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倉敷考古館の伴 祐子 学芸員へインタビュー
倉敷考古館の学芸員・伴 祐子(ばん ゆうこ)さんにお話を聞きました。
インタビューは2019年8月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
倉敷考古館の展示品は700点以上
倉敷考古館では、展示だけでなく、発掘や調査もしているのでしょうか?
伴
以前は、発掘や調査をしていましたが、現在は展示が中心です。
倉敷考古館の開館当時は、まだ地方自治体発掘・調査の体制が整っていませんでした。
ですから、当館へ発掘や調査の依頼が来ていたんです。
他県からも依頼がありました。
現在、展示しているものの大部分は、かつて倉敷考古館が発掘・調査したものです。
他県での出土品も展示されているのも、当館が他県へ発掘・調査に出向いていたからなんですよ。
その後、自治体や大学で遺跡の発掘や調査ができるようになったので、当館では新たに発掘・調査をすることはなくなりました。
ただ、過去の出土品を整理したり調査・研究したりするなかで、新たな発見があることもありますね。
展示品は、どのくらいの数がありますか?
伴
現在、倉敷考古館内に展示しているもので約700点あります。
展示しているもの以外は、200箱以上ありますね。
割れていて、まだ復元作業をしていないものもあるのですが、かなりの数があるのは確かです。
そんなにたくさんあるんですか!展示していないものは、どこへ?
伴
倉庫がありまして、そこに保管してありますよ。
考古学の展示品は時代背景を想像する必要があるので、それをサポートしたい
展示をするうえで気をつけていることはありますか?
伴
現在の展示の説明文は、あえて簡潔に書いていますね。
詳しく説明しようとしたら、どうしても専門用語なども多くなりますし、長くなってしまうので…。
でも、今は逆に簡潔すぎてわかりにくいんじゃないかと思っています。
今後は、イラストや図解なども使って補足説明をすることも考えているんですよ。
そうすると、子供でもわかりやすいですし、大人でもパッと見て理解しやすいんじゃないかと。
考古学資料は、展示品から得られる情報だけでなく、その時代や生活の背景なども説明する必要があります。
美術品などのように鑑賞するのもよし、参考資料として情報を読み取っていくのもよし。
そこを私たちがサポートしていきたいですね。
あと、常設の展示品は、ときおり一部を入れ換えています。
見どころは吉備独自の文化である特殊器台と瀬戸内独自の分銅形土器
ほかの土地で見られない、吉備独自の展示品や特徴などは?
伴
吉備独自のものといえば、やはり特殊器台ですね。
埴輪の元になったものですから。
埴輪は教科書なのでよく知られているので、ピンとくると思います。
また、大阪の百舌鳥・古市古墳群が世界遺産となりましたが、古墳と埴輪はセットのようなものですので、特殊器台はいま注目の展示品かもしれませんね。
ほかに、吉備独自ではないですが、瀬戸内地方でよく見られるものとして、弥生時代の分銅形土製品(ふんどうがた どせいひん)も有名です。
瀬戸内の中でも、とくに岡山県ではたくさん分銅形土製品が出土していますよ。
倉敷考古館での見学の体験が遺跡の保存につながってほしい
今後やってみたいことや、考えていることはありますか?
伴
令和元年(2019年)の8月24・25日にはじめての試みとして、倉敷考古館の1階でワークショップを開いてみるんですよ。
大原美術館が主宰する「チルドレンズ・アート・ミュージアム2019」の一環として、銅鏡づくりのワークショップをおこないました。
内容は、銅の表面を磨いて、鏡にしていくというものです。
展示されている銅鏡は、古いものですから鏡っぽくないですよね。
そこで、実際に自分で磨いてみて、昔の人もこんな鏡をつくれる技術があったと知れるんじゃないかと思います。
あと、よくお客さんにいわれるのが「昔、教科書で見たことがあると思ったものがいくつもあった」という言葉。
それって、すごく大切なことなんです。
例を挙げれば、淡路島の工事現場で、重機のオペレーターのかたが銅鐸を発見したことがあります。
たまたま工事中に重機のオペレーターが銅鐸を見つけ「教科書で見たことがある気がするな」とピンときて、調査機関に連絡してみたところ、とても重要な出土品であることが判明しました。
いままで推測でしかなかった、銅鐸の鳴らしかたや使いかたがわかる発見だったんです。
なので「そういえば、倉敷考古館で見たことがあるな」ということがきっかけで、遺跡や出土品の保存につながればいいなと思っています。
おわりに
倉敷の平野部は、江戸時代前期以前は海で、倉敷美観地区一帯は島でした。
そのため、倉敷考古館で展示されている倉敷美観地区周辺の展示品は羽島貝塚(はしま かいづか)くらいしかありません。
しかし、倉敷市の北には吉備国の中枢だった吉備路があり、市内北部の真備地区や庄地区はその一部でもありました。
倉敷考古館では、かつての吉備国がヤマトや出雲とならぶ全国有数の勢力だったことがわかる、貴重な資料を見られます。
吉備が埴輪の起源だということや、鉄の生産が早くからおこなわれていたということは、考古館に来ないとなかなか学べない発見かもしれません。
令和の時代になり、百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に指定されるなど、古墳や考古学が注目されています。
前方後円墳とセットである古墳に飾られた埴輪は、吉備が起源。
吉備が起源である文化が世界遺産の一部として登録されているこ
とに、ぜひ注目をして欲しいと思います。
公益財団法人 倉敷考古館のデータ
名前 | 公益財団法人 倉敷考古館 |
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所在地 | 倉敷市中央1丁目3-13 |
電話番号 | 086-422-1542 |
駐車場 | なし |
開館時間 | 午前9時〜午後5時 (入館受付は午後4時30分まで) |
休館日 | 月、火 祝日の場合は開館 年末年始は休館 |
入館料(税込) | 一般:500円 (団体:400円) 高校・大学生:400円(団体:320円) 小・中学生:300円 (団体:240円) 障害者:240円 未就学児:無料 ※団体は20名以上 ※企画展・特別展は料金変更の場合あり ※障害者料金は障害者手帳の提示が必要(適用は本人と介助者1名まで) |
支払い方法 |
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予約について | 可 |
タバコ | 完全禁煙 |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | |
バリアフリー | |
ホームページ | 倉敷考古館 |