ベーカリー トングウ 代表の吉田 宣弘さんにインタビュー
ベーカリー トングウを運営する、株式会社 トングウの吉田 宣弘(よしだ のぶひろ) 代表取締役にお話を聞きました。
地域に根付いているトングウの店・商品をなくしてはいけないと思い、後継者になると決意
吉田
もともと私は岡山のホテルで、洋菓子やパンをつくる仕事をしていました。
ホテルを退職することにしたとき、ホテルのお客さんだったトングウの先代から、トングウで働かないかと声をかけていただきました。
それがきっかけで、トングウに社員として入社したんです。
その後、先代が引退することになったのですが、後継者がおらず、トングウが廃業の危機になりました。
私は岡山市の出身のため、トングウになじみがありませんでした。
しかし、トングウで働き始めて、トングウが総社市民に想像以上に定着していて、愛されていることを知ったんですよ。
たとえば、私がパンの配送の仕事をしていたとき、道端のおじさんに突然に呼び止められて、「パンが欲しいけど売ってくれないか」とお願いされたり…。
こんなことは、今までなかったので驚きました。
これほどまで地域に愛され、定着している店や商品はなかなかないと思います。
だから、こんなに市民に親しまれているお店や商品を絶対になくしてはいけないと思い、私が後継者になる決意をしたんです。
市民に愛されている商品を守るには、変えなければならないこともたくさんあった
吉田
トングウには、「上あん」「バターロール」を筆頭に、長年親しまれてきたロングセラー商品がたくさんあります。
それらをこれからも残していくには、変えないといけないこともたくさんありました。
今、日本は全体的に人手不足ですが、それは弊社も同じ状況です。
そのため、卸しの仕事を絞りました。
以前は、市内の高校や保育所・企業などでも売っていただいていたのですが、現在は直営店のほかの販売箇所は県内で2ヶ所ほどになっています。
そのぶん、直営店での販売に力を入れることにしました。
イベント出店や、新しい商品も積極的に考えるようにしています。
今まで親しまれてきた商品のほかにも、柱となる商品が必要だからです。
そんな中、新しい柱となったのが、「岡山コッペ」シリーズです。
トングウの強みは給食のコッペパン。それを生かした商品が「岡山コッペ」シリーズ
吉田
トングウは、長く総社地区の学校給食のパンやごはんを提供しています。
なかでも、コッペパンはどこのパン屋にも負けない弊社の強み・特徴です。
トングウならではの強みを生かした商品づくりとして、学校給食の「セルフサンド」をヒントに作ったのが岡山コッペなんですよ。
イベント出店でためしに販売してみたら、大好評でした。
その後、店頭販売用にアレンジして売ってみたところ、1年も経たずに人気商品に育ちました。
あげぱんも、総社の「れとろーど」というイベント向けに、「レトロ」というキーワードから昔懐かしの給食メニューということで「あげぱん」を売ったのがきっかけ。
予想外の人気で、イベント販売だけでなく通常販売もしてほしいという声を多くいただき、店頭販売に至りました。
給食で出しているあげぱんとまったく同じものを販売したのですが、それが懐かしくて良かったのだと思います。
学校を卒業すると、コッペパンやあげぱんは、なかなか食べられません。
岡山コッペもあげぱんも、長く学校給食に携わる弊社ならではの商品なんですよ。
もっと多くの人にトングウの商品を知ってもらう必要があるので、関東での販売も開始
吉田
また、関東地区でのイベント販売や、岡山県と鳥取県の合同アンテナショップでの販売も開始しました。
これからもトングウのパンを維持していくため、いままで総社で愛されてきた商品を、より多くの人に知っていただく必要もあると思うからです。
アンテナショップでは、上あん・バターロール・松笠・フルーツロール・バナナロールなどの袋入りのパンをメインに扱っています。
噂を聞きつけた東京在住の人のほか、現在東京に住む総社出身のかたにも好評です。
「連休で帰省していても、トングウが休みで買えないことがあるので、東京で食べられるのはとてもうれしい」という声をたくさんいただいています。
参加している「パンわーるど総社」の企画は総社に大きな経済効果をもたらしている
吉田
「パンわーるど総社」は、もともと総社商工会議所から始まった企画です。
総社市は、都市規模のわりに小さなパン屋が多く、山崎パンの工場もある影響で、小麦粉の消費量が全国で3本の指に入るほど。
また、パンの出荷量も岡山県下でトップなんですよ。
そこで、商工会議所で「パンで町おこしをしてみてはどうか」という話が生まれ、総社で老舗のパン屋である弊社に協力の話がありました。
「パンわーるど総社」は、市内よりも市外から総社に来てもらって、スタンプラリーなどで市内のたくさんのパン屋に来てもらおうというものです。
結果として、「パンわーるど総社」は総社商工会議所はじまって以来のヒット企画となって、総社に大きな経済効果をもたらしました。
パンでの町おこしは珍しく、全国的にも注目されたんですよ。
「平成30年7月豪雨」の影響について
吉田
弊社の従業員に市内の被災地に住んでいる者がいて、被災してしまいました。
もちろん復旧作業が優先ですから、被災した従業員はしばらく仕事は休みにしました。
しかし、被災した従業員のうち1人は、被災の影響で退職せざるをえなかったのが残念です。
また、真備町は隣の地区なので、真備にもトングウのお客さんが多いのですが、真備の被災の影響でお客さんは減りました。
しばらくして、真備の被災したお客さんが弊社に来店されたとき、昔から食べているトングウのいつものパンを見て「安心した」「ホッとした」という声をたくさんいただきました。
昔からの商品を今も販売していて良かったと思いましたね。
あとは、復興ボランティアのかた向けに、弊社のパンを提供させていただきました。
被災者向けの物資の提供はたくさんあったのですが、ボランティア向けの物資が不足気味だったんです。
そこで、地元のためにがんばってくれているボランティアのかたに、感謝の意味もこめて協力しました。
新しい柱をつくり、次の世代へバトンタッチしたい
吉田
袋パンなど、昔から長く親しまれている商品は、これからも細く長く売っていきたいと思います。
袋パンなどのロングセラー商品は、先代ががんばって作ってきたもの。
今度は、私たちの世代が、先代ががんばってきた商品を広く発信していく役目があると思っています。
関東で販売を始めたのもそのためです。
もうひとつは、新しい柱をつくること。
そのひとつの試みが岡山コッペです。
ほかにも柱が必要だと思うので、ほかの柱を作るべくがんばっています。
昔から引き継がれたものを維持するだけでは成長しているとはいえません。
新しい柱をつくりあげ、その上で次の世代へバトンタッチしたいと思っています。
おわりに
トングウは、総社生まれの私自身も小さなころから食べていて、小中学校の給食や高校の売店、工場の残業で出されるおやつなどで、よく食べていました。
総社以外では食べられないため、総社を離れてからたまにトングウへ寄ると、大量購入をしてしまいます。
取材時も、トングウのパンを大量に購入してしまいました。
それほど総社市民にとってトングウは心の味なんです。
取材のため、はじめて店内に長時間滞在させてもらいましたが、午前中でも常にお客さんが出入りしていて、トングウがどれほど人気があるのかを改めて感じました。
お客さんの年齢層や性別も幅広かったのも印象的です。
しかも、多くのお客さんが袋パンを中心にたくさん買っていたことに驚き。
そして、トングウ代表 吉田さんの「昔から愛されている商品を守るため、どんどん挑戦をして新しい柱もつくり、次の世代へバトンを渡す」という強い思いに、地元出身者として心打たれました。
学校給食にたずさわったことで生まれたコッペパンというトングウの強みを生かした「岡山コッペ」というアイデアからも、その思いが伝わります。
昔から長く総社で愛されている袋パンの数々、トングウの強みを生かした懐かしい給食の味のあげぱん・岡山コッペを、ぜひ楽しんでみてください。
ベーカリー トングウのデータ
名前 | ベーカリー トングウ |
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住所 | 岡山県総社市駅前1丁目2-3 |
電話番号 | 0866-92-0236 |
駐車場 | あり 10台 |
営業時間 | 午前8時〜午後7時 |
定休日 | 日 上記以外の休み(大型連休・盆・年末年始など)は公式Facebookを参照 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 電話による商品の取り置き可能 |
座席 | なし |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | |
子育て | |
バリアフリー | 入口に段差あり (店員による店頭での商品受け渡し可能) |
ホームページ | ベーカリートングウ 岡山県総社市の駅前にある創業80年以上のパン屋 |