インターン事業担当者インタビュー
インターン事業を担当する井原市国際交流協会 事務局長の藤岡健二(ふじおか けんじ)さんに、これまでの経緯と2025年度のプログラムについてお話を聞きました。

インターン受け入れ事業が始まった経緯を教えてください
藤岡(敬称略)
当事業は、井原市出身の多摩大学教授 出原先生の仲介で始まりました。
出原先生との出会いは、私が井原市職員として観光プロモーションなどで東京へ出張した際に紹介していただいたのがそもそものきっかけです。情報系の研究者である出原先生に、井原市としても美星の星空の観光PRにVR(仮想現実)が利用できないかというテーマで意見交換をしていました。
そのなかで、多摩大学がフランスの工科系大学であるESIEA(エーシア)大学と10年以上前から提携を結んでいて、相互交換留学をおこなっていることを知りました。
出原先生から、夏休み期間中の2か月間、留学生に滞在してもらい、和文化などの情報発信をしてもらうプログラムの提案をいただき、井原市としても面白いと感じて企画が具体化していったのが、2019年頃の話です。
2020年に第一回のインターン受け入れをしようと思っていたところ、コロナ禍もあり実現できませんでした。
その後、コロナ禍が落ち着き始め、海外との往来も徐々に回復してきた2023年度に、初めてインターンの学生2名を受け入れました。今年度(2025年度)で3回目の受け入れとなります。
インターン期間中のスケジュールについて教えてください
藤岡
約2か月間のインターン期間中、数軒のホストファミリー宅にホームステイしながら、さまざまな活動や体験をおこないます。
平日は井原市内での日本文化体験や市内外へのエクスカーション(体験視察)などを中心に活動し、土日祝日はホームステイ先のホストファミリーと過ごします。
今年度、新たに始めたプログラムについて教えてください
藤岡
今年度は新たなプログラムとして、井原市内にあるデニム関連企業の見学をおこないました。
一般的に、デニムやジーンズの産地=児島というイメージがありますよね。
縫製が中心の児島に対し、井原市は古くからデニム生地の製造など素材産業が栄えてきた、知る人ぞ知るデニムの街です。

市内には、デニムの染料(カミヨ千々木株式会社)、糸の染色やデニム生地の製造(クロキ株式会社、日本綿布株式会社)、そして本日(7月18日)見学したデニム製品の縫製(青木被服株式会社)まで、一連の工程を担う企業が点在しています。
フランスの有名ブランドが井原デニムを使用しているご縁もあり、井原市のデニム産業の技術力を知っていただきたく、今回のプログラムを企画しました。
ほかにも、倉敷市にある「装着型サイボーグHAL」を用いたリハビリテーションをおこなう施設「岡山ロボケアセンター」の見学も予定しています。
こちらは井原市にて自動車部品を製造している「井原精機株式会社」の関連企業で、日本のロボット技術を知っていただこうと思っています。
インターン事業に期待するところは
藤岡
インターン生による発信を通じて、フランス在住のかたに井原市の情報を届けていただきたいと思います。滞在中の取り組みとして、滞在のようすをInstagramで写真とフランス語で情報発信をしています。
また、帰国後も井原の思い出や体験を友達や先生に伝えていただくことで、来年度以降もインターンに参加したいと希望する学生が増えるとうれしいです。
それらの活動を通じて、有名観光地ではないけど、日本の地方にも素晴らしい場所があるという生の声を届けていただければ幸いです。
また、井原市民の皆さんにとっても、ホストファミリーとしてのホームステイ受け入れや、さまざまな体験活動を通じて、身近に国際交流を感じられる機会になればと思います。
ホストファミリーについても、最初は皆さん不安に感じるようですが、一度受け入れてみると、次回も受け入れたいという声が多く、3年連続で受け入れていただいているご家庭が2軒もあるんです。
また、インターン生に体験プログラムを提供してくださっている市内の和菓子店や井原弓道会の皆さんも、回を重ねるごとに経験が積み重なっています。
これらの経験をさらに深め、将来的にはフランスに限らずインバウンド観光の需要も掘り起こしていければと思っていて、インターン生と井原市民、それぞれにさまざまな形での相乗効果が生まれることを期待しています。
おわりに

今回の取材は、2025年大阪・関西万博にて、イベント出展されていた井原市のブースを筆者が訪ねたことがそもそものきっかけでした。
その際、昨年のインターン生を紹介してくれた出原先生より、当メディアに向けて語ってくれた言葉が印象に残っているので紹介します。
単に「もの」「できごと」を紹介するだけでなく、そこにいる「ひと」を伝えようとされているところに感銘を受けました。情報技術やAI(人工知能)の時代に、これが一番大切だと思います。
井原市におけるインターン生の受け入れも同様で、人と人のつながりをきっかけにした、国境を越えた国際交流。こちらも回を重ねるごとによりその深みを増していることが取材を通して感じました。
また、偶然にも2025年大阪・関西万博におけるフランスパビリオンのテーマのひとつが「赤い糸の伝説」。

インターン生を通じて結ばれた井原市とフランスの国境を越えた「赤い糸」の絆が、今後さらに深まることを願っています。