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緋鯉図屏風の森山知己教授に聞く
はしまや呉服店に飾ってあった屏風、「緋鯉図屏風」の作者である、倉敷芸術科学大学芸術学部の森山教授へ夢空間はしまやにて、お話しを聞くことができました。
森山教授の研究テーマは、古典絵画に用いられてきた材料・素材、道具や技法、画題等をてがかりに「日本画」という言葉の定義研究です。
時間を味方にした日本画
なぜ日本画が研究テーマなんですか?
森山
(日本という)国の名前がついた絵とは、いったいどんな絵画なのかを具体的に知りたいからです。
たとえばの話しですが、描画する道具である鉛筆やペンなどは、誰でもすぐ簡単に使い始められますよね。
でも日本画の筆って、訓練しないとなかなかうまく使えません。習字も同様ですよね。
言われてみれば、そうですね。
森山
西洋で線を描くときはといえば、スーー…っと一本線を引きます。
でも日本画の古典となるものでは、「点を打つことを続けるように」とか「墨を置くように線を描く」と紹介されたりします。
なぜかわかりますか?
……なんででしょう。
森山
和紙のでこぼこに沿うように絵の具を置き、「点」をつないで線を描いているんですよ。
緋鯉図屏風も同じ方法で描いています。
描きあげるまでに時間がかかりますね。
森山
現代はスマホなどでメールを書き、相手に送りますよね。
でも少し前は、直接用紙にペンや筆を使いラブレター(恋文)を贈ったものです。
ラブレターは「有限の時間を、あなたのためにたくさん使って書きました」という想いも込められているように思うのです。
日本画もなのですが時間をためることに、おもしろさを見つけたといってもいいでしょう。
伝統ある倉敷という街に出来た倉敷芸術科学大学
なぜ学生に、屏風を描くことを体験させたんですか?
森山
倉敷の街に、より賑わいをと企画された「倉敷屏風祭」については、すでに紹介されてたとおりです。
▼大学が存在する地域のイベントや祭りに、学生が積極的に参加するということは、以下のことがらが期待できます。
- 関わる地域を身近に感じる
- 愛着を持つことができる
▼また大学を誘致した倉敷市として、さきほどのことを通じ期待ができることは、以下のとおりです。
- 若い人たちが地域に住む
- 街に暮らす良いイメージ
- 将来定住を期待できる
芸術について学ぶ学生が、祭りの中心テーマである屏風を作成する。
そして絵を描いて参加することは、まさに地域と共にある大学、それも専門がそのまま活かせる場として最適です。
「屏風祭に屏風を描いて参加する」
大学の総合プロジェクト授業、「倉敷屏風プロジェクト」として行われることになりました。
屏風祭に参加する屏風はどのようにして確保するか?
森山
屏風は、新たに作ると大変高価なものです。
当初は古い屏風を探し、提供してもらい、それを修理して描くことを考えました。
しかし、集まらなかったんです。
そこで昨年度(2017年度)、ご縁を得た2組に協力をしていただきました。
- 天神山文化プラザで企画に関わった<アートの今・岡山2017「表装」>の岡山県表具内装協会会員の皆様
- 岡山県で唯一となった表具材料店である白神紙商店さん
<アートの今・岡山2017「表装」>とは
- 表具という技術、和紙などの素材づくりも含め、継承が危機的な状況下、現状を認識し、現代美術の若手作家と組み合わせて未来を考える企画
- アートはアーティストだけで出来るものではなく社会との関わり、生態系として存在する「アート生態系」という考え方に基づいての企画
みなさんの協力のもと、新たに屏風自体も作ることから始めることにしたのです。
その結果、以下のようなとても貴重な機会となりました。
- 伝統的な素材にふれること
- 伝統的な技にふれること
- 屏風について知り、自ら作ること
「屏風の構造」については、森山教授のホームページで見ることができます。
参考:屏風の構造
屏風に絵を描きたいでしょう!!!
森山
私が絵を描く者として思うのですが、「屏風に絵を描きたい」という気持ちは誰でもあるのではないでしょうか?
学生たちは自由に一人一つ、自分だけで屏風に絵を描きたかったことと思います。
ですが、多くはグループ制作となってしまいました。
実際に、「自分一人で描きたかった」という感想が多くあったんです。
もし、チャンスさえあればまた描きたいとの感想もありました。
- 屏風という伝統
- 屏風という伝統様式の実地体験
こんなチャンスはまたとないのです。
機会さえあれば描いてみたい、やってみたいというのは学生だけでは無いと思います。
取材を終えて
今の生活の中では、屏風を見ることや触るような場面もないですよね。
そして、屏風を制作することは恐らくないでしょう。
倉敷芸術科学大学の学生さんたちは、とても貴重な体験をしたんだということがわかりました。
2018年の屏風祭だけではなく、2019年もその次も…と毎年参加することになれば、うれしいなと思います。
倉敷屏風祭のデータ
名前 | 倉敷屏風祭 |
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期日 | 2018年10月20日(土)・21日(日)【終了】 午前10時から午後5時 ※阿智神社秋季例大祭にあわせて実施 |
場所 | 倉敷市本町、東町地区、美観地区界隈 |
参加費用(税込) | 無料 |
ホームページ | 倉敷屏風祭 | 倉敷観光WEB |