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蔵の代表・中川恵介さんへのインタビュー
昔ながらの「手打」のうどんとダシの利いたツユをつくり続けるうどん店、蔵。
手打ちうどん 蔵を運営する有限会社 恵新の代表・中川 恵介 (なかがわ けいすけ)さんへインタビュー。
開業についてや店を継いだ経緯、店の特徴、今後の展望などについて話を聞きました。
インタビューは2020年10月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
製麺所から手打うどん店へ
まず、開業の経緯を教えてほしい。
中川 (敬称略)
創業は、昭和49年(1974年)。 ちょうど、私が生まれた年です。
創業時はうどん店ではなく、うどん専門の製麺所でした。
おもにスーパーマーケットなどに納品していたそうです。
場所は、玉島北部でした。
私の両親が創業し、運営していました。
父は朝に製麺所で仕事をし、さらに昼はうどん店の従業員としても働いていたんです。
その後業界の変化なども考慮し、製麺所だったことと、父がうどん店での勤務経験があったことも生かして、手打うどんの店に転業したんです。
うどん店を開いたのは、昭和62年(1987年)。
場所は現在店のある玉島の乙島(おとしま)地区ですが、今より少し南の場所でした。
うどん店を継ぐのは自然な流れだった
恵介さんがうどん店を継いだきっかけは?
中川
正直、継ぐとか継がないかとか考えたことはなくて。
小さなころからうどん店の手伝いをしていましたし、親の跡を継いでうどん店で働くのは、自然の流れでしたね(笑)
高校卒業後、香川県の調理師の専門学校に進学しましたが、それも親のうどん店で働く前提での進学先でした。
また在学中も香川県のうどん店でアルバイトとして働くことで、修業をしていたんです。
その後は無事学校を卒業し、そのまま蔵で働き始めました。
平成7年(1995年)のことです。
店名の由来は?
中川
私が小さなころに親が決めたので、私はよくわからないんです。
推測ですが、やはり倉敷市の一般的なイメージは美観地区。
美観地区にある蔵から連想させて付けたのではないでしょうか。
昔からのうどんのつくりかたを今も続けている
蔵の特徴はどんな点がある?
中川
当店は、常連のお客様が非常に多いのが特徴です
一般的に商売は、常連2割・新規8割が理想といわれています。
ところが当店は、まったく逆なんですよ。
常連のかたが非常に多いのです。
当店を気に入ってくれて、リピーターのかたがここまで増えたのは大変ありがたいですね。
一時期、いろいろ考えて試してみたんですが、なかなかうまくいきませんでした。
試行錯誤した結果、原点回帰といいますか、元に戻してみたんです。
すると常連のお客様にすごく喜んでいただきまして。
だから、昔のやりかたを続けるのは大事だなと痛感しました。
昔のやりかたを続けるのは、すごく難しいです。
手間も時間もかかりますし、効率もいいとはいえません。
ですから、当店では昔からあるやりかたをした「本当の手打うどん」を続けています。
ダシもコンブ、カツオ、サバ、イワシなどから時間をかけて取っているんです。
麺もダシもつくるのは大変ですが、お客様がおいしいと喜んでもらえるうどんづくりを続けています。
うどんの種類が多いが、おすすめは?
中川
最初に食べてほしいのは「ザルうどん」と「かけうどん」。
やはりシンプルなので、麺の良さ、ダシの良さがダイレクトに伝わります。
まずはシンプルなうどんで、当店の麺とダシを味わってほしいですね。
なかにはザルうどん・かけうどんを同時に注文して、両方楽しむうどん通のかたもいますよ(笑)。
もうひとつ食べてほしいのは「肉うどん」です。
実は、肉うどんの肉って店によってつくる工程が違うんですよ。
だから肉うどんが一番店の個性が出ます。
私も、ほかのうどん店へ行ったときは、ザルうどんと肉うどんを食べますね。
当店の肉うどんは、うどんダシで肉を煮ます。
よくあるのは、甘辛いツユで肉を煮るのですが、当店は違っているんです。
うどんダシで煮た肉は、肉のうまみが引き出され、肉の味が一番わかるんですよ。
だから、当店の肉うどんは「おいしい」という感想もたくさんいただいて、リピーターが多いです。
あとは当店ならではの「鳥我楽(とりがらく)」や「肉とじうどん」「牛もつ鍋焼うどん」も食べてほしいメニュー。
鳥我楽は鶏肉のうまみが味わえる、ちょっと濃いめの味付けのうどんです。
肉とじうどんは、お客様の「関西には他人うどんというのがある」という話をヒントにしました。
牛もつ鍋焼うどんは、10月〜翌年5月までの期間限定メニューです。
牛もつの甘みがおいしいですよ。
逆にお客さんから人気なのは?
中川
お客さんから人気なのは、天ぷら付きの「天ザル」「天かけ」が人気です。
さきほどの肉うどんも人気ですね。
お腹いっぱいになってコストパフォーマンスのいい「日替わり定食」も好評ですね。
あとは「山かけうどん」。
具だくさんで、当店の独特のメニューですので、先代のころから長いあいだ人気があります。
ちなみに、当店のメニューのほとんどは、先代の時代からあるメニューですよ。
サイドメニューも多いと感じる。
中川
それは、当店の立地が関係しています。
当店がある乙島地区は、すぐ南に水島工場地帯があります。
大きな企業の工場があり、その工場で働く人の社宅があったんです。
ですから以前は工場労働者のかたが、多く来店されていました。
工場は三交代制だったので、当店の営業中が仕事終わりになるかたも多かったんです。
なので酒を飲まれるお客さんが前は多くいました。
それに合わせて、ツマミとしてサイドメニューを増やしたんです。
今は前ほど飲まれるお客さんが減りましたが、昔の名残で一品料理などは残っています。
おでんやごはんものに郷土色のあるものが目に付いた。
中川
基本的に、私が好きなものを置いています(笑)
「とりめし」は、私が某弁当チェーンのとりめしが好きでした。
あるとき、とりめしは岡山周辺限定の弁当だと知ったんです。
だったら、私の好物で地元特有の食べ物なら店に置いてみようと思いました。
とりめしは、けっこうお客さんにも人気ですよ。
「卵かけごはん」も、私の好物。
ちょうど県内の美咲町がたまごかけごはんで地域おこしをしていたので、これもメニューに加えてみようと思いました。
「まかないめし」は、名前のとおり私たちが店でまかないとして食べていたもの。
うどんのダシをごはんにかけただけのものですが、当店はダシにこだわっているので、シンプルでもおいしいんです。
店員だけ食べるのにはもったいないので、メニューに加えました。
「おでん」は、玉島の商工会議所で玉島の名物として売り出し中のものだったので、メニューに入れてみたんですよ。
一番の特徴はおでんの中に入っている「カステラ」。
カステラは私たち玉島の人間からしたら当たり前のものですが、ほかの地域から来たお客さんは気になるだろうと。
それで、メニューに加えたらおもしろいんじゃないかと思いました。
今後の展望
最後に、今後の抱負ややってみたいことを聞きたい。
中川
「ものづくり」を今後も続けていきたいです。
昔からうどんに限らず、プラモデルとか細々してものをつくるのが好きでした。
うどん店では、いろいろなものを組み合わせて新しいメニューを考えたりしています。
「鳥我楽」や「肉とじうどん」などは、私がメニューに加えました。
だいたい3年に1つくらいのペースで新しいメニューが出ています。
定着したものもあれば、定着しなかったものもありますが(笑)。
うどんの麺・ダシなどは、創業からのつくりかたは継承しつつ、新たなメニューづくりなどを楽しみながら考えていきたいです。
蔵の魅力は昔ながらの手打うどんの味
私は、うどん店といえば「手打うどん」というイメージをもっていました。
でもよく考えてみると、インタビューで店主の中川さんが話したように、昔からある純粋な「手打」製法をやっている店は案外少ないです。
試行錯誤の末、創業時から受け継がれる「本当の手打うどん」を今も実直につくり続ける蔵。
そんな蔵の手打うどんを求めて、店には多くのお客さんが訪れています。
ぜひ蔵へ行き、昔からの本当の手打うどんの味を楽しんでみてください。
手打うどん 蔵のデータ
名前 | 手打うどん 蔵 |
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住所 | 岡山県倉敷市玉島乙島 7283-1 |
電話番号 | 086-522-7178 |
駐車場 | あり ・第1駐車場:12台 ・第2駐車場:約6台 |
営業時間 | 午前11時〜午後2時、午後5時〜午後8時 ※売り切れ次第終了 |
定休日 | 火 |
支払い方法 |
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予約の可否 | 可 |
座席 | 40席 ・相席用4人がけテーブル:2卓 ・4人がけテーブル:2卓 ・4人がけボックステーブル:4卓 ・4人がけ座敷:2卓 |
タバコ | 禁煙(指定エリアのみ喫煙可能) |
トイレ | 洋式トイレ |
子育て | ・ベビーカーの入店可能 ・子供用椅子あり ・子供用食器あり |
バリアフリー | スロープ 車椅子での入店可能 |
ホームページ | 手打うどん 蔵 |