2019年に開業20年を迎えた井原鉄道(いばら てつどう)。
「井原線」1路線のみを運行しており、岡山県総社市から広島県福山市を結ぶローカル線です。
筆者は井原市に住んでおり、ほぼ毎日職場への通勤で井原鉄道に乗っています。
自宅から駅が近いので、倉敷・岡山方面に出かける時も移動の中心は井原鉄道なんです。
通勤・通学で使わないから井原鉄道に乗ったことがないという人も、「ちょっとしたおでかけ」に、または「観光に」と、のんびり車窓を眺めながら乗車してみれば、きっと楽しいと思います。
筆者にとって、井原鉄道はとても大切な存在。
この記事では、地域の足として欠かせない存在になっている井原鉄道の井原線(以下:井原線)について紹介します。
記載されている内容は、2020年1月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
井原線の詳細について
井原線は、岡山県総社市から広島県福山市を結ぶローカル線で、総延長は41.7キロメートルあります。
1999年(平成11年)1月11日11時11分11秒に開業し、2019年(平成31年)に開業から20年を迎えました。
指折り数えてみたら筆者の人生において、井原線が存在している期間のほうが長いです。
振り返ってみると、本当にたくさんの思い出があります。
最近は、ローカル線の廃止のニュースをよく聞くようになりました。
人口が減り、地方にとって厳しい時代が続くなか、鉄道会社が新しくできて、存続し続けているということは本当にすごいことです。
この点からも、地域の人にとって欠かせない交通手段として使われていることがわかるかと思います。
井原線ってどうやって乗るの?
「井原線って、どういう乗車システムなの?」と思ったことはありませんか?
井原線は、ほとんどが無人駅で、有人駅(駅員がいる駅)は清音駅、矢掛駅、井原駅と神辺駅しかありません。
乗務員は、イベント時など以外、基本的にワンマン(運転士ひとりのみ)で運行されています。
そのため、JRのように切符やICOCA等の交通系電子マネーではなく、乗車料金を運転士さんに現金で払う形式で運行しているんです。
なお一部の駅では、JRとの連絡切符や切符の販売もありますよ。
バスのように「後乗り・前降り」の乗車システムなので、列車後方から乗ってください。
乗車するときは、ドア横にあるボタンでドアを開けて、車内に入って整理券を取ります。
運賃は車内に運賃の掲示板があるので、ここで確認すると便利です。
バスのように両替機もありますよ。
紙幣の両替は1,000円札のみで、硬貨は500円、100円、50円が両替可能です。
降りるときに運賃を支払いましょう。
両替機の運賃を入れる部分に入れるか、運転士さんに直接渡します。
清音駅、神辺駅でJRへ乗り換える際は、連絡切符を持っていれば、運転士さんに見せるだけでOKです。
井原線を使って岡山駅・倉敷駅方面へ向かう場合、総社方面(上り)の列車に乗ります。
ただし終着が総社駅なので、岡山・倉敷方面は直接の乗り入れはありません。
岡山・倉敷方面に行こうと思ったら、JR清音駅で伯備線に乗り換える必要があります。
もちろん、乗り換え時に、JR清音駅で切符を購入して乗車できますよ。
先ほどとは反対向きで、井原線を使って福山駅方面へ向かう場合、神辺方面(下り)の列車に乗ります。
福山方面へは、1日3回だけ神辺駅から福塩線を走行して直接JR福山駅に乗り入れています。
それ以外は、神辺駅が終着です。
通常だと、井原線で総社駅方面から福山駅へ行くには、JR神辺駅で福塩線に乗り換える必要があります。
通勤・通学に便利な時間に設定されているようですね。
福山駅に直接乗り入れる便は、朝・昼・夜と折り返し運転を行なっています。
乗り換える必要がないので便利ですよ。
のんびりとした一両編成の列車
初めて井原線に乗る人と、一緒に行動をしているときのことです。
だいたいの人が、井原線の列車が一両編成であることに驚きます。
開業から20年。
のんびりとした地方の田園風景のなかを、一両編成の列車が通過する。
沿線では、すっかりおなじみとなった光景です。
二両編成は、通勤通学の時間帯か特別なイベントが行われるときだけですね。
平日の日中などは、列車内に筆者を含めて、ほんの数人しか乗っていないこともよくあります。
井原線の魅力とは?
井原線の魅力とは、なんでしょうか?
筆者が考えるに、「ザ・ローカル線」であること。
観光地で運行しているわけでも、都心で運行しているわけでもない、「日常の足」として日々の生活に溶け込んでいる点が、井原線の最大の魅力ではないかと思います。
SNS映えする美しい景観など、全国から観光客が押し寄せるような「派手」な魅力とは、ちょっと違う雰囲気です。
でも、手作り感のある親しみやすい「地域の鉄道」であることも井原線の魅力。
よそ行きではなく、通勤・通学・買い物などに使う、日常の交通機関として惹かれるものがあります。
各駅で見られる、立地する土地ならではの駅名表示も、ぜひ見てほしいポイントです。
面白い取り組みとして、全国の私鉄ローカル線会社が作った、「鉄カード」に井原線も加わっています。
ほかには「夢やすらぎ号」というレトロ風の列車があり、写真を撮っている人をよく見かけますね。
「夢やすらぎ号」は、列車の内部に天然ムク材を使用していて、車内は落ち着いた雰囲気です。
ちなみに井原駅、清音駅、矢掛駅では、夢やすらぎ号のチョロQを購入できます。
ローカル線としての役割
平成30年7月豪雨では、井原線も線路が被害を受け、運行が停止していました。
そのため、総社駅から三谷駅間にかけて、バスによる代替輸送で対応するなど、大きな影響がでたんです。
筆者が住んでいる井原市では、甚大な被害には見舞われなかったものの、運休による影響を長く受けました。
この時に、豪雨の被害の大きさを感じたことが、災害は自分の住んでいる地域でも起こり得るのだと認識を改めるきっかけになります。
平成30年7月豪雨の影響で、「当たり前のことが当たり前ではない」ということを、強く感じた日々でした。
路線バスも井原線沿線で運行されていますが、運行本数、乗車できる人数など、「井原線のほうがいい」という場面は多いです。
また、井原線車内では、「ギャラリー列車」と題して地域の保育園・幼稚園、養護施設のかたの、さまざまな作品が展示されるイベントもあります。
こういう部分からも、「地域の鉄道としての役割を果たしていこう」とすることが、伝わってくるような気がしています。
地域の足として活躍している井原線
井原線に乗ると、中高校生、大学生などと乗り合わせます。
井原線の沿線に学校がありますし、総社市から福山市までの広い範囲をカバーしているので、通学の手段として完全に定着している印象です。
また、地域のイベントとも連携して、観光の盛り上げに一役買っています。
2020年1月12日(日)には井原線感謝デーがあり、井原駅を中心にイベントが行われていました。
交通の便が悪い地方都市の場合、「車社会」ですよね。
一家に一台ではなく、一人に一台という場合もあるかもしれません。
でも、車を運転できないひとは、毎回タクシーを呼ぶのも大変です。
そんな時に公共交通機関があれば、買い物や病院に行けるし、友人や親戚に会いに行けますよね。
「ローカル線」だからこそできることがある、井原線を毎日利用していてそう感じることが多くなってきました。
井原線は、これからも通勤・通学に、そして観光に活躍してくれることでしょう。
ぜひ井原線に乗って、沿線をめぐってみてはいかがでしょうか。