅にあたることが社名の由来となりました。
裏干支を社名にしたのは、吉備津彦神社(岡山市北区一宮)に、「裏干支を大切にすると商売が繁盛する」という言い伝えがあったことがきっかけです。
とら醤油が手掛けるおもな商品
とら醤油では醤油はもちろん、醤油加工品やソース・たれ・ドレッシングなど幅広い商品をラインナップしています。
また、贈答用のシリーズ「匠ブランド」やギフトセットなどもあります。
醤油
醤油は、本醸造(ほんじょうぞう)、混合の醤油を製造しています。
▼トラの顔のマークが目印の、岡山県民にはおなじみの醤油です。
▼また「キントラ」「別選(べっせん)」などの商品も、長年にわたり地域で愛されています。
なお、本醸造は、大豆・小麦・塩でつくる昔ながらの醤油。
混合や混合醸造は、アミノ酸液をくわえている醤油です。
▼ほかにも、「さしみしょうゆ」などの再仕込醤油、業務用として企業向けや給食向けの醤油も製造しています。
醤油加工品
醤油加工品は、醤油をベースに、だしなどを加えた商品のこと。
▼とら醤油では、地元・岡山県の名産である黄ニラを使用した「黄ニラしょうゆ」が人気です。
ほかにもロングセラーの「味とら」や、めんつゆ・たまごかけごはん用醤油などもあり、いまでは醤油とならぶとら醤油の看板ジャンルとなっています。
その他の商品
とら醤油ではほかにも、焼肉やしょうが焼き用のたれ、ソース、ドレッシングも取りそろえています。
▼中でも、岡山県産のパクチーをつかった「パクチードレッシング」が人気です。
▼またソースでは、岡山の老舗「トモエ」ブランドを継承し、トモエソースの各種ソースを製造しています。
▼さらに、醤油をつかった焼き菓子「ひしお焼き」という商品もありますよ。
とら醤油の商品の取り扱い店
とら醤油の商品は、楽天市場の公式オンラインショップで取り寄せることが可能です。
▼また、倉敷美観地区にある「倉敷名産館」では、とら醤油の商品を多数取り扱っています。
倉敷名産館は、とら醤油の主要商品がほぼそろっていますので、見比べながら購入できるので便利です。
さらにとら醤油の本社でも、とら醤油の商品が購入可能。
ほかに、倉敷市を中心とした岡山県内の各スーパーマーケット・食品販売店などでも、とら醤油の商品を販売しています。
公式サイトに販売店のマップがあるので、参考にしてください。
醤油ができるまで
とら醤油での、醤油の製造について紹介します。
醤油ができるまでにかかる期間は、約1年。
醸造の工程は以下の通りです。
- 大豆を蒸し、小麦を煎る
- 大豆・小麦・種麹(たねこうじ)を混合
- 製麹(せいぎく)して諸味(もろみ)を製造
- 諸味に食塩水を加え、仕込む(熟成)
- 圧搾(あっさく)して醤油を搾り出す
- 火入れによる殺菌
- ろ過
- 醤油を容器へ充填・ラベル貼り
▼醤油の醸造は、最初に大豆・小麦の原料処理をする作業から始まります。
▼NK缶という巨大なタンクに大豆が入っていて、蒸されます。
作業場に入った瞬間、蒸した大豆のよい香りがただよってきました。
▼向かって左のタンクの中には煎った小麦が入っています。
▼向かって右上のタンクの中は水です。
▼蒸した大豆の入るタンクに炒った小麦が混合され、撹拌されます。
なお、真夏には作業場はかなり暑くなるそうです。
▼混合後、隣にある製麹室(せいぎくしつ)へ送られて、約3日間置きます。
製麹室の中はとても蒸し暑く、まるでサウナのよう。
▼3日置くことで、麹となりました。
▼できた麹は諸味タンクに運ばれ、塩水(えんすい)を加えて仕込みます。
諸味タンクは複数あって、どれも深さは約3メートルもあるとのこと。
▼約8ヶ月間、諸味タンクで熟成させることで、諸味が完成します。
諸味は検査のあと、圧搾という作業に移ります。
諸味を圧搾機で搾り、抽出されるのが生醤油(なましょうゆ)です。
▼巨大なタンクに生醤油が入っています。
そして、生醤油に調合や味付けをし、火入れ作業をおこないます。
火入れとは、加熱による殺菌処理です。
加熱をすると醤油の不純物が出てきます。
これをろ過して、醤油が完成です。
▼完成した醤油のタンクも巨大。
なんと4.5キロリットルもの貯蔵量です。
その大きさに圧倒されてしまいました。
▼なお、醤油加工品は、ここからさらに別の工程へ。専用の設備で作業がおこなわれます。
醤油として販売されるものは、容器へ充填し、ラベル貼り、箱詰めをおこない出荷されます。
▼充填は機械を使用。
▼ラベル貼り・箱詰めも機械でおこなわれます。
▼一部の商品は、ラベル貼りや箱詰めを手作業でおこなっています。
とら醤油の作業場にただよう原材料の大豆の香りやできあがる醤油の香りは、子供の頃に実家の蔵で嗅いだような、どこか懐かしい香りでした。
後半の記事では、とら醤油の村上 幸弘(むらかみ ゆきひろ)取締役にインタビューし、醤油をめぐる環境の変化や醤油づくりにかける想いを教えてもらいました。
とら醤油 株式会社のデータ
団体名 | とら醤油 株式会社 |
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業種 | 食料品製造業・販売業(醤油・調味料・味噌・飲料水・酒類など) |
代表者名 | 三宅 正記 |
設立年 | 設立:大正7年(1918年)、創業:万延元年(1860年) |
住所 | 岡山県倉敷市酒津2362 |
電話番号 | 086-422-0233 |
営業時間 | 午前8:00~午後4:45 |
休業日 | 土、日、祝日 |
ホームページ | 醤油醸造 醤油づくり こだわり醤油 醤油加工品 とら醤油|岡山県倉敷市 |