浦辺設計 河本二郎さんインタビュー
くらしきアーキツーリズム2025の企画に携わった、株式会社浦辺設計 取締役執行役員の河本二郎さんに、今回の注目点やみどころについてお話を聞きました。

今回「建物再生」をテーマにされた経緯について教えてください。
河本(敬称略)
倉敷美観地区周辺には、これまでのくらしきアーキツーリズムでも取り上げてきたように、新旧さまざまな建物が残されています。
高度経済成長を経て、現在ある建物をどう使うかが大事な時代に変わってきた1980年代。倉敷市出身の建築家 楢村徹さんが、仲間の建築家とともに倉敷美観地区周辺の古民家再生を手がけるようになりました。
楢村さんの手がけた建物は、小規模な増築と改修をおこなうことで、町に新しい魅力を追加するきっかけとなりました。
もとの建物を残しながら新しい要素を追加した建物が増えていくことが、倉敷美観地区周辺の将来を考えたときに重要ではないかと考え、今回「建物再生」をテーマにしました。

前回(2024年)から変わった点、新しくなった点について教えてください。
河本
毎年色違いで作成している「おもいでファイル」は、今回のテーマである「建物再生」にあわせて華やかな雰囲気を意識した配色で製作しました。
グレーの表紙との相性を考慮し、やや水色がかった紐を選んで組みあわせています。私たちとしては、この配色に古いものが新しくなるイメージを込めています。
もう一つは、「たてものカード」の裏面に描かれている鳥瞰絵図です。
今までも2枚のカードをつなげて楽しめましたが、今回はそれぞれの建物が近接していることもあり、5枚のカードすべてがつながるようになりました。

鳥瞰絵図は、大きな絵としてみたときに、人の営みや車のようすなど、まちの細部が良く見えることが魅力の一つですので、ぜひつなげてみていただきたいです。
南北に走る倉敷川沿いの通りと、東西の本町通り、この二つのメインストリートがつながっていることも良くわかるかと思います。
今回のアーキツーリズムで注目してほしいところはありますか。
河本
建物の紹介となると、どうしても外観に目を奪われがちですが、今回はなかに入ったときに新しさを感じるような建物を選んでいます。
なので、一見すると少し地味な印象を持たれるかもしれませんが、外観は古い街並みに馴染みながらも、内部は時代にあわせてアップデートされているという部分をよく見ていただけるとうれしいです。
今回紹介した建物に共通していることは、古くからある材料や伝統的なディテールはそのままに、新たな要素を追加していることも特徴です。
たとえば、従来の伝統的な日本建築のなかにパティオ(中庭)を設けるなど、建物再生の際に今までになかった要素を意識して取り入れるようにしています。

最後に、読者に一言コメントをお願いします
河本
浦辺鎮太郎が倉敷国際ホテルなどの新しい建物を作り、倉敷アイビースクエアにて建物再生の先例を示し、楢村さんが町家を再生しながら守ってきた倉敷のまちです。
その思いに呼応すべく、歴史ある建物や景観に配慮しながらも、新しさを感じるものが町並みのなかに入っていくきっかけになればと思い、私たちは建物再生の活動をおこなっています。
観光で倉敷に来られたかたも、アーキツーリズムに参加して建物のことを知っていただくことで、倉敷の町並みへの理解が深まり、より充実した旅になるのではないかと思います。
また、倉敷における建物再生の実例を知ることで、自分の町でもまちづくりや古民家再生に目を向けてもらえたらうれしいです。
おわりに
今回のアーキツーリズムを通して、普段特に意識することなく入っていた倉敷美観地区の建物にさまざまな工夫があることを再認識しました。
通り土間やパティオ、広場など、町家のなかに入っていけるような改修を施すことによって、表通りという「線」だけでなく、町家のなかといった「面」を利用できることになり、結果として町の魅力が増しているのではないかと思います。
また、たてものカードを集めながらのまち歩きは、観光のかたには倉敷というまちをより深く知る手段として、地元のかたには普段の風景のなかに新たな発見を得る手段として、それぞれ楽しめるのではないかと思いました。
瀬戸内海建築憲章
最後に、インタビューの際にも度々出てきたキーワード「古い建物のなかに新しい要素を追加する建物再生」に関連して、1979年に浦辺鎮太郎氏が仲間の建築家(松村正恒氏、山本忠司氏)と連名で発表した「瀬戸内海建築憲章」について触れておきたいと思います。
瀬戸内海建築憲章
瀬戸内海の環境を守り、瀬戸内海を構成する地域での環境と人間とのかかわりを理解し、媒介としての建築を大切にする。
人間を大切にすることから建築を生み出し創り出すことを始める。
それには、瀬戸内海の自然を大切にし、そこから建築を生み出すことにある。
環境と建築とが遊離し、建築が一人歩きすることはない。
先人達のつくった文明を見究め、これを理解し、将来への飛躍のための基盤とし、足がかりとする。
過去および現代において、瀬戸内海が日本人のための文明の母体であったことを知るとともに、それが世界に開けた門戸でもあったことを確認する。
すなわち、われわれはこの地域での文明を守り、それを打ち出していくことを併せて、広く世界へ目を開き、建築を通じて人類に貢献する。
1979年9月
浦辺鎮太郎・松村正恒・山本忠司
倉敷における建物再生の先駆者、浦辺鎮太郎氏が抱いた地域に根差した建築への思いは、時を越えて現代の建築家たちに受け継がれているのではないでしょうか。
くらしきアーキツーリズム2025は、2026年1月31日(土)まで開催しています。
今までの集大成にふさわしい、未来につながる建物再生。思いをつなぐ人々の仕事に触れつつ、散策がてら訪ねてみませんか。
くらしきアーキツーリズム2025のデータ

| 名前 | くらしきアーキツーリズム2025 |
|---|---|
| 開催日 | 2025年10月1日(水) 〜 2026年01月31日(土) |
| 場所 | 倉敷美観地区周辺 |
| 参加費用(税込) | 無料(おもいでファイル500円(税込)) ※「たてものカード」は各施設で無料配布ですが、館内を見て回る際には入館料が必要な施設があります。詳しくは各施設のホームページから確認してください。 |
| ホームページ | くらしきアーキツーリズム2025 |














































