刺激がほしいときの飲み物といえばコーラ!
シュワシュワとした炭酸と鼻を刺激する独特の香りは、口に含むだけで頭が冴えてきます。
しかし、あまりに刺激的すぎる味が苦手だという人もいるのではないでしょうか?
ツチヤコーラは、コーラが苦手なウェブデザイナー 土屋遼介(つちや りょうすけ)さんが手掛けるクラフトコーラ。
ほのかなスパイスの香りとまろやかな甘さが特徴のツチヤコーラは、市販のコーラが苦手な人でも飲みやすく、今までにない優しい味がします。
土屋さんは倉敷市水島の水島臨海鉄道の高架下で行なわれているマルシェイベント 臨鉄ガーデンの実行委員長としても活躍してきました。
クラフトコーラを作ろうと思い立った背景には、臨鉄ガーデンでの経験が大きく影響しています。
ウェブデザイナーであり臨鉄ガーデン実行委員長の土屋さんが、なぜツチヤコーラの販売を始めたのかをインタビューを通して紹介します。
記載されている内容は、2022年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
ツチヤコーラの概要
ツチヤコーラとは?
ツチヤコーラは、岡山市と倉敷市を主な拠点として活動しているウェブデザイナー土屋遼介さんが手掛けるクラフトコーラです。
土屋さんは世間一般に流通している「コカコーラ」が苦手で、コーラが苦手な人でも楽しめるようにツチヤコーラを開発しました。
市販の「コカコーラ」は強い刺激が特徴ですが、ツチヤコーラはまろやかな優しい味が特徴。
カルダモン、クローブ、コリアンダーなどの6種類のスパイスを入れて煮詰めたカラメルソースに、輪切りにした瀬戸内レモンを入れ、冷蔵庫で寝かせて原液を作ります。
主な販売場所は、岡山市北区石関町にあるレンタル店舗「パブリックカウンター」です。
また、岡山市、倉敷市で開催されるマルシェイベントにも出店しています。
出店情報は、ツチヤコーラのウェブサイトに掲載されているので確認してみましょう。
ビンやカンでの提供はしておらず、店舗で注文を受けたのちに、原液を入れたカップに炭酸水を注いでお客さんへ提供しています。
土屋 遼介さんの経歴
土屋さんは岡山市出身ですが、大学は倉敷市にあったため、学生時代から倉敷市を中心に活動してきました。
水島臨海鉄道の栄駅周辺の高架橋下で開催されるマルシェイベント 臨鉄ガーデンの実行委員長を務めています。
臨鉄ガーデンは、2017年9月に3店舗のみのマルシェイベントとしてスタート。
しかし、地産地消やオーガニックなどを扱う商店を招致し、こだわり抜いたイベントを続けた結果、2021年11月には、2,000人を超える来場者を向かえる大規模なイベントにまで成長しました。
そして、土屋さんは故郷でもある岡山市でも活動の場を広げようと、新たに始めた事業がツチヤコーラ。
こだわったものを提供すれば、ゼロからでも必ず人がついてくるという臨鉄ガーデンで得た学びを、故郷である岡山市でも実践しようとツチヤコーラの販売を始めました。
土屋さんへインタビュー
ツチヤコーラの特徴
ツチヤコーラの特徴を教えてください。
土屋(敬称略)
市販のコーラが苦手な人でも楽しめるコーラというのが特徴です。
多くのクラフトコーラはスパイスの香りが強く、喉でも刺激を感じますが、ツチヤコーラはまろやかな味に仕上げています。
他のクラフトコーラと同様に、カルダモン、クローブ、コリアンダーなどの6種類のスパイスを使っていますが、香りを抑える分量にしました。
また、スパイスとカラメルソースを混ぜた原液に、輪切りにした瀬戸内レモンを入れて一晩寝かせています。
瀬戸内レモンの甘味を浸透させることで、まろやかな味にしているのです。
コーラが苦手だったからこそ、逆の視点で新たなコーラを開発できました。
開発するなかで大変だったことはありますか?
土屋
思い描く味を再現することに苦労しました。
典型的なスパイスを使った料理であるカレーすら作ったことがなかったので、本当にゼロからの勉強。
スパイスは、少しでも分量が変わったり、加熱の仕方が変わったりするだけで、味が変化します。
面白い失敗の例ですが、カレースープのようになってしまったこともあります。
また、出店するマルシェイベントに応じて準備する量を決めるのですが、作る量の比率に合わせてスパイスを入れるだけでは味は安定しません。
単純に量が多いときには量を足せばいいというわけではなく、自分の舌で最終的に微調整する必要がありました。
思い描く味を完成させるのに、半年間、試行錯誤を繰り返しています。
ツチヤコーラを始めた理由と成果
ツチヤコーラを作ろうと思った経緯は?
土屋
2017年9月に臨鉄ガーデンを始めてから5年が経ち、倉敷市では人とのつながりが増えていきました。
一方で、出身地であるはずの岡山市では人とのつながりも少なく、臨鉄ガーデンの名前を出しても知らない人が多くいます。
そこで、岡山市でも活動の場を広げようと始めた事業がツチヤコーラです。
臨鉄ガーデンを始めてから、こだわりを持って事業を続ければ、人がついてくるということを学びました。
初めて開催した2017年9月の臨鉄ガーデンの出店者は3店舗のみで、来場者は約50人。
しかし、前回開催した2021年11月の臨鉄ガーデンでは、2,000人を超える人が来場しています。
臨鉄ガーデンでは、地産地消や、オーガニックにこだわった商品を販売していて、素材にこだわることの大切さも実感しました。
コーラが苦手な人でも「地域素材にこだわったコーラ」であれば、魅力を感じてくれる人はいると思い、ツチヤコーラの販売を岡山市で始めるに至ったのです。
ツチヤコーラの評判はどうですか?
土屋
岡山市北区石関町のパブリックカウンターでは、朝にツチヤコーラを販売しています。
先に批判的な意見から回答すると、「朝からコーラはつらい」との声をもらいました。
ただ、一般的なクラフトコーラと比べると、スパイスを抑えていたり、瀬戸内レモンのまろやかな甘さが浸透していることから、「朝に飲むコーラとしてはぴったり」、「やさしい甘さ」という感想ももらっています。
出勤する人たちからは、「仕事前に飲むのにうれしい一杯」という言葉もありました。
パブリックカウンターは新たな事業に挑戦する場所ということもあり、多くの人が応援してくれているのを実感しています。
チャレンジはうまくいきましたか?
土屋
岡山市で人とのつながりを作ることも目標でしたが、事業を立ち上げるからには収益化することも目指していました。
製造設備のような大規模な投資は不要でしたが、クラフトコーラを販売するためには、瀬戸内レモンやスパイスなどの原材料のほか、ビンや販促用フライヤーなどにも初期費用は発生しています。
実は、2021年4月にツチヤコーラの販売を始めたとき、半年後の9月末までに収益化できなければやめようと決めていました。
先行投資した費用の回収は、2021年8月には完了し、掲げていた目標は達成できています。
出身地の岡山市でクラフトコーラを販売するという事業を行なうだけでなく、収益化もできたので、自信にもつながりました。
目標を達成できた要因は?
土屋
「小さく初めて、大きく育てる」という考えを大切にしています。
とてつもなく大規模な事業ではなく、身の丈に合ったやり方を選びました。
そのため、ツチヤコーラの販売を始めたころは初期投資の費用が回収できずに赤字でしたが、焦りを感じずに無理なく続けられたのです。
半年後にまでに黒字にすればいいと落ち着いて捉えられたので、広報に力を入れたり、風味を調整したりする余裕もありました。
小さな事業ですが目標を掲げて着実に進めたからこそ、収益化も達成できたのだと感じます。
ツチヤコーラと臨鉄ガーデン
臨鉄ガーデンを始めた理由は?
土屋
倉敷市内にある大学に通っていたこともあり、卒業後はフリーランスのウェブデザイナーとして倉敷市を中心に活動していました。
仕事をするなかで倉敷市の歴史も学びたいと思っていたところ、倉敷市水島エリアの地域活性化についての勉強会に招待されたので、足を運んだのです。
勉強会というよりは、水島エリアの高齢化や商店街の衰退などの課題を突きつけられる場でした。
港町にこわい印象を抱く人もいると思いますが、実際に水島へ踏み出してみると、隠れ家のようにお洒落なバーや美味しい居酒屋が点在していたり、水島ではあまり知られていないが県内マルシェなどで活躍する飲食店や事業者も多くいたりすることがわかりました。
水島は公園が12以上も隣接する特殊な街の構造をしており、たとえばさきほど挙げた隠れた名プレイヤー達が中心となって町の空き空間を活用することで賑わい、街に変化が生まれるのではないかと考えています。
こうした想いから「水島エリアの地域再生」を掲げて、臨鉄ガーデンは2017年9月からスタートしました。
諸事情で開催最初は公園ではなく水島臨海鉄道の高架下を舞台にガーデンは始まりましたが、少しずつエリアを拡大していき、いまでは高架下と公園を会場として開催が続いています。
臨鉄ガーデンを通じて感じたことは?
土屋
臨鉄ガーデンではオーガニックや地産地消をキーワードに、素材にこだわった商品を提供してきました。
地産地消は岡山の地域経済の循環にもつながりますし、岡山は気候に恵まれた土地なので山のものも、海のものも素晴らしい素材が手に入ります。
ターゲットのお客さんを絞ってキーワードを発信すれば、人はついてくると思い、臨鉄ガーデンを続けたのです。
その結果、多くの人で賑わうイベントにまで成長させられたので、こだわりをもって取り組むことで、ゼロからでも事業は成功できるのだと学びました。
ツチヤコーラで得られた成長
ツチヤコーラを始めて、人との関わりにどのよう変化がありましたか?
土屋
岡山市は故郷ではあるものの、人とのつながりの少ない場所でした。
ツチヤコーラの販売を続けていくうちに、通勤途中に立ち寄る方だけでなく、学生時代の同級生が顔を覗かせてくれることもあり、そこから、地元の先生や同級生の親の世代も足を運んでくれるようになりました。
このような人たちとの再開は予想していなかったので、地元で挑戦することで発見できたうれしい出来事です。
今後、どのようにしていきたいですか?
土屋
現状はカップでの販売のみなので、ビンでの提供を目標としています。
ツチヤコーラを続けてきて「うちのクラフトコーラが好き」だと言ってくれるお客さんがたくさんいることを実感しました。
何度も購入してくれたお客さんのなかには、自宅で家族と一緒に楽しみたいという人も多くいます。
また、持ち帰りしたいという要望のお客さんに提供できなかったことも多くあったので、悔しく感じていました。
もっと多くのお客さんに届けるために、ビンでの販売を次のゴールにしています。
ツチヤコーラを飲んでみて
クラフトコーラを作ってしまうぐらい土屋さんはコーラが大好きだろうと思っていましたが、コーラが苦手というのには驚きました。
新しいアイディアを生み出すときに、物事を別の視点から捉えることは大切ですが、「苦手」というマイナスの印象を生かすのは斬新(ざんしん)だと感じます。
また、ゼロから事業を立ち上げ、収益化にまでつなげるのは簡単ではありません。
臨鉄ガーデンのようなイベントを立ち上げた経験があったからこそ、具体的な作戦を立てて、淡々と事業を進められたのでしょう。
ツチヤコーラはほのかなスパイスの香りとまろやかな甘さを感じる優しいコーラでしたが、マイルドな風味からは思いつかないような、奇抜なアイディアと具体的な戦略が詰め込まれていました。
ツチヤコーラの背景を知ってから飲むと、マイルドな味に加えて深みも増すかもしれません。
ぜひ、ツチヤコーラを手に取って優しい味を楽しんでください。