楠戸登美夫さんインタビュー
楠戸
い草が実家の家業だったんです。畳表を作っていて、い草の仲買などもしていましたね。
「冨來屋本舗」でも、地域のものを伝えています。
2019年の秋にIGUSA GLASSを知って、一目惚れして。そこから「IGUSA LABO(イグサラボ)」の今吉俊文さんが「昔のものを残すこと」をしていると知り、自分たちと同じだなと。
もう一度、倉敷や早島のい草を知ってほしいなと思ってはじめました。
い草の生産や加工はどんどん倉敷からなくなっていて、国内でも限定的。残していかなくちゃ。
現在の倉敷で、商品として流通できるい草を栽培しているのは、IGUSA LABOの今吉俊文(いまよし としふみ)さん、ひとりだけなんです。
IGUSA LABOは、い草の栽培からい草製品の製造までを一貫して手がけています。育てて処理して織って売って、「1人6次産業」。
い草をみんなで盛り上げていきたい、そう思っています。
楠戸
実家の付近はどこの役所もい草を作っていました。道路にはい草がずらーっと並んで、車が通れないくらい。
全国から、い草刈りにお手伝いの人が集まってきていました。泊まり込みで来るんですよ。うちには高知県から来ていました。
お手伝いの人におもてなしをするから、い草を作っていた家は家が大きいんですよ。早島町に豪邸が多いのも、い草屋だったからです。
朝早くから夜遅くまで働いて、あの頃はにぎやかでしたね。
県庁に「い草課」があったくらいです。業態分類にも「花莚業」がありました。
楠戸
昭和時代に水島コンビナートが発展したのも、きっかけのひとつです。
排煙によるい草の先枯れも起こりましたし、仕事としての困難さがありました。
い草の生産ってとても大変なんです。真冬に植えて真夏に刈って、すごい重労働。
子供には継がせられない、コンビナートで働いたほうが安泰だからそっちがいいだろう、って親がたくさん出てきて、廃業するところが増えて。
九州産と海外産のい草の台頭もあり、減っていきました。九州や海外の人にい草の作りかたを教えたのは、倉敷の人なんですけどね。
それでも1980年くらいまでは国内に売りに行っていましたし、2008年ごろまでは、新しいござの品評会が開催されていました。
倉敷美観地区でも民芸品としてたくさん売っていましたが、今はそれも減っていますね。
2010年ごろには、倉敷でい草を作っているのは数軒になりました。生産を担っていたのが昭和1桁生まれくらいの人たち。重労働をこの先長く続けられる年齢ではありません。
このままでは、どんどんなくなってしまうから。
楠戸
1軒に1間も和室がない家も増えていますし、和室があっても化学繊維を使っているケースもあります。
い草は、夏は湿気を吸ってくれて、冬は溜め込んでいる湿気を吐き出して、部屋の湿度を調整してくれます。
ただ、い草は密閉空間に弱く、風通しが良くないと湿気をためすぎてカビが生えちゃうんです。
でも現在の住宅は密閉性が高い上に、畳床も違うので。昔は畳床が藁だったけれど今は発泡スチロールなので、い草が息をしないんです。
窓を開けて風を入れるようにすればいいんですけどね。
い草の良さの認知度がある程度まで上がれば、需要も今より増えると思っています。
最近の子供は、ござの現物を見たことない人もいるでしょう。「花莚」では現物を見て触れられるようにしています。
楠戸
岡山で作っている「岡山3号」という品種は、太くてどっしりしている、無骨な感じです。
今吉さんの作るい草はいいですねえ。中の海綿体がしっかりしていて。特に寝ござは一級品です。触れてみて初めてわかるんですよ。
楠戸
「ごろん」となれることでしょうか。どこでも寝転がれる。
真冬でもそれほど冷たくないし、どんな季節でも、肌に感じて心地よいものですよね。
楠戸
観光客のかたはいないですね。でもこんな状況だからこそ、よかったような気がしますよ。
お店がどうあるべきか、ゆっくり取り組めて、じっくり考えることができています。
営業しながらだったら余裕がないから、片手間で進めて普通のお土産屋さんになってしまっていたかもしれません。時間をいただいたと思っています。
楠戸
倉敷が花ござの街だったということを知ってほしいなと思います。
子供たちに触れてもらうことが1番いいと思うんです。そうすれば、あとにつながるから。
ぜひ実物に触れてみてください。
い草を生活に取り入れよう
「い草の民芸品」と聞くと、もしかしたら「古めかしいのかな?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、シャープさやモダンさを感じるような、現代の暮らしに合う商品も多数作られています。
い草の香りが漂う店内は、それだけでもリラックスできそう。筆者は、懐かしく清々しい気持ちになりました。
「い草屋 花莚」は、文化を大切にして残していきたいと思いが詰まった、体験の場でもあります。
ワークショップは家族連れにもおすすめ!
ぜひ「い草屋 花莚」で、い草に触れてみてください。
い草屋 花莚のデータ
名前 | い草屋 花莚 |
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住所 | 倉敷市本町6-21 |
電話番号 | 086-427-0122 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 午前10時~午後7時 |
定休日 | 月 月曜日が祝日の場合は翌日 |
支払い方法 |
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ホームページ | い草屋 花莚 | 冨來屋本舗 |