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楠戸恵子さんインタビュー
楠戸恵子さんに、楠戸家住宅で取り組んできた文化財建造物の再生利用について話を聞きました。
呉服店やギャラリーと常にお客様をおもてなしし続ける
楠戸家住宅の文化財建造物を、ギャラリーやカフェとして再生利用することになったきっかけを教えてください
楠戸(敬称略)
1996年に楠戸家住宅の5か所が登録有形文化財に登録されたことを受けて、市民に文化財を公開する必要が生まれました。
しかし、楠戸家住宅は今も私たちが敷地内で暮らしているため主屋はすぐに公開することが難しい状況だったんです。そこで、石畳の路地からなかに入ってもらうことで楠戸家の雰囲気が伝わるので、米蔵を改装して公開することになりました。
もともと呉服屋を営んでいることもあって、主屋で展示会を開催していた経験がありました。そこでお客様にお茶をお出しすることによって、お客様同士のコミュニケーションが生まれる楽しさを感じていたんです。
また、自分の作品を展示したり演奏をしたりしたいアーティスト、芸術を楽しみたいお客様双方の知り合いがいました。構想期間が長かったのですが、最終的に情報を発信したい人とそれを享受したい人の真ん中に自分がいることに気づいたんです。
このため、楽しい時間を共有できる場を作りたいと考え、1996年に米蔵を改装し「夢空間(サロン)はしまや」をはじめました。

2022年からは、6代目の妻まゆみさんが「atelier & salon はしまや」として、自家製発酵調味料を軸にした、お食事やドリンクをお楽しみいただけるサロンを運営しています。
夢空間はしまやでは、どのような展示がおこなわれていましたか
楠戸
クラシックやジャズなどさまざまなジャンルのコンサートや朗読会、アート作品の展示など、幅広いジャンルの展示をおこないました。
どのコンサートや展示も口コミで出展者の候補が見つかり、出展候補のかたと私が直接お話しし、展示をお願いしていました。
時代に合わせて取り組みを変化させていきたい
今でこそ古民家を活用したコミュニティは増えてきましたが、1996年当時は珍しい取り組みだったのではないでしょうか
楠戸
そうですね。
当時はいろいろなところに取材もしてもらいましたよ。
ここで何をやろうかと考えていた時間はすごく長くて、当初はレストランの構想もありました。後に息子が「くらしき 窯と南イタリア料理 はしまや」をはじめたので、レストランにしなくてよかったなとは思っていますけれども(笑)
倉敷の人たちは、民芸品を愛するかたが多いのはもちろん、ご自身がアーティストとして精力的に活動されているかたも多いです。だからこそ、夢空間はしまやが盛り上がったのでしょう。
最後に読者にメッセージをお願いします
楠戸
呉服店、ギャラリー、カフェ、レストランと、時代に合わせて私たちの取り組みは変化してきていますし、それによってお客様の年齢や系統も変化してきているように感じます。
ぜひ、楠戸家住宅の蔵の中で楽しくおいしい時間を過ごしていただければと思います。

おわりに
明治・大正・昭和・平成・令和と、楠戸家の人々の暮らしが続いている楠戸家住宅。
これからの時代も、その時代に合わせた楠戸家ならではの「モダン」な取り組みに目が離せません。