倉敷市出身の須原由光(すはら よしみ)さんが主宰の、岡山・倉敷を拠点に活動するダンスパフォーマンス集団「ズンチャチャ」を知っていますか。
ズンチャチャについて詳しくは、2025年5月に公開された記事をぜひチェックしてください。
なんと、そのズンチャチャが、世界を舞台に快挙を成し遂げました。
2025年9月24日・25日にフランス・カンヌで開催された「カンヌ コーポレートメディア&TVアワード」で、ズンチャチャがパフォーマーとして出演する映像作品が、ウェブドキュメンタリー部門とライフスタイル・アート・ミュージック・カルチャー部門の両部門でゴールドドルフィンを受賞しました。

ゴールドドルフィンは、その部門で特に優れた作品に贈られる“金賞”にあたるもの。ズンチャチャの作品が、その価値を認められた形です。
以前取材した際、海外のコンテストに出品するお話も聞いていました。この快挙はぜひ多くのかたに知っていただきたいと思い、須原さんを再び訪ねました。
記載されている内容は、2025年12月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
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目次
カンヌコーポレートメディア&TVアワードとは?

須原さんの喜びの声を聞く前に、「カンヌ コーポレートメディア&TVアワード」と、受賞作品「PROCESSION(プロセッション) –Zunchacha 30–year history-」について概要を紹介します。
カンヌ コーポレートメディア&TVアワードは、南フランスのコート・ダジュールの街カンヌで開催される、企業映像や報道ドキュメンタリー作品を顕彰する国際映画祭です。
2010年に創設され、世界5大陸から応募が寄せられるなど、企業映像分野の国際的なトレンドを示す存在となっているそうです。
また、審査はアカデミー賞・エミー賞受賞者やビジネスコミュニケーションの専門家など、経験豊富な審査員が担当。クオリティの高い作品が選ばれることでも知られています。
授与されるトロフィーは、ブラック、ブルー、シルバー、ゴールドの「ドルフィン」、そして最高賞には「ホワイトドルフィン」が贈られます。
「PROCESSION -Zunchacha 30-year history-」ズンチャチャ30年の軌跡

受賞作品「PROCESSION -Zunchacha 30-year history-」は、2023〜2024年にかけて進められた映像制作プロジェクト『PROCESSION』から生まれた作品です。
ズンチャチャ、フォトグラファー・映像作家で監督の木村琢磨(きむら たくま)氏、音楽家の松下徹(まつした とおる)氏の三者で、国際映像コンペティション(カンヌ、ニューヨークなど)への出品を目指し、映像・音楽・ダンスが融合する新たな表現に挑みました。

| 出演(パフォーマー)ズンチャチャ | 倉田こまこ、古南佳子、佐々木侯至、原克子、森脇皐太、山田暢子、山部遥、山本隆文、須原由光 |
| 音楽 | 松下徹 |
| 記録写真 | yukiwo |
| メイキング撮影 | 江口久美子、古南里沙子、守屋みどり |
| 撮影監督・編集 | 木村琢磨 |
受賞作品だけでなく、カラーの「PROCESSION Planeta matris」、そしてメイキング映像の「another PROCESSION」、それらを通して見ることもおすすめします。
制作者たちの情熱がより深く伝わってきます。
主宰・須原由光さん 喜びの声をインタビュー

ズンチャチャ主宰・須原由光さんに喜びの声を聞きました。
ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる
受賞おめでとうございます。会場で名前が呼ばれた瞬間、どのような気持ちでしたか?
須原(敬称略)
一つ目のウェブドキュメンタリー部門の表彰を受けた瞬間は、始まってすぐの発表で、驚きと興奮で“無……”といいますか、悲鳴をあげながら何度もお辞儀していたようです。日本人です(笑)
金賞は私たちが夢に描いていた賞で、日本人受賞者もわずかしか情報が無く、とてつもなく難しいと思っていました。表彰を受けた後、我に返って急いで日本にいる仲間たちに速報を送り、続々と喜びのメッセージが届くうちに受賞の実感が湧いてきました。
撮影・編集・監督の木村琢磨さん(以下、「木村さん」と記載)が2部門のカテゴリーに応募してくださったのですが、ズンチャチャのこれまでの歩みにフォーカスした部門と、映像全体の芸術性にフォーカスした部門の両方でゴールドという評価をいただけて、制作陣全員の苦労が報われた思いです。
『ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる』というジョン・レノンの言葉がありますが、夢が叶った瞬間を仲間たちと分かちあえて本当にうれしかったです。
名前を呼ばれ、受賞者として登壇された際、会場の反応や雰囲気をどのように感じましたか?
須原
二つ目のライフスタイル・アート・ミュージック・カルチャー部門で呼ばれた際は、少し落ち着いていたので、会場の反応は覚えています。
私たちが登壇するまでクルクルまわったり、リアクションが大きかったりしたので、みなさん大笑いしながらあたたかい拍手をたくさんしてくださいました。異国のかたがたから祝福を受けるなんて、自分の人生のなかで想像すらなかったので、初めての経験で、そのあたたかさにとても感動しました。

受賞後改めて振り返ってみて、ズンチャチャとして「PROCESSION」に参加された際、特に大切にされたことや、こだわりはどんなところだったのでしょうか?
須原
ズンチャチャとしては「何ごとも一生懸命取り組む」ということは、今回に限らず大切にしていることです。ロケ本番の数か月前から、倉敷の沙美海岸に通い、不安定な自然に身体を慣らすトレーニングをしたり、自然のなかでどんな動きができるかをメンバーと模索したりすることを繰り返しました。
木村さんは常に、私たちの領域(動きを作る)を尊重してくださっていたので、自由に動きの準備をしていましたが、当日は災害級の砂嵐、強風雨でのロケとなりました。結局、踊る側も撮る側も、その瞬間の自然条件を受け入れ、感覚を研ぎ澄ませながら全力を尽くせたと思います。
その後、音楽を担当した松下徹さん(以下、「松下さん」と記載)は、木村さんが仮編集された映像からイメージを膨らませ、何曲も音源を制作されました。
木村さん、松下さん、ズンチャチャの三者がお互いを否定せず、尊重し合える関係性により、それぞれのこだわりや大切にしていることが集約された作品になったと思います。


ご自身では、今回の受賞の決め手は何だと思いますか?
須原
私自身が思う決め手としては、ズンチャチャという素材を、木村さんと松下さんのセンスで仕上げてくださったことが大きいと思います。踊り手目線ではない感性で、私たちの身体表現の世界を広げてくださいました。
また、応募されているかたがたは各国の国営放送や映像制作の第一線で活躍されているかたばかりで、どの作品も素晴らしかったのですが、1時間以上の作品も多く、私たちのような5分の作品は珍しかったようです。
木村さんが試行錯誤しながらそぎ落とし、5分という尺に完成させたところも良かったのではないかと感じています。観てくださったかたのなかで「お金やビジネスを感じないピュアな作品に心うたれた」という感想をくださったかたがいらっしゃいました。
資金力も制作人数もおそらく最小だったと思いますが、「岡山から世界へ発信しよう!」という志や、純粋な情熱をくみ取っていただけたかと思うと、海外への挑戦に夢や希望を感じられました。
ズンチャチャを応援してくださっているすべてのかたに感謝

受賞を一緒に喜んでくれた仲間や家族、関係者、ファンのみなさんに、改めてどんな想いを伝えたいですか?
須原
家族、関係者、そして29年間ズンチャチャを応援してくださっているすべてのかたに、ただただ心から「感謝」をお伝えしたいです。あたたかい祝福のメッセージも多くいただき、感謝の想いはつきません。
これからもダンスを通してみなさんの心に心地よいものをお届けできるよう、また応援していただけるような活動に向けて精進したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
同志である木村さん、松下さん、yukiwoさん、サポートスタッフ、出演ズンチャチャメンバーたちへ
岡山から世界へ発信できたね!みんなありがとう!
そして、みんなおめでとう〜~~!
最後に。2026年2月に開催される30周年記念公演の見どころなどを教えてください。
須原
ズンチャチャはおかげさまで2026年に30周年を迎えます。
単独公演としては4年ぶりとなる30周年記念公演を、2026年2月8日(日)にアルスくらしき様の主催で、倉敷芸文館ホールで開催していただけることになりました。
受賞した「PROCESSION -Zunchacha 30-year history-」を舞台化したメイン作品は「PROCESSION neo」と題し、木村さんの映像美の世界と、生の舞台を融合させ、新しいダンス作品としてお届けできたらと思っています。
さらに、ズンチャチャならではのエンタテインメント作品2本をお届けするために、2024年11月から創作をスタートしています。
また、30周年記念公演に合わせ、2月6日(金)〜2月8日(日)の3日間、倉敷芸文館アイシアターでの映像展示会(観覧無料)も決定しました。受賞作品や、木村さんのディレクターズカット版の長編作品を含めた映像作品を、映画館のような360インチの大スクリーンで上映予定です。
二つのイベントを同時期に開催できることは本当に幸せなことで、アルスくらしき様のご支援に感謝して、ズンチャチャ30年の集大成として全力を尽くす所存です。
30周年記念公演、映像展示会ともに、ぜひ多くのかたがたに足をお運びいただけたらと思います。
撮影監督・編集の木村琢磨さんにコメントいただきました
撮影監督・編集の木村琢磨さんにも、コメントを寄せていただきました。
どのようなテーマで制作したのでしょうか。
木村(敬称略)
私のなかでの『PROCESSION』のテーマは「輪廻転生」です。新しい自分に生まれ変わるため、ただひたすら歩き・もがき・抗い、どこから来てどこへ行くのかを模索しているようなイメージを頭のなかに描きながら、撮影・編集をおこないました。
監督として、受賞に至った決め手は何だと思われますか?
木村
自分たちの作品は良い意味で「浮いていた」と思います。世界各国の放送会社が制作した作品が圧倒的多数で、予算も時間もふんだんに使われたビジネスライクなコンテンツが多いなか、私たちの作品は予算も人員も最小限でした。「情熱だけは誰にも負けない」という気持ちで挑んだ作品です。
「自分たちが本当に作りたいもの」を楽しみながら形にしていったことが、良い結果につながったのだと感じています。
また、コンテンポラリーダンスの本質である「感じるままに自由に表現すること」が、私の映像とズンチャチャの30年の歴史とマッチしたことで、ドキュメンタリーとしても自然な形で結実したのだと思います。

ズンチャチャ30周年記念公演「ZUNCHACHA Side Story/PROCESSION neo」

| 開催日 | 2026年2月8日 日曜日 |
| 会場 | 倉敷市芸文館ホール |
| 時間 | 開場:午後1時30分、開演:午後2時 |
| 前売りチケット (全席自由) | 一般:3,000円、大学生以下:500円(当日各500円増し)※3歳未満は入場不可 |
| 一般発売開始日 | 11月21日金曜日 |
| 予約・問い合わせ先 | アルスくらしきチケットセンター TEL:086-434-0010 |
| インターネット予約 | https://arsk.jp/ticket |
| 主催 | 倉敷市・倉敷市文化振興財団 |
| 共催 | 倉敷市教育委員会 |
おわりに
遡ること2年以上前、別媒体で取材したご縁から、ズンチャチャを知りました。それ以来、Instagramで流れてくる活動をなんとなく追っていたのですが、突然飛び込んできた“受賞”の知らせに、思わず「マジで!?」と声をあげてしまいました。
今年(2025年)3月、「倉敷とことこ」で改めて取材をお願いした際も快く応じてくれ、再びその魅力を言葉として届けられたことを、とてもうれしく思っています。
記事として出る内容は、実は話のごく一部です。取材の場では、もっとたくさんの熱量や想いがあふれ、それらを聞いていたからこそ、気づけば勝手に思い入れをもってしまっていました。
30周年という節目を迎えるズンチャチャが、この先どんな景色を見せてくれるのか。またその瞬間を取材し、言葉としてお届けできる日を楽しみにしています。
ズンチャチャのデータ

| 団体名 | ズンチャチャ |
|---|---|
| 業種 | コンテンポラリーダンス/ダンススタジオ |
| 代表者名 | 須原由光 |
| 設立年 | 1996年 |
| 住所 | 岡山県倉敷市中央2丁目18-3 CHIMI STUDIO |
| 電話番号 | 086ー425ー0737 |
| ホームページ | ZUNCHACHA website |













































