かつて綿花の栽培が盛んだったことから、繊維のまちとして発展してきた倉敷。
数ある市内の繊維産業のなかでも、株式会社丸五が作り出す地下足袋(じかたび)は大正時代からその歴史が続いています。
筆者は足袋と言えば、着物のときに履く特別なものという印象が強く、普段の生活ではめったに見かけない存在でした。
しかし、丸五が作る「足袋シューズ」を知り、そのイメージが覆されました。足袋シューズは普段使いができる足袋で、個性的な見た目と足袋ならではの機能性が魅力的な製品です。
地域に根差した老舗企業でありながら、常に新たな地下足袋の価値を生み出している丸五。入社5年目(※2025年4月現在)の若手社員、矢吹真実(やぶき まみ)さんに、企業としての丸五の魅力を取材しました。
記載されている内容は、2025年4月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
株式会社丸五(MARUGO)について

株式会社丸五(MARUGO)は、創立100年を超える老舗の地下足袋メーカーです。
地下足袋とは、底にゴムが付けられた足袋のこと。農業や建設業などの現場で、働く人の足を守る靴として活躍しています。

靴がまだ普及していなかった大正時代、人々の間ではわらじや足袋が履かれていました。
働く人の足を守るために、丸五創業者・藤木伊太郎(ふじき いたろう)氏によって開発されたのが、人力車に使用されていたタイヤのゴムを足袋の底に張りつけた「縫い付け式地下足袋」。丈夫なだけでなく、履き心地を追求した足袋は革新的なアイデアでした。

1919年に創業し、地下足袋から事業をスタートした丸五。長年作り続けた地下足袋のノウハウを生かして、ワークシューズの開発などの派生事業にも取り組んできました。
丸五が生み出す足袋は、大きく分けて3種類あります。作業現場で使用されるワークシューズとしての足袋、お祭りで履く祭事用の足袋、そして日々の健康をサポートする足袋シューズです。
現在も、地下足袋やワークシューズの先駆けとなるメーカーとして、「新しい地下足袋の可能性」を追求し続けています。

足袋シューズをデザインする矢吹真実さん

足袋シューズの事業を主とするウェルネス推進部で働く、矢吹真実(やぶき まみ)さん。1998年生まれ、岡山市出身です。
「岡山は住みやすくて一度も県外に出ようと思ったことがないんです」と話す矢吹さんは、岡山県立大学のデザイン学部でビジュアルデザインを学んだのち、2021年に新卒で丸五に入社しました。
矢吹さんのおもな仕事は、足袋シューズの企画・デザインです。靴を製作する傍ら、商品の写真撮影や、ポスター・商品画像の作成など、デザイン全般の業務に携わっています。時には、自ら靴の着用モデルを担当することもあるそうです。
足袋シューズは、日常使いがしやすい見た目だけでなく、健康的な足をサポートする製品でもあるため、開発にはさまざまな知識・経験が必要になります。
矢吹さんは「職場は幅広い業務にチャレンジできるので楽しいです」と話してくれました。
矢吹さんが丸五に入社するまで
矢吹さんが丸五に入社するきっかけとなったのは、学生時代に参加した2019年のD-Internship(ディーインターンシップ)でした。
D-Internshipは、倉敷アイビースクエアで開催されていた企業イベント「龍の仕事展」を、大学生の人材育成として活用したインターンシップ・プログラムです。高梁川流域の企業と大学生がマッチングするなかで、矢吹さんは丸五の担当となり、足袋シューズの販売企画などをおこないました。
D-Internshipと龍の仕事展は、2024年で終了しました。

インターンシップを通して、矢吹さんは商品の魅力を伝えて届ける接客の楽しさを実感します。そして、丸五の社員と交流するなかで、社員同士がお互いの意見を尊重し合い、気兼ねなく話し合いをする姿を見て、会社ののびのびとした雰囲気やその環境に魅力を感じました。
当時は新卒採用の枠はありませんでしたが、のちのウェルネス推進部部長に「良かったらうちで頑張ってみない?」と声をかけられ、学生時代に作成したデッサンやデザインをまとめたポートフォリオを持参して面接に挑み、丸五への入社が決まりました。

初めてプロデュースしたブランド「coppelia lily(コッペリアリリー)」
2023年10月に販売スタートした「coppelia lily(コッペリアリリー)」は、矢吹さんが初めて製作した靴です。

バレエシューズをもとに「バレエの物語のキャラクターのように、ちょっとドラマチックな日常を感じてほしい」という想いを込めて作られました。足袋シューズの機能性はそのままに、国産別珍(べっちん)のシックな風合いと濃い目の鮮やかなカラーがロマンティックなかわいさを引き出します。
製作にかかった期間は約2年。矢吹さん入社3年目に発売された、記念すべき1作目の足袋シューズです。

足袋シューズは、「企画・デザイン」と「設計」、そして「製造」のフローを経て販売に至ります。
「こういう靴を作りたい」というアイデアを形にし、細部を決めていくのが企画・デザイン。製造するにあたって、使う生地を選んだり、履きやすさや作りやすさなどの機能性を検証したりするのが設計の仕事になるそうです。
丸五では、製品担当者が一貫して企画・デザインから広報まで携わるため、それぞれの靴の仕様やブランディングにも製作者のこだわりが色濃く出ます。
矢吹さんがこだわった部分については、後半のインタビューをチェックしてみてください。
矢吹さんが考える丸五の魅力
矢吹さんが考える企業としての丸五の魅力は大きく二つあります。

一つ目は、社員全員が丸五のアイテムの魅力をしっかりと実感していること。
実際に足袋シューズを履き、その良さを体感している社員が多いため、接客の際にも実体験で得た魅力をきちんとお客様に伝えるられると話します。
取材時、筆者も足の形の悩みなどを相談し、足袋シューズを履くとどのような効果が期待できるのかをていねいに説明してもらいました。
自社製品愛を感じられるトークを聞いていると、足袋シューズの魅力がぐっと深まる気がします。

二つ目は、売るための接客ではなく、お客様の足を第一に考えて接客していること。
足袋シューズはサイズ合わせが難しく、一人ひとりに合った靴を提案する必要があります。丸五の接客は、お客様の悩みを知ったうえで靴を提案するため、自然に販売員とお客さんとの距離も縮まるそうです。
矢吹さんは「もしも、ご自身の足のことや足袋シューズ以外の靴で悩んでいるお客様がいらっしゃいましたら、そこも真摯にお客様に提案します」と話します。このような誠実な姿勢があるからこそ、丸五のファンは多いのかもしれません。

丸五に入社して、2025年で5年目を迎えた矢吹さん。
その若さならではの視点から見た丸五について、インタビューしました。
株式会社丸五(MARUGO)のデータ

団体名 | 株式会社丸五(MARUGO) |
---|---|
業種 | フットウェア事業・工業用品事業 |
代表者名 | 福田正彦 |
設立年 | 1919年(大正8年) |
住所 | 岡山県倉敷市茶屋町1680-1 |
電話番号 | 086-428-0230 (営業部門) |
営業時間 | |
休業日 | |
ホームページ | 株式会社丸五(MARUGO) |