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【7/25(金)開催】第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会 ~ 予約不要・聴講無料の市民に開かれた歴史ある講演会

【7/25(金)開催】第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会 ~ 予約不要・聴講無料の市民に開かれた歴史ある講演会

伝えとこ / 2025.07.09

現代につながる倉敷発展の礎を築いた「大原家」。

第7代当主、大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)は倉敷紡績(クラボウ)の社長を務めるかたわら、事業で得た富をもとに数々の社会貢献活動をおこないました。

大原美術館や倉敷中央病院などの施設も、そうした活動の一環として設立されました。

2025年7月25日(金)に開催される「第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会」も、明治35年(1902年)に孫三郎が創設した「倉敷日曜講演」をルーツとし、時代に合わせて形を変えつつ、現代まで受け継がれています。

毎年各方面の多彩な講師を招聘(しょうへい)し、広く市民に向けて聴講無料で開催される本講演会。
今年はどのようなお話が聞けるのでしょうか。講演に寄せる思いを取材しました。

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記載されている内容は、2025年7月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会について

第69回大原孫三郎・總一郎記念講演会チラシ

大原孫三郎が創設した「倉敷日曜講演」は孫三郎亡きあと、長男の總一郎(そういちろう)が引き継ぎました。
さらに、總一郎亡きあともその思いを受け継ぐ人たちによって、名前や形を変えつつも、時代を越えて現代まで受け継がれています。

現在は「公益財団法人 有隣会」の主催にて毎年1回、7月下旬頃に「大原孫三郎・總一郎記念講演会」を開催しています。

第69回となる今回は、2025年7月25日(金)に倉敷公民館・大ホールにて開催。

講師に元文化庁長官の近藤誠一(こんどう せいいち)氏が登壇し、「人類文明の流れ〜いまわれわれはどこにいるのか〜」という演題にて講演が開催される予定です。

有隣会について

講演会を主催する「公益財団法人 有隣会」は、おもに大原家にゆかりのある企業や団体、個人で構成される団体です。

有隣会

「有隣」とは、論語の一節にある「徳は孤(こ)ならず、必ず隣(となり)有り」という言葉に由来しています。

この言葉は大原孫三郎が好んだもので、現代語に訳すと「人徳のある人は決して孤独ではなく、必ず理解者や共感者が現れる」という意味になります。

なお、大原美術館の向かいにある大原家別邸「有隣荘」も、この言葉に由来して名付けられました。

おもな活動として、本講演会をはじめ、社会教育活動や大原孫三郎・總一郎をはじめとする大原家の歴史を紹介する「語らい座 大原本邸」の運営をおこなっています。

講演会開催に寄せて ~ 有隣会 代表理事 虫明さんインタビュー

今回の講演会開催に寄せて、公益財団法人 有隣会 代表理事の虫明優(むしあけ まさる)さんにお話を聞きました。

公益財団法人有隣会 代表理事 虫明優さん
公益財団法人有隣会 代表理事 虫明優さん

有隣会のこれまでのあゆみについて教えてください

虫明(敬称略)

1943年に有隣会の前身となる敬堂会(けいどうかい)が任意団体として発足、その後1969年に有隣会に改組します。拠点を大原美術館内に置き、講演会開催に関わる一連の活動を担っていました。

ちなみに私は以前、大原美術館の副館長を務めていたのですが、そのときも私とスタッフの二人だけで細々と活動をおこなっていました。

大原美術館の外観

その後、講演会以外にも大原孫三郎・總一郎を顕彰(けんしょう)し、活動を進めていくことを目的に、2010年4月に一般財団法人 有隣会へと改組します。

以降、大原家に伝わる古文書や資料の整理などを始め、研究発表会を開催するなど、活動の幅を広げてまいりました。

その後2015年4月より公益財団法人 有隣会となり、当時非公開であった旧大原家住宅(現在の「語らい座 大原本邸」)を公開しようという計画が持ち上がります。

語らい座 大原本邸外観
語らい座 大原本邸外観

そこで改装工事をおこない、2018年4月に語らい座 大原本邸」として一般公開されました。

現在は、「大原孫三郎・總一郎記念講演会」の開催と、「語らい座 大原本邸」の運営および関連する教育文化活動の二本柱で活動しています。

講演会の歴史について教えてください

虫明

この講演会は、大原孫三郎が1902年に始めた「倉敷日曜講演」にその起源を発します。

これは、大原孫三郎が各方面の多彩な講師を倉敷に招聘し、広く市民が無料で聴講できる社会教育の一環として始めたもので、1925年までにのべ76回、講演会を開催しました。

登壇する講師もそうそうたる顔ぶれで、たとえば大隈重信(おおくま しげのぶ)や新渡戸稲造(にとべ いなぞう)など、今では歴史の教科書に載っているようなかたがたが登壇したという記録が残っています。

その後、1943年に大原孫三郎が亡くなり、第二次世界大戦などもあって講演会は一時中断していました。

戦後、孫三郎のあとを継いだ長男の大原總一郎が、1955年に「大原敬堂記念講演会」という名前で講演会を復活させます。

「敬堂(けいどう)」とは大原孫三郎の号(本名とは別に使用する名前)より名付けられました。

孫三郎の「倉敷日曜講演」と同様に各方面の多彩な講師を倉敷に招聘し、以降毎年1回講演会を開催しています。

その後、總一郎は1968年に亡くなりますが、有隣会が講演会活動を引き継ぎました。

現在は孫三郎の誕生日である1880年7月28日と總一郎の命日である1968年7月27日にちなみ、毎年7月27日前後に「大原孫三郎・總一郎記念講演会」を開催しています。

大原敬堂記念講演会のころを含めて、今年で69回目を迎える歴史ある講演会です。

2024年に開催された講演会のようす
2024年に開催された講演会のようす

印象に残っている講演はありますか

虫明

どの講演も興味深く印象に残っていますが、特に2006年・2010年・2016年の講演が印象に残っています。

2006年の講演会で、建築家の安藤忠雄(あんどう ただお)さんが登壇されたときは、ホールに入りきらないほどの人が来たことをよく覚えています。

安藤忠雄氏が設計した高梁市成羽美術館
安藤忠雄氏が設計した高梁市成羽美術館

安藤さんは著名な建築家であるうえ、講演会も頻繁(ひんぱん)にされているためファンも多く、遠方からも多くのかたが聴講に訪れました。

2010年の講演会には、のちに(2019年)ノーベル化学賞を受賞する旭化成の吉野彰(よしの あきら)博士に登壇いただき、ノーベル化学賞受賞のきっかけとなった「リチウムイオン二次電池の開発経緯と今後の展開」というテーマでご講演いただきました。

これは、旭化成株式会社が水島に事業所をもっている縁で、吉野博士にオファーして実現した講演です。

2016年の講演会では、JAXA(ジャクサ:宇宙航空研究開発機構)にて小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎(かわぐち じゅんいちろう)博士が登壇。

太陽系大航海時代に挑む」という演題で、はやぶさプロジェクトについての講演をしていただきました。

JAXA 種子島宇宙センター
JAXA 種子島宇宙センター

講師のかたはどのように選ばれていますか

虫明

有隣会のサイトにも記載がある通り、現在に至るまで人文科学(文系)、自然科学(理系)問わず多様なジャンルのかたに登壇いただいてきました。

候補者については、毎年有隣会で複数名を選出し、優先順位をつけてお声がけしています。

ご依頼してもスケジュールが合わない場合も多いため、このような仕組みにしています。

今回の講師について教えてください

虫明

今回登壇いただく近藤誠一氏は東京大学を卒業後、外務省に入省し外交官としてのキャリアを重ね、ユネスコ日本政府代表部大使などを歴任されてきたかたです。

その後、2010年から2013年まで文化庁長官を務められたあと、現在は国際ファッション専門職大学学長を務めています。

並行して、一般社団法人 人文知応援フォーラム」の代表理事も兼務。
人文知応援フォーラムは大原謙一郎(おはら けんいちろう)が設立した団体で、本人も共同代表理事を務めています。

また、人文知応援フォーラムの理事には、現在(2025年7月)開催中の2025年大阪・関西万博のテーマ事業(シグネチャーパビリオン)に携わっている福岡伸一(ふくおか しんいち)さん、中島さち子(なかじま さちこ)さんなど、多方面で活躍しているかたが多数おられます。

福岡伸一/いのち動的平衡館(2025年大阪・関西万博)
福岡伸一/いのち動的平衡館(2025年大阪・関西万博)
中島さち子/いのちの遊び場クラゲ館 館内(2025年大阪・関西万博)
中島さち子/いのちの遊び場クラゲ館 館内(2025年大阪・関西万博)

近藤誠一氏は直接2025年大阪・関西万博には関わっていませんが、今回の演題「人類文明の流れ〜いまわれわれはどこにいるのか〜」は、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」とも関連しており、興味深いお話が伺えるのではないかと期待しています。

どのようなかたに聴講に来てほしいですか

虫明

市民に開かれた講演会ですので、老若男女問わず多くのかたにご来場いただきたいと思います。

特にこれからの時代を担う若いかたがたには、ぜひ聴講いただきたいです。

登壇される講師のかたにご協力いただき、講演会開始前の午後4時から5時まで、地域の若者との対談をおこなっています。

それはどのような対談でしょうか

虫明

昨年(2024年)は大原美術館の館長、三浦篤(みうら あつし)氏だったので敷青陵高等学校の美術部を中心とした若者が対談に臨みました。三浦先生は東京大学の名誉教授を務めているので、生徒たちは「東大の先生と話ができる」と興味津々だったようです。

また、一昨年(2023年)はノーベル化学賞受賞者の名古屋大学特別教授、野依良治(のより りょうじ)先生だったので、受験生を中心に、多くの高校生が対談に参加しました。

ちなみに今年は、近藤先生と岡山大学の学生による対談を予定しています。どのような対談が展開されるのか、今から楽しみです。

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おわりに

筆者は昨年初めて本講演会を聴講し、倉敷とことこに記事を寄稿しました。

実際に講演会を聴講してみて、倉敷という地方都市で長年に渡り各界の著名人のかたを招聘し、講演会活動を継続していることに感銘を受けたことが強く印象に残っています。

徳は孤(こ)ならず、必ず隣(となり)有り」の言葉のとおり、大原孫三郎・總一郎父子が掲げた「社会教育活動」への崇高(すうこう)な理想は、時を越えて多くの理解者や共感者を生み、現代まで受け継がれてきました。

そのような思いに触れながら、7月25日は老若男女問わず、多くのかたに聴講いただければと思います。

予約不要で聴講自由な講演会ですので、仕事や学校帰りに気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会「人類文明の流れ〜いまわれわれはどこにいるのか〜」のデータ

第69回大原孫三郎・總一郎記念講演会チラシ
名前第69回 大原孫三郎・總一郎記念講演会「人類文明の流れ〜いまわれわれはどこにいるのか〜」
期日2025年7月25日(金) 午後6時30分〜午後8時
場所倉敷公民館・大ホール
参加費用(税込)無料
ホームページ公益財団法人 有隣会
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787B

787B

倉敷市在住のものづくりに携わる会社員。倉敷はもとより、多様な色を持つ高梁川流域エリアの情報発信を、内部者と外部者双方の視点でやっていけたらと思っています。

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