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熱誠まるでんの店主・田村 周さんにインタビュー
こだわりの詰まった多彩な広島お好み焼やサイドメニューが人気の熱誠まるでん。
運営する合同会社 まるでんの代表社員・店主の田村周(たむら しゅう)さんにインタビューをしました。
前職がドクター・ストップに。好物のお好み焼を本職にしようと決意
開業の経緯を知りたい。
田村(敬称略)
もともと私はずっと配送の仕事をしていたのですが、体調不良になってしまいました。
体調は回復したものの、後遺症により医師から「もう配送の仕事はできない」とドクター・ストップがかかったのです。
ショックで打ちひしがれたのですが、生活していかねばなりません。
気を取り直して新たな仕事を探すことにしました。
次の仕事はどのようなものがいいのか探るため、自身の過去を思い返してみると、お好み焼が思い浮かんだのです。
私はお好み焼が大好物で、お好み焼店が非常に多い広島県内の店をたくさん食べ歩いてきました。
そこで「お好み焼店しかないな!」と決心したのです。
目指すのは思い出の店の味
修業はどのようにした?
田村
実は修業らしい修業はしていません。
私は広島県の府中町の出身でして、小さいときに住んでいた自宅の近くに思い出に残る店がありました。
「橋本」という店で、住宅地にありながらお客さんの絶えることがないような人気店。私はそこの常連だったのです。
高齢の女性が切り盛りしていた店で、小学生だった私はよく店主の手伝いをしていました。私は成長するにすれ、忙しくなって店に行く頻度が減り、社会人になってからは行けなくなりました。
そしていつの間にか、橋本は閉店していたのです。
私にとって思い出の店であり、今まで食べてきたお好み焼のなかでもトップクラスのおいしさの店だと思っています。
だからお好み焼店を開業するなら、橋本の味を目指そうと決めたのです。
今はなき店の味をどのように再現した?
田村
小学生時代に店の手伝いをしながら、見たり聞いたりして橋本のおいしさの秘訣は心得ていました。
実際に家でお好み焼を作ってみたところ、橋本に近い味わいを再現できたのです。小さいころに興味を持ったことはずっと覚えていると言われますが、まさにそのとおりですね。
だから補助的にソース会社の研修を受けたくらいで、本格的な修業はしなくともお好み焼は作れました。
ただ実際に営業するとなると、お好み焼の調理以外の面も重要です。経理など店の運営に関すること、接客など。また自分や家族に作るわけではなく、お客様に作る点も違いますよね。お客様が大勢来られたとき、さばきかたなどもコツが必要です。
実際に営業を始めて、お好み焼づくり以外にも大変なことが多くて苦労しました。
なんとか営業を続けていくうち、少しずつコツを掴んでいけましたね。
人の縁で開業し、人の縁で井原へ移転
開業したのはいつ?
田村
開業したのは、2019年(令和元年)11月です。
ただし店舗があったのは現在地ではなく、福山市北部の神辺町道上(みちのうえ)。
開業を決めてから、物件探しと厨房機器探しを始めました。
このとき厨房機器を扱う会社の営業担当から、顧客のなかにお好み焼店を閉めて、その跡地で営業してくれる人を探しているかたがいると紹介されたのです。
そのかたを紹介していただき、いわゆる「居抜き」(※)のような形でオープンしたのです。
※居抜き:旧店舗の設備などを利用して新店舗を営業すること。
神辺から井原へ移転・リニューアルした理由は?
田村
神辺の店は、立地の面で少し難がありました。
その話を井原出身の常連のお客様に話してみたところ「井原市の中心部で、土地を活用してくれる人を探している知り合いがいる」と教えてくれたのです。
しかもそのお客様は井原に対して強い情熱を持っており、「井原に移転して、ぜひ井原の街を盛り上げてほしい」と。せっかくのご縁ですし、大通り沿いで幹線道路や駅にも近い好立地でもあったので、移転を決意しました。
こうして2022年(令和4年)2月に井原の現在地に移転し、リニューアル・オープンをしたのです。
井原ゆかりの名前を付けたメニューがあるのは、移転の経緯もあり、少しでも井原を盛り上げたいという思いがあるからですね。
店名の由来は?
田村
「熱誠(ねっせい)」は「熱く燃える誠意」や「ひたむきな真心」を意味する単語。
お好み焼という熱い料理を真心込めて作り、誠心誠意の心構えで店を運営していきたいという思いを込めています。
「まるでん」は、苗字の頭文字「田」から取りました。
食材や調理法への細やかなこだわり
こだわっている点を教えてほしい。
田村
お好み焼で一番たくさん使う具材がキャベツなので、キャベツにはこだわっています。
使用しているキャベツは寒キャベツです。
時季によって産地は変遷します。暑い時季の産地は北方になりますし、寒い時季は南方が多くなります。
また取引先には「1箱6玉入りの中サイズ」「キャベツのなかが詰まっていて、繊維がシッカリとしているもの」を指定しているんです。
いろいろ試してみて、お好み焼に合う食感・味わいがこのサイズだったので。
キャベツのカットの仕方も独自に考えています。当店では、細めにキャベツをカットするんです。
カット専用の機械を使い、カットの設定も特殊なやりかたにしています。
小麦粉もお好み焼に重要なポイントですね。
当店では「マロン」という銘柄の小麦粉を使っています。味も香りも甘みがあって、うまみも強めなんです。焼いたあと時間が経っても、生地がプルッとやわらかめなのが特徴。
お好み焼は持ち帰りが多いため、持ち帰って食べても生地がやわらかく食べやすいんです。
これは神辺の店舗で、私たちの前にお好み焼店を経営されていたかたに教えていただきました。実際に食べ比べてみたところ、これが一番だったのです。
肉は豚肉・牛肉・鶏肉とも宮崎県産を使用しています。
さまざまな産地を食べましたが、宮崎県産がもっとも良かったですね。
ちなみにお好み焼のソースは、思い出の店「橋本」と同じミツワソース社のものを使っています。私はミツワソースファンでもあるので。
ただ焼そばや焼うどんのソースは、お好み焼とは違っています。
焼そばや焼うどんに合うよう、独自にブレンドしました。
麺にも強いこだわりが。なんと3社から仕入れ!
麺にもこだわりがある?
田村
麺にも強いこだわりがあります。
お好み焼に入れるそば(中華麺)は、福山市の製麺企業に特注しています。
細めでありつつもコシがあり、芯が感じられる麺をお願いしました。
製麺企業が何度も試作をしてくれ、私たちの注文を忠実に再現した麺を作っていただいています。
焼そば用の中華麺は、お好み焼用とは違うものです。
焼そばに合うように、麺の表面はモッチリ感・弾力があり、なおかつ内に力強い芯があるものをお願いしています。
お好み焼のものより、太めにしているのもポイントです。
焼そばは麺が主役ですから、具材に負けない、麺の存在感を楽しめるものを意識しています。
さらにピリ辛麺は、井原市内の製麺企業に作ってもらっています。
以前は別のピリ辛麺を使っていました。
しかし、もう少し細めで、もっとハッキリとした辛さを感じられる麺がほしいと感じていたのです。
そんなある日、たまたまた井原の製麺企業の社長さんが来店されたので、ピリ辛麺について相談してみました。すると後日、社長さんが試作してくれたのです。
幾度かの改良を経て、理想だった細めでハッキリとした辛さが感じられる麺に仕上がりました。
以来、その社長さんの会社のピリ辛麺を仕入れています。
お好み焼の中華麺・ピリ辛麺を細めにしているのは、細めにカットしたキャベツとの一体感にこだわっているから。
麺が細めだと、細めのキャベツが際立つのです!
また、うどんは冷凍麺です。
しかも仕入れは中華麺とは別の企業にお願いしています。
通常のうどんよりも、やや細めなのも特徴ですね。
一度湯がいてから鉄板で炒めるので手間がかかるものの、袋麺よりも冷凍麺のほうがモッチリとした強めのコシがあっておいしいのです。
うどんにもこだわっているため、当店のお客様はお好み焼のうどん注文率が他店より高め。他店はうどんを注文する人は1〜2割くらいのところ、当店では約3割です。
そば党のかたが気分転換でたまたま当店でうどんのお好み焼を食べ、それをきっかけにうどん党になるかたもいます。
麺だけで3社と取り引きしているお好み焼店は、なかなかないんじゃないでしょうか(笑)
お客の要望は積極的に採り入れるが、品質にはこだわる
商品開発、メニュー考案などで工夫している点はある?
田村
お客様の要望を積極的に採り入れているのが、当店の特徴だと思います。
トッピングのハラペーニョは、辛いものが好きなお客様から「すごく辛いのを」という声を聞き、メニューに採り入れました。
同じく辛いものが好きなお客様からの声から「スパイシーカレーマヨ」も生まれています。
もともとカレーを使ったお好み焼を食べたいというリクエストで、「カレーマヨ」を作りました。その後「もっと辛いのを」という要望があって、スパイシーカレーマヨも考えたんです。
さらに炙りネギマヨがおいしそうだけどネギが苦手だという声から、ネギをチーズに変えて「炙りマヨチー」が誕生。
また期間限定メニューだった「ネギ塩」は、通年で食べたいという声が想像以上にあったので、レギュラーメニューに昇格させました。
ネギ塩はソースを使っていないので匂いが残りにくいことから、とくに女性など匂いを気にするかたから圧倒的な人気があります。
また揚げものをたくさんラインナップしたのも、お客様の声が元になっています。
神辺時代も揚げものを少しだけやっていました。しかし、思った以上に揚げものの需要があったため、井原へ移転時にフライヤーを導入し、本格的に揚げものを始めました。
ただお客様の声を採り入れるものの、メニューとして出す以上、一定レベル以上の品質は実現させます。
要望をいただいたら、いったん試作をしてみます。
そしてメニューとして出せる手応えを感じたら、そこから試行錯誤して品質を上げていき、メニュー化するのです。
たとえば2024年(令和6年)冬から週末限定メニューとして、おでんを始めました。
これはお客様からの声があったのと、広島市周辺ではお好み焼を注文後、おでんを注文して焼きあがりを待つ習慣があるからです。
しかしメニュー化までは時間がかかりました。
納得のいくダシや作りかたが実現できなかったからです。
試行錯誤の末、やっとおでんをメニュー化できました。
せっかく要望をいただいても、品質を上げられる見込みがなく、残念ながらメニュー化を断念したこともあります。
リクエスト以外で、自分たちで発案したメニューはあるか。
田村
自分たちで発案したメニューもありますね。
たとえば「田中焼き(でんちゅうやき)」です。
これは京都へ旅行に行った際、山椒七味(さんしょうしちみ)が売られていました。
試食してみると「山椒とお好み焼は合うのでは?」とインスピレーションを感じたのです。
帰宅後にさっそく試してみたところ、うどんとだけ相性が抜群でした。
こうして、うどん限定で山椒七味を使ったお好み焼が誕生したのです。
田中焼きのように、普段の生活のなかで突如としてひらめきが生まれるときもあります。
この場合も試作して、一定レベルを超えなければメニュー化しません。アイデアは浮かんだが、お蔵入りしたものも多いですね。
お楽しく気持ち良くごせる空間づくりを続けていく
今後の展望や課題があれば、教えてほしい。
田村
お好み焼など料理に強いこだわりを持っており、店の運営でもこだわりがあります。
お客様が「熱誠まるでん」という空間で過ごす以上、楽しく気持ち良く過ごしてほしいのです。そのためのお店づくりに力を入れています。
だから、今後もお客様が楽しく過ごせる空間を守っていく所存です。
あとは当店のこだわりのお好み焼を、より多くのかたに広め、味わっていただきたいという思いがあります。
さまざまな方法が考えられると思いますので、今後はその点にも力を入れてきたいですね。開業も移転も、これまで運営してこられたのは、本当に人のご縁のおかげだと思っています。
お客様、取引先様、さまざまなご縁を大切に営業を続けていきたいです。
こだわりのお好み焼やサイドメニューが魅力の熱誠まるでん
個性的なお好み焼や各種鉄板焼がそろっている熱誠まるでん。
昼ごはんや晩ごはんとしてお好み焼を楽しむのも良し、お酒を片手にお好み焼・サイドメニューを楽しむのも良し。
座敷があるので、家族やグループでも行きやすいのも魅力です。
そして気さくな店主夫妻との会話も楽しみのひとつです。
味良し・人良し・ところ良しの三拍子そろった熱誠まるでん。
こだわりのお好み焼をぜひ味わってみてください。
熱誠まるでんのデータ
名前 | 熱誠まるでん |
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住所 | 岡山県井原市七日市町120 |
電話番号 | 080-1644-0004 |
駐車場 | あり 店舗北側に4台分のみ 隣接店の敷地へ駐車しないように要注意 |
営業時間 | 午前11時〜午後2時(ラストオーダー 午後1時30分) 午後5時〜午後10時(ラストオーダー 午後9時) |
定休日 | 月 第1・3・5 火 ※定休日が祝日の場合は営業し、翌平日に休業 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 |
座席 | 全18席 ・カウンター:4脚 ・4人がけ座敷:2卓 ・6人がけ座敷:1卓 |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | 幼児用食器・椅子あり ベビーカーの入店可能 |
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