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萩原工業株式会社 経営企画室担当者インタビュー
地域に根ざし、独自の技術で進化を続ける「萩原工業株式会社」。
その事業の背景には、どのような想いや考えがあるのでしょうか。
萩原工業株式会社の経営企画室 吉田淳一(よしだ じゅんいち)さんと矢木建(やぎ たつる)さんに、企業の成り立ちや取り組みについてお話を聞きました。
萩原工業を支える技術「フラットヤーン」

萩原工業の事業について教えてください。
吉田(敬称略)
萩原工業の製品でもっともわかりやすいのはブルーシートですが、売り上げ全体の10%未満であり、その他様々な製品で構成されています。
例えば、土のうや防炎・防音・メッシュシート、コンクリートの補強用資材であるバルチップ、粘着テープの原反など、暮らしや産業を支えるさまざまな製品を手がけています。

矢木(敬称略)
また、サッカー場やテニスコートなどで敷かれている人工芝の原糸や輸送保管などに活用されるフレキシブルコンテナバッグなども製造・販売しています。

主力商品であるブルーシートとフラットヤーンについて教えてください。
吉田
ブルーシートをじっくり見られたかたは少ないと思いますが、実は「織物」なんです。
もともと親会社の萩原商店が、倉敷や早島で盛んだったイ草を織ってござを作っていたのですが、それを石油由来の素材に置き換えたのが始まりなんです。

矢木
ブルーシートに使っているのは、ポリエチレンという素材です。
これをフィルム状にして短冊のように切り、さらに熱を加えながら引っ張って細く伸ばすと、強くて平らな糸になります。

これが、萩原工業が大事にしている技術「フラットヤーン」です。
このフラットヤーンを織り、防水となるラミネート工程を経ることで、萩原工業のブルーシートが出来上がります。
つまり倉敷のござづくりの技術が、形を変えて今では世界中で使われる製品に生かされていると言えるのです。
会社の独自性について

国内外には同じようにブルーシートを製造する企業もあるかと思います。
萩原工業ならではの強みや優位性はどのような点にあるのでしょうか。
吉田
実は、国内でブルーシートを製造しているのは、現在私たちだけです。
他社も同じようなものを作ろうと思えばできるかもしれませんが、この業界はすでに成熟し、市場も縮小傾向にあります。採算が合わないなどの理由で、国内の同業者は撤退してしまいました。
矢木
代わりに、中国やベトナムといった海外メーカーが参入しています。海外製品は価格は安価ですが、その分品質は劣ることが多いです。
用途に合わせて短期間で使う分には問題ないかもしれませんが、日光により紫外線が当たると劣化するため、災害時に屋根を覆うような用途では、数ヶ月でダメになる事例もお聞きします。
私たちの製品は、そういった場面でも長く安心して使えるよう、強度や耐候性にこだわっています。
製造業はどうしても環境問題への配慮が避けられない側面もあるかと思います。萩原工業が取り組んでいる環境への配慮や工夫について教えてください。
吉田
萩原工業は「Re VALUE+(リバリュープラス)」というブルーシートの水平リサイクルプロジェクトを推進しています。

これは、使い終わったブルーシートを回収し、新しいブルーシートへと再生する取り組みです。これまで、ブルーシートのほとんどは焼却処分されてきました。

理由は、原料を再利用する際に品質を保つことが難しかったからです。再生したペレット(溶解、加工して粒状にしたもの)の品質を安定させるのが大きな課題だったんです。
矢木
萩原工業は国産ブルーシートのトップメーカーである責任として、この課題を解決しようとプロジェクトを推進してきました。機械製品事業をもつ強みを生かし、また様々な企業様にご協力をいただきながら、2025年6月よりリサイクルラインの本格稼働を開始しました。
吉田
石油を原料とする製品はやはり環境への配慮が求められます。
だからこそ私たちは、この取り組みを通じて新たな資源採掘やエネルギー消費を減らし、CO₂排出削減など環境負荷の軽減に貢献したいと思っています。
ブルーシートが「青色」のわけ

ところで「ブルーシート」は、なぜ青いのでしょうか?
吉田
実は、最初は「オレンジ」だったんです。
当時、オレンジの顔料には「黄鉛(おうえん)」と呼ばれる有害物質が含まれているという噂が広まりました。
そこで、より安全な色として「ブルー」に切り替えたのです。また、他にも以下のような理由があります。
- 耐候性に優れている
- 1960年代当時、バケツやホースなどの樹脂製品に青い原料が広く使われており、比較的安価に調達できた
- 有害物質が含まれておらず安全性をアピールできる
- 空・海と同じ色で景観を損ねにくい
こうした背景から「ブルーシート」という名前が定着しました。耐候性については紫外線の影響も大きいと考えられますが、正確なデータは持ち合わせていません。
矢木
同じポリエチレン素材のシートとしてシルバーやグリーン、オレンジなどのカラーバリエーションもあり、さらには遮熱や透明といった機能性の高いシートもあります。
最近ではレジャー用としてアースカラーのシートなどもラインナップに加わりました。また、シートの加工の幅も広く、ご要望の生地で、BOX型にお作りすることも可能です。
大型の印刷機も導入したので、写真入りの横断幕なども1枚からお作りできます。
社食から広がる健康経営、社員と地域に寄り添う取り組み

取材中、社員食堂を拝見しました。社員の健康管理に関する取り組みについて教えてください。
吉田
私たちは「健康経営」を社長が宣言し、社員がいきいき働ける職場づくりに取り組んでいます。
社員食堂では食事代の半額を会社が負担し、ボリュームのある温かい定食を手ごろに楽しめるほか、部署を越えた交流のきっかけにもなり、社内コミュニケーションを深める役割を果たしています。

矢木
禁煙への取り組みやストレスチェックによるメンタルヘルス対策など、働き方改革の一環として制度も整え、社員の心と身体の健康に配慮した環境を整えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
吉田
CMなどで社名をご存じのかたは多いかもしれませんが、どのような事業をおこなっている会社かはあまり知られていないかもしれません。
この記事を通じて、倉敷に根ざした企業がござ製作の技術を現代の形に進化させ、地域や社会に貢献していることを知っていただけたらうれしく思います。
矢木
これからも培ってきた技術力を生かし、環境への取り組みや製品開発を進めていきます。未来に向けて、地域とともに成長し続ける企業でありたいと考えています。
おわりに
取材を通じて強く印象に残ったのは、萩原工業が「地域に根ざした世界企業」であるという点です。
ブルーシートは災害時に欠かせない製品でありながら、その品質や背景を意識する機会は少ないもの。しかし実際には、倉敷発祥の技術を現代に生かしながら、環境や地域に配慮した挑戦を続けています。
取材時の名刺交換の際、名刺に大きく刻まれた「ハミダセ、アミダセ」の文字がとても印象的でした。

常識にとらわれず、新しい価値を生み出すという姿勢は、現場の雰囲気や社員の言葉からも感じられました。
さらに、CMソングに込められた「MAKE YOUR HAPPY LIFE」や「こころ弾む未来へ」といったフレーズからは、倉敷のまちや人々と喜びを分かち合いたいという願いも伝わってきます。
これからの萩原工業がどのような未来を編み出していくのか。
同じ倉敷に暮らす一人として、その歩みに期待したいと思います。
萩原工業株式会社のデータ

団体名 | 萩原工業株式会社 |
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業種 | ポリエチレン・ポリプロピレンを主原料とした合成樹脂繊維「フラットヤーン」を用いた関連製品、およびフラットヤーン技術を応用したスリッター等、産業機械の製造・販売。 |
代表者名 | 浅野和志 |
設立年 | 1962年(昭和37年)11月29日 |
住所 | 岡山県倉敷市水島中通一丁目4番地 |
電話番号 | 086-440-0860 |
ホームページ | 萩原工業株式会社 |