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森下仁道さんにインタビュー
モロッコで活躍するプロサッカー選手、森下仁道(もりした じんどう)さんにインタビューしました。

過酷な環境に食らいつきながら、モロッコのサッカーに挑んだ
モロッコでの新たな挑戦、お疲れ様でした。モロッコリーグを終えた率直な感想を聞かせてください。
森下(敬称略)
前十字靭帯断裂という大きな怪我を負ってから、本当に多くのかたの支えがあって復帰できました。また、怪我をしながらもモロッコに挑戦できたのは、さまざまなご縁とご支援をいただいたからこそだと思います。
最終的に、モロッコリーグのデビュー戦ではスターティングメンバーで出場し、チームの勝利に貢献できました。約400日ぶりにゴールを決めたあの瞬間は、何事にも代えがたいうれしさがあります。大怪我に負けず、サッカーを続けてきて良かったと思いますし、これまでの挑戦を実績として残せたのがうれしかったです。

モロッコの暮らしで、苦労したことはなんでしょうか?
森下
これまで経験してきたガーナやザンビアとは違う大変さがありました。モロッコはアフリカのなかでも発展している国なので、ザンビアで体験した昆虫食の文化のようなサバイバル感は、そこまで無かったのですが、言語と宗教文化に慣れるまでは時間がかかりましたね。
モロッコの公用語はフランス語とアラビア語で、英語はほとんど通じません。まずは語学を習得するために、フランス語とアラビア語の語学学校にそれぞれ週3日通っていました。最初はまったくコミュニケーションがとれなかったんです。
言葉が通じない環境だけでも不安だと思いますが、それに加えて、慣れない宗教文化もあったのですね。
森下
はい。モロッコは人口の多くがイスラム教徒なので、僕も現地の方々の慣習にならって生活するようにしました。
イスラム教では、年に一度「ラマダーン」という断食期間があります。太陽が出ている日中は水も含めて一切飲み食いができないという慣習で、最初は血尿が出るほど過酷でした。
練習する際も、グラウンドに着いたらまずは口のなかを見せて、口が渇いているかどうかチェックするんです。練習中も水分補給ができないので本当に大変でしたが、人間ってやっぱり適応能力があるんでしょうね。やっていくうちに身体が少しずつ慣れていきました。

ほかにも、「インシャーアッラー」と呼ばれるムスリムの文化には、戸惑うことが多かったですね。この言葉には「神が望めば」という意味があって、たとえば「神が望むなら5時に集まろう」みたいに、先の予定を決めるときに使います。
ただし、必ずしも5時に集合するわけではなく、5時30分だったり、そもそも集まりが無かったりもして、言葉のニュアンスを捉えるのが難しかったです。
やはり現地の暮らしに馴染むことは重要ですか?
森下
僕のポジションは、点を取るアタッカーなので、チームメイトとの連携が必要不可欠です。良いパスをもらうためには、日ごろのコミュニケーションが非常に大切だと感じています。
試合中、もしパスを受け取れる選手が2人いた場合、「パスを出そう」「こいつなら決めてくれる」と思ってもらえるのは、より強い信頼関係を築いている選手です。
モロッコの文化や暮らしに溶け込んで、現地の人と交流する重要性をつくづく実感しています。
支えにもなった、現地の人たちとの温かい交流

チームメイトとの交流エピソードを教えてください。
森下
初めてチームメイトが食事に誘ってくれたときのうれしさは、よく覚えています。当時は言葉が通じなかったので、翻訳サービスを使いながら交流を深めました。
翻訳された文章だけだと、細かいニュアンスが伝わりにくいのですが、チームメイトが積極的に交流してくれたおかげで「ああ、たぶんこの人はこういうことが言いたいんだろうな」と、少しずつお互いを理解できるようになったんです。
今は僕も話せるようになってきたので、より深い会話ができるようになりました。チームメイトも、僕のためにわざわざ英語の語学学校で勉強してくれたみたいで、コミュニケーションをとろうとしてくれたことが心からうれしかったです。
これまで暮らしたガーナやザンビアと、モロッコとの違いはありましたか?
森下
国ごとに雰囲気が違うことはもちろん、モロッコの人たちは、言葉が通じなくても歩み寄ってくれているなと感じることが多いです。
あとは、イスラム教独自のおもてなし文化も、モロッコで初めて体感しました。家に呼んでもらったり、ご飯を一緒に食べたり……。
モロッコでは、一度輪のなかに入ると、まるで家族の一員になったみたいに、とことん親身に接してくれる人が多いんです。ラマダーン中の約30日間は、晩御飯を家族みんなで食べる習慣があり、僕は毎回違う家族に呼ばれてご飯を食べていました。
ご馳走していただくこともあれば、僕がご馳走することもあり、対等な関係性が築けたことも個人的にはうれしかったです。

異国の地で頑張れる原動力はなんでしょうか?
森下
自分の一つひとつの行動によって、応援してくださる声が増えたり、ご縁がつながってスポンサー企業との仲が深まったりと、連鎖反応のようにさまざまな景色が見えることがやりがいになっています。
また、僕のことをずっと応援してくれた姉を亡くしてから、姉の想いも背負いながら一生懸命サッカーを続けてきました。家族のためにというのも、僕のなかでは大きな原動力になっています。

目指すのはモロッコ代表。そして日本文化を広める活動にも力を注ぐ。
今後の目標について教えてください。
森下
まずは、2027年に開催されるアフリカチャンピオンズリーグで、モロッコ代表として出場できるように頑張りたいです。そのためには、モロッコの1部リーグに昇格できそうなチームに移籍しないといけないので、きちんと結果を残せるように活躍したいと思います。
また、お好み焼きの事業にも目標があります。
2030年のワールドカップは、モロッコで開催される予定です。間違いなく世界からモロッコへの注目が集まると思うので、開催に合わせてお好み焼き店を、少なくとも30店舗は展開していきたいです。日本食を通して、日本文化を世界に広められたらと思います。
読者のかたにメッセージをお願いします。
森下
アフリカでサッカーをするなかで、倉敷出身だからこそつながった多くのご縁がありました。倉敷出身で良かったと心の底から思いますし、倉敷で育ったことを誇りに感じています。
海外リーグで倉敷出身の選手が活動していることを知っていただき、少しでも応援してもらえたらうれしいです。ぜひモロッコにもお越しください!

おわりに

サッカー選手として、遠く離れたモロッコの地で活躍する森下さん。
言語の壁や文化の違いを受け入れながら、サッカーと真摯(しんし)に向き合う姿に、多くの人が魅了されているのだろうと思います。
サッカーを通じて引き寄せたご縁は数多く、お好み焼き事業や社会貢献など、活動の幅はぐんと広がっています。取材を終えて、人とのつながりが森下さんの次の挑戦を生んでいるのだと感じました。
モロッコで開催されるワールドカップで、森下さんの姿を見ることが楽しみです。
アフリカを舞台に輝き続ける森下さんの挑戦を、今後も応援したいと思います。












































