矢掛町の自然と歴史シリーズ ~ 元高校教員がパンフレットに刻む矢掛町の自然・歴史・文化

パンフレットを持つ田賀辰也さん
パンフレットを持つ田賀辰也さん

地元の自然や歴史、文化を知りたいと思ったことはありますか。
矢掛町在住の筆者は、そう思ったとき、何から手を付ければよいのかわかりませんでした。

そのようなときに知ったのが、矢掛町に残る地域の歴史・文化・自然を、わかりやすく伝えるパンフレット「矢掛町の自然と歴史シリーズ」です。

パンフレットを作成するのは、高等学校の元教員である田賀辰也(たが たつや)さん。インタープリター活動もしている田賀辰也さんに、パンフレットを作成した経緯などを聞きました。

インタープリターとは
自然や歴史遺産などは、それぞれに意味や重要性、言わば「メッセージ」を持っています。そのメッセージを、自身の感性を媒介にし、分かりやすく伝えるのがインタープリターの役目です。人々と自然や文化との「つながり」をつくり、それらを通じて地域を、ひいては地球を愛する人とを増やしていくことが目的だということができます。環境保全や社会の持続可能性が問われる現代において、インタープリターの役割はきわめて重要になっています。

引用元:日本インタープリテーション協会

記載されている内容は、2026年8月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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「矢掛町の自然と歴史シリーズ」の概要

No1オモテ

「矢掛町の自然と歴史シリーズ」は、田賀辰也さんが矢掛町の魅力的な歴史・文化・自然を大勢の人に知ってもらうために、自費で発行しているパンフレットです。

パンフレット1枚(両面印刷)で一つのテーマが完結するように制作されています。

バックナンバー

2026年8月現在、No.17まで発行されています。

No.1~No.7は「矢掛町の自然と歴史の魅力発信プロジェクト」、No.8以降は「矢掛町の自然と歴史シリーズ」に変わりました。

バックナンバーのテーマは以下のとおりです。

バックナンバー
  1. 多様な淡水魚を育む矢掛町の自然環境/矢掛町の河川の魚たち
  2. 矢掛町の内水面漁撈(ぎょろう)-江戸時代大名に献上された小田川の鯉-/魚を献上し、大名から銀を拝領
  3. 佐伯義門が描いた矢掛の地図/江戸時代から明治時代へ 矢掛に残る変革の足跡
  4. 矢掛に残る「猿尾」-高瀬舟が活躍したころの歴史を今に伝える土木遺産/矢掛町小田に残る水運の名残
  5. 矢掛町出身の歌人 石井直三郎/石井直三郎の歌にしのばれる矢掛の情景
  6. 矢掛町に伝わる子供の民俗文化/豊かな自然と地域の歴史が育んだ子供の民俗文化の伝承
  7. 矢掛町の農村に伝わる食文化/豊かな自然と地域の歴史が育んだ食文化の伝承
  8. 矢掛町の重要文化財チシャノキをめぐる物語/チシャノキと岡山後楽園 岡山空襲 歌舞伎 竹久夢二
  9. 矢掛町に残る戦争の記憶-旧中川村の戦没者-/その時代を生きた人々の思い
  10. 矢掛町をささえた養蚕業/矢掛町に残る養蚕業の足跡
  11. 土地利用の工夫-小田川と一ノ瀬川が形成した土地-/その土地に合った作物栽培の軌跡
  12. 水田の生物多様性/農業・農村の有する多面的機能
  13. 矢掛町の内水面漁撈(ぎょろう)-弥生時代から現代につながる川の魚を獲る文化-/矢掛町の漁具・漁法
  14. 大通寺の涅槃図に描かれた動物たち
  15. 矢掛町重要文化財金毘羅天の絵天井
  16. 矢掛町に残る戦争資料 空襲/出征兵士の見送り
  17. 矢掛町に残る戦前・戦中の記録 竹槍訓練/奉安殿 宮城遥拝 広告

パンフレット配布場所

パンフレットは以下の場所で配布しています。

  • 道の駅山陽道やかげ宿
  • やかげ町家交流館
  • 矢掛町立図書館

このほかに、イベントなどでも配布しています。

田賀辰也さんにインタビュー

取材を受ける田賀辰也さん
取材を受ける田賀辰也さん

パンフレットを制作する田賀辰也さんに、発行の経緯などを聞きました。

パンフレットができるまで

いつごろから構想していたのでしょうか。

田賀(敬称略)

小田川に住む魚を採集して、写真を撮り始めた20代後半から、矢掛町内の魚をすべて掲載した 冊子を作りたいと思っていました。しかし、現職(高校の教員)のときは、取材や編集をする余裕がなかったものですから、退職してからぼちぼちやろう、と考えるようになりました。

パンフレットの構成について教えてください。

田賀

パンフレットは本と違って紙面が限られているので、どのような構成にするかとても悩んだんです。

重視したのは、受け取った人が持ちやすく見やすい1枚にすること、情報量が多いためA4の両面にすること、自費出版なので費用を抑えるためにネット印刷を利用することです。

最初から、背景を濃い青色にしてメインの文字を白抜きにするスタイルで始めて今もそのスタイルでやっています。

黒板にチョークで白や黄色の字で書くと見やすい、というイメージですね。

パンフレットの写真はどれも生き生きとしていて、図鑑のようにきれいですね。写真撮影にこだわりがあるのでしょうか。

田賀

魚の写真には、1枚1枚深い思い入れがあります。
1990年前後の古い写真はスライドフィルムで撮ったもので、納得のいく1枚撮るためにフィルム1本(36枚程度)を使い切り、2本目を使うこともありました。

泥の上に生息しているなら泥を、こぶし大の石が多いところに住んでいるなら石を川から持ってきて水槽の底に並べて、その魚が生息している環境を再現して、無機質な水槽が映らないようにして撮影します。

魚が動き回るので、ストロボの強い光を当てて止まったように写します。
しかし、水が濁った状態で、強い光をたくと、画面全体が白けた写真になってしまうんです。このため、1枚の写真を撮るのに、最低3日くらいかかっています。

スライドフィルムのときは労力がかかりましたけど、徐々に写真を撮るノウハウが身につきました。たとえば、自分の影が映らないようにする方法やストロボの当てかたなどです。

No1ウラ

編集で気を付けていることを教えてください。

田賀

自分の考えではないことを記載するときは、どの文献に書いてあるのかわかるようパンフレットでも脚注を入れています。

パンフレットのなかに人の名前が出てくるときがあるのですが、了解をもらって名前を掲載するようにしています。そういう書きかたをすることで、記録としても価値のあるものになると思っているからです。

調べたい人がいらっしゃれば、先行研究にあたることもできますよね。

パンフレットのテーマ選びについて教えてください

田賀

書く動機はいろいろです。
思いついたものを書いたときもあれば、いつか出したいと思っていたものを書いたときもあれば、情報提供していただいてテーマを掘り下げたときもあるので。

その都度、新しく見つかったことを深めていこうというふうに進めたときもあるんですよ。パンフレットや本を出していると、「うちにこういう文化財がある」などといった情報をいただくことがあり、とてもありがたいです。

たとえば、No.3の佐伯義門(さえき ぎもん)というかたが書いた明治のはじめ頃の地図は、矢掛町にある佐伯文具店の佐伯健次郎さんから情報をいただいて。じゃあこれをちょっと深めてみようと思って書き始めました。

No3オモテ

No.5の石井直三郎(いしい なおさぶろう)は、矢掛町に石井直三郎という偉大な歌人がいたことは知っていましたが、退職してから改めてこの人について書きたいなと思って調べました。

No5オモテ

これからやりたいこと

これからの展望を教えてください

田賀

2026年4月末に、2001年から入会している岡山民俗学会で発表する機会をいただきました。

岡山民俗学会に入会したのは、生物だけではなく、この地域の農業や農作業の道具とか魚の取りかたなどをひっくるめて考えないとダメだと思ったからです。

4月末の発表では「矢掛町や小田川流域の民俗文化はこうですよ」という発表する予定です。今は発表に向けて、民俗学的な意義や背景などをまとめているんですが、原稿づくりに四苦八苦しています。

岡山民俗学会の活動を通して、矢掛町や小田川流域の民俗学的な意義といいますか、地域の特性をもっと深く研究できるようになりたいですね

田賀辰也さんは、『小田川流域の生物文化多様性』の刊行が評価されて、2026 年 4月26日に岡山民俗学会から「岡山民俗学会賞」を授与されました。

最後に読者へメッセージをお願いします。

田賀

作り手としては、どの号も身を削るようにして書いたものですから、見てほしいんです。なので、毎号パンフレットが刷り上がったら、やかげまるごと商店街振興会の会員のかたとか、教育委員会を通して矢掛町内にある小中学校の先生がた一人ひとりに配っていただいています。

パンフレットには矢掛町のちょっとしたトピックを載せているので、先生がたに何か感じていただけるものがあればうれしいですね。

また、授業などで川の観察会や昔の暮らしについてお話しする機会をいただければ、それを矢掛町の良さを広めるきっかけにしていきたいと考えています。

桃源郷はなしの里(矢掛町上高末)で講演する田賀辰也さん
桃源郷はなしの里(矢掛町上高末)で講演する田賀辰也さん

おわりに

田賀さんが、聞き取り調査をしていた30年前は、まだいろいろな漁法が実施されていたそうです。また、川で遊ぶ子どもや川釣りをする大人がたくさんいたけれど、今ではそのような人が減っていると感じているそうです。

「流域の生物や文化の多様性を伝えようとすると、自然にその歴史と人間の働きかけと生物の存在がつながっている」と語る田賀さんの言葉どおり、パンフレットには矢掛の多角的な姿が鮮やかに描き出されています。

「矢掛町の自然と歴史シリーズ」は、無料で配布されています。
興味があるかたは手に取ってみてはいかがでしょうか。

矢掛町の自然と歴史シリーズのデータ

道の駅山陽道矢掛宿にあるパンフレット
名前矢掛町の自然と歴史シリーズ
住所道の駅山陽道やかげ宿 ・やかげ町家交流館・矢掛町立図書館などで配布中
連絡先なし

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矢掛町出身矢掛町在住。

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