水島地域では1960年代にコンビナートによる大気汚染の影響で公害が発生し、公害病認定患者とコンビナート企業との間で裁判がおこなわれました。
その結果、1996年に和解が成立しましたが、その条項の中に「和解金の一部を環境再生のために使うことができるものとする」というものがあったそうです。
そこで2003年3月に公益財団法人 水島地域環境再生財団(通称:みずしま財団)が設立され、2023年現在まで水島地域の環境再生・まちづくりの拠点となっています。
活動の内容や思いについて、みずしま財団の塩飽敏史(しわく としふみ)さんと、藤原園子(ふじわら そのこ)さんに、お話を聞きました。
記載されている内容は、2023年8月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団)のデータ
団体名 | 公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団) |
---|---|
業種 | 公益財団法人 |
代表者名 | 理事長 石田 正也 |
設立年 | 2000年3月14日 |
住所 | 岡山県倉敷市水島東栄町11-12 |
電話番号 | 086-440-0121 |
営業時間 | 午前8時30分〜午後5時 |
休業日 | 土、日、祝日 年末年始(12月29日~1月3日) |
ホームページ | みずしま財団 - 公益財団法人水島地域環境再生財団 |
みずしま財団の現在の活動について
みずしま財団では、水島のまちづくりを通してより良い地域の環境を作るために、地域の人や企業、行政など、さまざまな立場の人と連携して活動をおこなっています。
財団としても、環境に対する調査・研究をおこなうことで、環境再生のために必要なことを調べることを通して、地域を良くしていく仲間を増やしているそうです。
みずしま財団では、以下の調査をおこなっています。
- 八間川調査
- 海ごみ問題の調査
- 樹木のCO2吸収量調査
- 地球温暖化対策に関する調査
これらの調査は一例であり、ほかにも環境に関する調査をしているのです。
また、環境保健分野での活動もおこなっています。
とくに呼吸リハビリの普及啓発活動をしており、みずしま財団では藤原さんが担当しているそうです。
呼吸器の病気や呼吸リハビリに関する専門家は地域にいますが、地域の人とつながるための仕組みはあまりありません。
環境分野だけでなく、保健分野でも地域の人と専門家をつなぐ役割を持っているのです。
さらに、みずしま滞在型環境学習コンソーシアムという体験・参加型の環境学習プログラムの受け入れや啓発活動もおこなっており、みずしま財団の活動は多岐にわたります。
みずしま財団の成り立ち
みずしま財団は、1983年から1996年まで続いた水島地域の公害にかかわる裁判の和解金の一部を基金として設立されました。
「和解金の一部を環境再生のために使うことができる」という条件は、原告である公害認定患者と被告である企業の和解を後押ししたといわれています。
と藤原さんは教えてくれました。
みずしま財団は、水島をより良い環境の街にしてほしい、子どもや孫には良い環境を残してあげたい、という公害患者さんの思いを託されてできた団体なのです。
みずしま財団の設立準備段階では、「水島まちづくり財団」という名前をつけようとしていたんです、と藤原さん。
しかし、水島地域が公害から再生していくことを願って、現在の団体名である水島地域環境再生財団に決まりました。
団体名へのこだわりは、英語名にもあらわれています。
みずしま財団の団体名の英訳は、The foundation for Environmental Rehabilitation and Redevelopment of Mizushimaです。
これは「水島の環境再生と再開発のための財団」と訳せます。
再生という意味の単語はたくさんありますが、みずしま財団の初代理事長が「再生という言葉の訳には“Rehabilitation”という言葉を使いたい」と言ったことから、現在の英訳となりました。
「よみがえれ 水島のまち」に描かれた水島の未来
1995年に患者さんによって描かれた「よみがえれ 水島のまち」という水島の未来図があります。
未来図に描かれた水島には、コンビナートがあるのです。
患者さんは水島からコンビナートをなくしたかったのではなく、良い環境を守りながら、水島でコンビナートと人が共存していく未来を思い描いていたことがわかります。
「よみがえれ 水島のまち」を、かつてコンビナートの企業で働いていた人に見せたところ、「コンビナートがちゃんとあるんだね」と一番に話していたそうです。
2023年現在、水島では企業、行政が協働しながら環境を守るための取り組みをおこなっています。
倉敷市環境交流スクエア(愛称:水島愛あいサロン)にある倉敷市環境監視センターが、テレメーターシステムで、24時間体制の環境監視をおこない、何か変わったことがあったらすぐに報告する体制を構築しているのです。
企業、行政、地域の人がそれぞれに連携しながら、チェック体制を構築し、水島地域の環境の回復、維持を目指しています。
みずしま財団とSDGs
みずしま財団ができたころには、公害の裁判が終わったあとで、社会の流れとしては地球温暖化などの新たな環境問題に目を向けられていました。
「よみがえれ 水島のまち」の地図は1995年に作られたものですが、改めて見てみると、患者さんが考えていたことこそがSDGsに当てはまることに気づいたそうです。
SDGsができたことで、患者さんが考えていたことが理論的に補強されたと感じています、と塩飽さんは話します。
また、SDGsという名前がついていないころから活動してきた団体としては、社会全体が環境問題に関心を持ってくれている今の流れはとてもうれしいものです、と藤原さん。
小学校や中学校でもSDGsを学ぶようになっていて、学びのフィールドとして水島に来てくれる学校もあるそうです。
みずしま財団が事務局を担っているみずしま滞在型環境学習コンソーシアムは、2022年には11団体540人の環境学習の受け入れをおこないました。
水島について学ぶことで、自分のまちのことや、学びたいことについて考えることへつながります。
「SDGsはよくわからない」と思っている人もいるとは思うけれど、一緒に学んでいきたいと考えています、と話してくれました。
SDGsの理念である「誰一人取り残さない」は、実現しようと思うと難しいことなのです。
しかし水島では、大気汚染による呼吸器の病気で苦しんでいた時代に、患者さんを取り残さないように地域で協力してきた、「誰一人取り残さない」を実践した歴史があります。
ある一つの立場、側面から物事を見るのではなく、さまざまな立場で話し合いながらまちの歴史を思い出したり、考えを出し合ったりできる場となっているのです。
みずしま財団が発行している「水島メモリーズ」や、2022年10月にオープンした「みずしま資料交流館 あさがおギャラリー」は、人々が交流するうえで重要なものになっています、と教えてくれました。
これからのみずしま財団
この先のみずしま財団について、塩飽さんと藤原さんは「パートナーシップの拠点として、仲間を増やしながら活動を続けていく」団体でありたいと話します。
SDGsは2030年までの目標ですが、それ自体を目標とするのではなく、持続可能な社会を作っていくための通過点としてとらえているそうです。
みずしま財団として、公害患者さんの願いを達成していくという柱は変わることはありません。
「環境問題や社会問題は勉強すればするほどわからなくなってしまうし、知れば知るほど社会に絶望してしまうかもしれないけれど、希望を失わないでほしい」と藤原さんは話します。
自分たちが暮らす世界の問題をすべて解決するのは難しくても、身近なところで自分にできる行動を起こすことから始めた先で、社会が変わっていくのかもしれません。
みずしま財団だけでできることは限られていますが、さまざまな人とのかかわりが増えていくなかでより良い方向に進んでいけると思います、と塩飽さんは話してくれました。
おわりに
水島地域で公害が起きた歴史から、みずしま財団は生まれました。
困難な歴史を乗り越えて、今の水島があるのです。
みずしま財団は、水島のまちを今よりももっと住みやすいものに、社会をもっと良いものにするために、地域の人や企業などのさまざまな立場の人と協力して活動をおこなっています。
環境、社会のことを考えるのは難しいことかもしれませんが、誰かと協力すれば変わることもあるはずです。
自分の身近な環境について考え、行動を起こすきっかけとして、みずしま財団のことを知り、仲間となってくれる人が一人でも多くなることを願っています。
公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団)のデータ
団体名 | 公益財団法人 水島地域環境再生財団(みずしま財団) |
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業種 | 公益財団法人 |
代表者名 | 理事長 石田 正也 |
設立年 | 2000年3月14日 |
住所 | 岡山県倉敷市水島東栄町11-12 |
電話番号 | 086-440-0121 |
営業時間 | 午前8時30分〜午後5時 |
休業日 | 土、日、祝日 年末年始(12月29日~1月3日) |
ホームページ | みずしま財団 - 公益財団法人水島地域環境再生財団 |