倉敷とことこ 「倉敷の今」を伝えるWEBメディア
【10/12(土)・13(日)開催】鴻八幡宮の例大祭 ~ 地区の人たちのソウルミュージック「しゃぎり」と急斜面を登る「だんじり」で盛り上がるお祭りを見に行こう

【10/12(土)・13(日)開催】鴻八幡宮の例大祭 ~ 地区の人たちのソウルミュージック「しゃぎり」と急斜面を登る「だんじり」で盛り上がるお祭りを見に行こう

伝えとこ / 2024.10.09

田んぼの稲穂が金色に輝き、スーパーマーケットには2024年の新米が並びはじめて「実りの秋」の気配を感じます。

田畑を守る神様に収穫を感謝しようと、例祭を開催する神社が多いのだとか。
たしかに、ここ最近町を歩くと「〇〇神社例祭」と書いた張り紙をよく見かけます。

倉敷市児島の高台にある鴻八幡宮(こうはちまんぐう)でも、毎年10月の第二日曜日とその前日に「しゃぎり」というお囃子(はやし)に合わせて、地区内をだんじりが練り歩く例大祭が開催されています。

江戸時代末からだんじりが伝わるという鴻八幡宮の例大祭の見どころを、鴻八幡宮の禰宜(ねぎ)さんと小西だんじり保存会へ取材してきました。

倉敷とことこの厳選記事を
LINEでお届けします

記載されている内容は、2024年10月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

Ads by Yahoo! JAPAN

鴻八幡宮とは

鴻八幡宮は、倉敷市児島下の町にある神社。古来より今の倉敷市児島上の町、下の町、田の口、唐琴の総氏神として、住民の心のよりどころとして崇められています。

境内には、岡山県指定重要文化財に指定された木造の獅子一対が奉納されていて、コウノトリ伝説の伝わる神社ともいわれている鴻八幡宮。現在は、産業、厄除けの守護神、陸海空の交通安全、また安産の守神として信仰を集めています。

鴻八幡宮外観

鴻八幡宮の例大祭とは

鴻八幡宮例大祭とは、鴻八幡宮の秋祭りです。以下で構成されています。

  • 鴻八幡宮と地区内の御旅所(おたびしょ)をご神体が往復する御神輿神幸(おみこしじんこう)
  • お囃子(以下、「しゃぎり」と記載)に合わせて、十九台のだんじりおよび・千歳楽(せんだいろく)が地区内・鴻八幡宮の境内をにぎわせるお祭り

毎年10月の第二日曜日とその前日の二日間にわたって開催されていて、2024年は10月12日(土)と13日(日)の二日間に開催予定です。

初日の12日(土)は、だんじりおよび千歳楽がそれぞれの町内を練り歩きます。そして、二日目の13日(日)は、御神輿神幸と各地区から出発しただんじりおよび千歳楽が、しゃぎりの演奏と共に朝から晩まで境内を盛り上げます。

13日(日)の御神輿神幸およびだんじり・千歳楽の境内参入退出予定時刻は、以下の画像を確認してください。

当日のスケジュール

御神輿神幸(おみこしじんこう)

御神輿神幸は、毎年10月の第二日曜日に開催されている神事です。

鴻八幡宮ホームページより
鴻八幡宮ホームページより

御神体を奉與(ほうよ)した御神輿(おみこし)は発輿祭の後、午前8時20分に鴻八幡宮を出発して氏子区域内を巡行し、御旅所で祭典をします。御旅所は二か所あり、東廻りの場合は唐琴、西廻りの場合は上の町へ向かいます。2024年は西廻りのため、上の町へ向かう予定です。

だんじり・千歳楽

だんじりは、しゃぎりを演奏する囃子(笛以外)が乗り込む、高さ1.4~1.7m、側面の幅が1.9~3.4mの乗り物で、江戸時代末に北前船の入港と共に関西圏から児島地区に入ってきたといわれています。

写真提供:小西だんじり保存会
写真提供:小西だんじり保存会

萱苅地区の千歳楽は、平成4年(1992年)に新調し復活されました。高さ2.5m、重さ約700kgを40人で担ぎます。

当日は、各地区200~400人の人力で引きながら町内を練り歩いたり鴻八幡宮の境内に入ったりする予定で、2024年は18台のだんじりと1台の千歳楽が参加します。

地区名だんじり、千歳楽の数
上の町地区5台
傘鉾、三協、安西、山際、内田
下の町地区9台
萱苅(千歳楽)、和井田、片引、朝間、小西、沖熊、堀江、岡熊、田和
田の口地区5台
港、奥、岡、明治、西明石

だんじりの姿は各地区によってさまざまで、特に屋根に施された彫刻が個性豊か。鳳凰(ほうおう)や恵比須、三つ巴(どもえ)など、おめでたい彫刻の数々は圧巻なので、要チェックです。

宣伝チラシ

しゃぎり

鴻八幡宮の祭礼で演奏される祭りばやしは「しゃぎり」と呼ばれます。江戸時代後期から演奏されているといわれているこのしゃぎりは、岡山県重要無形民俗文化財にも指定されています。

演奏に使われる楽器は、以下の五種類。

  1. 篠笛
  2. 胴長太鼓
  3. 締太鼓
  4. 鼓(つづみ)

篠笛は、演奏するうえで音色を統一させる必要があるため、継承される古笛に合わせて各地区がそれぞれ手作りで製作しているのだとか。

篠笛を吹く参加者
写真提供:鴻八幡宮

しゃぎりは、進行・停止など、その動作に合わせて以下の七曲が演奏されます。

  1. だんぎれ囃子
  2. 信楽囃子・兵庫囃子
  3. 祇園囃子
  4. おやじ(上がりは)
  5. 神楽囃子
  6. 下がりは囃子
  7. おひゃりこ囃子

しゃぎりには楽譜がないため、各地区それぞれに大人から子どもへ口伝(くでん)のみで継承されています。毎年夏が近づいてくる6月頃から例大祭に向けて練習をはじめているそうです。

Ads by Google

小西地区の練習のようす

例大祭まで残り2週間を切った小西地区へ、練習のようすの見学に行きました。

小西地区は、毎週月・木・土の3日間練習しています。この日は、しゃぎりの練習がおこなわれていました。

「しゃぎり」の練習をする小西地区の子どもたち
「しゃぎり」の練習をする小西地区の子どもたち

小西地区では、篠笛以外の楽器を小学生以下の子どもたちが演奏します。指導するのは、小西地区で育ったOBOGたち。指導する側の大人たちも、手にはお手製の篠笛をもっています。

小西地区は、毎年130人程度で例大祭に参加。参加者のなかには、例大祭の時季だけ県外から帰ってくる人たちもいるのだとか。久しぶりのしゃぎりやだんじりでも、地区で育った人たちはそのお囃子や動かしかたの感覚を身体で覚えているそうです。

小西地区のメンバーの胸元には「小西」の文字
小西地区のメンバーの胸元には「小西」の文字

小西地区だんじり保存会の木山さんは、篠笛を片手に

「小西地区のポイントは、アットホームなところです。団地(新築物件)が増えて以前よりも住民が増えてきたので、新しく入ってきた人たちも今年の例大祭のようすを見て、小西地区のだんじりの仲間になってほしいと思います。小西地区の仲の良さや練習の成果を当日発揮できるよう頑張ります」

と語っていました。

篠笛を吹く木山さん
篠笛を吹く木山さん

取材後は、小西地区のだんじりも見学しました。

装飾前のだんじり
装飾前のだんじり

この日はまだ、装飾前。当日は榊(さかき)や照明でだんじりを飾り付けるとのことです。

鴻八幡宮例祭担当者へのインタビュー

鴻八幡宮の例大祭の見どころや楽しみかたについて、鴻八幡宮禰宜(ねぎ)の河本昌樹(こうもと まさき)さんにお話を聞きました。

河本昌樹(こうもと まさき)さん
河本昌樹(こうもと まさき)さん

鴻八幡宮の例大祭は、昔から地域の人たちに親しまれてきたお祭りだと聞いています。

河本(敬称略)

鴻八幡宮の秋祭りがだんじりなどで賑うのは江戸時代後期からであろうと記録がありますが、今のように「だんじり」と「しゃぎり」が町全体を盛り上げるようになったのは明治以降からと伝え聞いています。下津井の町は、北前船の寄港地だったのをご存知ですか。あの北前船と一緒に、関西方面から「だんじり」の文化がこの地に入ってきたようです。

秋のお祭りなので豊作を祝うお祭りだろうと考えられていますが、実はその由来は不明です。しかし「例祭」というのは、毎年必ず行われるその神社にとって最も大切なお祭りのこと。鴻八幡宮でも、例年10月に地区中がお祭りをするという文化が残っているので、継承し続けています。

鴻八幡宮の例大祭の見どころを教えてください。

河本

まずは、だんじりの数の多さです。鴻八幡宮の例大祭では、18台のだんじりと1台の千歳楽、そして御神輿が見られます。地区ごとにだんじりや千歳楽の形や大きさが違うので、ぜひそれを楽しんでいただければと思います。

写真提供:鴻八幡宮
写真提供:鴻八幡宮

それから、だんじりや千歳楽、御神輿が表参道の坂道をのぼる姿も圧巻です。鴻八幡宮の表参道は傾斜が16度だといわれています。これだけの急斜面だと、石段を整備する神社がほとんどだと思いますが、鴻八幡宮は例大祭でだんじりや千歳楽、御神輿が坂をのぼる習わしがあるので、土の坂参道を維持しています。

鴻八幡宮表参道を、上から見下ろす
鴻八幡宮表参道を、上から見下ろす

また、お囃子にも注目していただきたいですね。鴻八幡宮に伝わるお囃子は「しゃぎり」と呼ばれていて、岡山県重要無形民俗文化財に指定されています。他の地域のだんじりのお囃子と大きく違うのは、篠笛が使われていることです。これは竹で作られた横笛で、非常に洗練されたメロディを奏でます。

しゃぎりのメロディは、鴻八幡宮の周辺に住む人々にとっては子どもの頃から聞いている人が多く、例大祭が近づいてきてこのメロディが聞こえてくると心の底からワクワクしてくる。いわゆる「ソウルミュージック」のようなものなんです。

地元の人たちにとって「私たちはここの人間なんだ」と自分のアイデンティティを再確認できるような心に染みわたるものなので、ぜひしゃぎりの音色も楽しんでください。

鴻八幡宮例大祭の良さはどのようなところですか。

河本

世代間交流が活発におこなわれるところです。

「しゃぎり」は、楽譜のない口伝のメロディなので、地区の大人から子どもへと継承されていきます。どの地区も自分たちのだんじりをかっこよく見せたいので、大人の指導にも力が入るんですよ。

打楽器は小学生が演奏し、篠笛は技術をもつ大人が奏でる。それ以外の多くの大人子どもでだんじりを曳く。それぞれの役割をこなすことで一つのだんじりが完成するので、大人たちも子どもたちを仲間として認める、協働意識が生まれます。

だんじりを曳く子どもたち
写真提供:鴻八幡宮

仲間だからこそ厳しい指導もありますが、地域の大人と子どもがそれだけの信頼関係を築ける良さだと思っています。

当日、どの地区も老若男女問わずみんなで例大祭を囃(はや)したててくれるのが楽しみです。

今年(2024年)の鴻八幡宮例大祭の注目ポイントはありますか。

河本

例大祭は毎年必ず決まった日に開催することを大切にしているので、今年も例年通りに例大祭を斎行することに意味があると思っています。進学や就職、結婚などで地区外に移住した人たちも、例大祭のために帰ってくるような地域に根付いたお祭りです。だんじりとしゃぎりを中心にした人間関係を楽しいと思ってくれているから、帰ってきてくれるのだと思っています。

そのため、今年だけ何か特別なことをするのではなく、今年も例年通りに例祭を斎行いたします。

写真提供:鴻八幡宮
写真提供:鴻八幡宮

というのも、現代では旅行やレジャーが当たり前になりましたが、昔はお祭りが人々の数少ない娯楽でした。ここでは今でも、年に一度のハレの日である例大祭を楽しみに、地域みんなで何か月もかけて準備しているんです。これからも、この地でいつもの例大祭を続けていくことが、私たち鴻八幡宮に関わる者の使命だと思っています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

河本

いわゆる「観客席」があるようなお祭りではありませんが、地元のなかでこれほど多くの人が携わり長い時間をかけて巡行するだんじりの姿を見て感じていただきたいです。

当日はテレビ中継もありますが、急傾斜の表参道を大きなだんじりが人力で駆け上がる迫力や、しゃぎりの音色の力強さは生でないと伝わらないと思います。他の祭りにはない、鴻八幡宮例大祭の強い個性です。ぜひご覧ください。

当日のようす
鴻八幡宮ホームページより
Ads by Google

おわりに

2023年12月に関東から倉敷へ移住してきた私にとって、地域の神社の例大祭はどこか他人事のような気がしていました。そもそも、倉敷という中核都市で「隣近所の人たちが力を合わせて練習に打ち込む行事が存在すること」を考えたこともなかったように思います。

しかし、実際に鴻八幡宮や小西だんじり保存会へ行ってみると「新しくこの地域に来た人にも仲間になってほしい!」と歓迎ムードで驚きましたし、地域の大人たちが子どもたち一人ひとりのようすを見ながら声を掛け合って練習するようすにも、思わず背筋がしゃんと伸びました。

当日に向けて、どの地区も追い込み練習をしていることでしょう。
10月12日と13日は、鴻八幡宮ならではのアットホームかつ力強いだんじりと岡山県重要無形民俗文化財に指定されているしゃぎりの生演奏を味わいに、鴻八幡宮の例大祭に足を運んでみてはいかがでしょうか。

倉敷のイベント情報を探すなら「とことこおでかけマップ」

倉敷で開催されるイベント情報を、マップ上から確認できる「とことこ おでかけマップ」を是非ご利用ください。

▼画像タップでマップを確認する

鴻八幡宮例大祭のデータ

宣伝チラシ
名前鴻八幡宮例大祭
期日2024年10月12日(土)時間は各地区による、13日(日)午前8時頃~午後8時頃
場所倉敷市児島下の町7丁目14−1
参加費用(税込)
ホームページ鴻八幡宮
Ads by Google
高石真梨子

高石真梨子

東北→九州→近畿→関東を経て、2023年12月に倉敷市地域おこし協力隊になりました。

音の世界と音のない世界の狭間に住んでいる、手話と日本語のバイリンガルです。障がいの有無にかかわらず、倉敷を旅して倉敷に住み続けたくなるような情報を発信していきます。

こんにちは、地域おこし協力隊です

県外から倉敷市への移住をより一層進めるため、Webを通じた生活者目線での情報発信や、移住関連イベントへの協力をミッションに活動しています。

倉敷市地域おこし協力隊

はれとこからのお知らせ

一般社団法人はれとこは「とことこシリーズ」を中心に、地域の情報発信を担う「市民ライター」育成などの活動をおこなっています。

  • 倉敷市民レポーター教室
  • 高梁川流域ライター塾
  • FMくらしき「倉敷とことこ」
  • 寄付募集
宣伝チラシを持つ河本さん

この記事が気に入ったら

最新情報をお届けします。

  • ホーム
  • 伝えとこ
  • 【10/12(土)・13(日)開催】鴻八幡宮の例大祭 ~ 地区の人たちのソウルミュージック「しゃぎり」と急斜面を登る「だんじり」で盛り上がるお祭りを見に行こう