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令和2年度 災害ボランティアセンター設置運営訓練 〜 奈良市・倉敷市・高知市社会福祉協議会の相互支援協定を強固に

令和2年度 災害ボランティアセンター設置運営訓練 〜 奈良市・倉敷市・高知市社会福祉協議会の相互支援協定を強固に

知っとこ / 2020.12.15

毎年のように災害が発生するようになった現在、災害ボランティアセンターを開設する社会福祉協議会、行政、市民にとって災害は「どこかの出来事」ではなく、「意識しておくべき現実」です

そんな事態に備え、2020年11月23日(月)に、奈良市・倉敷市・高知市の3市社会福祉協議会による「災害時等における相互支援に関する協定」が締結されました。

そして、連携を強化するべく、奈良市社会福祉協議会高知市社会福祉協議会の職員も参加し実施されたのが「令和2年度 災害ボランティアセンター設置運営訓練」です。

当日のようすを紹介します。

記載されている内容は、2020年12月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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奈良市・倉敷市・高知市社会福祉協議会「災害時等における相互支援に関する協定」

調印式のようす

当日(2020年11月23日)の午前中は、奈良市・倉敷市・高知市の社会福祉協議会(以降「社協」)による「災害時等における相互支援に関する協定」が締結されました。

来賓は倉敷市の伊東香織市長、岡山県社会福祉協議会の小川敏朗常務理事(会長代理)です。

調印後の写真撮影
左から以下の順
倉敷市長:伊東香織 氏
奈良市社会福祉協議会 会長: 福井重忠 氏
倉敷市社会福祉協議会 会長: 中桐泰 氏
高知市社会福祉協議会 会長: 吉岡章 氏
岡山県社会福祉協議会:小川敏朗 氏

倉敷市社会福祉協議会会長の中桐泰さんは、「協定の調印を機に、3市の強固な関係を築きたい」と語っていました。

この協定にはポイントが2つあります。

  • 大規模災害の発生時は、発生後すぐに被災地へ駆けつけ業務をサポートする
  • 3市は100キロメートル以上離れており、同時被災の確率が低い

業務サポートは「災害ボランティアセンター(ボラセン)」の運営が主要業務になると思いますが、「災害時、行政や他の社協がサポートする仕組みがすでにあるのでは?」と思うかたもいるかもしれません。

確かに、被災地の社会福祉協議会を広域で支援する、県内社協の相互支援協定や社協中国ブロック内での「ブロック派遣」という仕組みがあり、ブロックを超えて全国で支援する場合もあります

平成30年7月豪雨において、倉敷にも県内のほか近畿・中国地方から社協による支援は行われました。

しかし、被災地の要望を踏まえて支援(内容)の可否をそれぞれが納得したうえで、派遣職員の調整をするのに時間がかかるため、もっとも人手が必要な災害発生直後のサポートはどうしても難しくなるという課題があります。

今回の3市協定は独自のもので、すでにある仕組みによる派遣よりも前に被災地をサポートするように動くことがポイントなのです。

災害ボランティアセンター設置運営訓練

情報交換会のようす

調印式の終了後、3市社協の情報交換会を経て、午後から「災害ボランティアセンター設置運営訓練」が実施されました。

進行順内容登壇者
1開会挨拶倉敷市社協 事務局長
川原伸次 さん
2講義「災害ボランティアセンターを社協が中心となって運営する意義」日野ボランティア・ネットワーク
山下弘彦 さん
3災害ボランティアセンター模擬設置訓練
4振り返り

開会挨拶

開会挨拶

会の冒頭倉敷市社協 事務局長 川原伸次さんより、挨拶と訓練の目的などが共有されました。

講義「災害ボランティアセンターを社協が中心となって運営する意義」

山下弘彦さん

「災害ボランティアセンターを社協が中心となって運営する意義」として、日野ボランティア・ネットワーク 山下弘彦さんより講義が行われました。

山下さんは平成30年7月豪雨の際も、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P企業・社会福祉協議会・NPO・共同募金会が協働するネットワーク組織)」として支援活動を行なっています

講義の内容を紹介する前に、社会福祉協議会という組織について簡単に紹介しましょう。

社会福祉協議会(社協)は、地域でおこる様々な福祉問題を地域のみなさんと一緒に考えたり、保健・医療・福祉などの関係者、行政機関の協力を得て、「誰もがいつまでも住み慣れたまちで安心して暮らせるまちづくり」をめざす公共性・公益性の高い民間の非営利団体です

引用:倉敷市社会福祉協議会HP

筆者自身も2018年当時誤解していたのですが、社協は行政ではなく「民間組織」です

つまり、民間の経済論理で活動し、勤務する職員は「公務員」ではありません。

さらにいえば、「災害ボランティアセンターは社協が運営するもの」と、決められているものでもないのです。

山下弘彦さんの講義

では、なぜ災害ボランティアセンターを社協が運営しているのか?

講義からいくつかポイントを紹介します。

  • 災害時の支援は、被災した地域支援・住民支援
  • 災害ボランティアセンター運営は、社協の専売特許ではなく協働・連携が必要

例えば平時から生活支援が必要な住民とコミュニケーションをとったり、地元に根ざした活動を行なっているのは社協です。

災害発生時は、ゴミの撤去など力仕事がピックアップされがちですが、被災者に寄り添い、元の暮らし・リズム・地域コミュニティを取り戻すまで、長期的に支える必要があります

このため、いつしか社協が災害ボランティアセンターの運営を担うようになったのです。

講義のようす

災害ボランティアセンターにおける社協に求められるものは、すべて自分たちで行うのではなく、「協議会」として協働・連携しながら総合力を発揮すること

筆者が倉敷市災害ボランティアセンターにおいて専門家の立ち位置で、ICT機器のセットアップサポート、Peatixを利用したボランティアのWeb受付を導入したのは、まさにそういった事例でしょう。

災害という緊急事態においては、社協職員も被災しているケースがあります。

「チーム」として地域を支えていく視点が重要なのだろうと感じました。

災害ボランティアセンター模擬設置訓練

訓練会場

続いて、ICTツールの利用などの簡単な説明・注意点のレクチャーを行い、訓練が行われました。

前提は以下のようなものです。

発災から4日目【平成30年7月10日(火)】 災害ボランティアセンター本部設置場所が決まり、翌日から災害ボランティアセンターを開設することが決定。明日からの設置に向けた役割分担や業務内容の確認、準備物について協議を模擬的に行います

「明日から」災害ボランティアセンターの設置が決まったと仮定して、設置する拠点(サテライト)ごとでグループに分かれて、必要な事項を話し合って決めていきます。

平成30年7月豪雨当時の想定ですが、当時と異なるのはコロナ禍ということで、「関係者が全員集まる」ではなく、グループごとに分散し、それらの拠点はリモート(ネットワーク)で繋がっているという点です。

会場1
会場2
会場3
会場4

拠点ごとに検討を行い、その後報告が行われました。

  • ニーズ(支援要請)数に対して、予想ボランティア数が大幅に上回っているため、「ニーズ調査」を行なってもらおうと思う
  • 他拠点に人員を回したい
  • 情報共有に必要な、通信回線の調達はどうするか

さまざまな報告があがり、その間に「通信回線が切れてしまったり」、本番でも起こりえるようなハプニングもありつつ、真剣に取り組んでいました。

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おわりに

2020年11月のまきび公園

平成30年7月豪雨から2年。

街の姿はかなり元に戻りましたし、住民も徐々に戻って来ています。しかし、更地が多く今も災害の爪痕は残っており、住民すべてが「元の生活」を取り戻したわけではありません。

倉敷市社協としても、「倉敷市災害ボランティアセンター」から「まび復興支援ボランティアセンター」と名を変えながら、2020年3月までボランティアセンターを運営し、現在も「倉敷市真備支え合いセンター」として生活支援を継続的に行なっています

合わせて「次に災害が起こったとき」のことも考えた活動も、並行して行なっているのです。

「災害時等における相互支援に関する協定」をきっかけに、社協間の連携は強化されると思いますし、「初動」は早くなるでしょう。

しかし、人任せにできるものでもありません。地域のことは、自分たちしかわからないこと、決められないことも多いからです。

実際平成30年7月豪雨の災害ボランティアに携わっていたとき、こんな話を聞いたことがあります。

災害支援の基本は「自助→共助→公助」の順番である

社協が運営する災害ボランティアセンターは、共助・公助の分類でしょう。

では「自助だから、全部自分でなんとかする必要があるのか?」と問われたら、そういう意味ではありません。

普段から地域のことを知り・活動に関わることで、できることの範囲が広がると筆者は思います。

社会福祉協議会は、そのような活動を実際に行なったり・支援する組織でもあるので、うまく活用しながら地域の防災力を高めていけたら良いのではないかと感じました。

取材協力
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戸井健吾

戸井健吾

1979年生まれ、倉敷市在住
2児の父親

システムエンジニアの仕事に携わりながら、ブログ・イベント運営など様々な仕事を行っています。

現在は当メディアを運営する一般社団法人はれとこの代表理事を務めつつ、フリーランスとしても活動中。

自分自身が美観地区を楽しみながら、「行ってみたい」と思える情報を発信することをモットーにしています。

信頼できるWEBメディアになれるように、メンバーが一丸となって運営しています。

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