児島八十八ヶ所日帰り巡拝は、児島に位置する医王山(いおうざん)吉祥院(きちじょういん)により約40年前から開催。昭和59年から始まり、平成6年、平成16年、平成26年と続いています。
5回目となる今回は、本来であれば令和6年に開催される予定でした。しかし、以下の理由で児島霊場がクローズアップされたことなどから令和4年度に開催されました。
- 令和3年に公開された桑田監督による映画「石だん」が、第23回ハンブルク日本映画祭で「5作品のみの監督賞および審査員賞にノミネート」。さらに、ベルギーの映画評論家により紹介。「アジアでぜひ見てほしい映画10本」に選出
- 令和4年に桑田監督による映画「ちゃりへん♪」が公開
- 令和5年は弘法大師の生誕1250年の記念の年になる
筆者も、いずれ児島霊場を巡拝したいと思っていましたが、チラシを見た瞬間に行ってみたいと思い参加を決意。
4日間にわたる児島八十八ヶ所日帰り巡拝について紹介します。
記載されている内容は、2023年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
児島八十八ヶ所日帰り巡拝とは
児島八十八ヶ所日帰り巡拝は、吉祥院の本山敬城(もとやま けいじょう)名誉住職が約40年前にはじめました。
名誉住職の人柄や冗談を交えながらの説明に惹かれて、多いとき(平成6年)には170名を超える参加者もあり7台のバスで巡拝したとのこと。
4日間に分けて、倉敷市の南東に位置する児島半島に点在する児島霊場を巡ります。
一般的に「順打ち」といわれる1番札所から順番に88番札所まで、巡っていく行程もありますが、今回は、「乱れ打ち」。札所の順番を気にすることなく、効率的に巡拝することが可能です。
参考までに、予定されていた行程を紹介します。実際には、各日の行程調整などにより巡拝する札所の変更もありました。
日程 | 日付 | 行程(予定) | 参考 |
---|---|---|---|
1日目 | 令和4年12月3日 | 36番札所 吉祥院から20ヶ寺 | 下図 赤色 |
2日目 | 令和5年1月29日 | 23番札所 稗田大師寺から22ヶ寺 | 下図 黄色 |
3日目 | 令和5年2月4日 | 88番札所 明王院から23ヶ寺 | 下図 緑色 |
4日目 | 令和5年2月26日 | 64番札所 蓮台寺から23ヶ寺 | 下図 青色 |
今回の巡拝では、吉祥院の本山快範(もとやま かいはん)住職を中心に中原三法堂の黒木さん、野村交通の森本さんが案内をしてくれました。
巡拝方法は、バスと徒歩のハイブリッド
児島八十八ヶ所霊場は、四国霊場を模して10分の1の距離とし、東の玉野市にある中蔵院(ちゅうぞういん)を1番札所、右回りに児島半島を巡り、玉野市番田の明王院(みょうおういん)を88番札所としています。
その総行程は約140kmであり、足の弱いかたでも1週間で歩ける設定です。
しかし設定とはいえ、これほどの距離を歩いて回ることは難しいですよね。
そのため児島八十八ヶ所日帰り巡拝では、ご年配のかたにも参加しやすいよう、可能な限りバスで札所に近づき、歩くことで効率的に児島霊場を巡拝することが魅力。
いわゆるハイブリッド参拝です。
今回の参加者は約50名。3台のバスに分かれて巡拝します。
巡拝のお楽しみ 食事
4日間にわたる巡拝は、昼食も豪華であったため、楽しみの一つです。
- 1日目:「鷲羽山レストハウス」
- 2日目:玉野市にある「瀬戸内マリンホテル」でのランチバイキング
- 3日目:玉野市みやま公園内にある「権太茶屋深山店」
- 4日目:倉敷市堀南にある「遊食房屋 倉敷店」
一例として、4日目の「遊食房屋 倉敷店」でのランチを紹介。
最終日ということもあると思いますが、刺身・鍋・天ぷらなどもある豪華な会席料理を堪能しました。
巡拝のお楽しみ お接待
お遍路の楽しみの一つである「お接待」。
ここでは2日目の一例を紹介します。
特に2日目は、参加者のかたからのお接待があり、手縫いの賽銭入れや、13年ぶりに改訂された「児島八十八ヵ所霊場 ガイド本」、飲み物などを頂きました。
お接待について、これまでも飲み物やせんべいが基本。
桑田監督の映画公開による盛り上がりの効果の一つでしょうか。お接待自体、期待するものではないと思いますが、幸運でした。
巡拝作法とは?
吉祥院の本山住職のお話では、「巡拝などの作法はとくに決まった方法もなく、数珠の持ち方扱い方。お線香の本数でさえも、さまざまな作法がある」とのこと。
「教えていただくかたの作法に従うことが良いと思います」と言われたことで、作法に堅苦しくとらわれることなく、安心して巡拝できました。
ここでは、児島八十八ヶ所日帰り巡拝で学んだ、おもな参拝手順をご紹介します。
巡拝のダイジェストを紹介
児島八十八ヶ所日帰り巡拝については、寺や庵などを巡り、巡拝作法により祈りを捧げる繰り返し。
すべての札所などを紹介することは難しいため、4日間の巡拝のダイジェストについて写真を中心にご紹介します。
1日目
▼36番札所 吉祥院(倉敷市児島塩生)から始まり。
本堂に入らせてもらい、児島八十八ヶ所日帰り巡拝の説明を受けた後に、映画「ちゃりへん♪」のロケ地として、撮影されたシーンについて、本山住職による説明です。映画を観たあとだと、より楽しめますね。
▼35番札所 般若院(倉敷市児島通生)での巡拝風景。
服装は、白衣と輪袈裟(わげさ)を着用。各札所に到着すると、ろうそくや線香をあげましたうえで、納札とお賽銭を納め、お経を奉納します。
▼般若院の奥の院(倉敷市児島通生)への参拝した帰り道。昔ながらの狭い道を歩くため、さすがにバスでは近づけません。ケガをしないように、ゆっくりとした歩みで一歩一歩巡拝します。
ゆっくりとした歩みのため、遠くの穏やかな瀬戸内海の海や島々もゆっくりと望めますね。
▼34番札所 円福寺(倉敷市下津井)では、本堂前の鮮やかな紅葉に目が奪われます。
▼38番札所 安楽院(倉敷市呼松)では、安楽院のマスコットまおちゃん(「まほ」とかいて「まお」と発音)による歓迎看板によるお出迎え。「歓迎 吉祥院御一行様」という「お心遣い」だけでもうれしいうえに、「パン」や見たことのない「千手観音にちなんだ孫の手」のご接待を頂きました。
▼1日目の最終は、40番札所 般若寺(倉敷市福田町福田)であり、辺りはすっかりと夜になってしまいました。
児島八十八ヶ所日帰り巡拝では、最後の札所を参拝したあとで、後日の再開を約束しながら5名以上のかたと握手して別れるのが基本です。
握手をすることに、恥ずかしさもありましたが、自然と笑い声の広がりを感じます。1日を過ごした巡拝仲間だからこそできる、素敵なお約束ですね。
2日目
▼2日目の23番札所 稗田大師寺(倉敷市児島稗田町)では、映画「石だん」「ちゃりへん♪」の桑田浩一監督が駆けつけてくれました。筆者は、桑田監督について記事を書かせてもらえたこともあり、親近感があります。朝日を浴びながら説明される住職と桑田監督が素敵です。
▼68番札所 寂光庵(玉野市槌ケ原)へ向かう一枚。このような閑静な田舎道も歩いて巡ります。
80歳を越えるかたがたも参加していますが、年齢を感じさせない元気な足取りをみて、巡拝によるおかげを感じざるをえません。
▼17番札所 観音院(玉野市日比)の鐘楼(右手)も見事ですが、筆者はこの鐘楼からの景色がおすすめです。高台にあるため、眼下に日比の町並みと広がりを望めます。
▼79番札所 本覚院(岡山市南区)の入口では、立派な山門が目印。
3日目
▼3日目の8番札所 龍乗院(玉野市東田井地)の鐘楼門は個性的。コンクリートの柱にタイル貼の意匠です。筆者は昭和を感じます。
▼児島八十八ヶ所霊場とは別に、足の神様として有名な与太郎神社(玉野市八浜町大崎)にも立ち寄りました。全国からも多くのかたがたが参拝にこられるほど、人気のある神社とのこと。普段、目にすることが少ないスイセンにも癒されます。
神社に祀られている「与太郎」とは、宇喜多基家(うきた もといえ)という武将です。玉野市の八浜の地を舞台とした、八浜合戦の際にわずか18歳で討死。
次のようなエピソードが伝えられています。
合戦のなかで足を負傷したうえに、竹やぶに身を隠していましたが、近くの住人が追っ手に隠れ場所を教えてしまい、見つかり落命。
このとき、基家は自分が足を負傷していた事を悔やみ、足の悪い人の助けになることを誓ったと伝えられています。
そして、居場所を明かしてしまった住民たちが、お詫びの気持ちを込めて建てたお堂が、現在の与太郎神社となりました。
▼71番札所 大師堂(玉野市大藪)へ向かう巡拝の道。児島八十八ヶ所霊場のなかでも厳しい山道をすすみます。
▼83番札所 松林寺(岡山市南区宮浦)は、もともと児島湾に浮かぶ高島にあり、明治時代になり現在の土地へ移されたとのこと。現在は、児島湾を望む高台にあり、景色も楽しめます。
松林寺では最近まで、ご本尊である千手観世音菩薩を秘仏として公開していませんでした。なお現在は常時公開されています。この千手観世音菩薩は、もとは讃岐の八栗寺のご本尊であり、弘法大師作とも伝えられる由緒あるもの。
なお、三つの寺が統合された歴史があるため、3体のご本尊が祀られています。ぜひ、それぞれの御本尊を拝見してみてください。
こちらの松林寺では、住職による法楽太鼓と般若心経もいただきました。
筆者も今まで聞いたことがないテンションがあがる般若心経。ぜひ、こちらの映像をみてください。思わず体でリズムをとってしまう新感覚のライブのような般若心経(9分00秒)です。
4日目
▼4日目の64番札所 蓮台寺(倉敷市児島由加)。最終日の巡拝は、令和4年10月4日に落慶された蓮台寺の新本堂から始まります。
▼50番札所 慈眼院(倉敷市尾原)。こちらの山門前にある石だんが、桑田監督による映画「石だん」のポスターで撮影されました。児島八十八ヶ所霊場のなかでも存在感のある「石だん」。実は、この山門からの眺めもお薦めです。
▼慈眼院の本堂前では赤い蠟梅(ろうばい)が咲いていました。秋に始まった「八十八ヶ所日帰り巡拝」ですが、すでに冬から春への季節の変わり目を感じます。
▼51番札所 住心院(倉敷市木見)。こちらで目をひくのは、大師堂の鮮やかな青の壁。なぜ、これほど鮮やかな青色にしたのか、気になります。
▼48番札所 一等寺(倉敷市曽原)の本堂横に珍しい「おさめふだ」の販売機を発見。児島八十八ヶ所霊場とは異なる十三佛霊場(一等寺の裏山に整備)のためのおさめふだです。
▼46番札所 藤戸寺(倉敷市藤戸町藤戸)。源平藤戸合戦の史跡の一つでもある藤戸寺も児島八十八ヶ所霊場の一つです。
馬に乗り、浅瀬を使って藤戸海峡を渡り平家軍に勝利したことで知られている佐々木盛綱。両軍の戦没者の供養のために大法会を催したと伝えられる歴史のある寺としても有名です。
▼42番札所 順木庵(倉敷市粒江黒石)。順木庵の前には白梅が咲き、こちらでも、春の訪れを感じます。
▼43番札所 西明院(倉敷市粒江)・44番札所 先陣庵(倉敷市粒江)。
目の前の山には岡山学院大学や岡山短期大学(倉敷市有城)が見えます。目の前に広がる住宅地や水田は、古くは藤戸合戦の舞台となる藤戸海峡。ここがかつての海峡であったことを想像すると、わくわくしませんか。
▼61番札所 久昌寺(玉野市用吉)。児島八十八ヶ所日帰り巡拝の結願の場所。
案内してくれた本山住職の話で、4日間に渡る巡拝も終わりです。
おわりに
筆者は、以前から興味があった「児島八十八ヶ所霊場」を結願したいと思い一人で参加。
参加前には、「4日間にわたり、朝早くから夜まで体力的にも大丈夫かな」「一人の参加では寂しいのではないか」などの不安もありましたが、快適な巡拝であったため、無事結願できました。
何より参加されたかたがたが、元気で楽しそうに笑顔で巡拝されており、心地良い雰囲気のなかで、一人でも楽しみながら参加できました。
次回の開催は、約10年後と少し先の予定です。
信仰心の厚いかた、児島八十八ヶ所霊場に興味があるかた、健康のためなど、理由はさまざまで良いと思います。
盛り上がりを感じる「児島八十八ヶ所霊場」、ぜひ参加してみませんか。
児島八十八ヶ所日帰り巡拝のデータ
名前 | 児島八十八ヶ所日帰り巡拝 |
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期日 | 令和4年度の日程 ・第1回:令和4年12月3日(土) ・第2回:令和5年1月29日(日) ・第3回 令和5年2月4日(土) ・第4回 令和5年2月26日(日) ※各日、午前6時~6時30分に出発し、午後6時~6時30分に解散 |
場所 | 児島八十八ヶ所霊場(児島半島周辺) |
参加費用(税込) | 各回7,000円(昼食・保険・諸費用込) ※7,000×4回=28,000円を第1回までに納金 |
ホームページ | 医王山 吉祥院│Facebookページ |
【本堂に参拝】
各自、納札とお賽銭を納めます。(熟練者かたがたは)ろうそくと線香をあげまします。
【お経を奉納】