2019年8月22日から9月21日にかけて、「倉敷未来プロジェクト ひやさい2019」が開催されました。
「ひやさい2019」は、国際目標である「SDGs(エスディージーズ)」を考える17のプログラムで成り立っています。
倉敷とことこでは、9月14日に語らい座 大原本邸で開催されたプログラム「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」を取材しました。
記載されている内容は、2019年9月記事掲載時の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、ご了承ください。
目次
倉敷未来プロジェクト ひやさい2019のデータ
名前 | 倉敷未来プロジェクト ひやさい2019 |
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期日 | 2019年8月22日(火)~9月21日(土) 「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」は、9月14日(土)午後1時~4時半 |
場所 | 倉敷市各地 |
参加費用(税込) | プログラムにより、無料~8,500円(税込) |
ホームページ | ひやさい2019 × SDGs | 私たちの手でつくる倉敷未来プロジェクト |
倉敷未来プロジェクト ひやさい2019とは
「倉敷未来プロジェクト ひやさい」は、倉敷青年会議所が主催するプロジェクトです。
2009年より倉敷市の各地で体験プログラムを開催していて、2019年で7回目を迎えました。
「ひやさい」とは倉敷の方言で、「入り組んだ細かい路地」のこと。
倉敷美観地区には、ひやさいがいたるところにあるんです。
イベントでは、まちに点在した倉敷の文化・歴史・人のぬくもりを再発見し、倉敷の未来を考えます。
2019年は、「『続かない世界』を『続く世界』へ。私たちの手でつくる倉敷未来プロジェクト」をキャッチコピーに、持続可能な開発目標である「SDGs」に則ったイベントが開催されました。
SDGsとは
SDGs(エスディージーズ)は、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
倉敷青年会議所では、次のように説明しています。
SDGs(エスディージーズ)は、世界の課題解決促進のため、
政府、企業、研究者やNGO・NPOなどによってつくられた、
2016年から2030年までの世界共通の目標です。
貧困や飢餓、気候変動、平和な社会など17の目標と169のターゲット(小目標)から構成され、
先進国、途上国を問わず、すべての国々がSDGs達成に取り組むことが求められています。
「誰ひとり取り残さない-Leave no one behind」をスローガンに、
経済成長、社会福祉の発展、環境保護の3つの側面から、
すべての人々がよりよい生活を送れる世界を目指しています。
ひやさい2019 × SDGs | 私たちの手でつくる倉敷未来プロジェクト
17の目標とは、例えば以下のようなもの。
- 貧困をなくそう
- 質の高い教育をみんなに
- つくる責任 つかう責任
- 海の豊かさを守ろう
- パートナーシップで目標を達成しよう
このような目標それぞれに、小目標、さらに詳細な数値目標が掲げられています。
2019年2月に行われた調査によると、SDGsの名称認知率は全国平均16.0%でした。
都道府県別で見ると、岡山県は名称認知率23.7%で全国1位だそうです。
倉敷未来プロジェクト ひやさい2019のプログラム
倉敷未来プロジェクト ひやさい2019では、以下のプログラムが開催されました。
プロジェクト名 | 会場 |
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足袋工場見学&ハンドクラフト | 株式会社丸五 |
菊池酒造見学・酒粕で漬物つくり 酒造ツーリズム | 菊池酒造株式会社 |
そうだ!川にいこう!いつまでも活き生き流れる高梁川 | 高梁川河口東岸 |
算数めがねで見てみよう倉敷の魅力!倉敷美観地区算数ツアー | 倉敷美観地区 |
きれいな円を描け!!円書き大会in倉敷 | 倉敷物語館 |
楽しく学ぶ!ぼうさい教育サミット | 倉敷物語館 |
大原美術館でSDGsを楽しく学ぶ!カードゲーム&イブニングツアー | 大原美術館 |
森と音がつながる木育授業 | 株式会社ホリグチ |
「なりたいカラダ」楽トレフィットネス | エニタイム水島店 |
とら醤油工場見学・オリジナル醤油つくり | とら醤油株式会社 |
手作りmyキャンドルのあかりで楽しむ古さと新しさの漂う心地よい空間ディナー | キャンドル卓 渡邉邸 |
食品ロス削減のための簡単エコレシピ体験教室 | 水島こども食堂 |
髙田織物工場見学&ミニ畳作り | 髙田織物株式会社 |
高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり | 語らい座 大原本邸 |
連島ごぼうを掘り起こせ! | JAごぼう畑 |
自分のまちは自分たちの手で照らそう!竹あかりに願いを込めて | 倉敷市公民館 |
天領阿吽祭 | 倉敷美観地区今橋周辺 |
それぞれがSDGsの目標に則っていて、江戸時代から受け継がれた歴史文化と日常の暮らしが息づくまちで、世界を考えます。
「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」レポート
プログラムのひとつ「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」は、9月14日(土)に語らい座 大原本邸で開催されました。
「持続可能」というSDGsの視点を踏まえながら、どのように地域課題を解決していくかを考えます。
プログラムに参加したのは、大人たちと、倉敷商業高等学校・倉敷中央高等学校・倉敷鷲羽高等学校の学生たちです。
開会にあたり、語らい座 大原本邸の山下館長から「世代を超えて話し合うことで、新しい発見があることを期待しています」とお話がありました。
プログラムの流れ
- 各高校が事前に考えてきた地域課題を発表
- カードゲームでSDGsの意義と可能性を学ぶ
- 地域課題解決のため取り組んでいる行動が、SDGsの17のゴールのどこに当てはまるのかを考える
各高校が事前に考えてきた地域課題を発表
まず、地域課題とその解決に向けての取り組みを、高校生がスライドで発表しました。
倉敷中央高校は、地域の人を交えた討論会「ティーチイン」で、地元の「水島港祭り」の課題を発見。
お祭りをより良くするために提案し、実際にお祭りではいくつもの催しを実行しました。
若い人が参加しやすいようInstagramに投稿したくなるしかけを考えたり、タブレットでアンケートを取って来場者の意見を聞いたりして、数年かけてお祭りを盛り上げるためのさまざまな活動に取り組んでいます。
ティーチインをすることで、地域への参加意識が高まるなどの成果が出たそうです。
倉敷商業高校は、吉備中央町の観光ツアーを考える研修会で学んだことを発表しました。
ふだんとは異なる暮らしの体験自体がおみやげになったことなど、写真たっぷりで紹介。
そして、倉敷美観地区は江戸から令和へと6つの時代をまたいで続いている、会場となっている大原本邸は人が住み続けている建築、これらがまさにSDGsだと気づいたそうです。
現在は、コワーキングスペース「分福」にてSDGsを研究しています。
倉敷鷲羽高校は、児島地区の観光を盛り上げるため、観光動画のできばえを競う「観光甲子園」に出場。
215件の応募の中から50プランが選ばれる予選を通過し、現在は動画を製作中です。
動画作成にあたり、訪日観光客のデータを元に誘致したいターゲットを決め、観光プランを考え、絵コンテをつくり、各地を取材しています。
取材のようすや各スポットの魅力も紹介しました。
各校発表の後は、参加者が意見やアドバイスをポストイットに書き込み、フィードバックします。
たくさんのふせんで、壁に花が咲いたようにカラフルになりました。
多くの人からプレゼンへの意見やアドバイスをもらえるのも、貴重な体験になるのではないでしょうか。
発表を終えた鷲羽高校の生徒さんに感想を聞きました。
「はじめてスライド資料を作って発表して、緊張しました。足が震えてました。」
「夏休みの時間を使って、計画・資料作り・現地視察をしました。」
「児島や地元の良さ・魅力を、もっと私たちから伝えていけたらと思っています。」
緊張したようですが、わかりやすく発表していて、筆者は「なんてしっかりしているんだろう」と感心しました。
カードゲーム「2030 SDGs」でSDGsの意義と可能性を学ぶ
カードゲーム「2030 SDGs(ニイゼロサンゼロ エスディージーズ)」は2030年までの道のりを体験するゲームです。
チームには、それぞれのゴールが定められています。
悠々自適な生活を送りたい人もいれば、お金持ちになりたい人や、環境保護を大事にする人も。
参加者全体を地球とみなし、チームに与えられたお金と時間のカードを使い、プロジェクトを実行しながら、チームのゴール達成を目指します。
プロジェクト実行には時間やお金が必要で、実行すると自チームや世界の状況が変わります。
たとえば、「交通インフラの整備」プロジェクトを行うには、お金500と時間3が必要です。実行するとお金1,000と時間1などがもらえて、世界の状況が経済+1、環境-1と動く、といった具合です。
現実と同様、チーム間の交渉は自由。
さあ、初めて会う人で数人のチームを組み、ゲームスタートです。
まずは、自分の抱えているプロジェクトを競うように遂行していく各チーム。
とても盛り上がっています。
スピーディーに多くのプロジェクトが実施され、時間とお金の交換も見られました。
そして前半が終了し、11チーム中5チームが目標を達成しました。
しかし世界の状況を見てみると……
経済を示す青いマグネットだけが伸びています。
これはどのような状況でしょうか。
倉敷青年会議所の松本理事長から、解説がありました。
「経済は大成功。しかし環境と社会は壊滅的、温暖化には歯止めがかからず森林は破壊され続け、犯罪が多発し、隣の人も信じられないギスギスした世界になっています」
「もう一度、ゴールカードに書かれた文を最後まで読んでみてください。みなさんが得たい未来の世界はこのような状況でしょうか?」
問いかけがあり、後半がスタート。
雰囲気が、前半とは驚くほど変わりました。
前半でもチーム間で交渉していましたが、交渉がぐっと活発に。
「時間が余っているチームありませんか?」
「わたしたち、これを寄付できます」
「社会を良くするために、これに協力してくれませんか?」
「みんなでお金と時間を持ち寄って、このプロジェクトを達成しませんか?」
世界の状況を見て、パートナーシップがどんどん生まれました。
そして、ゲーム終了。
11チーム中10チームがゴールを達成し、かつ世界の状況も大幅に改善されました。
このゲームで、何がわかるのでしょうか。
解説によると、前半と後半の差、それが「SDGs」の存在意義。
つまり、SDGsがあることで世界で達成すべき目標を共有し確認でき、協力がうまれ、実現に近づくのです。
前半と後半における視点や行動の違い、結果の違いは、周りで見ていた著者にも明確に感じられました。
参加者はなおさらでしょう。
倉敷青年会議所が「2030 SDGs」を通じて感じてほしいと思っているのは、以下のポイントです。
- 「世界はつながっている」そして「私も起点」
- SDGsで軸になっているのは「パートナーシップで目標を達成しよう」
ひとりひとりの行動が世界を変えていくんだ、そして周囲との協力が欠かせないんだと感じられたゲームでした。
とても楽しく和気あいあいと盛り上がっていて、くらとこ取材陣は「楽しそうで仲間に入りたい」と羨ましく感じました。
地域課題解決のため取り組んでいる行動が、SDGsの17のゴールのどこに当てはまるのかを考える
続いて、先に発表した地域課題解決のために取り組んでいる活動を、SDGsの視点から見直してみます。
農業体験は「飢餓をゼロに」につながるだろう、働く女性へのインタビューは「ジェンダー平等を実現しよう」に当てはまるのでは、などとチームで話し合いました。
当てはまる目標のステッカーをペタペタと貼って、発表します。
これまで行なってきた活動も、SDGsに関連していることが明確になりました。
参加者の感想
最後に、感想や今後について考えたことを発表します。
次のような感想が挙がりました。
- カードゲームでは、最初は自分の目標ばっかり考えてしまったけれど、後半では社会にどう役立てるかを考えられました。そのことを思い出して、今後SDGsにつながる活動を続けていかないといけないと思いました。
- SDGsについて学べたし、いろいろなかたと意見交換ができて、新たな視点を持てました。
- これからSDGsを意識しながら活動していきたいです。
倉敷青年会議所からの総評・あいさつ
最後に、倉敷青年会議所のかたから、総評とあいさつがありました。
「今日からできることを、何かひとつでもふたつでもしていただけたら。もしすぐにできることがなくても、SDGsを知っている、伝えることだけでも、世界を良くしていけます」
「SDGsの本質は、誰一人取り残さない社会を作ることです。2030年に向けて、みんなで手を取り合って、住み続けられる世界を作っていきたいと思います」
「みなさんは地域の宝です。みなさんの理想が体現できるよう、社会に出たときに住みやすい地域を作れるように、倉敷青年会議所はがんばっていきます」
「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」を取材して
SDGsについて、概要だけではなく本質的なことを体感し、学んだプログラムでした。
高校生と家族・先生以外の大人が話し合う機会は少ないので、双方にとって貴重な機会になったのではないでしょうか。
高校生たちの発表が素晴らしく、将来を頼もしく感じると同時に、彼女たちがのびのびと力を発揮できる社会をつくっていかなければと身が引き締まりました。
わたしもSDGsを考え、できることから実践していきたいと思います。
倉敷未来プロジェクト ひやさい2019のデータ
名前 | 倉敷未来プロジェクト ひやさい2019 |
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期日 | 2019年8月22日(火)~9月21日(土) 「高校生と語る地域課題から考える未来のまちづくり」は、9月14日(土)午後1時~4時半 |
場所 | 倉敷市各地 |
参加費用(税込) | プログラムにより、無料~8,500円(税込) |
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