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阪本鶏卵 〜 卵の生産から販売まで。時代に合わせて成長するたまごやのこだわり

阪本鶏卵 〜 卵の生産から販売まで。時代に合わせて成長するたまごやのこだわり

知っとこ / 2022.06.16

有限会社 阪本鶏卵 代表取締役の阪本 晃好さんにインタビュー

有限会社 阪本鶏卵の二代目代表取締役の阪本 晃好さん
有限会社 阪本鶏卵の二代目代表取締役の阪本 晃好さん

阪本 晃好さんは、有限会社 阪本鶏卵の二代目代表取締役。

前代表取締役(現会長)の阪本 安弘さんとともに、阪本鶏卵の事業を展開してきました。

卵屋として地域に親しまれている秘密について、阪本 晃好さんに聞いていきます。

卵のオールラウンドプレイヤーが生まれた背景

卵のオールラウンドプレイヤーが意味することは?

阪本(敬称略)

2019年に、阪本鶏卵のブランドイメージを見直すために強みを整理しました。

卵の生産、加工、直売など、創業当初から続いている卵の卸売業だけでなく、卵に関わるあらゆる事業に対応できるのが阪本鶏卵の特徴です。

卵さえあれば、さまざまな形に変化させられます。

そこで、卵業界を生き残るためのブランド戦略として掲げた言葉が卵のオールラウンドプレイヤー

スポーツの世界におけるオールラウンドプレイヤーのように活躍していこう、という意気込みが込められています。

ブランドイメージを説明する阪本さん

卵の生産から直売までを行なっている企業は珍しいのでしょうか?

阪本

生産や直売など、卵に関する事業を一貫して行なっている企業は他にもあります。

しかし、阪本鶏卵だけの強みがあります。

阪本鶏卵は、惣菜への加工を得意としていて、これまでに玉子焼きや玉子豆腐、だし巻き玉子を作ってきました。

実は、水島という地域性が強く現れていて、工業地帯にある企業へ産業給食を提供していたという歴史が私たちの強みになったんです。

阪本鶏卵の歴史のなかで培ってきた技術を生かして、商品を作り続けています。

卵が運ばれるよすう

強みに気がついたきっかけがあるのでしょうか?

阪本

ブランド戦略を一緒に考えていた企業の社員を、加工場に案内したことがありました。

私にとっては工場内の風景は日常のことなので新しい発想が生まれると考えていなかったのですが、外部からきた人にとっては珍しいものだったようです。

焼き立ての玉子焼きを見ながら「これが食べたい!」と教えてくれました。

私の感覚が鈍っていただけで、実は作り立ての商品を食べたいというのが一般の人の感覚。

ブランド戦略を考えるうえで、これまで培ってきた卵の惣菜を生産する技術が強みになると考えたんです。

直売所ができるまで

生産設備を動かす阪本さん

一般のお客さんへの販売は初めての経験だったと思いますが、どのように始めたのですか?

阪本

阪本鶏卵の強みが惣菜を作れる点にあるというヒントを得て、まず簡易販売所を作りました。

工場の建屋の前に長机を置くだけという、本当に簡易な売店。

告知はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で行ない、費用も時間も負荷が少ないように工夫しました。

私一人が体と時間を使えばいいので、社員の負担にもなりません。

毎週土曜日の朝9時から1時間だけやっていたのですが、地域の人たちからの反応があり、しだいにお客さんが増えていきました。

直売所を常設にしたのは、なぜできたのでしょうか?

阪本

当時は、新型コロナウイルス感染症が広まり始め、企業を相手に販売していた惣菜の収入が落ち込み始めていました。

簡易販売所も好調だったこともあり、一般のお客さんにも販売していこうと、経営方針を転換したのです。

まずはできることから始めようと、2020年5月に直売所をオープンしました。

たまごサンドの開発経緯

たまごサンド

たまごサンドを作ろうと思ったきっかけは?

阪本

新型コロナウイルス感染症で売り上げが下がるよりも以前の問題として、卵の販売価格が下がっていて、経営が成り立たないと感じ始めていました。

そこで、6次産業化を目指してたまごサンドの商品開発を始めたんです。

当時は、養鶏場の開設を準備している段階だったので、6次産業化による岡山県の支援を受けられませんでした。

直売所を開設する目処がたった2019年末ごろに、養鶏場を運営し始めて数年が経過していたこともあり、改めて6次産業化の申請をして承認をもらうことができました。

「6次産業化」とは、農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくこと

農林水産省

どのように開発したのでしょうか?

阪本

遊びの延長のような感覚でたまごサンドの開発に取り掛かり、思い浮かんだアイディアで試作していました。

月に数回程度、水島にある行きつけのバーに試作品を持って行って、マスターや常連客にダメ出しされたことも。

それで、腹が立って、また持っていくことを繰り返していましたね。

いまでは、たまごサンドは阪本鶏卵の目玉商品として、直売所に並んでいます。

阪本鶏卵について説明する阪本さん

たまごサンドの特徴は?

阪本

ボリュームです!

阪本鶏卵で販売しているたまごサンドと同量の卵を使うのは、他社にはコスト面から難しいでしょう。

自社で養鶏場を持っているので、原価をおさえてたまごサンドを作ることができるんです。

もちろん味にもこだわっていて、何度食べても飽きないように優しい味付けにしています。

ボリュームのあるたまごサンドを最後まで食べてもらえる、そしてまた買いに来てもらえるように親しみやすい味を目指しました。

養鶏場を作った背景

星の里たまごのパッケージ

養鶏場を作った理由はあるのでしょうか?

阪本

理由は2つあります。

1つは、全国的に卵の質が落ちているということです。

卵は養鶏場で育てられている鶏から生まれます。

鶏へ与えている飼料の多くはトウモロコシですが、最近はバイオエネルギーの原料として使われるようになり、価格が高騰してきました。

そのため、養鶏場の経営者はコストをおさえるために、価格の安い飼料を選びがちです。

安い飼料は質も悪く、卵の質も悪くなっているのです。

阪本鶏卵について説明する阪本さん2

もう1つの理由は、卵の安定した調達が難しいためです。

卵の生産者は1円でも高く買い取ってくれる企業があると、乗り換えてしまいます。

そのため、質の良い卵を安定的に調達することに頭を抱えていました。

そこで、卵の品質向上と安定調達を実現させるため、2011年に美星町の使われなくなった養鶏場を借りて、卵の生産事業に着手したんです。

品質を求めた卵の生産でコスト競争力は他社に勝てるのでしょうか?

阪本

品質でも、コストでも戦うために考えたのが、阪本鶏卵の独自技術の発酵飼料です。

長年の卸売業を通じて、全国各地から卵を仕入れ、加工する仕事を数十年間続けてきたので、生産者が与えている飼料の情報も把握しています。

頭の中にある知識を使って品質の高い卵を生産する方法を考えたとき、発酵飼料に行き着いたんです。

そして、私と前代表取締役と一緒に現代農業や発酵について勉強して、阪本鶏卵独自の発酵飼料を開発しました。

阪本鶏卵について説明する阪本さん2

阪本鶏卵の将来について

一般のお客さんへ販売を始めて、社員に変化はありましたか?

阪本

お客さんの声を聞いて、自信を持って仕事に取り組む社員が増えたと感じています。

卵の卸売業や産業給食など、企業向けの事業が多かったので、社員がお客さんに会う機会はほとんどありませんでした。

いつも工場の中で働いていて、外に出ることが恥ずかしい人が多かったように思います。

大きな変化があったのは、工場見学会と商品の直売会を開いたとき。

お客さんたちが阪本鶏卵の商品を箱いっぱいに詰め込んで、うれしそうにしているんです。

自分たちの作ったもので、人を笑顔にしている」という実感を社員たちは持つことができました。

直売所ができてからは社員とお客さんが関わる機会も増え、社員たちが意欲的に仕事に取り組むようになったと思います。

生産設備で搬送される卵

社員へ期待することはありますか?

阪本

養鶏場を作るまえは、小さな会社でした。

創業者の父親のワンマンチームで、商品開発も、販売も、仕入れもすべて一人で行なっていたんです。

経営が成り立っていたので良かったのかもしれませんが、社員が育たないんですよね。

ただ、近年は部署が多くなったこともあり、私だけでは手には負えない量の業務があります。

環境の変化もあり、仕事を進めるなかで社員たちは自発的に発想するようになってきました。

役割を持って自分たちで仕事を改善していけるように、社員を育てることが今の目標の一つです。

阪本鶏卵のリブランディング

これから、どんな会社にしたいですか?

阪本

地域に貢献する企業を目指しています。

最近は、テレビ番組で紹介されることもあって、多くの人に阪本鶏卵の名前が認知されるようになりました。

近所に阪本鶏卵さんのような卵屋さんがあってよかった」という言葉をもらったこともあります。

企業向けに仕事をしていたときには、想像もできなかった言葉です。

仕分け設備から出てきた卵

私の祖父は、水島で日用品や食料品を販売する商店を営んでいました。

小さい頃の私はレジ打ちを任されていたこともあり、いつも店のようすを眺めてたんです。

店舗の前に近所の人が集まり、楽しそうに会話を弾ませている光景を思い返します。

実は、阪本鶏卵で直売所を始めたとき、原点回帰だと感じたんです。

祖父の商店と同じように、阪本鶏卵も地域の人たちに親しまれる存在になりたいと考えるようになりました。

卵を手に取る阪本さん

阪本鶏卵の裏側を聞いて

阪本さんの話を聞きながら阪本鶏卵の歴史を振り返り、時代に合わせながら成長してきたことを理解できました。

養鶏場の開設も、一般のお客さんへ向けた販売も、変化する時代のなかで勝ち抜くための戦略

小さなヒントも見落とさずに、事業をつなげています。

急速に変化する時代といわれていますが、阪本鶏卵は時代の流れをつかみ、波に乗っているように見えました。

社会環境に振り回されずに事業を成功させるための手本を、阪本さんに見せてもらったような気がします。

有限会社 阪本鶏卵のデータ

団体名有限会社 阪本鶏卵
業種鶏卵卸売及び鶏卵加工品製造販売・養鶏業
代表者名阪本 晃好
設立年1981年4月 (創業 1966年9月)
住所岡山県倉敷市南畝3丁目13-31
電話番号086-455-7370
営業時間水島本社 工場直売所
午前9時~午後4時30分

阪本鶏卵 美星直売所
午前9時~午後4時
休業日水島本社 工場直売所
定休日:日曜日・年末年始

阪本鶏卵 美星直売所
定休日:火曜日・年末年始
※2023年より1月・2月のみ「月曜日」も定休日
ホームページ阪本鶏卵
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ぱずう(後藤寛人)

ぱずう(後藤寛人)

87年生まれの埼玉育ち。倉敷に転勤でやってきて6年目。メーカーの研究員として働きつつ、週末はゴミ拾いボランティア団体の代表として活動しています。ひとりも知り合いもいなかった倉敷の街。ゴミ拾いを通じてたくさんの出会いがあり、倉敷の魅力を教えてもらいました。余所者から見える倉敷の景色を伝えていきたいです!

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阪本 晃好さんと美星直売所

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