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令和5年春の有隣荘特別公開「モノクローム 空間と響きあう色」~ 作品と建築や庭園の調和や対比を楽しむ

令和5年春の有隣荘特別公開「モノクローム 空間と響きあう色」~ 作品と建築や庭園の調和や対比を楽しむ

観とこ / 2023.05.01

倉敷の美観地区には、大原美術館の創設者 大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)にゆかりのある建築物が残っています。

そのひとつが有隣荘(ゆうりんそう)です。

普段は一般公開していませんが、年に2回の特別展開催時などで足を運べます。

令和5年春にも、有隣荘を楽しめる時期がやってきました。

春に開催する特別展は、4年ぶりとのこと。

モノクローム 空間と響きあう色」と題した特別展を、紹介します。

有隣荘内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。

記載されている内容は、2023年5月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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有隣荘とは

普段の有隣荘

有隣荘は、大原孫三郎の私邸兼迎賓館として、1928年に建てられました。

孫三郎が病弱な妻を案じ、家族だけでゆっくりと過ごせる空間をと構想がはじまり、最終的に迎賓館としての役割も備えた建物となりました。

洋風建築和風建築の要素が折り重なる、華やかな建物です。

設計したのは、薬師寺主計(やくしじ かずえ)。

大原美術館なども設計している人物です。

華やかなのは建物だけではなく、窓の外の庭園も。

有隣荘_庭園

今では手に入らないほどの大きな鞍馬石(くらまいし)や、青々とした植物が美しく維持されています。

庭園の新緑も存分に楽しめるのは、春の特別展ならではです。

令和5年春の有隣荘特別公開「モノクローム 空間と響きあう色」とは

有隣荘_モノクローム

春の特別展開催は、新型コロナウイルス感染症の影響で4年ぶりとなります。

会期令和5年4月28日(金)~5月7日(日) 会期中無休
開場時間午前10時~午後4時 会場締め切りは午後3時30分
入場料有隣荘券:一般 1,000円、高校・中学・小学生 500円
セット券:一般 2,500円、高校・中学・小学生 1,000円
 ※セット券にて、有隣荘と大原美術館を鑑賞できる

今回のテーマは「モノクローム 空間と響きあう色」。

名前の通り、大原美術館に収蔵されているモノクロームの作品を12点展示しています。

モノクロームとは、ひとつの色で作られたグラデーションのこと。

なかでも白か黒を用いた作品がほとんどで、色がシンプルだからこそさまざまな楽しみ方ができるのが特徴です。

久しぶりにお目見えする作品も多く、鑑賞すること自体が貴重な機会となります。

モノクローム_内覧会①

展示しているのは、有隣荘1階の洋間和室2階の和室の3部屋。

部屋ごとに違うテーマが設けられているため、まったく違う雰囲気を味わえます。

モノクロームの作品を、有隣荘の建築や庭園とともに鑑賞したらどのように感じるのか。

有隣荘の空間全体を楽しみながら、ゆったりとした時間を過ごしてほしい特別展です。

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展示作品の一部を紹介

「モノクローム 空間と響きあう色」の展示作品の一部を紹介します。

正方形のある7つの黒の要素 カジミール・マレーヴィチ『シュプレマティスム:34の素描』より

有隣荘_正方形のある7つの黒の要素 カジミール・マレーヴィチ「シュプレマティスム:34の素描」より

現在のウクライナ出身であるカジミール・マレーヴィチが、1920年に手がけた作品です。

1階の和室で鑑賞できます。

抽象絵画の先駆者のひとりであったマレーヴィチは、理論的に作品を考え表現するのが強みである画家。

自らが追い求めた芸術の実践として、著書を出版したこともあります。

その1ページが、今回展示している作品です。

有隣荘_内覧会②

白と黒の世界が、大胆に要素を切り詰めることで表現されています。

作品を近くで見ると個性的な作品のように感じても、少し遠くから見ると、有隣荘の建築と調和しているのが面白いところ。

また窓の外では庭園の植物がイキイキとしていて、自然界の色の鮮やかさと作品のモノクロームとの対比も見どころです。

この作品を鑑賞できるのは、令和5年5月2日まで。翌日からはこの裏にある作品を展示予定です。

白磁面取壺

有隣荘_白磁面取壺

2階和室に展示している、富本憲吉(とみもと けんきち)が1931年に手がけた作品。

白のやわらかさと、面取によってできる角のスッキリさが特徴です。

窓の外から差し込む光によって、角が際立ってきれいに見えます。

有隣荘_白磁面取壺と景色

用いている色は白のみですが、角度によってさまざまな表情を見せてくれる作品です。

見る方向を変えて、何度でも楽しんでみてください。

また隣には、イギリスの陶芸家 バーナード・リーチの作品も展示しています。

他の作品との調和や対比を感じられるのも、今回の特別展ならではの楽しみ方ではないでしょうか。

おわりに

有隣荘_内覧会③

令和5年春の有隣荘特別公開で興味深いのは、窓の外の景色も含めて、見るものすべてを通して作品を楽しめること。

作品のみをじっくり見る。そして有隣荘全体を楽しんだうえで、作品を捉え直す。

そうして何度も楽しめるのが、今回の特別展の見どころだと感じました。

大原美術館 学芸員の大塚さんは、このように話しています。

大塚さんより

モノクロームは、東西かかわらず多くの芸術家を古くから惹きつけてきたテーマです。

東洋と西洋の建築様式が融合した有隣荘で、モノクロームをテーマに展覧会をおこなうことにも意味があるのではと考えています。

作品と有隣荘の建築との調和や、庭園の緑・空の青との対比をお楽しみください

新緑の季節となるゴールデンウィーク。

ぜひ、有隣荘で特別なひとときを楽しんでみてください。

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こあ(小溝朱里)

こあ(小溝朱里)

岡山市在住のフリーライターです。21年5月に岡山へ引っ越してきた、新米岡山県民。倉敷のことをもっと知りたくて「くらとこ」ライターになりました。訪れた先の雰囲気や、取材先のオンリーワンな魅力を丁寧に伝えていきます!

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