日本有数の繊維のまち、児島。
児島は、真田紐や畳縁、足袋、学生服、そしてジーンズと、時代に合わせて数々の繊維製品を作り続けてきました。その柔軟な適応力と挑戦心は、児島ならではの強みだと思います。
古くから繊維産業を中心に栄えてきた児島ですが、少子高齢化や人口流出により、人手不足が深刻化しています。日本各地が抱えているこの課題に、児島はどのように向き合っていくのでしょうか。
産業振興とまちづくりに取り組む、児島商工会議所に話を聞きました。
記載されている内容は、2026年2月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
児島商工会議所について
商工会議所とは、各地域の事業者や商工団体と連携しながら、地場産業の振興に取り組む地域総合経済団体です。全国の市町村などに500以上設置されています。

その地域の事業者である「会員」で構成されており、会員は業種別の部会に所属しています。児島商工会議所は「織物部会」「縫製部会」「染色部会」と、繊維関連の部会が細分化されていて、児島の産業の特色が現れていました。

児島商工会議所は、1946年に発足した琴浦商工会議所と南児商工会議所が合併し、1947年に設立されました。2026年1月の時点で、約1,300社の会員が所属しています。
児島の地場産業を支える取り組み
児島商工会議所のおもな事業は、産業振興を通じたまちづくりと、事業者向けの経営支援です。
1. まちづくり事業
地域と地場産業を盛り上げるまちづくり事業として、以下の取り組みをおこなっています。
- 倉敷市児島産業振興センターの運営管理
- 児島ジーンズストリートの構想および支援
- 児島塩結びプロジェクトの推進
- 児島市民交流センターの運営・指定管理
- 児島地区商店街への出店促進活動
- 「三白市」や「児島フェス #せんいさい」などの地域イベントの企画運営
- 「せんい児島ジーンズ巡りプロジェクト」の企画運営
- 他、地域イベントの支援など
筆者が特に気になった取り組みを、3点ピックアップして紹介します。

一つ目は、倉敷市児島産業振興センターの運営管理についてです。
児島商工会議所が入っている建物は2階建てとなっており、1階に倉敷市児島産業振興センターがあります。倉敷市から委託を受けて運営している創業支援施設です。
創業期を支援するレンタルオフィスの「デザイナーズインキュベーション」は、繊維・アパレル関連、またはクリエイティブ関連の新規事業者が利用できます。

作業場所を確保しにくい新規事業者にとって、デザイナーズインキュベーションは月に2、3万円ほどで部屋を借りられるため、心強い居場所だと思いました。
借りられる部屋は全7室ありますが、基本的に満室状態が続くほど人気があるそうです。他にも、工業用ミシンやアイロンを使える工房や、地域紹介コーナー、会議室などがあります。

二つ目は、児島ジーンズストリートの構想・支援です。
ジーンズストリートは、観光客からの「児島のジーンズを買う場所がない」という声を受けて、児島商工会議所が中心となり立ち上げました。地場のジーンズが買える場所として、国内外から多くの人が訪れる観光スポットです。

ジーンズストリートは、事業者のアイデアによって、至るところにフォトスポットが生まれています。高い位置に干されたジーンズや、ジーンズ風にラッピングされた自動販売機や青く染めた道路など、訪れる人が楽しめる工夫が盛りだくさんのエリアとなりました。
児島商工会議所は出店誘致などの支援をおこないながら、にぎわい創出に力を入れています。

最後に、「児島フェス #せんいさい」の企画運営についてです。
毎年春と秋に開催されるこのイベントは、児島の繊維製品がお得に手に入ることから、岡山県内でも動員数が多いイベントといわれています。

ただの安売りではなく、環境配慮の視点からアパレル廃棄を無くそうと「アパレル廃棄ゼロ!お得に高品質を手に入れよう!」というスローガンのもと開催しています。
メーカーはお試し出店ができるなど、イベント継続のために出店者を増やす工夫がおこなわれているそうです。
2. 経営支援事業
児島商工会議所がおこなうもう一つの事業が、地域の企業に寄り添う経営支援です。おもに以下の取り組みをおこなっています。
- 融資相談、専門家を呼んだ「なんでもナンデモ相談」の実施
- 中小企業を経済的に支援する共済制度の取り扱い
- 労働保険事務代行
- セミナー・研修会の開催
- 記帳指導・決算指導
- 創業希望者が気軽に相談できるくらしき創業サポートセンターの設置
確定申告の時季になると、ボタン付けや裁断などを一人でおこなっているかたも決算指導に訪れるそうです。繊維産業を長年支えている職人が数多くいることも、児島ならではだと感じます。

児島が抱える繊維産業の課題とは
日本有数の「繊維のまち」として栄えてきたこともあり、児島には生地、縫製、加工、染色など、専門的な繊維企業が集まっています。製造から販売までを一貫しておこなえる体制があるため、スピーディに高品質な繊維製品を作ることが可能です。
児島ほど繊維企業が集まっている地域は、世界的に見ても貴重だそうです。
取材に協力いただいた児島商工会議所の事務局長 細羽浩平(ほそば こうへい)さんに、児島の特徴を聞いたところ、「児島は人口減少している地域のひとつですが、繊維産業が特化しているため児島で起業を目指す人は多いんです。付加価値のあるものづくりができるからだと思います」と教えてもらいました。

しかし、そのような強みのある児島でも、深刻な人手不足に直面しています。
最大の課題は人手不足
児島商工会議所が感じている児島の深刻な課題は、人手不足です。求人を出しても応募が一通も来ないことも珍しくありません。
良い人材が流れてしまうことはもちろん、そもそも地方に働き手がいなくなってしまう危機感を抱えていました。
特に繊維産業は、規模の小さい企業やメーカーも多いため、求人を出しても若者に届けきれないことがあります。情報発信の工夫や、若者との接点が不足している点も、課題の一つに挙がっています。

地元企業への就職を選択肢の一つに
人手不足を解決する策として、児島商工会議所は倉敷市立短期大学と連携し、服飾美術学科の学生を対象とした「くらたん合同企業説明会」を実施しています。

2025年は、繊維企業を中心に児島の企業が15社集まり、各ブースで学生に向けたPRをおこないました。
筆者も見学に行きましたが、宿泊事業の企業のブースにも学生が集まっているのを見て、業界や職種にこだわらず、地場企業に就職したい学生も多いのだと勉強になりました。
児島商工会議所の細羽さんは、「児島は繊維産業だけでなく、建設業、宿泊業、サービス業と数多くの事業があります。児島で働く選択肢を持ってもらうためにも、地元企業と学生さんの橋渡しに力を入れていきたいです」と話します。

まちづくりに力を入れる児島
さまざまな切り口で産業振興に取り組む児島商工会議所ですが、単なる産業の維持だけでなく、住む街として魅力的であるかどうかも非常に大切にしていました。
人が住み続けるためには欠かせないまちづくり。
観光名所を整備して多くの観光客を呼び込むことも、イベントを実施して事業者を潤すことも、まちづくりの一つです。
正解がないまちづくりにおいて、住む街として魅力的であり続けるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
児島商工会議所の副会頭を務める、髙田織物株式会社 代表取締役の髙田尚志さんに話を聞きました。











































