岡山県で開催されている音楽イベント「桃太郎フェス」を知っていますか。
2019年に倉敷マスカットスタジアムで初開催され、2022年、2024年とこれまで3回開催されています。出演者は地元岡山県出身のアーティストから全国的にメジャーなアーティストまで、その顔ぶれが話題を呼び、岡山の新たな音楽イベントとして認知も広まっています。
イベント自体を知っていても、主催はどこか東京や大阪の大手プロダクションだろうと思っていたかたもいるでしょう。
実は、この「桃太郎フェス」を手掛けているのは、倉敷に拠点を置く音楽事務所「株式会社ボイス」です。2018年5月に設立され、2025年で創業から7年経った現在、活躍の場を着実に広げている注目の企業です。
地元に根差し、地域と共に成長する企業や団体は、地域活性化の鍵となる存在ですが、「音楽」を主力とする企業は、岡山・倉敷ではまだ多くはないのではないでしょうか。
これまでにない価値を生み出す可能性を秘めた「株式会社ボイス」を紹介します。
記載されている内容は、2025年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
「株式会社ボイス」とは
![ロゴ](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/02/voice_-rogo1.png)
「株式会社ボイス」は、岡山県倉敷市出身の須田峻輔(すだ しゅんすけ)さんが代表取締役を務める音楽事務所です。運営事業は、大きく4つのカテゴリーで分類されています。
- 音楽事業
芸能プロダクション(事務所) / プロデュース・マネジメント / 楽曲製作 / CD制作/コライトキャンプ(Voice Co-Write Camp)の運営- スクール事業
Voice Entertainment Academy(スクール)の運営 / ダンス・ボイストレーニング・DTM(作詞•作曲)- イベント事業
桃太郎フェス主催 / 制作・企画・運営 / 音響・照明 / キャスティング- デザイン事業
各種デザイン・印刷 / ホームページ制作 / MEO対策 / ポスター印刷(即日納期)※〜A1まで / デザイン定額制サービス(サブスクリプション) / 看板制作 / 写真撮影/動画制作/オンライン配信
音楽事業
![写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/cfdd18456eb0ba367e2c3210122f1832.jpg)
芸能プロダクション(事務所)業務として、デビューに向けた本格的なアーティスト活動のサポートをはじめ、ミュージシャンからモデル、俳優、スポーツチームまでジャンル問わずプロデュースをおこなっています。
一般企業からのTVCMの楽曲や動画のBGMなどのサービスへも、ボイスに所属する作家が作詞・作曲・アレンジをおこなうなどクリエイティブな音楽制作にも対応しています。
スクール事業
![写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/7c3feef79205f9304bf5b7a2ac3e61d6.jpg)
コース内容は、ダンスコース、ボイトレコース、DTM(作詞・作曲)コース、シンガーソングライターコース、ダンス&ボーカルコースなど。現役で活躍するプロのアーティストや作詞・作曲家、ダンサーを招き、実践的な学びの場を提供しています。
さらに、レッスンをするだけでなく、イベントへの出演やCDデビューに向けたプロモーション活動のサポートもおこなっています。
イベント事業
![2019年開催の「桃太郎フェス」 写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/02/S__131457043.jpg)
2019年に初の主催となる「桃太郎フェス」では、きゃりーぱみゅぱみゅ、KREVA、家入レオ、Dream Ami、ベリーグッドマン、水曜日のカンパネラなどのゲストを迎え、倉敷マスカットスタジアムで開催されました。
そのほか、多様な音楽イベントや各種オープニングイベント、お祭り、オンラインライブの撮影・セッティングまで幅広く手掛けています。音響・照明などの技術面に加え、メジャーアーティストや著名人のキャスティングにも強みを持っています。
デザイン事業
![写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/eeffa8a34974a92716082f82bd0c30fa.jpg)
CDリリースに向けたジャケットデザインはもちろん、一般企業のチラシ・ポスター・看板・ホームページ制作などデザイン全般を提供しています。
またWebサイト制作では、認知度の拡大に欠かせないSEOやMEOなどの対策にも力を入れ、効果的なマーケティング戦略まで対応しています。
音楽、スクール、イベント、デザイン、それぞれの事業を連携し合って一気通貫で展開。地域に密着しながらも全国規模での活動を視野に、新たな可能性を切り拓いています。
須田社長にインタビュー
なぜ倉敷で音楽事務所を設立したのか、どのような経緯で開催に至ったのか、その背景には須田峻輔社長の人柄や音楽への情熱が深く関わっていました。須田社長にインタビューしました。
![須田峻輔(すだ しゅんすけ)社長](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/DSC03385_voice-1.jpg)
音楽系専門学校を卒業後、会社員として働きながら音楽活動を続けていた
倉敷において、音楽業界での起業に至るまでのきっかけはなんだったのでしょうか?
須田(敬称略)
高校生の頃から音楽や歌うことが好きでした。
当時、アメリカに「ベイビーフェイス」というアーティストがいて、彼は自ら歌うし、作詞作曲もするし、他のアーティストのプロデュースもするというマルチなかたで憧れを持っていました。
その頃からプロデューサーという仕事に興味を持つようになり、好きな歌をやりながら音楽について勉強しようと、高校卒業後に大阪の音楽系専門学校に進学します。専門学校では、リズムトレーニングや、作詞作曲の実践、ボーカルだけでなく、ギターやドラムに挑戦したり、オーディションを受けたりと、さまざまな経験を積む機会に恵まれました。
卒業後は音楽と関係のない企業に就職したのですが、音楽への想いをなくしたわけではありませんでした。数年後、倉敷にUターンして、広告系の会社に営業職として入社しましたが、プライベートで音楽を続けていたことをきっかけに転機が巡ってきました。
ある日、営業先のお客さんから「これから音楽を始める子がいるんだけど、活動を手伝ってもらえないか」と、駆け出しのアーティストを紹介されたんです。
平日は会社員、土日はアーティストの活動をサポートするうちに、気がつけばプロデューサーのような立場になっていました。専門学校での経験ももちろん役立ちましたが、どちらかというと演者側の学びが中心。
そこで、しっかりプロデュースするために、会社員の傍ら再び本気で音楽に取り組むことにしました。
会社員をしながら、しだいに音楽活動への想いが強くなっていったのでしょうか?
須田
当時は割り切っていましたし、むしろ営業の仕事は楽しかったので、平日は会社員を一生懸命やっていました。でも、その会社を退職するタイミングが来て、2018年5月に音楽事務所として「株式会社ボイス」を立ち上げました。
退職してしばらくは個人的に活動していたのですが、上場企業など大手と取引するには「株式会社」でないと契約が難しい場合もあり、法人化したんです。
“できるって自然に思いました” 倉敷初の野外音楽フェス「桃太郎フェス」
法人を立ち上げた翌年、2019年9月に倉敷マスカットスタジアムで「桃太郎フェス」が開催されました。出演者にはメジャーアーティストも多く、規模感からも当時は岡山の音楽事務所が企画しているとは誰も思っていなかったかもしれません。
須田
周囲からも「え? できるん?」って当初はめちゃくちゃ言われました。でも会社員時代に土日に2,000人規模のイベント開催経験はあったので、イベントの企画自体はそこまで難しいことではなかったんです。
ただ、当時は倉敷マスカットスタジアムで音楽イベントの開催歴がなかったため、関係者各所との調整を重ね、結果的に約1年かけて開催に至りました。
フェスをやることは起業当初に考えていたわけではありません。
きっかけは東京のプロダクションから、あるフェスイベントのパッケージを岡山で開催しませんかと声をかけられたことです。開催の可能性を探っているうちに、「パッケージでやらなくても、独自でやれるんじゃないか?」と思いつき、オリジナル企画でやってみようとなったんです。
2019年の初開催は倉敷マスカットスタジアムでおこなわれましたが、会場は年により変わります。
倉敷でのフェス開催は、簡単なことではないと思うのですが、須田さんの話ではとてもあっさりやっているように聞こえます。やれると思った決め手はあるのでしょうか。
須田
「できる」って自然に思いました。
やろうと思う目標ができて、その方向に動いていたら、タイミング良くいろいろな人と出会って「協力しますよ」という声が集まり、やがてできたという感じです。
側から見たら大変そうって思われるのかもしれませんが、僕自身はあまり苦労をした認識はないです。
メジャーアーティストを呼べたのは、ある事務所のかたと仲が良かったことが大きく関係しています。オファーについて相談させてもらったり、そのかたを通してアーティストに声をかけさせていただいたりしました。
大きなつながりもすでにあったのですね。会社員時代から積極的に人脈作りをしてきたのですか?
須田
つながりは自然にできていたんだと思います。
基本的に人のことが好きで、言い換えれば人を嫌いになりにくく、出会った人に当たり前に接していたら、世間で言う“人脈”になったのだろうと思います。
![須田社長](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/DSC03338._voice.jpg)
“岡山からメジャーへ” どこにいても対等に挑戦できる環境へ
ボイスでは現在、イベント企画、アーティストプロデュースのほかに、デザイン制作や音楽スクール運営もされています。事業は徐々に増えていったのでしょうか?
須田
増えたというよりも、ほとんど同時進行です。
いろいろな会社で働いてきたことで、営業やデザインもできましたし、何よりも人とのつながりによるベースがあったので、もともと持っていた基盤が6年かけてどんどん広がっていったように思います。
現在の状態はまだ過程で、今出ていることはやりたいことの一部です。ずっとやりたいと思っていた音楽スクールを2021年にスタートしましたが、最終目標ではないです。スクールでは、ただレッスンをするだけでなく、やるならメジャーも目指せる道筋を立てることを見据えています。
現時点で描いている最終目標としては、800人収容規模のライブハウスを作ることです。岡山のライブハウスにメジャーアーティストが来ることが少ないのは、箱が小さいからだそうで……。
でも、アーティストを呼ぶことだけが目的ではなくて、自社のアーティストも普段から大きなステージで、メジャーと同レベルの環境で練習を積んでおけば、どのようなオファーがあってもいつも通りで臨めますよね。
![2021年にスタートした音楽スクール事業 写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/829f30b027efa19f4ac9dcc087550139.jpg)
![写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/349bed363f8de63a523f5c197bf4c787.jpg)
スクールで誰かを育て、バックアップして、プロデュースしてデビューとなれば、あらゆるところにデザインも発生します。現在の事業ですべてを賄えるような体制でしょうか。
須田
そうですね。イベント、レッスン、レコーディング、デザイン、一通りの流れを自社でできるようにしています。それらのクオリティをもっと強化したいと考えています。
音楽事務所として岡山の倉敷に本社を構えて、岡山出身のアーティストを育てて、やがてメジャーにという道筋は、まだまだ一般的には難しいイメージのほうが大きいかもしれません。それでも岡山で挑戦している理由はなんでしょうか?
須田
岡山がすごい好きとかでもなくて、やろうと思ったときに自分がたまたま岡山にいただけです。だから、やる前から難しいとかデメリットとかを考えたことがないんです。
もちろん一般的に、デビューを目指すなら大阪や東京に行くという通念があることはわかっています。でもうちに入れば、東京と同じレベルでレッスンできることを示していきたいんです。岡山でも、小さい街からでもデビューできるよって。
たしかに東京に行ったほうが競合はいっぱいいて、そのようななかどれだけくぐり抜けられるかなので、必然的にレベルは上がるとは思います。岡山だけど、東京の水準に近づけたい。
東京から作家や講師を呼んで、本物を見て知ってもらって、それを当たり前にする。レベルを上げていく。どこにいても対等に戦える環境作りを目指しています。
![須田社長](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/DSC03377_voice.jpg)
須田さんの考えに、勇気をもらえるかたも多くいるのではないでしょうか。
須田
どう稼ぐか、世間にどう露出していくか、アーティストそれぞれの価値観があるとは思いますが、今ボイスに所属しているアーティストで、東京のメジャーでデビューした子よりも稼いでいるケースが実際にあります。
歌をやっているというのもありますが、作曲を採用されると一曲でそれなりの報酬になることもあり、さらにビジュアル面で企業とマッチングすればCM出演につながることもあって、メジャーに行かなくても稼げている子はいます。
今いる所属作家のShunは「なにわ男子」に、社員でもあるTommyは地元の姫路と倉敷を拠点にしながら「後藤真希」をはじめとするメジャーアーティストに楽曲提供できるようになりました。
作曲活動をやりながら、うちの音楽スクールで講師もしています。彼ら自身の努力に加えて、うちに所属してもらってから縁をつないでいるうちに、今はアーティスト側から依頼が来るようになりました。最初はまさかメジャーアーティストに曲が提供できるとは思っていなかったと思います。
東京に行かないと無理という風潮がまだまだあるなかで、自分が生まれたところや一地方を活動拠点にしながら、アーティスト活動ができる、そして稼いでいく、というモデルケースを今つくっているんですね。
須田
アーティストになっても、稼げないならやめていく。特に地方で単独でやっていると、甘く見られることがあります。
仕事内容に見合ったギャラの交渉も、事務所を通せば自分でやる必要はありません。しっかりとしたサポートがあれば、一人でも立てます。
“やれることをちゃんとやっていく” 岡山であることを言い訳にしない
6年間さまざまな実績を重ね、現在7年目、問い合わせは増えているのでしょうか。
須田
今度、姫路で開催されるイベント(2024年12月に開催済み)では、当初キャスティングだけだったのですが、運営サイドにも入ってコンサルティングのようなこともしています。
いろいろな先から「音響やってください」「撮影やってください」と頼まれて、どんどん広がっている感じです。
![2024年12月に兵庫県姫路市で開催された「SHIRASAGI MUSIC FESTIVAL 2024」 写真提供:株式会社ボイス](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/02/DSC07498voice.jpg)
2025年に予定しているイベントや活動はありますか?
須田
2025年の2月に開催する「2025 Miss SAKE(ミス サケ)岡山大会」の主催をすることになりました。これまでは一般の会社がパートナーとなってイベントを主催するスタイルでしたが、うちはイベンターでありながら、パートナー企業にもなります。
「2025 Miss SAKE 岡山大会」
開催日程:2025年2月16日日曜日
開催場所:倉敷アイビースクエア エメラルドホール
※一般のお客様の観覧も可能です。
地方の大会は主催者の考えでプロデュースができて自由度が高いので、ボイスらしさを出せそうです。音楽事務所が大会の主催者になるのは初めてらしく、関係者のみなさんからも楽しみにしてもらっています。
また、他県からもイベント運営のオファーをいただいており、すでにいくつか決定しています。さらに、中国地方のある施設でのフェス企画を進めており、キャスティングやステージ運営に参入予定です。詳細はまだお伝えできませんが、この企画が実現すれば、その県で最大級のイベントになりそうです。
岡山周辺でイベントするならボイスさん、という流れができてきているのでしょうか。どんどん仕事が展開しているようすに聞いているとワクワクしますが、須田さん自身はどのような心境でしょうか。
須田
然(しか)るべき流れになってきたと感じていますが、一方で、大丈夫かな、できるかなってふと思うこともやっぱりあります。
すべてのイベントの運営を僕がメインとなり、営業しながら会社のことと並行して、現場をやるので……。常に「求められるならやります!」という姿勢ではあるのですが、対応しきれないので残念ながら断っている現状もあります。
岡山の倉敷を拠点にこれからも進んでいくために、今後に向けた抱負を教えてください。
須田
目標はいくつかありますが、あまり深くは考えていません。「やれることをちゃんとやっていく」のみです。
当面のテーマとしては「価値観を都会と合わせていく」ことですね。イベントをするにも、「岡山だからこれぐらいだよね」ではなくて、ちゃんとしたイベントをやっていく。地方だから、都会だからといった言い訳をせずに、東京・大阪で常識のようにおこなわれているものが、当たり前にここにもあるという状況を作ることを目指します。
また、「フェスといえば?」と聞かれたときに、そのラインナップのなかに「桃太郎フェス」が自然と入るような存在感を持たせたいです。さらに音楽事務所のラインナップにおいても、「岡山ならボイスさんですね」といった認識が広まるようにしたいと考えています。
取材を終えて
インタビューでは終始淡々と話されていた須田さん。一見ギラギラしていない自然体なのですが、話を聞いているうちに、強い信念と明確なビジョンを持っていることが伝わってきました。
そしてもっとも印象的だったのは、須田さんの実行力の根底にある「自分を疑わない精神」です。
「できるって自然に思いました」
「目標に向かって動くだけなんで」
「やる前から難しいとかデメリットとかを考えたことがないんです」
自分に制限をかけていない素直な言葉が度々出てきて、挑戦する人としない人の違いは、こうした姿勢に表れるのではないかと感じました。
加えて「人が好きで、人を嫌いになりにくい」という須田さんの生まれながらの性分との相乗効果で、縁を大切にしながら、これまで立ち止まることなく進んできたのでしょう。
これからどのような未来を切り拓いていくのか、株式会社ボイスと須田さんのさらなる飛躍が楽しみです。
株式会社ボイスのデータ
![](https://cdn.kuratoco.com/wp-content/uploads/2025/01/S__131457042.jpg)
団体名 | 株式会社ボイス |
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業種 | 音楽事業/スクール事業/イベント事業/デザイン事業 |
代表者名 | 須田峻輔 |
設立年 | 2018年 |
住所 | 岡山県倉敷市阿知1丁目7-2 くらしきシティプラザ西ビル5F |
電話番号 | 0120-928-710 |
営業時間 | |
休業日 | |
ホームページ | 株式会社ボイス |