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くらしき支援LABOの発起人 佐藤将一さんへインタビュー
くらしき支援LABOを立ち上げた佐藤将一さんへ、活動の背景や活動に対する想いについて聞いてきました。
福祉にまつわる分断を解消するイベントの裏側に迫ります。
くらしき支援LABOができるまで
くらしき支援LABOを立ち上げた経緯を教えてください。
佐藤(敬称略)
障がいを持つ子どもたちの就労支援に携わってきて、多くの子どもたちを社会に送り出してきました。
しかし、彼ら、彼女らが就職して働き始めたあとも、生活の規模が大きくなっていないことに気がついたんです。
子どもたちの多くは、働きはじめたあとも自宅と職場だけを往復するような生活をしていて、自宅と学校を往復する学生と変わらない生活を続けていました。
ショッピングモールに行くぐらいしか週末の過ごし方はなく、友達と飲みにいったり、コンサートに出かけたりするような楽しみのある生活へは変化していなかったのです。
生活に変化が起きない理由を考えたときに、社会でおこなわれているイベントに参加する機会がほとんどないのだと気がつきました。
そこで、障がいを持つ人たちに、恋愛や娯楽など、生活を豊かにするようなことに出会う機会を提供する必要があると思い立ったんです。
最初はどのように企画を進めたのでしょうか?
佐藤
2021年の初めごろ、もう一人のリーダーである安藤さんや、福祉事業にかかわる仲間とともに、具体的にどのようなことを実現すべきかについて議論を始めました。
そのときに具体化したことは、「障がいを持つ人たちと支援者のつながりが生まれる環境の構築」、「福祉にかかわる人たちと社会との接地面の創出」、「児童期から成人期までの支援を書き留める手帳の開発」です。
それらに加えて、活動の集大成として「成果を地域社会に発信する報告会の開催」という4つの目標を明確にしました。
そのタイミングで、私の友人が結婚相談所を始めたという話を耳にしたので、障がいを持つ人たちへ向けても婚活イベントが開催できないかと持ちかけたんです。
さらに、婚活イベントの準備を進めながら、公益財団法人トヨタ財団からの助成金の申請手続きにも着手しました。
助成金を申請するだけでなく、先立つ成果も生み出そうと具体的に行動を開始したのです。
2021年は新型コロナウイルス感染症の影響があったと思います。イベントの開催には課題が多かったのでしょうか?
佐藤
新型コロナウイルス感染症の影響で、人と会う機会が減ってしまい、支援を必要とする人たちにとっても不安の大きい状況でした。
人との接点が減ってしまったからこそ、いち早くイベントを開催しなくてはならないと、私たちは焦りを感じていたんです。
ただ、公共のイベントスペースは軒並み休館している状況で、会場を見つけるのにも苦労しました。
新型コロナウイルス感染症によりイベントを諦めるというよりも、困難な状況だからこそ、必要な人に向けてイベントを開催しなくてはならないと押し進めたんです。
くらしき支援LABOが目指す社会
イベントの発信はどのようにおこなっているのでしょうか?
佐藤
くらしき支援LABOでは、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用して、イベントを発信してきました。
障がいを持つ人でも、日頃からSNSを利用しているので、自ら情報を集められます。
これまで開催されてきたイベントの多くは、支援者から促されて、当事者が参加している印象でした。
しかし、他者の判断に委ねた行動を続けていては、大人としての主体的な意識は芽生えないでしょう。
自ら情報を集めて、自らの判断でイベントに参加できるように、SNSでの告知を続けています。
イベントを実施するうえで大切にしていることはありますか?
佐藤
本物を経験してほしいという想いから、プロのパフォーマーや講演者に登壇してもらっています。
従来、社会全体を見たときに、障がい者の慰問を目的としたイベントが実施されてきました。
それらのイベントでは、ボランティアやアマチュアの講師を招いていることもあります。
また、特定の施設で開かれる閉鎖的なイベントが多かったように感じます。
確かにひとつの支援の形ではあると思いますが、福祉の枠組みに捕われていて、障がいを持つ人に対する区別がありました。
くらしきLABOは障がいを持っている人に限定した、特別なイベントを開催しているのではありません。
技術も高く、社会的に活躍しているプロが登壇する、誰でも参加できる社会に開かれたイベントを開催しています。
本物のイベントをどのように実現しているのでしょうか?
佐藤
お酒も飲めるようなダイニングバーを会場にすることで、福祉の領域を超えた本物のイベントを提供しています。
もちろん、障がいの有無にかかわらずイベントへの参加費は発生します。
「自分で働いたお金で、自分で選んだイベントを楽しむ」という当然の機会を提供することが私たちの役割です。
障がいの有無にかかわらず楽しめるイベントが当然のように開催される社会が、理想だと考えています。
倉敷市内のカフェ&バーKAGを利用した理由を教えてください。
佐藤
婚活セミナーでは、座学形式の講座だけでなく、カップルの成立を目的としたマッチングイベントも開催しています。
つまり、座学で身につけたことを実践するイベントです。
マッチングイベントを会議室で開催するのは無粋な印象があり、会場選びに困っていました。
そこで、難しいとは思いつつも、カフェ&バーKAGを運営する株式会社クラビズの代表取締役 秋葉優一さんに相談してみたんです。
くらしき支援LABOの活動趣旨を理解してくれた秋葉さんは、カフェ&バーKAGを使用することを快諾。
マッチングイベントにも顔を出してくれました。
「障がいがあろうがなかろうが、誰にでも恋愛や結婚をしたいという気持ちがある。私たちとまったく変わらない感情を持っていることに気がつかせてもらった」と、くらしき支援LABOの活動に賛同してくれました。
その後も、婚活イベントだけでなく、音楽イベントや装花イベントを開催するときにも、会場としてKAGを提供してくれるようになったのです。
くらしき支援LABOの想い
イベントを開催する際に、気をつけていることはありますか?
佐藤
イベントを開催するうえで意識していることは、できるだけ特別な対応をしないことです。
婚活、音楽、装花など、どのようなイベントでも、基本的な流れは、世の中で実施されているイベントと同じにしています。
少しだけ違いがあるとしたら、イベントのスタッフのなかに、障がいを持つ人への支援の心得がある人がいることです。
そうすることで、障がいを持つ人たちが安心して足を運べる会場にしています。
イベントの内容を障がいを持つ人たちに合わせるのではなく、障がいを持つ人も気兼ねなく参加できるように、参加のための間口を広げることのほうが大事だと思っています。
最低限度の支援にすることで、福祉の枠組みではあるものの福祉のようには見えないイベントを目指しています。
これからどのような活動をしていきたいですか?
佐藤
障がいの有無にかかわらず楽しめるイベントを、もっと多くの人からの発案によって生み出していくことが次の目標です。
これまで企画したイベントの多くは、私と安藤さんが中心となって進めてきました。
一緒にイベントを運営してきた仲間のなかにも、素晴らしいアイデアを思いついた人もいるでしょう。
アイデアを具体化したり、イベントの開催までのプロセスを明確化したりして、多くの支援者が企画を打ち出せる世の中にしていきたいと考えています。
多くのアイデアによって、障がいを持つ人が地域社会とつながる機会を増やすことが目標です。
新しい支援のあり方を学んで
筆者は、取材や執筆などの地域活動を始めてから、障がいを持つ人とかかわる機会を持つようになりました。
それまでは、限られた人とだけ会えば進捗するような閉鎖的な仕事をしていたため、障がいを持つ人との出会いに困惑したことがあります。
筆者の話しかけ方が不適切だったために相手を混乱させてしまった経験もあり、その反省から障がいを持つ人の特徴について勉強したこともあります。
障がいについての知識が大切だと痛感した出来事でした。
すべての人が楽しめるイベントを実現させる工夫について佐藤さんに聞いたとき、次のような答えが返ってきました。
「イベントのスタッフのなかに、障がいを持つ人への支援の心得がある人がいることです」
筆者の経験もあり、腹落ちした回答でした。
まったく区別をせずにイベントを開催したのでは、障がいの有無にかかわらず、すべての人が楽しめないのでしょう。
きっと、イベントに限らず私たちの社会全体でも同じことが言えて、すべての人が幸せに過ごすためには、障がいを持つ人への支援の心得を持った人が増えることが必要だと感じました。
筆者も障がいを区別するのではなく、相手に寄り添うための支援の心得を身につけたいと思います。
くらしき支援LABOのデータ
名前 | くらしき支援LABO |
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期日 | 主に倉敷市内で不定期に開催 |
場所 | 岡山県倉敷市新田2463-6 |
参加費用(税込) | イベントによって異なる |
ホームページ | くらしき支援LABO |