お話を聞きました 株式会社アグリケイエル 販売部長 荻野 良さん
里庄まこもたけの生産・販売に取り組んだきっかけは?
荻野(敬称略)
株式会社アグリケイエルは、株式会社ケイエルシステムというコンピューターの会社が母体となっています。
岡山市に本社を置き、全国の自治体にシステムを販売している会社です。
2011年の東日本大震災で、取引先である自治体で大きな被害があり、東北へボランティアに行きました。
そのことが、地域に目を向けるきっかけとなったんです。
取引先である里庄町役場のかたから、特産品としてまこもたけの生産に力を入れたいという話を聞き、2013年頃から生産を開始しました。
はじめは農業ボランティアという形で、初年の売上はわずか30万円。これでは事業としては成り立ちません。
継続して生産に携われるよう、商品を開発したり、東京や大阪でのイベントに出店し出荷先を探したりと、認知を広げていきました。
2018年、里庄まこもたけの生産と販売を主事業とする株式会社アグリケイエルを設立し、より力を入れていくことに。
今でも繁忙期は、アグリケイエルだけでなく、ケイエルシステムの社員総出で収穫していますよ。
コンピューターの会社からまこもたけ栽培へ! 大変だったのではないですか?
荻野
5月の田植えから9月下旬以降の収穫まで、毎日、草取り。収穫はひとつひとつ、鎌で刈り取り、大変な作業です。
けれど、私たちだからこそできることもあります。
まこもたけは全国的に作られている植物。米が栽培されなくなった休耕田(使われない水田)の利活用であれば、整備等に係る経費の一部を補助してもらうこともでき、米と同じイネ科なので農家さんにとっては作るハードルは低いです。
ただ、「作り方」に詳しい農家さんが、「売り方」にも詳しいとは限りません。
私たちはコンピューターのシステムを販売するプロ。だからこそ、まこもたけの販売に力を注ぐことができました。徐々に販路を拡大し、今があります。
まこもたけの魅力は?
なんといっても栄養たっぷりなところ。食物繊維やカリウムなどが豊富に含まれ、腸内環境を整える効果やデトックス効果が期待できます。
カロリーが低く、ヘルシーなのもポイント。
味については、アクやクセがほとんどないため、和洋中、どんな料理にも合わせやすいです。
健康食材だからこそ、通年で食べることをおすすめしています。
生のまこもたけが食べられる期間は9月後半から11月前半と限られていますが、真空パックのまこもたけは年中販売しています。
まこも葉パウダーも、ふだんの食生活に取り入れやすいと思いますよ。
まこも葉を乾燥させた入浴剤も人気です。
今後は健康面での魅力をさらに引き出し、化粧品や医薬品といった商品開発もしていけたらと考えています。
お話を聞きました 里庄町役場 企画商工課 樋之津 公祐さん
特産品「里庄まこもたけ」が生まれた経緯を教えてください
樋之津(敬称略)
2010年代、農業の担い手が減り、里庄町内に休耕田が増えてきました。
里庄町内の農家さんが水田に何か植えられるものがないかを調べたところ、まこもたけに行きついたんです。
たとえば水田だった場所を畑にして別の農作物に取り組むこともできますが、水気の多い畑となるのでなかなか大変。
まこもたけは同じイネ科で、米が育った水田の環境を有効利用でき、取り組みやすかったのです。
里庄町内のまこもたけの作付面積・生産量はともに年々増えており、2020年の里庄まこもたけの生産量は14トン。
これまでは「里庄といえば!」という特産品はなかなかありませんでした。けれど「里庄といえばまこもたけ」という認知がだいぶ広がってきたと思います。
販売も好調なので、生産者にとっても作りたい農作物になってきていると思います。
コロナ禍で今は中断していますが、中学生の栽培・収穫体験も行なっています。町をあげての特産品にしていきたいですね。
里庄まこもたけを味わうスタンプラリー2021のおすすめポイントを教えてください
樋之津
旬のまこもたけを味わってほしいと、地元の生産者・販売店・飲食店といっしょに2013年から毎年開催しているスタンプラリーです。
毎年、多くのかたに参加いただいている人気のイベントなんですよ。
生のまこもたけが食べられるシーズンは貴重なので、食べたことがないかたもぜひ味わってみてください。
テイクアウトができるお店もありますし、直売所などで購入した生のまこもたけを使った調理にも挑戦してみてほしいです。
毎年、里庄町役場の職員にも好評のイベントです。もちろん、私も参加します!
ぜひ旬の里庄まこもたけを味わい、スタンプラリーに参加してくださいね。
おわりに
荻野さんが撮影用に刈り取ってくれた、まだ肥大化する前のまこも。
私の愛車にセッティングしてくれたので、こんな記念撮影もしましたよ。
「天日干ししたら、入浴剤になるよ」ということで、さっそく実践してみました。
まこもの葉がとってもいい香りで、最高の入浴に! ありがとうございます。
4年前(2017年)に里庄町の隣町へ移住してきた私としては、もはや「里庄といえばまこもたけ」といったイメージでした。
お話を聞き、取り組み始めて十数年と想像よりも新しい特産品だったと知り、驚きです。
町と企業と農家さんの連携こそが、今のような盛り上がりにつながっているのではないかと感じました。
毎年、楽しみにしている里庄まこもたけを味わうスタンプラリー。
飲食店ではこの時期限定のメニューが味わえるのでおすすめです。
今度は生のまこもたけを購入し、サラダやパスタにも挑戦してみたいと思います。