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第14回くらしき未来K塾/第1回高梁川流域未来キャリア教育セミナー ~ 学校と地域でつくる、持続的な教育のかたち

第14回くらしき未来K塾/第1回高梁川流域未来キャリア教育セミナー ~ 学校と地域でつくる、持続的な教育のかたち

知っとこ / 2020.07.22

倉敷美観地区にある国指定重要文化財の「語らい座 大原本邸」。

「今とこれからを語りあう場」として、教育プログラムにも力を入れています。

語らい座 大原本邸の主催するプログラムのひとつが、「くらしき未来K塾」です。

第14回目の開催は、倉敷市委託の「高梁川流域未来キャリア教育セミナー」という企画として開催されました。

テーマは、「地域協働による高校魅力化ガイド1」。

多様な業種や年代の参加者ひとりひとりが、これからの教育について熱く語りあう会となりました。

2020年6月27日(土)に開催されたセミナー「第14回くらしき未来K塾 ~地域協働による高校魅力化ガイド1~」のようすをレポートします。

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記載されている内容は、2020年7月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。

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「高梁川流域未来キャリア教育セミナー」とは

セミナーのチラシ

語らい座 大原本邸で、2年ほど続いた「くらしき未来K塾」。

2020年度は「高梁川流域未来キャリア教育セミナー」としても開催されています。

「高梁川流域未来キャリア教育セミナー」とは、倉敷市の事業と連携し、教師・企業・地域のつながりをつくり応援する月1回のセミナーです。

今回は、全5回の連続セミナーの初回として開催されました。

次回以降の予定は、以下のとおりです。

日時 内容 登壇者
7月25日(土)午後1時~3時 キーワードから読み解くSDGs 吉川 幸 氏
9月26日(土)午後1時~3時 withコロナ、ポストコロナ社会での学習指導要領の『活かし方』 合田 哲雄 氏
11月28日(土)午後1時~3時 地域協働による高校魅力化ガイド2 江森真矢子氏
12月26日(土)午後1時~3時 振返り・交流  

各回、定員は先着20人まで。7月開催までは、オンラインセミナーの形式で開催予定です。(2020年7月現在の情報)

▼2020年1月・2月のレポートはこちら。

第14回くらしき未来K塾 ~地域協働による高校魅力化ガイド1~の概要

セミナー会場のようす

14回目となる、くらしき未来K塾のテーマは「地域協働による高校魅力化ガイド1」です。

セミナーの流れは以下のとおりでした。

形式 内容 登壇者
講演 地域協働による高校魅力化ガイド1 江森真矢子氏
ブレイクアウトセッション (参加者によるグループディスカッション)  

今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大予防のため、基本的にはオンラインセミナーの形式で参加者を募集。

教育関係やまちづくりに携わっているかた、企業に勤めるかた、大学生など、約20人が参加しました。

会場内にはたくさんの通信用機材があり、参加者も「一体どんなイベントになるのだろう?」とソワソワした雰囲気です。        

セミナーがはじまると、コメントや質問が送られたり、参加者同士がオンラインでディスカッションをしたりと、心の距離はグッと濃密なセミナーとなりました。

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江森真矢子さんによる講演

講師の江森真矢子さん
江森真矢子さん

江森真矢子さんの講演では、経歴と「高校魅力化」という取り組みを通して、学校と地域がつながる必要性についてお話してくださいました。

オンラインセミナーのようす(講演スライド)

江森真矢子さんの経歴

江森真矢子(えもり まやこ)さんは、教育系専門誌の編集など、学校教育に携わる活動をされてきました。

2015年に岡山に移住し、和気町地域おこし協力隊として、岡山県立和気閑谷高等学校の魅力化に従事。
「地域社会と連携した学習プログラム」を運営し、学校と地域をつなぐコーディネーターという役割をつとめています。

2019年に「一般社団法人まなびと」を立ち上げ、2020年7月現在は執筆や講演、ワークショップなどの活動をはじめ、アドバイザーとしても活躍されているかたです。

2040年の学校を想像してみよう

セミナーの冒頭で、江森さんは「未来の学校」と題された資料について触れました。とても興味深い内容だったので、一部を簡単に紹介します。

これは2040年の、ある学校の話しです。

生徒は座学だけではなく、実際の地域社会に出て学びます。
そして「学校で勉強したことが、社会でどうつながるのか」を理解するのです。

かつては教員しかいなかった、職員室。

いまでは、地域の住民や大学教授、専門家、行政の職員など、多様なひとが日常的に関わる場になっています。

彼らは、生徒が安心して学べるように、チームとなって学びのサポートをします。

生徒たちにとって、「自分たちの学び、暮らしている地域、そして未来を、工夫してよりよくすること」は当たり前のことです。

「『将来、こんな学校だったらいいな!』と妄想を膨らませて書いたものです」と江森さんは説明しました。

江森さんが描く、地域社会に開かれた学校

今まさに、このような未来に向けて変化していることを、知っていますか。

「高校の魅力化」とは?~ここでしか得られない学び~

オンラインセミナーのようす(講演スライド)

「高校魅力化」とは、地域ぐるみで学校をより魅力的にすることです。

1990年、島根県立隠岐島前高校から始まりました。

きっかけとなったのは、島に1校しかなかった隠岐島前高校が、過疎化によって廃校の危機になったことです。

「このままでは人が流出し、島が消滅してしまう」という危機感から、島は存続をかけて「高校魅力化」に着手しました。

魅力化のひとつである「地域社会と連携した学習プログラム」では、島独自の課題を探し出し、解決するという授業を実施。

この島でしか得られない学びが生まれた瞬間です。

その結果、全国の生徒に「行きたい!」と思わせる人気の学校になったとのこと。

島に暮らす人口は増え、以前よりも活気づきました。

また隠岐島前高校の成功から、わかったことがあります。

それは、地域社会のなかで学ぶことが生徒のよりよい成長につながるということです。

成功を皮切りに、「高校魅力化」は全国各地の学校にも広まりました。

オンラインセミナーのようす(講演スライド)

なぜいま、「高校魅力化」に取り組む必要があるのでしょうか。

「高校魅力化」をすることで、学校と地域の好循環がうまれるからだと、江森さんは語ります。

地域社会のなかで得られる「社会で役に立つ実践的な学び」が、生徒の学習意欲・能力、ひいては生きる活力を向上させるそうです。

そして地域ぐるみで生徒を育てると、自らの意志で「地域をさらによくしたい!」と考える人材が、より多く育つといいます。

学校と地域の魅力が、未来にまで継続していく循環です。

語らい座 大原本邸館長の山下陽子さん
語らい座 大原本邸館長の山下陽子さん

実は岡山県も、学校と地域の連携が進んでいる県のひとつだそうです。

岡山県立真庭高校の「真庭魅力化プロジェクト」、岡山県立倉敷南高校「町衆プロジェクト」などが、地域ぐるみの「高校魅力化」を代表する例として知られています。

セミナーのコーディネーターでもある、語らい座 大原本邸の山下陽子(やました ようこ)館長は、もともとこれらの高校の校長先生をされていたかた。

真庭高校では、畜産業の体験学習で命の大切さを学ぶ生徒たちを見て、体験的な学びが人として大切なことを教えると実感したそうです。

学校と地域がつながるために

オンラインセミナーのようす(講演スライド)

「高校魅力化」には、学校と地域の協働が欠かせません。

「地域社会と連携した学習プログラム」が、「高校魅力化」の核だからです。

しかし、学校と地域をつなぐコーディネーターとしての経験から、協働は簡単ではないと江森さんは言います。

江森さんは、生徒を含め学校と地域が定期的に話しあう大切さについて、教えてくださいました。

学校と地域がそれぞれの目先の利益にとらわれず、思いをひとつにして協力することが大事なのだそうです。

ブレイクアウトセッション

セミナーの参加者

ブレイクアウトセッションでは、参加者たちが数人ずつ6つのグループに割り振られ、ディスカッションをしました。

決まったテーマはなく、前半の講義を受けて、話し合いたいテーマを参加者が出しながらの進行です。

会場参加の人たちもセッション中は、スマートフォンの画面を通じてオンラインの参加者と話し合いをしていました。

オンラインのグループディスカッションをしている参加者
会場のいろいろなところで、オンラインのグループディスカッションをしている参加者のようす

約40分ほどそれぞれのグループで話し合ったあと、全体でどんな意見が出たかを共有しました。

筆者が驚いたのは、大学生などの若い世代がきわめて具体的な意見を持っていたことです。

なかには、「高校魅力化」に取り組んでいる学校の卒業生だという参加者も。

そのこともあってか、地域社会と連携した「高校魅力化」について明確なビジョンを持ち、今後の課題を理解しているようでした。

例えば、「高校間の交流を活発にし、地域社会と関わって得た学びや感動を共有するべき」という意見。

今は、地域社会のなかで学べる人数に限りがある。マッチング制度で機会を平等にするべき」という指摘など。

しっかりとした発言に、参加していた大人たちも目を見張るばかりです。

年代や立場の異なる人が、自分に何ができるかを真剣に考え意見を交わしました。

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おわりに

語らい座大原本邸

第14回目のくらしき未来K塾では、学校と地域がつながる必要性について学びました。

「高校魅力化」は、未来の社会を支える取り組みだと思います。

  • 地域社会全体で、生徒たちを育てる
  • 生徒たちは大人になり、自分たちが暮らす地域に還元する

そんな、途切れることなく続くポジティブサイクルの起点

またセミナーでは、「未来の教育について『自分ごと』として考えている人がこんなにもたくさんいたんだ」という、嬉しい驚きがありました。

教育の未来は、きっと明るい

セミナーに参加する前より、強く感じました。

「くらしき未来K塾」では、今後も教育にまつわるセミナーが開催されます。ここは、まさに江森さんが必要性を訴えた、学校と地域がつながる語らいの場

「私にはついていけないかも…」と身構えなくても、大丈夫です。

筆者のように「何の専門家でもない一般人」でも気軽に参加できる、広く開かれた会ですから。

次回以降の案内は、「高梁川流域未来教育セミナー」のWebサイトを確認してみてください。

▼第2回高梁川流域未来キャリア教育セミナー ~ キーワードから読み解くSDGsは、こちら。

第14回くらしき未来K塾/第1回高梁川流域未来キャリア教育セミナーのデータ

名前第14回くらしき未来K塾/第1回高梁川流域未来キャリア教育セミナー
期日2020年6月27日(土) 午後1時~3時
場所岡山県倉敷市中央1丁目2-1
参加費用(税込)無料
ホームページ高梁川流域未来キャリア教育セミナー
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みにこ

みにこ

アートが大好きで、「文化的なまち倉敷」の虜になったライター。
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