坂本織物有限会社 ~ 世界でもっとも細い織物「真田紐」の伝統を継承していく、児島で唯一の真田紐づくり

アイキャッチ_坂本早苗さん
アイキャッチ_坂本早苗さん

繊維のまちとして、国内外からファッションやハンドメイドのファンが集まる児島。

デニムや学生服、畳縁(たたみべり)など、多種多様な繊維製品が盛んに作り出されています。

なかでも「真田紐」は、児島の繊維製品でもっとも古い歴史を持つ織物です。しかし、一時は職人がほとんどいなくなり、児島での生産者がごくわずかという状況が続いていました。

そのような貴重な真田紐を継承しようと、2011年から製造を始めたのが坂本織物有限会社(以下、「坂本織物」と記載)です。

現在、児島で真田紐を作っているのは坂本織物だけです。なぜ真田紐を継承し、どのように受け継いでいくのか、その想いを取材しました。

記載されている内容は、2025年7月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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「真田紐」とは

坂本織物が作る真田紐
坂本織物が作る真田紐

真田紐は、縦糸と横糸から作られる日本の伝統的な織物です。
幅は約3mmから12mmほどで、「世界でもっとも細い織物」とも呼ばれています。

歴史は古く、「戦国武将の真田幸村(さなだゆ きむら)が考案したことから真田紐と名付けられた」という説が伝えられていますが、真田紐の歴史にはいまだに謎が多いそうです。

真田紐の最大の特長は、重いものを吊り下げても伸びないほどの丈夫さです。荷紐や着物の帯締めなど、庶民の暮らしのなかで幅広く使われていました。

また、その頑丈さから、かつては武士の甲冑(かっちゅう)をつなぐための防具や、刀の下げ紐、滑り止めとしても使われていました。誰の刀かを見分けるための目印として、家紋の代わりに真田紐が巻かれることもあったそうです。

坂本織物が作る真田紐

児島における真田紐

真田紐が児島に伝わった経緯については明確な記録がありませんが、児島青年会議所が制作した資料には、1789年に田之口村で初めて真田紐が作られたという記録が残っています。

江戸時代半ば、岡山の由加山と香川の金毘羅山の両参りをする参拝客のお土産品として、真田紐は人気を得ました。由加大権現へ向かう道中には庄屋が立ち並び、美しい真田紐がずらりと飾られていたそうです。真田紐で彩られた由加参道は、さぞ賑やかだったことでしょう。

「金毘羅山詣名所図会」に描かれた由加参道のようす
「金毘羅山詣名所図会」に描かれた由加参道のようす

旅人の間で「児島の真田紐は、美しくて安く、丈夫だ」と評判になり、全国的にも有名になりました。

この真田紐の功績が、児島が繊維のまちとして発展する基盤を作ったということで、由加山には真田幸村を称える頌徳碑しょうとくひ)が設置されています。

江戸時代から児島で盛んに作られていた真田紐でしたが、時代の変化によって生業(なりわい)として続けることが難しくなり、しだいに織る人は減っていきました。2025年現在、織っているのは「坂本織物」だけです。

真田紐は、倉敷市の日本遺産構成文化財にも認定されており、坂本織物が真田紐の伝統文化を守り続けています。

真田紐で作られた桃
真田紐で作られた桃

坂本織物有限会社について

坂本織物は児島の唐琴にある織物会社です。
真田紐を中心に、細幅織物の製造や商品の企画・開発をおこなっています。

坂本織物の商品
坂本織物の商品

もともと坂本織物では真田紐を作っておらず、手芸用の紐やシートベルトなどの細幅織物を作っていました。しかし、専務取締役の坂本早苗さかもと さなえさんの手によって2011年から真田紐の生産が始まりました

現在は坂本織物を代表する織物として、真田紐の魅力を伝えるさまざまなアイテムを製造しています。

きんちゃく袋
きんちゃく袋

坂本さんは「真田紐を織れることになったのは、数々のタイミングが重なったから」と語ります。

国内の繊維業が衰退してくなかで、「児島でしか作れないものを作りたい」と考えていた坂本さん。その後、真田紐に出会い、その魅力に感動して、真田紐を織りたいと思うようになります。

そのような時期に、坂本さんの師匠である石原浩一(いしはら こういち)さんが、地元で唯一の真田紐職人だったことが判明。石原さんから真田紐を継承することになりました。

石原さんは、真田紐を残したいけれど後継者がいない。私は真田紐を織りたい。そんな奇跡的なご縁があって、数少ない貴重な力織機(りきしょっき)を譲っていただきました」と、坂本さんは振り返ります。

カラフルな真田紐の陳列棚
カラフルな真田紐の陳列棚

真田紐を織るのに欠かせない力織機は10台を譲り受け、真田紐用に改造・改良を重ねたそうです。

細い織物のなかで表現される繊細な柄や色合い。そして、昔ながらの力織機だからこそ生まれる完璧すぎない揺らぎは、唯一無二の美しさだと思います。

伝統的な真田紐を織るまでに、どのような背景や想いがあったのか、専務取締役の坂本早苗さんに話を聞きました。

坂本織物有限会社のデータ

坂本織物が作る真田紐
団体名坂本織物有限会社
業種真田紐および細幅織物の繊維製品の製造・販売
代表者名坂本宏司
設立年1970年
住所岡山県倉敷市児島3丁目8-37
電話番号086-477-6340
営業時間【営業時間】
本社 / 午前9時~午後5時
倉敷真田紐ショップ「真田紐館」 / 午前9時~午後3時
休業日日、祝日
【定休日】
土曜日・日曜日
祝日、正月、お盆、イベント出店日
ホームページ坂本織物有限会社

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岩佐りつ子
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ずっと住んでいた神奈川を離れ、2023年12月に地域おこし協力隊として倉敷に移住しました。 縁もゆかりもなかった倉敷のまちは、見るもの、出会うもの、全てが初めてづくし!毎日の暮らしに居心地の良さを感じています。 移住者目線を忘れずに、倉敷の魅力を伝えていきたいです。

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