2015年に国際連合が採択した、2030年までに達成すべき17の目標からなる国際的なアジェンダ持続可能な開発目標(SDGs)目標10の「各国内及び各国間の不平等を是正する」が示されて以降、障がいのある人が参加できるイベントがぐっと増えてきたように感じます。
障がいの有無にかかわらず楽しめるイベントが定番化してきたからこそ「何のためにイベントをしているのか」「障がいのある人の暮らしや仕事、余暇の過ごしかたがより豊かになるにはどうしたら良いだろう」と立ち止まってみる時間も必要です。
そこで、障がいの有無にかかわらず誰でも楽しめるイベントを企画しているくらしき支援LABOでは2年に一度、日々の障がい者支援の総まとめとなるイベントを開催しています。
2023年に大盛況だった「支援LABOまつり」がさらにアカデミックなイベントになって、2025年秋の倉敷を盛り上げます。
概要やイベントにかける想いを取材しました。
記載されている内容は、2025年10月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
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目次
くらしき支援LABOとは
くらしき支援LABOは、障がいのある人たちが地域社会のなかで豊かな生活を送るための試みをおこなっています。
公的な社会福祉制度により最低限度の生活を送ることはできますが、障がいのある人たちが地域社会との関わりをもつための生活の選択肢を増やすためには、既存の制度では補えません。
こうした現状を変えるために、くらしき支援LABOでは、障がいの有無にかかわらず参加できるかたちで、婚活セミナーやカフェバーでの音楽イベント、装花(花を飾るパフォーマンス)イベントなどを開催しています。
くらしき支援LABO研究集会とは
障がい者支援は各団体でそれぞれにおこなわれており、互いの活動を共有する場が倉敷市内にはなかなかありません。障がいの有無にかかわらず参加できるイベントも増えてきましたが、それらも各団体が個々に活動しており、その目的やノウハウを共有するつながりも必要でしょう。
そこで企画されたのが「くらしき支援LABO研究集会」です。
日々障がい者支援に携わる人はもちろんのこと、障がいのある当事者やその家族、これから障がい者支援に携わりたい学生や企業など、障がい者福祉に携わる人たちのリアルが気になる人であれば、誰でも参加可能です。
名古屋や大阪、九州の障がい者福祉現場のリアルも聞けるチャンス
「くらしき支援LABO研究集会」は、2025年11月9日(日)倉敷市民会館を会場に開催されます。
内容や申込方法は、以下のとおりです。

当日は、『地域で暮らす障がいのある方々の「豊かさ」の実現へ向けて』をテーマに、8つの分科会が設定されます。
当日のスケジュールは、以下の画像を確認してください。

各分科会会場には、倉敷の福祉関係者はもちろんのこと、名古屋や大阪、九州など倉敷市外で障がい者支援に携わる支援者の発表もあります。
市内の法人がどのような想いで日々の支援にあたっているのか、他の地域ではどのような実践がなされているのか、多角的な視点で議論できる環境です。
お弁当付きチケットがおススメ
参加費は一人1,900円で、お弁当付きのチケットも用意されています。
お弁当は、以下の8種類。

- 焼肉食堂ブリスケ「豚カルビ・チキン丼」:2,750円
- 焼肉弁当ブリスケ「牛カルビ・チキン丼」:2,800円
- 食のお手伝い Yummy「だし巻きのり弁」:3,000円
- 食のお手伝い Yummy「気まぐれ弁当」:2,900円
- からあげぜんちゃん「今日の唐揚げ弁当」:2,750円
- からあげぜんちゃん「からあげかしわめし」:2,650円
- 阪本鶏卵「ゆで卵サンド1パック」:2,420円
- 阪本鶏卵「ゆで卵サンド2パック」:2,840円
すべて税込み価格
お弁当のお店への予約の関係上、イベント一週間前までに購入しておくと安心です。
お弁当付きチケットも、Peatixにて事前支払いになっています。
くらしき支援LABOの活動に賛同する団体の物販コーナーは入場無料
基調講演および分科会は倉敷市民会館の二階および三階で実施されますが、一階の物販コーナーは無料で入場可能です。
倉敷市内の福祉事業所で作ったスイーツや、くらしき支援LABOのメンバーが運営する認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷのハンドメイド作品など、研究集会のお土産に持ち帰れるものが販売されます。
物販を見て分科会に参加したくなったら、当日受付で参加料金を支払って参加することも可能です。
主催者へのインタビュー

くらしき支援LABO研究集会の発起人の一人、くらしき支援LABOの安藤希代子(あんどう きよこ)さんにイベントへの想いを聞きました。
「支援LABO研究集会」が開催することになった背景を教えてください。
安藤(敬称略)
2023年に「支援LABOまつり」を開催した頃のくらしき支援LABOは、トヨタ財団の補助金をいただいて活動していたので、その総括という意味でイベントを開催しました。
2年間の活動を総括する時間が私たちにとって大変意味のある時間だったので、今後も2年に一度このような時間をもちたいと話していたんです。

あれから2年。
くらしき支援LABOは、自分たちの力でさまざまなイベントを開催してきました。そこで実現したのが、今回の「くらしき支援LABO研究集会」です。
『地域で暮らす障がいのある方々の「豊かさ」の実現へ向けて』というテーマも、くらしき支援LABOのメンバーで今年(2025年)の春に合宿をして、話し合って決定しました。
「豊かさ」とは、どのようなものを指しますか
安藤
「豊かさ」にはさまざまなベクトルがあると思います。
金銭的な豊かさはもちろんのこと、障がいのある人たちにとって選択肢が一つでも多くあることが豊かさにつながるのではないでしょうか。
障がいがあっても、イベントに参加したり恋愛をしたりして、暮らしの選択肢の幅が広がるべきだと私たちは考えています。
それらは、国の支援制度だけではサポートしきれない部分も多々あります。国の支援制度でサポートしきれていない部分を、くらしき支援LABOで支えていきたいと思って活動を続けてきました。

今回の研究集会は、障がい者支援に携わる福祉の人はもちろんのこと、当事者やその家族、地域の人たちや企業などさまざまな立場の人が同じ場に集まるイベントです。
研究集会の場では、直接「豊かさをどう実現するのか」を話し合おうとは思っていません。
それ以前に今抱えている豊かさに対する矛盾や、制度の狭間で抱えている課題などをみんなで持ち寄って、しっかりと考える機会をもつことに意味があると思っています。
課題が明確になることで、これから2年間どのような活動が必要なのか、一度立ち止まってみんなで考えませんか?という提案がこの研究集会なんです。
2023年は「支援LABOまつり」でしたが、今回は「支援LABO研究集会」と名称が変更しましたね。
安藤
前回はお店が多数出店するなどエンターテインメントな部分もありましたが、今回はアカデミックな場にしたかったので、名称を変更しました。
プログラムも「基調講演」や「分科会」などと、研究会や学会のようなものにしています。
「研究集会」というと少し仰々しい感じもしますが、障がい者支援に携わるみんなで膝を突き合わせて、現状の障がい者支援の現場が抱える課題について考えるきっかけの場を作りたいんです。
さまざまな課題があるなかで、一人ひとりの支援者がそれぞれの場で創意工夫を重ねながら支援にあたっています。それらを突き合わせることは、倉敷の障がい者福祉現場の底上げにもつながるのではないでしょうか。
研究集会をとおして、さまざまな実践を知ることで同じように頑張る仲間と出会うことで刺激を受けて、やりがいや楽しさをもって障がい者支援に携わる支援者が一人でも増えてくれればとも思っています。
また、倉敷市内では、障がい者福祉に携わる人たちが法人や支援領域の枠をこえて実践事例を紹介し合う機会があまりありません。さまざまな発表を聞くことで「二年後に自分がこの研究集会で実践発表したい!」と目標を持ち帰って、それぞれの現場で切磋琢磨してほしいです。
支援者の議論が盛り上がれば盛り上がるほど、当事者やその家族も「こんなにも自分たちのことを考えてくれる人たちがいる」と思って元気になってくれるはずです。
くらしき支援LABOの総括イベントとしては2回目ですが、倉敷の障がい者支援に携わる人たちのアカデミックな集会としては、はじめの一歩のイベントなのですね。
安藤
はい。
どのマルシェもイベントも、解決したい目的があってその手段としての集客のはずなのに、いつしか集客が目的になってしまうものも少なくないですよね。
だからこそこの研究集会では、どのような社会を目指してこれからの活動をしていきたいのか、立ち止まって考える時間にしたいです。
少し小難しいイベントではありますが、自分たちの目的を言語化することで、応援したいと言ってくれる企業や地域の人など仲間を増やすために必要なイベントだと思っています。

どのような人に参加してもらいたいですか
安藤
ちょっとでも「障がい者福祉」というワードに興味をもった人は、どなたでも大歓迎です。
普段障がい者福祉に携わっている人はもちろんのこと、当事者やその家族にも参加して生の声を教えてほしいですし、熱い思いをもつ支援者の姿もぜひ見にきてほしいですね。
また、今は障がい者福祉に携わっていないけれどもこれから携わりたい学生さん、これから障害者雇用などのかたちで障がい者支援に携わりたい企業や地域のかたがた、さまざまな人に参加していただければと思います。
発表者には、倉敷市外のかたもいるようですね。
安藤
はい。
「児童期と成人期の分断」「AIと福祉」「障がいと性」には大阪から、「就労支援の未来」には名古屋から、「相談支援の収益性」には京都や九州からの発表者をお招きします。
倉敷市外の取り組みを知ることで、新たな知見を得られるでしょうし、逆に倉敷の障がい者福祉ならではの良さにも気付ける時間にしていただきたいです。
当日の楽しみかたを教えてください
安藤
分科会の発表者はあくまでも話題提供者なので、参加者のみなさまも気軽にディスカッションへ参加してください。発表者も参加者もフラットな関係で分科会を盛り上げてほしいです。
また途中退出も可能なので、気になる分科会を少しずつ見てまわったり一階のギャラリースペースでお買い物を楽しんでいただいたりと、自由に過ごしていただけます。
一階のギャラリースペースには、倉敷市内の障がい者福祉事業所の利用者さんの作品や、障がいのある子どもの保護者が作るハンドメイドをはじめとした、私たちの活動趣旨に賛同する人たちの店が並びます。
倉敷市内のかたはもちろん、市外からの参加者のかたには倉敷土産としてお買い物も楽しんでいただきたいです。

お昼のお弁当も、私たちが実際に食べてみておいしかったものばかりを選んでいるので、お弁当付きチケットもご検討ください。分科会会場で食べられるので、議論が途切れることなくお食事も楽しんでいただけますよ。
障がい者福祉に携わるかたは、同じように障がい者支援の現場で日々頑張っている仲間とつながり、2年後の研究集会に向けてどのような実践を重ねていきたいか、立ち止まってゆっくり考える時間にしていただけたらと思います。
読者へひとこと、お願いします。
安藤
立派な目的意識なんてなくても大丈夫です。
関心があるな、興味があるなと思ったら、どなたでもご参加いただきたいです。
おわりに
聴覚障がいのある私が何かイベントに参加するには、まずそこに手話通訳や文字通訳があるのか確認して、なければ自分で主催者や自治体に通訳を申請する必要があります。そのため「ちょっと気になった」程度で動くには労力が大きく、結果イベントなどからは足が遠のいてしまいます。
しかし、くらしき支援LABOのイベントであれば「どうやったら一緒にそのイベントを楽しめるか」を支援者がともに考えてくれるはずという安心感があり、私もLINEのオープンチャットに登録しました。
オープンチャットでは週に一回程度イベントのお誘いが来て、そのテーマはスナックや焚き火、婚活など多岐にわたります。障がいがあるとサポートのあるイベントにしか行けないイメージがありましたが、くらしき支援LABOのイベントにはすべてサポートがあるうえに選択肢も幅広いのが特徴です。
その理由のひとつに、企画する側が「障がい者の暮らしの豊かさ」をテーマに考えていることがあるのだと気づき、納得しました。
イベント時に支援者がどのような工夫をしているのか、今後どのような支援が必要だと感じているのかという支援者の考えを知り、地域とともにこれから誰もが生きやすい「豊かさ」について、ともに考える時間をもってみませんか。
支援LABO研究集会のデータ

名前 | 支援LABO研究集会 |
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開催日 | 2025年11月9日(日) |
場所 | 岡山県倉敷市本町17-1 |
参加費用(税込) | 1,900円 |
ホームページ | くらしき支援LABO (ガチンコ)研究集会 公式 Facebookページ |