目次
平野陽子さんにインタビュー

リニューアルの大きな鍵となる“パッケージデザイン”への想い、そして今後の展望について聞きました。
リニューアルで、“ブランド”としての第一歩へ踏み出す
「海幸山幸本舗」立ち上げから16年目ですが、リニューアルは今回が初めてですか?
平野(敬称略)
シールを変えたり、自作してみたり、パッケージの見直しや商品内容のリニューアルをほそぼそとしていましたが、大きな転換につながることはありませんでした。
ただ、パッケージにはずっと課題を感じていたんです。
せっかく新しいシールの版をつくって印刷しても、少しでも表記に変更が入ると、また版を作り直さなければなりません。結果的にそれまでのものが無駄になるため、コストを抑えようと「それなら自分で」と切り貼りして自社でつくっていたら、デザインがどんどん崩れてしまって……。
そうしたなかで、私が本格的に運営を見るようになり、「このままではいけない」という危機感がいよいよ迫ってきたんです。
ずっと抱えてきたパッケージの課題に、本気で向き合おうと決めたのが、2024年の冬でした。

今回のパッケージデザインは、デザイン事務所にお願いされたとのこと。どのような経緯で依頼したのですか?
平野
ある企業がOEMで私たちの商品を取り扱ってくださっているのですが、そのパッケージのデザインを担当されていたのが、今回お願いしたデザイン会社さんです。
間接的なつながりだったので、デザイナーさんに頼んだとしても、うまくいくかどうかわからず、また費用面の不安もあって、直接お願いする発想はありませんでした。
OEM先の担当者に海幸山幸本舗の現状を相談したところ、紹介を受けて、思い切ってお会いすることにしたんです。「海幸山幸本舗が変われる最後のチャンスかもしれない!」と、私たちの想いや考えをたくさん書き綴った企画書をもって伺いました。
OEM:「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略した言葉で、他社ブランドの製品を製造すること。
想いの詰まったパッケージで、徐々に認知を広げていく

これまでの“デザイン”との違いはどのようなところにありますか?
平野
企画書をもって伺った時点では、期待をもちながらも、内心では「本当に変われるのかな?」とも思っていました。パッケージに課題を感じていたものの、正直、何をどう変えれば良いのか、まったくわかっていなかったこともあります。
そのような不安もありましたが、実際にお話を進めるなかで思いがけない手応えを感じることになりました。
デザインするにあたって、商品の特徴やターゲット、販売場所などのリサーチはあるとは思っていました。でも、デザイナーさんはまず工場に足を運んでくれて「この商品がどんな素材を使って、どんな工程でつくられているか」「私たちがどのような想いで届けようとしているのか」といった部分まで、しっかりとくみ取ってくれたんです。
そうして引き出してくれた私たちの背景にある想い、一つひとつを理解したうえでデザインされていることに驚きました。

新しい“デザイン”によって、周囲やお客様の変化は感じられましたか?
平野
ほかの出店者さんや常連さんにも驚かれて、「社長、変わったん?」なんて言われたくらいです(笑)
朝市の広報記事にも“リニューアルした店舗”として取り上げてもらったんです。
新しいパッケージをお披露目した初日、ある百貨店のバイヤーさんが立ち寄られた際に気に入っていただき、今では実際に取り扱ってもらっています。そのほかにも、いろいろなかたが興味をもってくださって、広がりを実感しました。
取り扱う素材は変わっていないのに、若いかたや観光客のかたが手に取ってくださる機会が以前よりも増えて、本当に変化を感じています。
変化は周囲だけではなく、働く私たちにも及んでいます。
デザインのサンプルが上がってくるたびに「どんどん良くなっている!」と感動して、私たちの思いがちゃんと詰め込まれていることがうれしくて、自然に前向きな気持ちになれました。
そして、デザインだけでなく、内容量やサイズ、価格や卸先についても、デザイナーさんと私、父や母、パートさんも一緒になって考えるようになりました。 一つの商品パッケージの相談から、やがて海幸山幸本舗で働くみんなが意見を出し合ったり、作業を工夫するようになったりと、現場全体がどんどん活気づいていったんです。
自分たちの商品に自信がもてるようになったことで、ずっと据え置いていた価格をようやく見直すことができました。取引先からも前向きに受け入れていただいています。
いつか、「ここに行けば買える」場所を

今後の目標や展望はありますか?
平野
私たちの商品は素材の特性上、水揚げ量にばらつきがあったり、個体差によって思うように商品化できなかったりと、安定供給が難しい時期もありました。
そのような試行錯誤を重ねてきて今、「自分たちが本当においしいと思える状態」にたどりついたところなんです。そこにパッケージの魅力が加わったことで、「これが私たちの商品です」と胸を張って言えるようになりました。
まだまだこれからですが、将来的には、今の事務所を店舗にできたら良いなと考えています。「ここに行けば買える」という場所があれば、より安心して手に取ってもらえるからです。
「おいしかった」「誰かに贈りたい」と思って、商品を選んでくれるお客さんとの出会いを、私たちはこれからも大切にしたい。朝市でも、「からだにやさしい」といった説明を添えることで、商品の良さが伝わると感じています。
今後、体力的に屋外でのイベントに出ることができなくなっても、そうした思いを受け取ってもらえるお店を、自分たちの手でつくっていきたいと考えています。

取材を終えて
取材では、リアルな経営状況について、包み隠さず語ってくれた平野さん。
お父さんの真田さんが大切に育ててきたこの事業を、なんとしてでも次につなぎたい。その強い想いが、リニューアルの根底にあります。
パッケージデザインの変更は小さな一歩かもしれませんが、“続けていくための希望”がそこに生まれたこと。その確かな手応えとともに、前を向く平野さんを、これからも応援したいと思いました。
海幸山幸本舗(株式会社エフピー通販)のデータ

取り扱い店舗・朝市などの出店情報は、公式ホームページかInstagramを確認してください。
団体名 | 海幸山幸本舗(株式会社エフピー通販) |
---|---|
業種 | 食品菓子製造・販売 |
代表者名 | 真田泰昌 |
設立年 | 2009年(創業は1999年) |
住所 | 倉敷市西阿知町新田658-14 |
電話番号 | 086-466-4665 |
ホームページ | 倉敷 海幸山幸本舗 |