技術継承と和紙の魅力を伝えていく 神代和紙保存会 インタビュー
観光施設でもある紙の館を拠点に、昔ながらの製法で和紙づくりに取り組む「神代和紙保存会」の仲田 紗らさ(なかだ さらさ)さん、土屋 俊介(つちや しゅんすけ)さんにインタビュー。
保存会設立の経緯や、和紙づくりの魅力などについて聞きました。
継承者ひとりから仲間が集い保存会に
「神代和紙保存会」の設立のいきさつを教えてください。
仲田(敬称略)
2016年に設立しました。まだ5年なんです。(2021年時点)
奥備中神代和紙の歴史は平安時代にまでさかのぼるといわれていて、紙すきを行なう家が何軒もあったようです。
けれど明治時代、工業化に伴い洋紙が台頭し、このあたりでも和紙の伝統が一度途絶えました。
再興のきっかけは、1991年の紙の館の建設でした。
施設の中で紙すき体験をレクチャーできるよう、今の保存会のメンバーでもある忠田 町子(ちゅうた まちこ)さんをはじめとした当時のスタッフに、新見市高尾で高尾和紙を作るかたが指導してくれたそうです。
もともとは神代から高尾へ紙すきの技術が伝承したといわれているので、逆輸入のようなかたちですね。
忠田 町子さんは紙すきが大好きな85歳。
それをきっかけに、しばらくは伝統技法で紙がすけるのは忠田さんだけでしたが、私たちが教えてもらってだんだん仲間が増えてきました。
伝統を絶やさないためにも神代和紙保存会を設立しました。
紙すきを行なうメンバーのほかに、竹細工で道具をつくるのが得意なかたや、大工さん、広報が得意なかたなど、現在7人で奥備中神代和紙の保存に取り組んでいます。
手のかかる和紙だからこその魅力
和紙づくりをやってみてどうですか
仲田
人の手がとてもかかっていることを実感しました。その分、「昔の人は、ここまでして紙を生み出したかったんだな」と感じ、奥深くて楽しいです。
作る工程そのものに無駄がなくて、昔の人から学んでいるような気持ちです。
土屋(敬称略)
実際にやってみると、厚さを均一にするどころか、よれていない紙をつくるのでさえ難しくて。
最初は、なんでうまくいかないのか、理由がわからなくて苦労しました。
仲田
私は最初の一年、数枚しかすけなかったですよ。
土屋
動画を撮って検証もしましたが、昔は動画の技術もなかったから、習得にもっと時間がかかっただろうなと思うとすごいですね。
保存会ではどんな活動をしていますか
土屋
紙すきの活動は、冬の11月から3月に行なっています。
コウゾとミツマタは仕入れたものを使っているのですが、トロロアオイは自分たちで5月に栽培して11月に収穫。根を潰して粘液を採取するところから行なっています。
コウゾとミツマタを煮熟して、冷たい水の中でチリを取り除き、化学物質を使った漂白はなるだけせずに、昔ながらの製法で和紙を作っています。
木の皮を雪の上に広げて置くと、自然と美しい白さが引き出せるんですよ。
仲田
夏の間は、イベントやワークショップを企画しています。最近は商品化にも力を入れています。
伝統を守っていくには、技術習得に加えて、どうやったら使ってもらえるか考えることも大切だと思うからです。使う人がいないと、伝統は途絶えてしまうので。
土屋
こちらはコーヒーフィルターです。昔ながらの製法で作った和紙は、食品と相性がいいと思い開発しました。
今後も技術習得と同時に、手すき和紙の使い心地よさ、奥深さを知ってもらえるよう、工夫を重ねていきたいです。
おわりに
たくさんの工程を踏み、大切に作られた和紙。一枚一枚、作り手の思いまで伝わってくるようです。
「身のまわりのものは大切に使おう」と、自分の生活を振り返るきっかけになりました。
工業化により「手間がかかるから」と一度は途絶えた手すき和紙の伝統が、その手間まで愛されて復興・継承へ。
今後、どんな商品やイベントが生まれるのか楽しみです。
人の手から生み出す和紙づくりの奥深さを体験しに、紙の館に訪れてみませんか。
夢すき公園 紙の館のデータ
名前 | 夢すき公園 紙の館 |
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所在地 | 岡山県新見市神郷下神代1977-1 |
電話番号 | 0867-92-6577 |
駐車場 | あり |
営業時間 | 午前9時~午後5時(紙すき体験は午後4時半まで) |
定休日 | 水 |
利用料(税込) | ◆体験料(1組あたり) ・1~15名:税込1,500円(別途材料費が必要) ・16名以上:税込2,500円(別途材料費が必要) ◆材料費(1枚あたり) ・うちわ(税込600円) ・色紙(税込500円) ・はがき(税込300円) |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 体験は事前予約制。2名以上から受け付け。1名の場合は2コース以上から受け付け。 体験内容の変更は当日も可。 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 夢すき公園|新見市観光協会 |