行商から店を構え、ランチやスイーツを提供するcafe「庭とブンガク」。人気のプリンを改良し、アップデートしています。店長の中原詳介(なかはら ようすけ)さんに話を聞きました。
かわいいプリンを家でも食べてほしい
なぜ2種のプリンをアップデートしたのですか?
中原(敬称略)
プリンといえば、「硬い」とか「なめらか」っていう食感を表現しますが、今はやはりSNSとかでビジュアルがすごく大事ですよね。でも、ひっくり返したレトロプリンは結局お店に行かなきゃ手に入らないし、そこで食べないといけません。もしくは、お店でひっくり返した状態で販売しているものはあります。
少し前に僕がインターネットでプリンを販売したときに、お客さんがInstagramに載せてくれたことがあります。プリンをきれいに抜こうとして「失敗した」といって、ぐちゃぐちゃな状態が載っていて。もうこれは大変だと思いました。
前々から、プッチンプリンのようにできないかなと思っていまして。プッチンプリンは容器の形状によってひっくり返せます。容器がないからそれはできないんですけど、ゼラチンの入ったプリンってブンって振ったら遠心力で抜けるのをご存じですか?くるんと回るときれいにパカッと抜けるんです。
でも、それができるのはゼラチンがあるプリン限定で、卵を焼き固めたものだと表面が焼けて容器にくっつくのできれいに抜けません。ゼラチンなしのプリンが一切抜けないかといったら、たまにできるものがあって。何かの拍子で抜けるものは、きっとできるんだろうと思ったんです。
温度やレシピを変えながら改良した結果、1万個に1個ぐらい抜けないものがあるかもしれないんですけど、ほぼ100%抜ける状態になりました。スタッフが試しても全部できたので、誰でも手軽にレトロプリンが楽しめる商品を販売できるようになったんです。
ゼラチンが入っていないのに、抜けるプリンができたのですか?
中原
そうです。完全に無添加で、凝固剤や安定剤、植物性油脂や香料、着色料などを一切使っていません。2024年5月から販売をはじめました。
なんていうんですかね、これはひとつの社会問題なんですよ。かわいいプリンが手元にないっていう社会問題。この社会問題を解決したくて可愛すぎるプリン(硬めプリン)を作りました。容器に入った状態を写真には撮らないじゃないですか。やはり逆さにした形じゃないといけないんですよ。
ゆっくり買い物ができる「まぜこぜ菓子店」
店先に車がありますが、お菓子を販売しているのですか?
中原
2024年4月から「まぜこぜ菓子店」をはじめました。うちの店が靴を脱いで上がらないといけないので、持ち帰りのために来られる人にとって、ハードルが高いなと思って。それをなんとか解消したいと思ったときに、車庫へ持ち帰り用の店ができたら良いなと思ったところから誕生しました。今まで玄関から注文するかたもいらっしゃって、靴を脱ぎたくないかたはけっこういるようです。
まぜこぜ菓子店をどのように利用してほしいですか?
中原
気軽に立ち寄っていただければ、と。
基本的には無人で、ボタンが置いてあるだけです。ボタンを押していただくとスタッフが出て来る仕組みなので、人目を気にせず買い物ができます。ゆっくり選んで決まったら押してください。もしくは欲しいものがないな、と思えばそのまま立ち去っていただければ。店員がいるという変なプレッシャーもなく、商品をゆっくり見られます。
車はまぜこぜ菓子店のために購入して、DIYしました。冷蔵ショーケースを入れているので、プリンもここで購入できます。
移動できるので、イベントがあれば主催者さんからお呼びいただけるとうれしいですね。
プリンの探究を続けたい
さまざまなことに挑戦され続けていますが、今後の目標はありますか?
中原
プッチンプリンのようにひっくり返せる容器の開発をしたいですね。一番の問題はお金で、1,000万円単位の話になると思います。開発するだけではなく、商品を消費するだけの販売力もないといけないです。お金があるだけじゃなくて、販売経路もしっかり確保した状態にならないと挑戦できません。
容器は缶詰バージョンも考えています。缶詰を作るにはそれなりの設備が必要なので、こちらにもお金がかかりそうです。でも実現できると輸出ができます。日本のプリンとして、海外に行ってほしいなと思っていて。キャッチコピーは「プリンがあれば世界はかわいい」ですね。
缶詰があれば、どんな場面でもプリンが用意できるじゃないですか。山や街の景色にかわいさはないですよね。でも、プリンと写真を撮ると、たちまち景色がかわいくなる。プリンがあると世界はかわいいんです。
開発にはリスクがかかるのに、その意欲と熱意はどこから来るのですか?
中原
好きなことに説明ができないんですけれども、一番しっくりくる話があります。僕が20代の頃に絵を描いている人に「なんでそんなに絵を描くんですか?」って聞いたことがあって。すると、汚い話ですけど「トイレと一緒だよ」って言われたんですよ。内面にあるものを排出しているだけ。
僕もまったく同じで、エネルギーがあるとかないとかではなく、自分が向く方向に歩いているだけのことなんです。自然な行為で、それがすごいという感覚は一切ないです。ただ、到達するまでは、すごく困難なのはわかるんですけどね。
おわりに
三輪車での販売から始まり、店舗を構え、人気のプリンをアップデートし続けるcafe「庭とブンガク」。新たな挑戦をしたくてもなかなか動き出せない筆者は、中原さんに尊敬の念を覚えます。次々と新たな試みを意識しているわけではなく、ごく当たり前に捉えている点も驚きました。
現状に満足せず、次のステップに進み続ける中原さん。きっと新しい容器の開発の夢も実現することでしょう。cafe「庭とブンガク」のプリンが海外に飛び立ち、世界をかわいくする日が来るのが今から待ち遠しいです。
cafe「庭とブンガク」のデータ
名前 | cafe「庭とブンガク」 |
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住所 | 岡山県倉敷市老松町3-14-45 |
電話番号 | 080-7459-0572 |
駐車場 | あり 難波駐車場の黄色いポール7台分 |
営業時間 | 午前11時~午後5時(ラストオーダー午後4時) |
定休日 | 日 まぜこぜ菓子店の営業は木~土曜日 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 午後5時以降の利用は要予約 |
座席 | 22席 テーブル席:16 カウンター席:4 ソファ席:2 |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | cafe「庭とブンガク」Instagram |