いたるところにある「六角形」と「八角形」
館内を見て回っていて気になったことがありました。
いたるところに「六角形」と「八角形」があるのです。
いたるところにあるのです。このデザインをどこかで見たことがあります。
倉敷国際ホテルです。
国際ホテルの場合は「六角形」ですが、設計者は同じ浦辺鎮太郎ですし、雰囲気は近いですよね。
このことについて浦辺設計のかたに質問してみると、「八角形を好んでいたかもしれないし、『四角形の面取り』を行なった結果そうなったのかもしれない」とのことでした。
「館長室」は会議室や楽屋となっている
倉敷公民館には「館長室」があります。
オープン時の「倉敷文化センター」時代には館長室として利用されていました。
しかし、その後人員削減などがあり、業務効率化のため1階事務所に全職員が集まるようになったため、現在は会議室や楽屋の一部として利用されています。
新型コロナウイルス感染症対策のため、ロビー・会議室等の座席を減らしている関係で、館長室に椅子が保管されています。
シャンデリアなどの豪華なインテリアに、館長室時代の名残を感じます。
市民の活動発表の場となる387名収容の「大ホール」
通常は387名収容可能な大ホールです。
新型コロナウイルス感染症拡大対策のため、現在は一部座席の利用を禁止し、定員数を減らして運用されています。
ピアノの発表会など、市民が利用する少し大きな舞台として今も活躍しています。
真鍮(しんちゅう)の手すりなど、細かい部分は時の経過とともに味わいを増しています。
大原總一郎の夢「音楽図書室」
最後に紹介するのは、「音楽図書室」です。
約2,000枚に及ぶSPレコード(大原コレクション)が寄贈されており、その後LPレコード・レーザーディスク・CDなどが随時追加され、現在でも倉敷市民はもちろん、観光客含め誰でも鑑賞可能。
大原總一郎が生前愛用していた蓄音機チニー・2P、ヴィクトローラ・8-60も後に寄贈されており、總一郎が夢中になった音楽と同じものを今も聴くことができるのです。
聴いてみたい場合は、職員さんに声をかけて確認してください。
おわりに
倉敷美観地区の魅力は何かと問われたとき、以前は「伝統的な町並み」と答えていました。
しかし、今は少し変わっていて「そこに生活している人がいて、古いものと新しいものが調和しているところ」と答えています。
観光地のど真ん中に住民が利用する公民館があり、今も使われている。
倉敷公民館は、美観地区内の建物としては比較的新しい部類になりますが、古くさいとも新しいとも感じず、自然に佇んでいることが魅力と感じます。
一般的には会議室などの「貸室」、トイレで利用することが多いと思います。しかし「ここにある意味」を少し考えてみると、今までとは違う見方もうまれるかもしれません。
建物としての倉敷公民館に着目して、ぜひ足を運んでみてください。
- 記事監修:株式会社浦辺設計
- 撮影(外観):佐々木敏行
▼建物ごとに深掘りした長期連載記事「くらしき建築紀行」は、以下のバナーをタップしてご覧ください